【アルゴウオッチ】 膨らむ「米債先ショート」、CTAも惑わす

コンピューター経由のアルゴリズム取引を手掛けるシカゴの商品投資顧問(CTA)などの投機筋が、米10年物国債先物のショート(売り持ち高)拡大を解釈しあぐねている。債先の主要な売り手としてささやかれるのは、様々な資産価格の変動率(ボラティリティー)に応じて資産配分を調整する「リスク・パリティー」型のヘッジファンド。だが10年現物債の値幅がここにきて特に大きくなったわけではない。傾向が見いだせない中でアルゴの動きは鈍った。 アルゴ系CTAはここ1カ月ほど、米経済指標などのファンダメンタルズ(基礎的条件)を分析し判断する「グローバル・マクロ」の米長期債買い戦略に便乗してきたとみられる。足元の米利上げや米中貿易摩擦などによる新興国経済の減速が米景気にも影を落とすとのシナリオが前提だ。ところが、グローバルマクロとともに債先を買ってもそれを上回る規模で売り注文が覆いかぶさってくる。 米商品先物取引委員会(CFTC)が毎週まとめているシカゴ商品取引所(CBT)の建玉報告によると、投機筋をあらわす非商業部門の米10年債先物の売越幅は14日時点で69万8194枚だった。データが開示されている1993年以降では最も多い。 10年債のショートは5月下旬に110万枚を超えた後、米中貿易摩擦への懸念がくすぶった7月にかけては90万枚前後まで細ったが、8月に入ると再び急ピッチで増えている。14日時点は118万4009枚と5月のピークを一気に超えた。その間、米10年債利回りは久しぶりに3%台に乗せたものの、中国の景気懸念やトルコ情勢の混迷などを前に低下し23日は2.8%台で推移している。リスク・パリティーが米債売りを急ぐほど振れてはいない。 野村証券の高田将成クロスアセット・ストラテジストは23日付リポートで「リスク・パリティーの売りは保有現物債のヘッジ(現物の価格下落リスク回避)」と指摘した。リスク・パリティーが本気で変動率上昇を警戒しているのなら、現物の売りがもっと膨らみ米長期金利にはより強く上昇圧力がかかっていたはずで、本来のリスク・パリティー戦略とは分けて考える必要があるとの認識を示した。 真相はやぶの中だが、巨額のショートはふとした拍子に巻き戻しが加速しかねないだけに、売りには積極的には加わりづらい。「新債券王」と呼ばれるダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏が17日、米債ショートの積み上がりに警鐘を鳴らした記憶も残る。さりとて売り手の本音がはっきりしないうちは買いにも傾けない。 「同じ債先を売るなら金利先高観がそれなりに出ている日本国債のほうがいいのではないか」――。米債先に対するアルゴの気迷いはしばらく続きそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。  

原油高、終わりの始まり? CTAの買いがリーマン前水準に膨張

国際商品市場で、コンピューター経由で取引する商品投資顧問(CTA)が原油の買いを強めている。これに対しCTA以外の投機筋には既に売りに動いているところもあり、足並みがそろっていない。中東湾岸の産油国などが減産の手を緩めるとの観測が出ている中、市場では「CTAも近いうちに買い持ち高の解消に動き、原油価格を押し下げるのではないか」との思惑が広がり始めた。 野村証券の高田将成クオンツ・ストラテジストの分析によると、CTAの原油先物の買い持ち高は21日時点で2008年夏以来の高さになった。CTAは相場の流れに乗る傾向が強い。米国のイラン核合意からの離脱などを受けてニューヨーク原油先物が上昇し、22日に一時1バレル72.83ドルと14年11月下旬以来、およそ3年半ぶりの高値を付ける過程で原油の買いに大きく傾いたようだ。 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)が18日に発表した15日時点の建玉報告で、投機筋をあらわす非商業部門の原油の買越幅は4週連続で減少していた。 CFTC報告はCTAのような「順張り」型だけでなく、重要なイベントごとに投資戦略をたてる「イベントドリブン」など様々なタイプの投機マネーの傾向を示す。野村の高田氏は「CTAは借り入れなどを通じて運用額を膨らませるレバレッジの比率が高い。自分たち以外の投資家が撤退し相場上昇のペースが鈍るとお金の余裕がなくなり、これまでのようには原油高トレンドを主導できない」とみている。 中東では緊張が高まっているとはいえ、現時点では産油に支障が生じているとの話は聞こえてこない。南米のベネズエラでは財政悪化を背景に原油生産が細っているものの、石油輸出国機構(OPEC)は6月の会合でこれまで続けてきた産油国による協調減産を緩和するとも伝わった。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至・主任研究員は「サウジでは中長期的な需要抑制を見越して原油高を懸念するムードもある」と指摘する。 08年といえばNY原油が7月に1バレル147ドルと、史上最高値を付けた年だ。その後はリーマン・ショックによるマネー収縮と世界経済の減速懸念で急落し、12月にかけて30ドル台まで下げた。 18年の世界景気は今のところ堅調で、08年に比べると金融・資本市場のリスク管理体制も整っている。そう簡単に「ショック」は起こらないだろう。だが米シェールオイルの台頭により、08年に比べると需給はだいぶ緩みやすくなった。 足元の原油高がシェールの生産意欲を刺激し、米国の産油量は日量1000万バレルに達している。積み上がったCTAの買いは原油上昇の「終わりの始まり」を意味しているのかもしれない。 【日経QUICKニュース(NQN ) 尾崎也弥】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

