キーワードは「7」 人民元に振らされたドル円相場、裏にHFT

日経QUICKニュース(NQN)=編集委員 今晶 6日の東京外国為替市場で円相場は高く始まった後に下げに転じ、一時1ドル=107円11銭と前日17時時点に比べ1円17銭の円安・ドル高水準を付けた。中国人民銀行(中央銀行)が6日の人民元基準値を対ドルで約11年ぶりの安値に設定したものの、市場が想定していたほど元安ではなかったとの受け止めから米中の貿易摩擦激化への懸念が和らいだ。米国のドル安志向や米利下げ局面の長期化などを見込んで円買い・ドル売りや債券買いに傾いていた参加者が持ち高縮小を迫られた。 「『7』をキーワードにコンピューター・プログラムを作動させている投機筋がいる」。市場の一部でそんな会話が交わされていた。5日、米中の摩擦懸念を背景とする円高・株安は日本時間の9時すぎには既に鮮明だったが、勢いを増したのは10時15分以降。中国人民銀が人民元基準値を8カ月ぶりの元安水準に決めた直後、上海市場やオフショア(本土外)の市場で元が1ドル=7元台まで下げてからだ。以降も7元台で元が下げ幅を広げるにつれて円買いは増えた。 米財務省が中国の「為替操作国」認定を発表した日本時間6日早朝の円高や日米の株価指数先物の下落もオフショアでの元安進行が引き金となった可能性が高い。1ドル=7.13元台まで元が急落する過程でドルや株の売りが膨らんだとみられる。 そこで迎えた6日の10時15分すぎ。人民元基準値は1ドル=6.9683元だった。記録的な元安水準ではあるものの「7」には届かなかった。上海市場ではその後も7元台で推移したというが、「コンピューターの大部分は基準値のほうに反応し、円買いなどの持ち高解消を急いだ」(外国証券の為替ディーラー)らしい。 5日以降の荒い動きを見る限り、高速の高頻度取引「HFT」の活力はまだ戻っていない。HFTが市場の変動率を抑える構図は望み薄のようだ。貿易を巡る米中対立が解けたわけではないため、市場関係者の多くは引き続きリスク回避や米国のドル安志向、継続的な米利下げ観測に基づく円高・ドル安局面を意識している。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

AI取引、テールリスクには無力 長期投資の全面依存は難しく

日経QUICKニュース(NQN)=今晶、菊池亜矢 波乱要因の少ないごく短期の取引での活用ノウハウはほぼ確立している半面、長期投資での全面的な依存は難しい――。人工知能(AI)に対する現時点での金融・資本市場の評価だ。経験則の通じない「想定外」の事態に臨機応変に対処できないためだが、そのことを理解するには、AIの基本的な思考回路を把握しておく必要がある。 ルール有のゲームは強いが…… AIの基本は統計処理で、基準となる確率分布が安定していることが重要になる。例えば、サイコロを振ってどの目が出るかは6分の1の均等な確率。しかも1から6以外の目が出ることは絶対にない。そのような、決まった現象が決まった確率で発生する事態を高速で処理するのは得意中の得意だ。ルールが明確で、起こりうる現象すべてを想定し戦略として落とし込める、いわゆる「ゲーム」でAIはめっぽう強い。チェスや将棋、囲碁の世界での強者ぶりは皆が知る通りだ。 市場でこの「ゲーム性」を最もよく体現するのは、マイクロ秒(100万分の1秒)単位の速さで売り買いを繰り返す高頻度取引(HFT)など、パターンを単純化できるごく短期の取引だ。HFTはわずかな需給のゆがみに着目した裁定取引で「入力されたデータ(変数)に沿ってパターンを分析し、ミクロレベルの変化を察して注文を出す」(バークレイズ銀行で日本のEコマース・トレーディング部門のヘッドを務めるデービッド・サン氏)。取引自体はHFT向けにチューニングされた専用の高性能コンピューターが担う。 AIの主な役割は人間よりも早く判断をし、プログラム修正などの指示を的確に出すことだ。HFTのコンピューターと同様に、不眠不休で働き収益機会を増やせる。 中銀が意外な行動をとったら…… だが長い目で見ると、参加者が極めて多くランダムに動きやすい市場では均一な確率で起きる現象はないといっていい。そのため、ある現象から割り出したデータを将来の事象に当てはめる「予測」の精度を上げるのは厳しい。しかも、AIは知らないことや分からないことに直面すると思考を止めたり、暴走したりする。機動的な対応が可能な人間との現時点での最大の違いはここだ。 市場は、「テールイベント」と呼ばれる「起きる確率は非常に低いが、起きると影響が極めて大きい」事象にも遭遇する。確率は低いといっても、2000年以降は03年のイラク戦争から08年のリーマン・ショック、11年の欧州債務危機や15年1月のスイスフラン・ショックなど「ショック」と呼べる大変動は決して少なくなかった。そんなテールイベントのリスクに対し「AIは無力」というのが市場の定説だ。 機械分析の根幹をなす分析軸の1つに「中央銀行は理性的に動く」がある。ところが、日銀による異次元の金融緩和策など中銀が従来の行動パターンを外れるケースが増えてきた。ハイライトがスイスフラン・ショックだ。スイス国立銀行(中銀)がそれまでかたくなに守ってきた1ユーロ=1.20フランの維持姿勢を突然撤回。中銀のフラン高阻止を前提に分析してきたプログラムは総崩れとなった。 自ら誤差を修正できない…… 学界を中心に、テールリスクの予測を試みる研究が進んでいる。それでもまだ「極めて低い確率で起きうる一度きりの現象」にはてこずっているようだ。テールリスクが起きる度にデータを入力し続ければ、人間と同じように学習し、いずれ適切な判断ができるようになる――。その通りなのだが「言うはやすし」なのだ。 バークレイズのサン氏が面白い事例を教えてくれた。欧米で評判の、まるで人間が書くかのような自然な文章を書けるAIプログラムに小さな誤りが生じたとする。人間なら「あ、間違えた」とすぐに直せるが、コンピューター上の誤差はどんどん拡大し、その後の文章は支離滅裂になっていくらしい。誤差要因がデータにないためAIは誤差を検知できず、修正するすべがないわけだ。 AIにおける機械学習には、出発地と到達地を設定しルールだけを教えて正解は与えない「強化学習」がある。自動運転などで期待される手法だ。だがランダム性の強さから考えて、金融・資本市場での実用化に向けたハードルは高いだろう。机上でトレーニングを重ねても、データ上の確率は現実世界の確率にはならない。 市場環境は日々刻々と変わる。きょうは円安・ドル高で円売り・ドル買いが最適だったとしても、あすも取りうる最適の戦略になるわけではない。人間なら「あしたはあしたの風が吹く」と鼻息混じりでこなせることなのにAIはできない。その差は大きい。 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

