「南欧リスク再燃」3人に2人が懸念 QUICK月次調査<外為>

南欧の政局リスクへの警戒感がなおくすぶっている。QUICKと日経ヴェリタスが共同で実施した外国為替市場関係者への調査では「リスクが再燃する」とみている人の割合が67%に上った。5月下旬に世界を揺るがしたイタリア政局の混乱は、新政権の樹立をきっかけにひとまず収まり、欧州中央銀行(ECB)は14日の理事会で量的緩和策を年内に終了することを決めた。だが油断は禁物だ。再び問題が顕在化すれば、ECBの金融政策の正常化プロセスが遅れかねない。 月次調査はECB理事会の直前の11~13日に実施。調査対象は金融機関や事業会社の外為関連業務の担当者で、75人が回答した。 イタリアはポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」と極右「同盟」による連立政権の発足で、政治の空白をなんとか回避。イタリア国債の値動きは小康状態を保っている。またスペインはイタリアに比べて相対的に経済・金融面の不安が小さいとされる。 調査で南欧リスクの先行き見通しを聞いたところ「このまま収束していく」との回答は29%にとどまり、市場関係者の大半は警戒を緩めていない。「ギリシャやポルトガルなど周辺国にリスクが広がる」と一段の混乱を心配する声も一部にあった。 南欧リスクの行方をどうみるか 懸念されているのは、秋に控えるイタリアの2019年度予算の審議が一筋縄ではいきそうにない点だ。 ポピュリズムのコンテ新政権が財政拡張を唱えているのに対し、「財政ルールを重視するEU側が簡単に見過ごすことは考えられない」(欧州情勢に詳しい、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミスト)という。EUとイタリアの関係が悪化すれば、イタリア国債への売りが膨らみ利回りが上昇(価格は下落)する事態を招くのは必至だ。 月次調査で、ECBが最初に利上げする時期はいつなのかを聞いたところ、回答者の38%が「19年7~9月」、27%が「4~6月」と予想。「1~3月」はわずか11%で、全体のざっと6割が、利上げは来年の半ば以降にずれ込むとみていた。 記者会見でドラギ総裁は量的金融緩和を年内に終了する一方、少なくとも19年夏までは現在の金利水準が維持されるとの見通しを示した。イタリア問題の展開しだいでは、ECBの金融正常化の足取りはさらに重くなる可能性がある。 マネーパートナーズの武市佳史チーフアナリストは「それほど大きな危機に発展せずに済んだとしても、問題がくすぶり続けるだけで金融正常化は遠のくのではないか」と指摘。当面はユーロに売り圧力がかかりやすい地合いになるという。 一方で、19年中の利上げ実施を前提に、「向こう1年は、ユーロは対ドル、対円とも堅調に推移する」(運用会社)との見方もある。 1年後のユーロの対ドル相場の予想を聞くと「1ユーロ=1.20~1.25ドル」が31%、「1.25ドル超」11%と、足元の実勢よりユーロ高・ドル安の方向を予想する声が目立った。最も多い回答は「1.15~1.20ドル」(32%)で、1.15ドルを下回るユーロ安を予想しているのは25%だった。 不透明な南欧の政局リスクをうまく封じ込め、ユーロを安定させることができるかどうか、ドラギ総裁の手腕が引き続き試される。 (QUICKナレッジ開発本部 大谷篤) ¥  $  €  £ 毎月定点調査している為替相場見通しによると、全回答者の平均の米ドルの対円相場は6月末に110円08銭、8月末は110円41銭、11月末には110円59銭。ユーロは同じく、6月末に1ユーロ=129円88銭、8月末は130円52銭、11月末には131円25銭と緩やかに円安・ユーロ高になるとみられている。ユーロの対ドル相場は1.18ユーロ、1.18ユーロ、1.19ユーロの予想。足元の実勢レートと比べてユーロ高水準で推移するが、上値は重い。 金融機関の外為業務担当者の見通しは、6月末に1ドル=110円12銭と、5月調査(109円93銭)から円安方向にシフトした。前月比で円安が予想されるのは3カ月連続で、予想が110円以上の水準となったのは1月調査(111円26銭)以来5カ月ぶり。3カ月後の8月末には110円31銭、6カ月後の11月末には110円63銭と、ほぼ横ばいの予想だった。今後6カ月程度を想定した注目の変動要因は、円・ドル・ユーロすべてが「金利/金融政策」で、次いで「政治/外交」となっている。 ※日経ヴェリタスの17日付記事に一部、加筆しています。Qr1などQUICKの情報端末では月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。