【アルゴウオッチ】 円売り戦略中断、ドル買われすぎを警戒

外国為替市場でコンピューターを用いたアルゴリズム取引による円売り・ドル買いの勢いが収まり、円相場は1ドル=109円前後でいったんもみ合っている。コンピューターに組み込まれたテクニカル分析のシステムが「ドルの買われすぎ」(オーバーシュート)を示し始めており、ドル買いを止めた投資家も少なくない。前週半ばまでのドル買いで、米国の長期金利上昇が米経済に悪影響を及ぼすリスクをあまり考慮してこなかったという側面が、改めて意識されつつある。 金利上昇は良好なファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を素直に映せば通貨高の要因だが、インフレや財政収支の悪化懸念などが背景なら国外へのマネー流出を伴って通貨安を促す構図も見逃せない。 4月27日からわずか1週間で12.75%もの利上げに踏み切ったアルゼンチンは「悪い金利上昇」の典型だ。高金利でペソ安阻止を狙う。それでもアルゼンチン国民が先行きを案じてドル建て資産などにお金を移し続ければペソの一段安は避けられない。 アルゼンチンは極端な例としても、トランプ米大統領が輸入制限や強硬な中東政策を通じて米国にインフレをもたらす可能性は否定できない。ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミストは「イラン情勢がさらに緊迫し、3年5カ月ぶりの高値圏で推移するニューヨーク原油先物がここから10ドル程度上振れすれば米景気への打撃は避けられない」と話す。 アルゴのエンジニアには市場経験の浅い人が多く、彼らの背後をベテランのトレーダーや元トレーダーが固めている。ベテランは「金利の良しあし」に神経質で、ドル高基調が本当に続くのか懐疑的にみている。このため「ドル相場の目標上限は低めに抑える傾向がある」(外国証券の顧客担当ディーラー)という。 野村証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは2日の時点で「1ドル=110円よりも安い水準での定着には、商品投資顧問(CTA)などアルゴ勢による円の売り持ち転換が条件になる」と指摘していた。米商品先物取引委員会(CFTC)が4日に発表した1日時点の建玉報告で、CTAなどの投機筋を示す「非商業部門」の円の持ち高は5週ぶりに売り越しに転じたものの、その幅は1405枚と小さかった。3日以降は円が上昇したため、投機筋は再び円の買い越しに転じたと考えられる。 野村の高田氏は「対ユーロや対英ポンド、対オセアニア通貨で加速した米ドル高が円高・ユーロ安などにつながり、対ドルの円売りを仕掛けにくくした」とも指摘する。円高は投資家のリスクをとる姿勢の後退を意識させ、「悪い金利上昇」への懸念を助長する。4月の米サプライマネジメント協会(ISM)景況感指数の低下や同月の米雇用者数と平均時給の伸び鈍化も気掛かりだ。アルゴが円売り・ドル買いを再開するためのハードルは上がったようだ。 【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