「投資収益マイナスの月なし」 日本で月32兆円売買するHST、その正体は

コンピュータープログラム経由のアルゴリズム取引は、いまや日本市場の取引の過半を占めるとも言われながら、その内情は外部からは不透明だ。シンガポール拠点のグラスホッパー社は、高頻度取引(HFT)業者の一種である、高速取引行為者(HST)。金融庁に登録して日本を主戦場とし、東京証券取引所では株価指数連動型上場投資信託(ETF)の気配値提示義務を負うマーケットメーカーも務める。日本での月間取引額は3000億米ドル(約32兆円)を超えるという。最高財務責任者(CFO)のジェームズ・リョン氏が主要日系メディアの取材に初めて応じ、日本での取引の実情を明かした。 ジェームズ・リョンCFO ■日本株の指数先物市場でシェア1~3% ――取引の内容や規模について教えてください。 「日本、シンガポール、米国市場を中心に先物や株式、ETFなどを売買している。日本は我々にとって最大の市場だ。世界で取引している額は個々の取引金額の合計で月間5000億ドルほどだが、うち7割程度は日本での取引だと思う。特に日本の株価指数先物市場の取引に占める割合は高く、現在も売買高の1~3%ほどを占めている」 ――取引が日本の相場動向に影響を与えることもあるのでしょうか。 「我々は買いと売りの指し値のわずかなスプレッド(価格差)で稼ぐ売買を高頻度で繰り返すマーケットメーク戦略が中心だ。(相場の方向性に賭ける)ディレクショナルな取引はほとんどしないため、戦略が日本市場の相場水準に影響を与えることはない。我々の今の仕事は適切に流動性を供給して可能な限り速く取引をする、という技術的な面に集約される。売買は通常数秒から数分で完結し、翌日にポジション(持ち高)を持ち越すことはほとんどない」 ■従業員の半数がシステム開発担当 ――マーケットメーク戦略をとる取引業者が増えて競争が激化していますが、どうやって利益を確保しているのですか。 「競争は非常に激しい。買いと売りのスプレッドが縮小して利益を出すのが難しくなったうえ、欧米から強大な競合相手が参入している。(規制で)参入が難しい中国を除けば日本はアジア最大の市場で、誰もが日本での取引を望んでいるが、生き残り続けるのは簡単ではない。6年ほど前にはシンガポールで日本市場の取引をするプロの投資家は500~600社あったが、現在はおそらく50社以下しか残っていないのではないか」 「生き残りのカギは独自開発のプログラムだ。市場のマイクロストラクチャー(需給構造)から市場参加者の動向を把握、予想し、状況に合った注文を出す。速さが非常に重要だ。相場変動が大きい局面では想定通り取引できないリスクがあるため、安全なタイミングを見極めるのもプログラムの役割だ。取引はほぼ自動的に執行されるが、アルゴリズムの調整や挙動の確認は人間のトレーダーが行う。従来の運用会社のような形では運用成績を記録していないが、言えるのは非常に安定しているということだ。これまで投資収益がマイナスになった月はない」 ――技術力が重要なのですね。従業員は技術者が多いのですか。 「我々も2006年の創業時は伝統的な運用会社だった。テクノロジーこそが重要との考えに至り、08年に1人目のデベロッパー(開発担当)を採用した。1からプログラムの独自開発を始めたのは11年。ようやく完成した15年にはすでに欧米から数百人規模の開発人員を抱える競合相手が続々とアジアに参入していた。出遅れていたら太刀打ちできなかっただろう。今は60人超の従業員のうち、開発者が約半数を占める。私自身もプログラムを1から学ぶことになった。テクノロジーはいまや必要不可欠で、市場の変化に参加者も適応していかなければならない」 ■大手の寡占化、参加者の多様性失う ――金融庁が18年にHSTの登録制度を導入するなど、日本で高速取引の規制が進んでいます。日本の制度をどう考えていますか。 「規制は確実に必要で、登録制度自体は好ましい。ただ結果的に新規参入の排除につながるため、小規模な事業者も受け入れられるよう何らかの手立てが必要だ。日本での取引停止を避けるため、我々は昨年、HST登録を最優先事項として取り組んだが、今となっては正解だった。登録待ちの業者がまだ大勢いる。手続きにかかる労力は膨大で、創業間もないような事業者には極めて難しい」 「大手に有利な環境が続けば、市場参加者の多様性が一段と失われ、市場システムが不健全になりかねない。特に先物市場では以前に比べて1回当たりの注文規模が大幅に縮小した。理由の1つは米国などで取引業者の統合などが進み、大手業者の存在感が高まっていることだ。寡占化につながるうえ、いわゆるインターナライゼーション(顧客の注文を取引所に出さず自社内で成立させること)が増えて流動性が細る。多様性を維持するためにも、マーケットメークの意義を一般向けにも積極的に発信し、高速取引が市場をゆがめるかのような誤解を払拭したいと考えている」 (聞き手はNQNシンガポール 村田菜々子) <グラスホッパー社> シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の立会取引出身で、日本でも先物取引などを手掛けたトレーダーのジョン・リン氏(現最高経営責任者)が06年にシンガポールで創業。翌年、当時金融市場とは無縁だったリョン氏にトレーダーの才能を見いだし、1人目の従業員として同社に引き入れた。08年にテクノロジーを軸とした取引に路線変更し、15年から独自プログラムを使った高速取引を開始。18年に日本の金融庁にHST登録した。東証がETFの取引活性化のために導入したマーケットメーク制度にも参加し、気配値提示を請け負っている。子会社では仮想通貨取引を手掛ける

荒ぶるビットコイン、投機マネーが翻弄 流動性の乏しさは不変

インターネット上の仮想通貨ビットコインの変動が再び大きくなってきた。ドル建て価格は4月初めの1ビットコイン=4000ドル台から今週に入って8300ドル台とわずか1カ月で倍になり、ここ数日は数百ドル単位での上下動が目立つ。仮想通貨市場の厚みや取引の自由度を示す「流動性」は法定通貨に遠く及ばない。一部の投機資金が手掛けるまとまった規模の売り買いに振り回されやすくなっている。 ビットコインの急伸局面では欧米ヘッジファンドなどの投機筋による空売り持ち高の解消がささやかれた。一連の動きは主要な投機戦略である「リスク・パリティ」に似ている。 リスク・パリティでは株や債券などの保有資産の持ち高をボラティリティー(変動率)の高さに応じて変えていく。ビットコインの空売りは厳密にいえば資産ではないが、ボラティリティーの強弱が持ち高形成や整理を促す点では同じだ。2019年に入ってコインの採掘者(マイナー)などからの「投げ売り」が収まって相場の反発色が増すにつれ、空売りファンド勢は17~18年初のような上昇方向への変動率の高まりを意識せざるを得なくなったようだ。 そんな中でトランプ米大統領が対中関税を強化する姿勢を示し、米国株の変動性指数(VIX)先物の売りに傾いていたファンドなどを動揺させた。小回りの利くヘッジファンドには仮想通貨を組み込んでいるところが少なくない。欧米主導の株安でリスクをとる余裕がなくなり、コインの買い戻しを促しやすかった面もある。 ドルを基軸とする法定通貨の取引は100万ドル(約1億1000万円)単位が基本だ。市場が厚い円やユーロの対ドル取引では、コンピューター経由の高頻度取引「HFT」が1000分の1~100万分の1秒単位で100万ドル規模の売買を繰り返す。一方、発行量が限られ流動性は上がりにくい仮想通貨は、ブームだった18年初にかけてでさえ機械取引の参入は厳しかった。 HFT全盛の先進国通貨の取引では一日で少なくとも数兆ドル(数百兆円)のお金が行き来するとみられている。これに対し、情報サイトのコインマーケットキャップなどによると仮想通貨の日々の売買高は1000億ドル台まで膨張してきたが、算出に用いられる交換業者のデータには「水増し」疑惑がつきまとう。売買増が投機の持ち高整理主導なら市場参加者の裾野は広がっていないことにもなる。 足元では「安全資産としてのビットコイン」「分散投資の対象としての仮想通貨」といった声も出ている。今後、法定通貨と同様に先物やスワップ市場の整備が進み、機関投資家や企業の利便性が高まる可能性が意識されている。だが巨額の資金をコンスタントに受け入れ続けられるほどの流動性はすぐには望めない。価格変動リスクも大きい。その点は心しておくべきだろう。 【日経QUICKニュース(NQN ) 編集委員 今 晶】