持ち合い株の縮減に期待 「市場活性化に効果」が7割 QUICK月次調査<株式>

QUICKがまとめた6月の月次調査<株式>によると、株式市場関係者は持ち合い株の削減などコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改定が株式市場の活性化に効果をもたらすと概ね期待を寄せていることが分かった。調査期間は6月5~7日。証券会社および機関投資家の株式担当者154人が回答した。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表している。 東京証券取引所は1日、コーポレートガバナンス・コードの改定版を発表した。改定は株式市場の活性化に効果があるのか、株式の市場関係者に聞いた。取引先などと株式を持ち合う政策保有株の縮減については、「効果がある」が20%で「やや効果がある」の56%を合わせると7割超に達し、期待が高かった。ただ、「効果なし」の回答も20%あり、懐疑的にみている側面も浮き彫りになった。 政策保有株の縮減を阻む最大の要因については、「取引関係への影響」が34%と最も多く、次いで「経営者の保身や実質的な買収防衛策」が22%、「日本的経営慣行」が21%と続いた。 改訂を受けてユニー・ファミリーマートホールディングス(8028)や、イオン(8267)など2月期決算企業の一部には持ち合い株を削減する動きもみられる。 また、取締役会の実効性を高めるには何が最も必要かを聞いたところ、「取締役・取締役会評価の厳格化」(40%)との指摘が目立った。「社外取締役に占める企業経営経験者の比率を高める」が18%、「社外取締役の比率を高める」が13%と続いた一方、「女性や外国人など取締役の多様化」を挙げる声は9%にとどまった。 ※「QUICK月次調査<株式>」はヒストリカルデータも含めて、QUICKの情報端末からダウンロードできます。

米長期金利の上昇余地小さい 利上げ織り込み、年末3.07%に QUICK月次調査<債券>

米長期金利の目先の上昇余地は限られる――。QUICKが4日まとめた月次調査<債券>によると、債券市場では米10年物国債の利回りは2018年末に3.07%になると予想されている。足元の米景気は堅調だが、先行きは減速するとの見方が多く、長期金利が3%を超えて大幅に上昇することはないとの読みが大勢だ。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。今回の<債券>の調査期間は5月29~31日。回答者数は140人。 米景気の改善と米利上げ観測を背景に、米10年物国債利回りは5月中旬に3.1%台と6年10カ月ぶりの水準に上昇(債券価格は下落)した。その後は欧州政治の不透明感の台頭をきっかけに長期金利は急落。2.7%台に低下する場面があった。足元で金利は反発しているが、再び上昇基調を強めるとの見方は少ない。 ひとつは、この先の米連邦準備理事会(FRB)による利上げを市場がかなり織り込んでしまっていることだ。「すでにフェデラルファンド(FF)金利について、2019年末までに3%程度(中立金利水準)への引き上げがマーケットに織り込まれている。これ以上の米利上げ観測の高まりを背景にした米金利上昇は限定的」(信託銀行)という。「FRBは短期金利を上げ続けるものの、長期金利は容易には上昇しない。むしろ外部要因から、3%を多少超えるあたりが限界ではないか」との声も出ている。 米景気の先行きも曲者だ。2009年7月に始まった米景気の拡大局面は今年7月で10年目に突入する。トランプ大統領の大型減税の効果が下支えするが、いつまでも我が世の春が続くとは限らない。月次調査によると、米景気が後退(リセッション)局面に向かう時期について「2019年前半」との回答が22%、「2019年後半」が29%を占めた。「18年内」の2%を加えると、半数以上が来年末までの景気後退局面入りを織り込んでいることになる。 「米利上げの影響がラグを伴い顕在化し、2019年前半に米国経済は軽微ながらリセッション入りする」(証券会社)。米長期金利については「今年の秋口にいったんピークをつけ、来年以降の景気減速とそれに伴う利上げペース鈍化への思惑から年末にかけてやや落ち着く」(信託銀行)というシナリオだ。 また、最近は米長期金利の上昇をきっかけにトルコやアルゼンチンなど一部の新興国の通貨が大幅に下落した。この傾向が続くと、どこまで実体経済の悪化が広がるのか。債券担当者に聞いたところ、最も多かったのは「一部の新興国に限定される」で64%。「先進国にも悪影響が広がる」が19%で、「新興国全体に広がる」が16%だった。 市場からは「外貨準備の蓄積に伴い、新興国の対ドルに対する耐久力も増してきている。自国通貨安に伴う経済への悪影響は以前より緩和されつつある。他方、トルコ、アルゼンチンのような政治的運営力が乏しい国は注意」(証券会社)との声があった。「米長期金利上昇の影響が一部とはいえ、外貨調達構造の弱い国に表れ始めた以上、更なる利上げが新興国や財政構造の弱い国に悪影響を及ぼすことは想定しておかなければならない」(投信投資顧問)との意見もあった。 ※Qr1などQUICKの情報端末では、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。