【アルゴウオッチ】イベント連動型のドル売り退潮、トランプ氏につき合えず

米大統領の行動に対するアルゴ勢の感度が鈍ったのは1カ月ほど前からだった。米高官辞任など政権内の混乱を映すニュースにほとんど反応しなくなったほか、通商政策にかかわる報道を無視するケースが増えた。 トランプ氏が17日、ツイッターで示した「日本は環太平洋経済連携協定(TPP)に復帰するよう求めているが、2国間協議のほうが効果的だ」との認識にも反応薄だった。日米首脳会談が終わった後の日本時間19日早朝に実施された共同記者会見は、通商や為替に目新しい発言がなかったこともあって無風で終えた。 野村証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは「米政治とシリアや朝鮮半島の情勢、貿易摩擦の『3大リスク』をよりどころとしたドル売りのローテーションは続いている」と指摘する。そのうえで「いずれの戦略も腰は据わっていない」とみている。 商品投資顧問(CTA)を旗振り役とするイベント連動型のアルゴリズム投機筋は3月までにドルの売り持ち高を膨らませてきた。ドル売りの余力は細っているはずだ。CTA主導でドル安が加速する公算は小さくなっている。 イベント連動型アルゴに代わって存在感を増しているのは高頻度取引(HFT)を得意とするヘッジファンドだ。HFTは小刻みに売り買いを繰り返す。相場はなぎのほうがよい。HFTが厚くなればさらに変動率は下がる。 将来の為替レートを予測する通貨オプション市場で、円相場の1カ月物の予想変動率は19日の11時時点で6.3~6.8%程度と、昨年の12月終盤~1月初め以来の低さだ。1月初めにかけてもHFTが台頭し、円は3円程度の狭い範囲で推移していた。円が4カ月前のような「レンジ相場」に戻る可能性は高まっている。 ■円相場と対ドル円相場の予想変動率   【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

円が3週ぶり安値、米中摩擦の「本気度」見透かす? 動き鈍ったCTA

米中貿易摩擦の懸念がくすぶるにもかかわらず、外国為替市場では円買い・ドル売りの勢いが鈍い。貿易戦争を巡る報道を材料に相場は一喜一憂しているように見えるが、外為関係者の間では「米中ともに本気で貿易戦争に突入する気はないようだ」との冷静な受け止めが広がっている。 5日の東京市場で円相場は一時1ドル=107円15銭近辺と3月13日以来約3週ぶりの安値を付けた。中国が米国に対する報復関税の方針を示した前日4日の夕刻、円は105円台まで上昇したものの、ニューヨーク市場ではあっさりと流れが変わった。米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長やロス米商務長官など米中貿易のキーパーソンといえる要人が「貿易戦争は起こらない」と火消しに回ったのをきっかけに、紛争回避に向けた米中の姿勢が確認できたとの解釈から円売り・ドル買いが広がった。 大和証券の今泉光雄チーフ為替ストラテジストは「米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表が3月時点で交渉の余地があると示唆済みで、米国ははなから貿易戦争に突入するつもりはなかった」と指摘する。中国側のスタンスについても「貿易戦争となれば互いの経済にダメージが及ぶとの認識をもって、冷静に対応していくはず」(みずほ証券投資情報部の宮川憲央シニアエコノミスト)との予想が多い。4日に発表した対米の報復関税も導入時期ははっきりせず、今のところ本気度は定かではない。 市場参加者にとって目下、貿易摩擦を巡る各国の動きが最大のテーマとなっている状況には変わりはない。長い目で見た円の先高観は強いままだ。だが、前週まで円高・ドル安の基調をけん引してきた商品投資顧問(CTA)などのコンピューター投資家は米要人発言にすっかり翻弄され、体力が低下している。 4日夕のドル売りも「貿易摩擦を巡るニュースに反応するようセッティングされたコンピューターが主導した」(大和の今泉氏)。その後の円安・ドル高で損失をこうむった公算が大きい。一部のCTAでは要人発言にすぐには反応しないようセッティングを調整したところもあるようだ。 トランプ米大統領が鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動する方針を示したのをきっかけに貿易摩擦が警戒され始めてから約1カ月たつ。材料としての鮮度はやや低下した。トランプ氏が対中関税の発動を判断するのは6月ごろということもあり、市場では貿易摩擦を巡る報道に耐性をつけ始めたのかもしれない。 【日経QUICKニュース(NQN) 蔭山道子】   ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