円、波乱前提のオプション衰退 値動き1円でも大相場の時代

外国為替市場で世界的に円相場の膠着が続いている。マイクロ秒単位で売り買いを繰り返す高頻度取引「HFT」やHFT並みの高速売買をする個人の外為証拠金(FX)投資家の存在感が相変わらず大きく、もともと動きが小さかった東京市場に限らず欧米の取引時間帯でも「たかが1円動けば大相場」となっている。オプション市場では「ストラドル」や「ストラングル」と呼ばれる相場の波乱を前提とする取引の影が薄れている。 電子ブローキングシステム(EBS)のデータから3~4月の円の日米欧市場を通した日通し値幅をみると、米金融政策と世界景気の先行き不透明感が強まった3月20日と22日の1円10銭台が目立つ程度。4月に入ってからは1日と11日の70銭台が今のところ最も大きい。円が1ドル=111~113円台で停滞していた昨年10~12月と似た状況だが、今月は値幅が50銭に届かなかった日が12日までの10営業日で6営業日もある。 オプション市場では円の上値の重さが意識され、円高の為替差損リスクを回避(ヘッジ)する目的の取引が細って予想変動率(IV)の低位安定をもたらしている。IVの1カ月物は前週後半に4.7~4.8%台と、過去最低を付けた2014年夏以来の低さになった。大相場を前提とするオプション戦略に適した環境にはない。 ストラドルの買い手は権利行使価格が同じプット(売る権利)とコール(買う権利)を同額購入し、ストラングルは権利行使価格をやや離してプットとコールを求める。いずれも相場がどちらかに振れさえすれば利益を積みあげられるため、直物でも積極的に持ち高を傾けて収益の最大化を狙う。だが、その戦略が一昨年あたりからなかなかうまくいかなくなってきた。 「ストラングルやストラドルはむしろ、波乱なしを前提に売る参加者が増えている」(外国証券のオプションディーラー)という。15日の東京市場で円相場は一時1ドル=112円09銭近辺と前週末のニューヨーク市場で付けた3月以来の安値水準に並んだが、下落ペースは依然として緩やかだ。オプションの売りは行使されたときのリスクが極めて高いものの、背に腹は代えられない――。そんな空気が広がっている。 【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

HFT隆盛で変質、外為市場は元には戻らず  by 花生浩介氏(シリーズ:ベテランに聞く)

外国為替市場の主要プレーヤーや取引形態は1980~90年代に比べると激変した。コンピューターや人工知能(AI)の発達で高頻度取引(HFT)が幅をきかせる時代になり、2008年のリーマン・ショック後に規制強化が進んだ影響もあってどんな場面でも腰を据えて売り買いの価格を示す「マーケットメーカー」は姿を消した。日本興業銀行(現みずほ銀行)や香港上海銀行(現HSBC)で30年以上為替ディーリングに携わった花生浩介氏は「HFTによって売買高自体は増えたが、市場の流動性はむしろ減少した。もう元には戻らないだろう」と話す。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)=菊池亜矢】 花生浩介(はなお・こうすけ)氏 1980年に日本興業銀行入行。84年から為替ディーリングの道を一貫して進む。2001年にロイヤルバンク・オブ・スコットランド(RBS)東京支店で外国為替部部長、06年から香港上海銀行に移り外国為替本部長とマネージングディレクター。17年にバルタリサーチを設立し個人の目線からマーケット情報を提供する傍ら、トレーニング用品やソフトウエアを扱うスポーツ関連企業フィットネスアポロ社の社長 ■混乱時のパニック増幅しやすく 現在の市場の主役はAIをバックにしたHFTだ。HFTはふだんはマーケットメーカーのように振る舞って相場の値動きを決める半面、混乱時にはいっせいに手を引き、パニックを増幅してしまう。いざというときには頼りにならない。責任感をもって市場機能を維持する真のマーケットメーカーがいない現在の外為市場は、市場メカニズムの是正といった自らの優れた機能を大きく損ねている。市場は事実上しぼんでしまったといっていい。 ディーラーの駆け出しのころ、日本はバブル絶頂期だった。金融危機の前で金融機関や投資家のリスク許容度は極めて大きく、いまでは考えられない大金が活発に動いていた。現在に比べるとはるかに小さい規模の市場の中で、30歳代にかけての5~6年は朝から夜中まで顧客の注文に応じて価格を出し続けた。 ときには大きなリスクも取ったが、ポジションの保有時間は長くて5分、下手をすると5秒で回転させて「流動性」を供給してきた。回転売買に徹していた気がする。結局はそれがリスクヘッジになっていたかもしれない。当時は自分よりも巨額の持ち高を振り回し、マーケットメーカーの役割を果たすディーラーがごろごろいて市場全体が活気づいていた。 ■ポンド危機の攻防に息のむ 忘れられないのは1992年の9月。英国がジョージ・ソロス氏率いるヘッジファンドの英ポンド売りに耐えられず、欧州の為替相場メカニズム(ERM)離脱を決めたころだ。ある日、東京市場でイングランド銀行(英中央銀行)がポンド防衛のため、日銀に委託してポンド買い・円売り介入をしたと噂された。一方、ロンドン市場でソロスファンドは売り崩しを続け、他の投機筋も追随し英ポンドは暴落した。 投資家が中央銀行に歯向かうなどということは通常は考えられない。だがERM離脱によって英国の金利は大幅に低下し、通貨安もあってその後の英国経済は回復に向かった。政府・中銀の無理な政策を市場メカニズムが是正した好例といえ、ファンド勢の動きに感心したのを覚えている。 コンピューターの草創期で取引記録は完全には機械化できず、損益も手計算でリアルタイムでの把握は難しかった。それが不正やミスの温床になったわけで、昔を懐かしんでもしょうがない。ただコンプライアンス(法令順守)強化など規制でがんじがらめになった結果、市場のダイナミズムは間違いなく失われた。 「毎日が戦争」の感覚で混乱の極みのような生活を続けていたにもかかわらず、疲れたとか嫌になったとかの記憶はない。大きな損失を抱え途方にくれたことは何度もあったが、ディーリングは結果がすべて。学歴も派閥も関係ない極めてフェアな世界で奮闘できたのは幸せだった。 外為市場はスポーツに例えると、地元の野球少年がメジャーリーガーと一緒にプレーするようなもの。「伝説のディーラー」と呼ばれる人は尊敬できる人が多く、いつか自分もそうなりたいと励みになっていた。理屈やデータの通りに動くコンピューターやAIの時代はそれはそれでフェアなのかもしれないが、淡泊すぎる。 ■大局観を忘れずに そんな中でも為替でディーリングを続けるとすればどんなスタンスで臨むべきだろうか。とりあえずは世界の大まかな流れを忘れないようにしたい。 ニューヨークで勤務した1990年代後半は米経済が絶好調だった。政策を担っていたのはグリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長とルービン財務長官、サマーズ財務副長官という最強トリオ。折しもWindows95が発売になり、IT(情報技術)化の波が押し寄せていた。業種を問わずパソコン導入が加速した。米国のバロンズ誌が毎年出す景気予測で、エコノミストらの「好景気は続かない」という主張がことごとく外れていく。それまでと違うレベルで設備投資の革命が起きていると感じた。 「本場」に身を置くことで近視眼的な見方から離れ、大局観を得るのは大切だ。インターネット全盛の現代はネット経由で様々な情報を入手できるが、それでも「百聞は一見にしかず」の真理はまったく変わらない。 リーマン・ショックを境に産業の主役が金融からITに移ったことも重要だ。金融はITと親和性が高く、リーマン・ショック前までは最先端の技術を誇る業界だった。しかし、金融危機後は名だたる金融機関が公的資金で救済され金融規制に縛られると業界全体が萎縮した。現在はアップルやグーグルなど大手IT企業の取り組みのほうがずっと面白く金融は背中を追いかける格好になっている。金融とITをあわせた「フィンテック」でファイナンスは前だが、実際にはITの後じんを拝しているとの印象が否めない。 足元のAI活用はコンプライアンス違反を避けるためとの後ろ向きな理由もある。機械なら基本的に不正はしない。ヒューマンエラーによる訴訟リスクを抱え込まずに済む。金融は徹底的にリスクを抑える方向になり、生産性を抑えた。 ■次の活路は新興国市場に AI活用の大きな流れはおそらく止められない。万難を排して最先端の技術革新をもう一度金融に取り入れないと、金融業界の復活はないだろう。 金融が他の産業と異なるのは決済をつかさどっている点だ。決済は最も大切な社会インフラの1つで、多額の資金を安定的に決済することで社会全体の安定を下支えする。流動性や安定性は他の産業とは比較にならないほど大切で、流動性を担保する意味は大きい。1回あたりの取引金額から考えてもリスクが取りにくい環境になっているはずなのに、機械化以前のほうがリスクが少なかったように思えるのは昔のほうが流動性が厚かったからだろう。 昨年初めにかけて仮想通貨がブームとなったが、投機性だけに焦点が当たると通貨としての必然性は失われる。為替を含めた決済システムを仮想通貨の基幹技術「ブロックチェーン」に変えるといった話でも、市場流動性を確保する方向に持っていくなどの努力を忘れてはならない。 昨年の「トルコリラショック」などを振り返ると、新興国では短期金融や為替市場が未整備で、為替差損リスクヘッジの手法や投資情報など主要国では当たり前のインフラがまだ整っていないと痛感した。新興国経済は世界全体の約半分を占めるまでに拡大しているのに金融市場は脆弱で、流動性は異様に低い。 裏を返せば、新興国市場での流動性創出は金融業界に残された数少ない課題だ。経済成長率が1~2%の先進国でできることはほとんどなく、もはやリターンも期待できない。次の活路は新興国に求めるべきだろう。 (随時掲載)

外為市場の透明性向上へ「行動ルール普及を」 QUICKセミナー

QUICKはこのほど、東京都内で「外国為替セミナー」を開いた。金融機関や事業会社の担当者80人が参加し、日銀と東京外国為替市場委員会が普及を目指す外為業務の統一ルール「グローバル外為行動規範」について理解を深めた。 日銀為替課長の廣瀬敬久氏と東京外国為替市場委員会議長の星野昭氏(三菱UFJ銀行シニアフェロー・金融市場部共同部長)が基調講演した。 廣瀬氏はこの1年で世界の多くの市場参加者が行動規範の遵守を表明したことなどを説明。今後も各国・地域の中央銀行と民間の外為市場委員会が一体となって、幅広い市場参加者への働き掛けを続けていきたいと強調した。 星野氏は市場の流動性を高めるため、規則を厳しくするだけでなく行動の推奨例を示すことで、「過去1年間に幅広い投資家や企業からの賛同を集めてきた」と述べた。その上で同規範に賛同する企業を増やすことで、市場の公平性を一層高めていきたい」と呼びかけた。 東京外国為替市場委員会の星野議長(三菱UFJ銀行シニアフェロー・金融市場部共同部長) パネルディスカッションでは運用会社からみた外為行動規範について、野村アセットマネジメントの大熊貴之シニアトレーダーは、行動規範に賛同を示すことで「顧客や市場からの信頼を得ることができる」と話した。また、バークレイズ銀行の大澤孝元・市場営業本部長は「今後、超高速取引(HFT)業者などにも賛同を呼びかけ、公正な市場をつくる必要がある」と課題を示した。EBSディーリングリソーシスジャパンの大木一寛リージョナル・セールス・マネージャーは「様々な工夫を重ねて適正なベンチマーク(取引指標)の提供に努めている」と話した。 写真左からEBSディーリングリソーシスジャパンの大木氏、野村アセットマネジメントの大熊氏、バークレイズ銀行の大澤氏、日経ヴェリタスの小栗氏 〔日経QUICKニュース(NQN)〕

現物債に「刻み幅縮小」待望論 0.001%単位なら取引活発に?