【アルゴウオッチ】円高狙いのCTA、期末の売りに白旗 変動率安定が誤算

29日の東京外国為替市場で円相場は急反落し、1ドル=106円半ばを中心に推移している。3月末に向けての需給が円売り・ドル買いに偏り、コンピューターを用いた商品投資顧問(CTA)などのアルゴリズム投資家は週初までに積みあげた円の買い持ち高整理を迫られた。将来の為替レートを予測する通貨オプション市場で予想変動率(IV)が安定し、アルゴ勢のもくろみが外れてしまった面もある。 IVの安定は為替差損の回避(ヘッジ)目的のオプション需要がさほど増えていない状況を示す。日本では大手の輸出企業や機関投資家が主にオプションを手掛けるため、IV上昇は日本国内における円高シナリオの広がりを映すケースが多い。アルゴ勢もその点を意識し、CTAなどの投機筋はたいていIVの上昇もしくは高止まりを円買い戦略の条件としてきた。 円相場のIV1カ月物は3月に入り、8%台前半を中心とするレンジで推移している。日銀の黒田東彦総裁が出口検討の具体的な時期に触れた2日や、米中貿易摩擦への懸念から円が約1年4カ月ぶりに1ドル=104円台まで上昇した23日に8%台後半~9%台に上がったものの、米株価の急落に揺れた2月上旬の10%台後半には及ばない。国内輸出企業は円・コール(買う権利)の買いや先物の円買い予約を進めてきたが、市場では「今のところ焦りは感じられない」との声が目立つ。 日銀は4月2日、3月調査の企業短期経済観測調査(短観)概要を発表する(全容は3日発表)。前回の2017年12月調査時点で、事業計画の前提となる円の想定為替レートは大企業・製造業が2017年度通年で1ドル=110円18銭、17年度下期に限れば109円66銭だったが「18年度は全体的に数円程度円高・ドル安方向に修正される」(明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミスト)との予想が支配的だ。 1ドル=110円台から4~5円程度上方修正されれば29日の実勢水準にほぼ並ぶ。17年度の終盤のように計画との乖離(かいり)を気にして円買いを急ぐ必要性は薄れる。円・コールオプションの購入や先物の円買い増加によるIV高も起こりにくくなる。 CTAが円買い材料としてプログラミングしてきた米中の貿易摩擦や日米の政治リスクについては今のところ「続報」が乏しい。28~29日は朝鮮半島情勢の緊張緩和を材料とする円売りにも押された。アルゴの円買い戦略は仕切り直しの様相が濃くなっている。 【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