債券市場の一部で現物債の取引単位を小さくするよう求める声があがっている。日銀は7月の金融政策決定会合で緩和策の修正を決めたが、以降のオペ(公開市場操作)の姿勢などから「金利の変動幅はしばらくは広がらない」との受け止めが拡大。呼応するように先物の動きは徐々に鈍り、現物債の売買は成立しづらくなった。そんな中で少しでも取引を活性化させ、市場機能を回復する策として「刻み幅縮小」待望論が出てきたわけだ。 唱えられているのは、業者間の取引を仲介する日本相互証券で利回りベースで0.005%刻みとなっている現在の現物債の取引値幅をより細かくするというものだ。 足元では債券先物の日中値幅がしばしば10銭を下回り、5銭以下の日もある。「債先が10銭動けば現物の新発10年債利回りは0.010%程度、3~4銭なら0.003~0.004%程度上下するイメージ」(国内証券の債券ディーラー)だ。もし債先が3~4銭の値幅で膠着すれば現行の0.005%刻みでは厳しい。刻み幅を0.001%単位にすれば取引機会が増え、市場の厚みが戻るとの見方が出ている。 取引所や日本相互証券などのようなブローカー(仲介業者)を通さない金融機関同士の相対取引では既に、刻みを小さくしているケースが多い。日本相互証券では29日、約2カ月ぶりに新発10年債の取引が成立しなかったが、相対取引では「10年債は0.097~0.098%といった利回りで、数百億円規模の売買が成立していた」(国内金融機関)という。トレーディングシステムがお互いに対応しているのなら特に問題はない。投資家の認知度が高い日本相互証券でも同様の取引ができれば、商いがより活発になるとのシナリオには、確かに一理ある。 問題は、刻み幅が細かくなればなるほど取引1回当たりの収益率が下がりかねないことだ。外国為替市場ではかなり前から主要通貨の取引で刻み幅が小さくなり、極めて狭い範囲で頻繁に売り買いを繰り返す高頻度取引(HFT)が台頭。市場規模は天文学的な数字にまで拡大したが、相場の変動率(ボラティリティー)は下がり、収益をコンスタントに上げられる投資家はむしろ減少した。 日銀がボラティリティーを抑えながら市場機能の回復を目指しているのなら刻み幅の縮小は歓迎すべきことかもしれない。一方で仲介業者や投資家の体力を奪ってしまっては意味がない。 日本相互証券は日経QUICKニュース社の取材に対し「現時点で刻み幅の縮小は予定していない」と説明している。市場の中でも「相場の膠着で困っているどこかの金融機関が、自らに有利なように『ポジショントーク』を展開しているだけ」といった冷ややかな意見は少なくない。現実味はまだまだ薄いようだ。 【日経QUICKニュース(NQN) 片岡奈美】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

大取社長「国内勢シェア拡大、息長く取り組む」 (特集:日経平均先物30周年)3

取引開始30周年を迎える日経平均先物。商品、先物市場の使い勝手や魅力を一段と高めていくには何が必要なのか。特集の3回目(最終回)は、大阪取引所の山道裕己社長のインタビューをお届けする。 山道 裕己(やまじ・ひろみ)氏        1977年(昭52年)京大法卒、野村証券入社。07年専務、08年グローバル・インベストメント・バンキング部門CEO。2013年6月から現職。広島県出身   ■様々な投資家が参加してこそ良好な市場 ――大阪のデリバティブ市場の歴史を残す日経平均先物が30周年の節目を迎えます。 日経平均先物は株価指数先物という商品のなかで、取引規模としても世界トップ5に入るような商品となった。TOPIX先物もベンチマークとして世界の投資家の間で認知されるまでに成長した。歴史を紐解くと、1990年代に相場イベントが発生した際、日経平均先物などはいち早く動くため「悪玉論」が台頭して取引規模が縮小したこともある。多くの投資家に活用される商品となったのは先人たちの努力の賜物だろう。 ただし、まだまだ課題はある。株価指数オプションを含め、社会的認知度は道半ばだ。デリバティブ商品としての取引活用方法など、リテラシー向上への息の長い取り組みは続けていく。 ――具体的な取り組みは? 個人投資家向けに取引所のホームページの情報を拡充してきた。単に読み物を提供するだけでなく、最近は動画での講義などコンテンツを充実させた。取引の疑似体験ができるシミュレーターも提供しており、投資家のすそ野を広げる取り組みをしてきた。 中小証券や地場証券に対してはリスクマネジメントの活用策としての講習を続けてきた。すぐに成果が現れるものではないが、徐々にトレーダーの人数が増えるなど地道な努力が実を結びつつある。 国内の機関投資家に対しては受託者と委託者の双方に呼びかけて、年2回のセミナーを実施している。毎回100人以上の参加者が集まるほどだ。今後も様々なアプローチを続けていくつもりだ。足元ではゆうちょ銀行が日本を代表するプレーヤーになり、積極的にデリバティブでの運用をしている。 公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も運用の多様化に伴うリスク管理の強化策として株価指数先物の運用に向けた体制を検討・構築するとの方針を示している。今後はGPIFも実際に株価指数先物を活用していく段階だ。 コンピューターによる高頻度取引(HFT)が台頭し、米国ではトレーダーを多く抱えて自己売買を行う「アーケード」と呼ばれる主体もある。彼らは機械的な注文を出すというより、オプションと先物を組み合わせたストラテジーを組むなど独自の力を培って生き残ってきた。こうしたプロ集団の戦略講習会を開くなど、地道に参加者のすそ野を広げる活動もしてきた。 参加する投資家がHFTだけになってしまうと、マーケットは成立しない。短期、中期、長期と様々なタイプの投資家が存在してこそ良好なマーケットだ。多様な参加者がいなければマーケットのエコシステムは成立しない。   ■スピードよりもシステムの信頼性と公平性 ――世界的に取引システムの高速化も進んでいます。 現在のシステムは2年前の2016年に稼働した。注文を受けてから板登録し、通知を返すまでの処理速度はミリ秒(1000分の1秒)からマイクロ秒(100万分の1秒)の単位にまで上がっている。現状、次期システムに関する具体的な議論は始まってもいない段階だ。 処理速度を速めるのであれば、次はナノ秒(10億分の1秒)を目指すという段階だが、まずは、スピードよりシステムとしての信頼性や公平性を重視していくべきではないか。ナノ秒まで処理スピードを上げると、取引が可能な主体が極端に減る可能性がある。相場イベントがあった際に取引量が想定の2倍を超える場面なども出てきた。システム面での拡張可能性という観点も重要だ。なによりも最終投資家からみた公平なシステムづくりが大切だ。 ■コモディティ連動の商品などラインアップ拡充検討 ――海外取引所に比べて商品数が少ないとの指摘があります。 2018年にフレックスオプションを追加するなど拡充策は打ち出している。とはいえ、他の取引所に比べて商品ラインナップの少なさは課題だ。現状、大阪取引所の商品は日本の株式相場に連動したものがほとんどだ。今後はコモディティに連動した商品など幅を広げる方向で検討していきたい。 アジアでは中国のデリバティブ市場が活況だ。中国のコモディティ取引所は上海、大連、鄭州と3カ所に存在する。欧米の投資家にとって中国のマーケットは魅力的だろう。ただ、3年前のチャイナショック発生時のような流動性の枯渇への懸念や当局の締め付けへの警戒感も根強い。マーケットとしての信頼性が高いのは、日本としての優位点ではないか。5年後や10年後に向けての魅力的なマーケットを作り上げていきたい。まだまだ取り組むべき課題はたくさんある。 なによりも日本の個人投資家にはもっとデリバティブを活用してもらいたい。日経平均先物やTOPIX先物は商品として成長はしてきたが、取引のシェアの7割ほどは海外勢が握っている。相場にもよるが、運用手段としてもっとデリバティブの活用は可能だ。今後、市場全体の成長とともに国内投資家のシェア拡大に向けた施策を講じていく。 =おわり (聞き手は中山桂一、写真は片平正二)   (特集:日経平均先物30周年)1 大阪発祥、息づくコメ先物のDNA (特集:日経平均先物30周年)2 取引に厚み、個人と海外勢の需要つかむ ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

取引に厚み、個人と海外勢の需要つかむ (特集:日経平均先物30周年)2

取引開始から30周年を迎える日経平均先物。特集の2回目は、経済環境の変化や制度面の充実など、世界でも有数のデリバティブ商品に発展するまでの道のりを紹介する。 1988年9月3日の日経平均先物市場開設の様子(大阪取引所提供)   ■バブル崩壊後は低迷、アベノミクス相場で増加に拍車 1988年(昭和63年)に取引が始まった日経平均先物は、バブル崩壊後は売買代金が低迷していたが、2000年代に入ると日本株の好調さと歩調を合わせて増加傾向にある。リーマン・ショックが起こる1年前の2007年には年間の日経平均先物の売買代金が初めて500兆円を突破。日経平均ミニ先物やその他の先物関連を含めると15年には1400兆円に迫る状況となった。 日経平均先物の売買代金が増加している背景として、取引時間の延長や日本株が堅調なことに加え、高頻度取引(HFT)の影響が指摘されている。10年1月に東京証券取引所が東証次世代システム「arrowhead(アローヘッド)」を導入したのに続き、大阪取引所(OSE)は11年2月に新しいデリバティブ取引システムの「J-GATE」を導入した。J-GATE導入後、欧州系証券や米系証券の経由の短期売買が手口の上位を占め、商品投資顧問(CTA)などとみられる商いが活発で流動性が増している。 特に13年以降は日経平均先物、日経225ミニ先物を合わせると年間800兆~1000兆円前後で高止まりしている。12年12月に第二次安倍内閣が発足して始まったアベノミクス相場で株高の流れが強まる中、13年3月に黒田東彦元財務官が日銀総裁に就任して量的・質的金融緩和を導入した。政策的な後押しにより株高基調が定着したことが日経平均先物の商い増加に直結している。 ■ミニ先物が登場、個人や裁定取引などに裾野広がる 日経225ミニ先物の取引の開始(06年7月18日)は、投資家層の広がりを促した。日経平均先物(ラージ)の取引単位は日経平均株価の100倍のため、日経平均が2万2000円の時は220万円が最低取引単位(1枚)となるが、ミニ先物は10分の1の22万円が最低取引単位となる。取引単位と証拠金がラージの10分の1となるため、個人投資家が利用しやすくなった。また呼値がラージの10円に対し、ミニは5円と細かいため機動的な売買に向いている。さらに限月もラージの3カ月ごとに対してミニ先物は毎月存在するため、先物と現物の裁定取引を行う機関投資家の利用も多い。 ラージとミニを合計した売買代金ベースの年間取引シェアを見ると、17年に個人は13.6%となり、海外投資家(72.9%)に次ぐ2位。ミニだけなら19.6%のシェアとなっており、小口化で個人の普及に弾みがついたことが分かる。 ■夜間取引の時間拡大でさらに活況 1990年代後半、日本は大手銀行や証券などの経営破綻が相次ぐ金融不況の真っ只中にあった。ある投資家が「あの銀行は助かるのか」と心配になり、深夜に部下をその銀行の本店に向かわせたところ、帰ってきた部下は「夜なのに煌々と明かりが灯っていました」と報告した。経営破綻を避けようと深夜まで職員たちが対応にあたっていたのだろう。金融危機が深刻になれば翌日の東京株式市場はショックに見舞われると判断し、その投資家は急いでシカゴ市場で日経平均先物を売り、難を逃れたという。 日経平均先物は今でこそ日中、夜間で取引が行えるが、開始直後は日中取引だけだった。夕方からのイブニング・セッションが始まったのは2007年9月で、その後に段階的に時間が延長され、今のように翌朝5時30分まで取引できるようになったのは16年7月からである。前述した投資家も、OSEの夜間取引が1990年代に朝方まで延長されていればわざわざシカゴ市場に注文を出さなくて済んだはずである。 夜間取引には大きなメリットが2つある。1つ目は米国時間の経済統計やイベントなどの動きを踏まえて国内の投資家が夜間に取引できること。2つ目は海外投資家が母国市場の取引時間中にOSEの日経平均先物に注文を出せることである。東京市場の休日対応などの課題は残るが、取引時間はほぼ24時間対応となって利便性が増してきた。 ■3市場に上場する珍しい先物、OSEのシェアは7割 日経平均先物は、日経平均株価という1つの株価指数に対して複数のライセンスが与えられた珍しい先物だ。最も早く取引が始まったのはシンガポール国際金融取引所(SIMEX、現在のシンガポール取引所=SGX)で1986年9月。英ベアリング銀行の経営破綻を題材にした映画「マネートレーダー銀行崩壊」(99年公開)で、派手な半被を着た主人公のトレーダーがシンガポールで取引していたのは日経平均先物である。その後の88年9月に大阪証券取引所(当時)、そして90年9月にシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)と、3つの取引所に上場して現在に至っている。 CMEとSGX(当時SIMEX)は84年に相互決済制度(MOS)を締結した。現在、SGXで取引した日経平均先物はCMEでも取引が可能となり(逆も可)、日経平均先物の利便性は一段と高まった。その一方、OSEも時間延長などで海外投資家の取引ニーズに応えており、OSEによるラージ換算での日経平均先物の売買シェアは約7割と高水準を維持している。 ラージ・ミニといった商品の種類、取引時間などで、OSEの競争力は他の取引所と比べても遜色ない。日本経済が発展し、日経平均も上昇基調が続けば日経平均先物への国際的な需要は高まる。OSEの日経平均先物の取引状況が映し出すのは、文字通り日本株の魅力そのものである。 =続く (片平正二) (特集:日経平均先物30周年)1 大阪発祥、息づくコメ先物のDNA (特集:日経平均先物30周年)3 大取社長「国内勢シェア拡大、息長く取り組む」 ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

外為ディーラーは狩猟民族たれ by 小池正一郎氏(シリーズ:ベテランに聞く)