【アルゴウオッチ】ドルの「大安売り」一服 外貨準備トークに限界 

外国為替市場でドル売りのモメンタム(勢い)がいったん止まっている。対円は日本時間の20日9時時点で1ドル=106円70銭台と、前週付けた1年3カ月ぶり安値の105円台半ばから1円超戻した。 コンピューター・プログラム「アルゴリズム」を駆使するシカゴなどの商品投資顧問(CTA)は前週半ば以降、唐突に米国の財政赤字などを持ち出してドルの安売りに全力を挙げてきたが、ここにきて材料の継続性を見極めようとしているようだ。 CTA勢がさして新しくもない米財政収支や経常収支に焦点を当てた背景に、中国などアジア系の政府・中央銀行による外貨準備のドル離れ観測があったことはよく知られている。 米国債相場の下落(利回りは上昇)ペースが速まり評価額は下がってきたのに、運用比率を保つ目的の米債買いが目立たなかったからだ。米株高などで投資家のリスク選好意欲が戻ったにもかかわらず、CTAが「低リスク通貨」の円を対ドルで買い進めた一因にもなっている。 外準マネーの動きは米債の償還・利払いを挟んだ前週15日前後もさほど強くはなかった。感情を持たないアルゴリズムはプログラマーのセッティング通りに淡々とドルを売ったと考えられる。だがお金の流れを細かく点検すると、中国などのドル売りは外準の運用スタンス変更を示すものでは必ずしもなかったと受け取れる。 からくりはこうだ。中国では2017年の前半、金融引き締め策をとると同時に外貨準備を取り崩し、人民元買い・ドル売りの為替介入を頻繁に実施した。そのかいあって同年秋にかけてドル売りの必要性は薄れ、外貨準備は徐々に回復した。 外準はまずはドル建てで増えるので、ファンドマネジャーは所定の運用比率にあわせてドルを売り、ユーロや円、英ポンドなどを買う。中でもユーロの比率が高いため、ユーロ買い・ドル売りが広がりやすい。 シティグループ証券の高島修・チーフFXストラテジストは「昨年終盤以降の対ユーロ主導のドル安は外準のドル売り・ユーロ買いをきっかけに起きたと考えればつじつまがあう」と話す。 1月10日に流れた中国の「米国債購入の減額・停止」報道とも矛盾はしない。投機筋は欧州中央銀行(ECB)の量的緩和の早期縮小観測やムニューシン米財務長官から飛び出した「ドル安容認発言」をうまく生かしてドル売り戦略を成功させたのだろう。中国などの外準マネー拡大が続けば、ドル売りはさらに膨らむかもしれない。 一方で高島氏は「外準に占める円の比率は極めて低く、円高・ドル安とは整合性がとれない」とも指摘。外準トークをよりどころにした円高には限界があると想定している。 国際通貨基金(IMF)が四半期ごとにまとめている外貨準備の構成統計(COFER)によると、中国を含む内訳が明らかになっている分だけで算出したドル建て資産の占める割合は昨年9月末時点で約64%、ユーロは20%程度だが、円と英ポンドは4%台にとどまる。資産配分の結果生じる円買い・ドル売りの規模はおのずと小さくなるはずだ。 18年は日本でも量的緩和策の縮小観測が台頭しているが、ECBの緩和縮小観測に比べると現実味がまだ薄い。ドル安が仮に続くとしても、円はユーロに後れをとるものだと意識すべきだろう。 【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

「VIXショック」を予見? 日本株、2月急落前に外国人売り「2兆円」

米長期金利の上昇をきっかけとした世界的な株式市場の動揺に歯止めがかからない。日経平均株価は1月23日に付けた約26年ぶりの高値である2万4124円から3週間足らずで11%もの急落に見舞われた。 振り返ると日経平均が上値追いを続けていた1月、海外投資家は週間で1兆円を超える規模の売りを2度にわたり日本株に浴びせていた。海外勢は2月の急落を予見していた可能性がある。 東京証券取引所などが発表した投資部門別売買動向によると、海外投資家は1月第5週(1月29日~2月2日)に日本株(現物と先物の合計)を約1兆2000億円売り越した。過去10年で6番目の大きさだ。海外勢の売り越しは1月第2週(9~12日)も1兆円を突破。株価水準の高さを考慮しても1カ月で2回の「1兆円売り」は珍しい。今年の売り越し累計は約2兆5200億円に膨らんだ。 ■VIXの水準切り上げと連動か 兆しがなかったわけではない。いまや株安の震源として世界に名前がとどろく米株式相場の変動性指数(VIX)。10割れの低水準が恒常化していたVIXは1月中旬からじわりと水準を切り上げていた。1月の海外勢の売りは、このVIXの動きと連動したものだった可能性がある。 前回、海外投資家から1カ月で2度の1兆円超の売り越しが出たのは2015年8月。中国人民銀行(中央銀行)が人民元の切り下げに踏み切った「人民元ショック」で、世界的な株安に見舞われた。日経平均は15年8月の2万1000円近辺から9月には1万6900円台まで急落した。 ■日銀ETFと個人投資家の信用買いが下支え 今回不思議なのは、海外勢が売ったにもかかわらず1月の日経平均が26年ぶりの高値圏に踏みとどまり続けたことだ。「日銀による上場投資信託(ETF)の買いと、個人投資家の信用買いが下支えしたため」(国内証券の情報担当者)との解説が多い。 東証によると、今年に入り個人の信用取引での新規の買いは累計約4200億円。日経平均が2万2000円を上回った17年11月以降では累計約1兆1300億円にのぼる。「逆張り」中心の個人が、上値を買い進む「順張り」に戦略を変えたことが、海外勢の売りを吸収して相場下落を食い止めた構図が見て取れる。 こうした国内勢の買い持ち高が、過去2週間の相場下落で一気に含み損に転じたことは想像に難くない。2年5カ月ぶりの水準に積み上がった信用残の一部は、追加証拠金(追い証)の発生で反対売買を迫られた公算が大きい。国内勢の撤退売りで、相場は支えを失うことになりかねない。 足元では相場変動を売買の手掛かりとして重視するCTA(商品投資顧問)や「リスク・パリティー」ファンドが「2000億ドル(約22兆円)の世界の株式を売却している過程にある」(米バンクオブアメリカ・メリルリンチ)との試算がある。「後始末」による株売りは今後1カ月にわたるとの見方もある。 直近の下落幅と衝撃度を踏まえると、日経平均が急落前の水準を回復するには一定の時間がかかりそうだ。野村証券の試算では17年10月以降の「トレンド追随型」のCTAによる日経平均先物の平均買いコストは2万2350円近辺。この水準では戻り売り圧力が強まるとみられる。 ■200日移動平均下回れば、株安加速も 中長期の株価のトレンドを示す200日移動平均は2万1003円(9日時点)。「これを下回れば、さらなる株安を警戒する必要がある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘氏)。上昇基調が崩れれば、個人の信用買いがさらに反対売買を迫られる可能性もある。 【日経QUICKニュース(NQN) 張間正義】 ※NQNが配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