狩猟民族の心構えがなければディーリングには勝てない――。市場のベテランに相場との向き合い方を聞く「ベテランに聞く」の第2回はグローバルマーケット・アドバイザーの小池正一郎氏。外国為替市場の生き字引で円が変動相場制に移る以前から市場に関わってきた小池氏は、日本人が好むレンジ前提で相場の流れに逆らう取引の「待ちの姿勢」を批判する。そのままでは欧米投機筋などの執拗な順張りには到底太刀打ちできないという。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)編集委員=今晶】 小池正一郎(こいけ・しょういちろう)氏 1969年に長銀入行後、外国為替畑を主に歩き、2度のニューヨーク支店経験をもつ。長銀証券を経てスイスUBS銀行外国為替本部の在日代表に就いた後、米シティバンク・プライベートバンクに移籍。2006~15年に国際金融情報コンサルティング会社のプリンシパリス・日本代表を務め、現在にいたる ■徹頭徹尾アグレッシブなスタイル 高収益を目指すにあたって必要な心構えはいくつかあるが、その1つが「市場は狩猟民族が仕切る」との認識だ。著名投資家ジョージ・ソロス氏にせよ、ジム・ロジャーズ氏にせよ、そのトレードスタイルは徹頭徹尾アグレッシブだった。狙った獲物をどこまでも追いかけるように、相場の流れに乗る順張りを突き詰めてくる。 苦い経験がある。日本長期信用銀行(現新生銀行)のニューヨーク拠点でトレーダーをしていたときだ。ドルが対円で上げ始めた局面で、なじみの外国銀行ディーラーからレートを出すよう求められた。ドルの売りと買い双方のレートを示すと彼は買ってくる。しばらくするとまた彼から再びレートを出せと言われ「さらに買われると困るからややドル高にしよう」とレートを提示するとちゅうちょせずに買う。その後間を置かずに再び彼から呼ばれ、かなりドル高の水準を示したにもかかわらずたたみかけて買ってくる。 海外勢のこうした買いによってドルは上昇する一方だったが、売り手に回ったこちらは含み損でノックアウト寸前。「狩猟民族はこういうものか」と心底怖くなった。 足元では狭い範囲で売り買いを繰り返す機械取引の「HFT」が増えてきたものの、欧米勢の基本的なマインドは変わっていないはずだ。ここ数年だと2016年の英国による欧州連合(EU)離脱決定やトランプ相場などで一度動きが出ると、狩猟民族の強みをいかんなく発揮する。軽い気持ちで逆張りをすると大けがしかねない。 ■高いところにお金が流れる 相場予想をする際にまず押さえておきたいのは「高いところにお金が流れる」との原則だ。高い低いの判断基準は安全性と成長性、利殖性の3つ。安全性には市場規模の大きさや取引の自由度をあらわす「流動性」の概念を含む。 有事の際に円買いが進むのは、日本が国として安全だからではなく、円の流動性が高いためだと理解すべきだろう。利殖性は一般市民の目線で、名目金利から物価上昇率を差し引いた「実質金利」の高低が深くかかわってくる。 この原則を18年の相場に適用すると、米ドルと米国株が有望とみている。市場では米利上げが米景気を冷やすとの懸念がくすぶっているものの、米経済指標は今のところ堅調で、景気の腰は相当に強いのではないか。米株式相場の上昇局面はまだ続くと思う。 次に相場は生き物であり、勢いの強弱について常に意識しなければならない。例えば幼、青、壮、老の4段階に分け、現在どのレベルにいて基調転換の可能性がどの程度高いかを考えていく。市場は群集心理に左右されるので、参加者が何を注視しているのか、いち早く情報を得る努力も必要だ。 ■地球儀を眺める気持ちで視野を広げよ 「地球儀の上に立って世界を眺めろ」。いつだったか、米バンカース・トラスト(現ドイツ銀行)の名物ディーラーがこんなアドバイスをくれた。外為市場の中心はユーロの対ドル取引やドルの対円取引で、日本人に限らず円、ドル、ユーロの主要3通貨ばかり見てしまいがちだ。だが他にも収益源はいっぱいある。 2回目のニューヨーク赴任後、のちにソロス・ファンドのアドバイザーを務め、ソロス氏による1992年の英ポンド売りの舞台裏をよく知るリチャード・メドレー氏(故人)と親しくなった。メドレー氏がごく限られた人数向けに開いたパーティーで、デビッド・マルフォード氏(元米財務次官)などの「通貨マフィア」(通貨当局の事務方の幹部)に近づけた。ヘッジファンド業界のことも深く知り、視野が急速に広がった。メドレー氏がその後、調査会社を立ち上げ、市場に影響を与えたのは周知の通りだ。 インターネット全盛の現代は情報があふれていて、玉石の見極めはかなり難しい。既に通貨マフィアの時代ではなく、政府や中央銀行、民間金融機関はコンプライアンス(法令順守)の制約がきつく、昔のように独自に質の高い情報を得られることはなくなった。ただ、人でもメディアでもいいので、信頼できる情報源を1つでも作っておきたい。 個人的なおすすめは英エコノミスト誌だ。記事は長くて小難しいが、表紙などの風刺画に政治や経済、市場の本質がうまく表現されている。それを見るだけでも参考になる。 (随時掲載)  

「XTX」とは何者? 大量の日本株を売買、知られざる巨大ファンドの影響力

日経平均が2万2000円~2万3000円のボックス推移を続ける中、市場の一部ではある投資家に対する関心が徐々に高まっている。ロンドンに拠点を置く「XTXマーケッツ」だ。日本株の取引において巨額の売買を執行しているとされる。 この点に関してはパルナッソス・インベストメント・ストラテジーズの宮島秀直氏のレポートが参考になる。同氏によると「今年から欧州で参入した新鋭かつ巨大なマーケットメーカー。巨額の顧客注文に自己勘定で対応する点でも有名で、日本株式に対してはマーケットメイク型クオンツ戦略で毎日大量の日本株の売り/買い注文を出してきている」という。 XTXのサイト(https://www.xtxmarkets.com/)を確認すると、グローバル市場における1日あたりの総取引量は1200億㌦(約13兆円)に達するとしている。データセンターは世界中に40もある。取引の大半は為替が占めるようだが、強固な財務体質から株式売買でも大きな自己ポジションも取るようだ。1日あたりの日本株の取引額は優に1000億円を超え、相場が急変した今年2月には1日で5000億円も取引きしたとまことしやかにささやかれる。 高い技術力を背景に投資家同士の注文のマッチングに優れているほか「MiFIDⅡのマーケットメーカーへの規制内容が発表されたが、この新規制をかいくぐれる執行能力を提供し始めたため、欧米系のヘッジファンドの注文が集まっている」(宮島氏)。 マーケットメーカーとされる一方でXTX自体がHFT、ヘッジファンドとも定義される。日本における取引では主に米系証券2社、欧州系1社を経由しているとの見方もあった。「往復数千億円の売買代金を寄り付き、午後、引け前に分散しているもよう」という指摘も出ている。 いずれによせ大きなトレンドが発生しなければ、ボックス圏の中の上下だけでさやを抜くトレードが中心になると考えられる。結果的に足元でレンジ相場が続いている要因のひとつが、このあたりにもありそうだ。(岩切清司) ※QUICKデリバティブズコメントで配信したニュースを再編集した記事です。トレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。