どうなるVIX急騰の後始末 世界の株売り圧力「22兆円」の試算も

株式市場で投資家心理が悪化すると上昇しやすい「恐怖指数」の高止まりが、さらなる世界の株売りを促しかねないとの警戒感が広がっている。米国株の予想変動率を示し、恐怖指数と呼ばれる米VIXは高水準のまま。この指数の変動を投資判断の材料にする投資家からの潜在的な売り圧力の規模は、22兆円に達するとの試算も出ている。 7日までに日米の株価急落にはひとまず歯止めがかかった。だが「株売りが本格化するのはこれから」と、機関投資家の運用戦略に詳しいある大手証券の株式担当者は身構える。7日のVIXは前日比7.34ポイント低下の29.98だったが、一時は50まで上昇した。米ダウ工業株30種平均の7日の日中値幅(高値と安値の差)は1100ドルを超え、相場の乱高下は続いている。VIXはS&P500種株価指数のオプション価格を元に算出するが、グローバルの投資家が市場心理を推し量る指標として重視している。VIXの上昇は日欧などのグローバル株の調整につながる。 相場の変動率を投資判断に活用する代表的な投資家はヘッジファンドの1つであるCTA(商品投資顧問)で、そのほか保有資産全体のリスクを予想変動率で測って資産を運用する「リスクパリティ(均衡)戦略」をとる投資家もいる。VIXの上昇は予想変動率が拡大を意味するため、彼らは株式投資のリスクが高まったと判断し、売りを出す。米バンクオブアメリカ・メリルリンチ(バンカメ)は6日付リポートで「CTAとリスクパリティ戦略(の投資家)は2000億ドル(22兆円)の世界株を売却している過程にある」と試算した。 こうした潜在的な売り圧力は10兆円とみるのは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の古川真チーフ・ポートフォリオストラテジストだ。同氏は「彼らは資産の組み入れ比率の調整を2週間から1カ月ごとに実施することが多い」と指摘する。バンカメも「大幅な配分変更には数日かかる」とみる。いずれも、変動率が大きくなった後、一定の時間をおいて株売りが膨らむとの見立てだ。 国際通貨基金(IMF)が変動率を重視して運用するこうした投資家の17年6月時点の運用残高をまとめたところ、CTAは24兆円、リスクパリティ戦略の投資家は最大19兆円、さらに変額年金は48兆円という。運用資産は株式だけではないものの合わせると100兆円に迫る規模という。17年末まで相場変動率は低位で安定していたため「残高はさらに増えた」との見方もある。それが年明け以降、VIXが急上昇したため、一転して売り圧力として警戒されている。 VIXの急上昇は現物株市場の外にも波紋を広げている。野村ホールディングス(8604)の欧州グループ会社と金融大手クレディ・スイスは6日、運用するVIXと逆の値動きをするETN(上場投資証券)をそれぞれ早期償還すると発表した。これらの商品はVIXが1%上がれば、1%下がるという仕組みだ。VIXが5日にわずか1日で2倍以上に急騰したため、一夜にして価値がほぼゼロになった。 米国株の急落とVIXの急上昇が残した爪痕として、今後1~2週の間にどこから関連した金融商品を通じた株売りが出てくるか。投資家は戦々恐々としている。彼らのリスク許容度の回復は簡単には進まなさそうだ。 【日経QUICKニュース(NQN ) 田中俊行、張間正義】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。 ◆関連記事はこちら◆ VIXショックは去ったか 日米株乱高下 市場参加者はこう見る 上場投資証券「VIXベア」(2049)、1日で価値9割消失 米株の急落受け

VIXショックは去ったか 日米株乱高下 市場参加者はこう見る

7日の東京株式市場で、日経平均株価は4営業日ぶりに反発した。終値は前日比35円13銭(0.16%)高の2万1645円37銭。一時は上昇幅が700円を超え、節目の2万2000円を上回ったが、午後になると戻り待ちの売りも出て急速に伸び悩んだ。 オプション価格をもとに相場の予想変動率を示す日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)は、米国株の下げ止まりをきっかけに低下した。だが相場の先安観は根強く、日経平均VIは下げ幅を大きく縮めた。 今回の日米株乱高下の背景としては、コンピューターを使った自動売買「アルゴリズム取引」の影響が指摘されている。2月2日発表の米雇用統計を受け、「恐怖指数」とも呼ばれるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX指数)が上昇。CTA(商品投資顧問)や、相場の予想変動率に応じて保有資産全体のリスクを調整する「リスクパリティ(均衡)」ファンドが、相場変動率が高まったと判断し、売り注文を自動売買で膨らませたというのが市場のコンセンサスになりつつある。 相場急変をもたらしたVIX指数は6日の米国市場では、最高50.30から最低22.42の間で乱高下した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、変動幅は過去最大規模だったという。今回の世界的な株安連鎖が「VIXショック」と呼ばれるゆえんだ。 では「VIXショック」は去ったのか。QUICKデリバティブズコメントは7日、市場参加者の見方を東京市場の寄り付き前から大引けにかけて取材した。 【海外からのフローは売り買いトントン】 ☆「朝方は国内系が先物に買いを入れたが、海外からのフローは売り買いトントンという話を聞いた。投信は引けで買いを入れる可能性があるという観測もある。ただ、この時間帯でなぜ伸び悩んでいるかは分からない」(運用会社) 【押し目とみる投資家が多い】 ☆「前日は大量の買い注文が殺到していた。主力大型株やETF(上場投資信託)などに押し目買いが入った。前日程ではないが、きょうも買い注文が続いている。後場伸び悩んだ局面でも買いのフローが見えた。2万3000円台後半で推移していたため押し目とみる投資家が多いのではないか」(セールストレーダー) 【前日は派生商品の損失響いた】 ☆「前日は派生商品の損失が響いた。現物の収支は全体でプラスだったが、派生商品の損失は相殺できなかった。10年1度程度のことなので、しょうがないと捉えるしかないのだろうか。最近の下落局面ではロングのポジションはほとんど持ち越さず、ショートをオーバーナイトしていたディーラーが多かったため、損失が出たのは派生商品だけだった」(国内証券ディーラー) 【自律反発の流れに】 ☆「日経平均は前日に一時1600円超下げて売られすぎただけに、自律反発の流れとなるだろう。株価収益率(PER)で14倍割れの状態は長続きせず、15倍(23460円)くらいまで戻す展開を見込みたい。前日に今期の通期業績予想を上方修正したトヨタ(7203)のように、米税制改革法案の成立を受けて減税の恩恵が日本企業にも波及していることは好感触だ。今期だけで無く、来期の1株当たり利益(EPS)上昇にもしっかり寄与してくるだろう」(証券ジャパンの大谷正之・調査情報部長) 【日本株の強気スタンス維持】 ☆「当面は不安定な状況が続く可能性があるものの、マクロ環境はグローバル・国内ともに良好で、企業収益も堅調、財政・金融政策も支援的であることから、日本株に対する中期的な強気スタンスを維持する。過去の下落局面を参考にすると、バリュエーションから考えられる下値メドは、株価収益率(PER)14倍のTOPIX=1650と考える一方で、今回は経済環境が特に良好であることから、そこまで下落しない可能性も指摘しておきたい」(ゴールドマン・サックス証券の7日付レポート) (QUICKデリバティブズコメント) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

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