【アルゴウオッチ】イベント連動型のドル売り退潮、トランプ氏につき合えず

米大統領の行動に対するアルゴ勢の感度が鈍ったのは1カ月ほど前からだった。米高官辞任など政権内の混乱を映すニュースにほとんど反応しなくなったほか、通商政策にかかわる報道を無視するケースが増えた。 トランプ氏が17日、ツイッターで示した「日本は環太平洋経済連携協定(TPP)に復帰するよう求めているが、2国間協議のほうが効果的だ」との認識にも反応薄だった。日米首脳会談が終わった後の日本時間19日早朝に実施された共同記者会見は、通商や為替に目新しい発言がなかったこともあって無風で終えた。 野村証券の高田将成クオンツ・ストラテジストは「米政治とシリアや朝鮮半島の情勢、貿易摩擦の『3大リスク』をよりどころとしたドル売りのローテーションは続いている」と指摘する。そのうえで「いずれの戦略も腰は据わっていない」とみている。 商品投資顧問(CTA)を旗振り役とするイベント連動型のアルゴリズム投機筋は3月までにドルの売り持ち高を膨らませてきた。ドル売りの余力は細っているはずだ。CTA主導でドル安が加速する公算は小さくなっている。 イベント連動型アルゴに代わって存在感を増しているのは高頻度取引(HFT)を得意とするヘッジファンドだ。HFTは小刻みに売り買いを繰り返す。相場はなぎのほうがよい。HFTが厚くなればさらに変動率は下がる。 将来の為替レートを予測する通貨オプション市場で、円相場の1カ月物の予想変動率は19日の11時時点で6.3~6.8%程度と、昨年の12月終盤~1月初め以来の低さだ。1月初めにかけてもHFTが台頭し、円は3円程度の狭い範囲で推移していた。円が4カ月前のような「レンジ相場」に戻る可能性は高まっている。 ■円相場と対ドル円相場の予想変動率   【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

【アルゴウオッチ】麻生財務相が辞任否定 変動率低下でHFT拡大

外国為替市場で円相場やユーロの対ドル相場といった主要な取引ペア(組み合わせ)の変動率が低くなってきた。トランプ米大統領がアルミニウムや鉄鋼の輸入制限で例外をもうけるなど寛容な姿勢を見せ始めたのに加え、国有地売却の決裁文書を巡って激震が走る国内でも麻生太郎財務相が自らの辞任を否定したことで金融・資本市場の緊張がひとまず和らいだためだ。低い変動率を好むHFT(コンピューター経由の高頻度取引)が拡大し、レンジ形成を促す流れになっている。 将来の為替レートを予測する通貨オプション市場で、円相場とユーロの対ドル相場の予想変動率は13日9時時点で1カ月物がそれぞれ7%台後半、6%台後半と、前月2月の米株価急落時などに付けたピークの10%台半ばと9%台後半よりも3%程度低い。 ■円相場と対ドル円相場の予想変動率 2月の米株安のきっかけの1つだった米金利上昇への警戒感も足元では緩んだ。米株式投資家の不安心理を測る指標とされるVIX(変動性指数)は前日12日の終値が15.78と、2月に40を一時超えていたのに比べればだいぶ落ち着いている。 HFTはマイクロ秒(100万分の1秒)以下の単位で小刻みに売り買いを繰り返す。値動きは狭ければ狭いほど都合がよく、水準はあまり関係がない。いったん取引規模が膨らめばそこで売買が交錯し、相場は膠着感を強めていく。もし円高・ドル安方向でHFTが席巻すれば、円は高値圏に定着することになる。 VIX安定が映す投資家のリスク選好回復は本来、日本から欧米などへの資金シフトを促すはずだが、国内では学校法人「森友学園」を巡って政治状況が緊迫。「国会空転の長期化や内閣支持率の低下で安倍晋三政権とアベノミクスが動揺すれば株安・円高に発展する」(SMBC日興証券の野地慎・チーフ為替・外債ストラテジスト)との懸念が消えていない。 国内の機関投資家は年度末でもあり、新規の外債運用には及び腰のようだ。半面、世論調査の結果が厳しくなるまでにはタイムラグが生じると考えられる。 JPモルガン・チェース銀行の佐々木融・市場調査本部長は「海外ではまだ森友問題を深刻にはとらえていない」と話す。麻生財務相が前日、自らの進退について「考えていない」と答えた影響もあるのだろう。逆に麻生氏の辞任が現実味を帯びてきた場合には、HFTがレンジ前提のディーリングから撤退し、相場が大きく振れる展開が予想される。 【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

膠着強める円相場 乏しかったサプライズ、HFT席巻で振れにくく

2017年の円相場は膠着感を強めたまま終わろうとしている。年間値幅は11円28銭(107円32銭~118円60銭)と、昨年16年の22円70銭(99円ちょうど~121円70銭)の半分以下しかない。16年に日銀のマイナス金利政策導入や英国の欧州連合(EU)離脱決定、「トランプ相場」などのサプライズ(驚き)が相次いだのに対し、17年は静かだった。小刻みに売り買いを繰り返すHFT(高頻度取引)の席巻もあって相場は振れにくくなっている。 将来の為替レートを予測する通貨オプション市場で、円の対ドル相場の予想変動率は29日8時時点で6.0~6.7%程度と、今年の最低水準で推移している。10月以降の直物相場は1ドル=111~114円台のレンジを結局抜け出せず、18年にかけてどちらかに大幅に振れるとの展望もまだ描けない。米追加利上げの可能性が意識される2カ月物、3カ月物は高めだが、それでも7%台にとどまる。 需給面では日本の貿易黒字を背景にした円高圧力がコンスタントにかかってくるものの、国内輸出企業が円の手当てを急いで円高・ドル安が加速する可能性は今のところ低い。日銀が18日に発表した12月調査の企業短期経済観測調査(短観)全容によると、事業計画の前提となる2017年度通期の想定為替レートは大企業製造業で1ドル=110円18銭だった。輸出企業が多い自動車と加工業種はそれぞれ110円20銭、110円08銭といずれも足元の112~113円台よりも高い。落ち着いて円買いの先物予約や円のコール(買う権利)オプションを通じた為替リスク回避(ヘッジ)を進められる状況といえる。 そんな中で欧米ヘッジファンドなどの投機筋のHFTが幅をきかせている。HFTに用いるコンピューターは今年、インターネット上の仮想通貨ビットコインなどのマイニング(採掘)競争によって格段に速くなった。マイクロ秒(1マイクロ=100万分の1)を超えるスピードで次々と注文を出し、円高、円安双方向に厚い壁を作る。 極めて狭い値幅で勝負するHFTは、相場が動かなければ動かないほど都合がよい。狭いレンジに収まる円相場がHFTのさらなる流入を招き、変動率を押し下げるサイクルも生まれている。 18年はどう見通すべきだろうか。市場参加者の多くは米金融政策をメインテーマとして挙げるが、物価上昇率の鈍さから「米連邦準備理事会(FRB)の利上げは、してもゆっくり」との観測が強い。そうなると日米金利差の拡大余地も限定的で、リスクに敏感な国内投資家などが円売りを膨らませるためのハードルはかなり上がる。 円の低変動率を嫌気する国内の個人投資家の一角は既に取引を離れ、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨に移っているようだ。今も外為証拠金(FX)取引を続けている個人投資家は、比較的狭いレンジの中で相場の流れに逆らう「逆張り」の手法が多い。円相場の膠着は長期化するかもしれない。 【日経QUICKニュース(NQN ) 今 晶】 ※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。

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