米利上げ「4回」の予想増える 景気後退は「19年前半」3割、QUICK月次調査<外為>

米経済指標の改善や原油高を受け、米連邦準備理事会(FRB)による利上げが進むとの思惑が強まり、米長期金利が上昇している。米10年物国債利回りは足元で約6年10カ月ぶりの高い水準を付けた。米国の利上げペースは加速するのか。外国為替市場の関係者を対象にQUICKがまとめた5月の月次調査によると、18年の米国の利上げ回数は「3回」が最も多く全体の5割を占めた一方、「4回」予想が4割に増えた。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。今回の月次調査<外為>の調査期間は5月14~17日。 ※Qr1などQUICKの情報端末で、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。 18年に入りFRBはすでに3月に利上げしている。この3月を含め年内に何回利上げするかが市場の焦点になっている。市場では「年内計3回以上の利上げを織り込みつつある。6月のFOMCでドットの上方修正があるかに市場の関心が集まろう」(証券会社)との声があった。「米国での税制改革の実施や、高率関税適用による輸入物価上昇などを受けて、物価上昇率が高まれば、利上げペースは市場の想定よりも速まる可能性もある」(銀行)との指摘もあった。 2009年7月から拡大を続けている米景気は、トランプ政権の大型減税によって先行きも好調を維持するとみられる一方で、FRBの利上げ継続が逆風になる可能性もありうる。では、先行き米景気が後退を始めるのは、いつごろだと予想するか。市場関係者の回答で最も多かったのは「2019年前半」で31%、次いで「2019年後半」で23%、「2020年前半」で20%と続いた。 米景気後退なら円高・ドル安が進行 仮に米景気が後退した場合、ドル円相場はどのくらいの水準になるかとの問いには、最も多かったのは「95~100円」と「100~105円」が34%で、現在の水準より円高の100円前後を予想する回答が多かった。 市場関係者からは「今秋に中間選挙を控えたトランプ政権が『米国第一』の姿勢を強め、日本を含めた世界経済全体に悪影響が及ぶような政策を発動したり、対米貿易黒字国の通貨が減価することに対して難色を示したりすれば、円安が進まない可能性もある」(銀行)との声があった。 「特に原油価格の高騰と朝鮮半島の政治イベントによる急激な円高の発生には留意しておきたい」(その他)といった指摘や「日銀のコミュニケーション次第では一気に円高に振れるリスクがある。とくに黒田日銀総裁が雨宮副総裁とともに正常化を模索する可能性には注意が必要」(投信投資顧問)などの意見もあった。 新興国通貨への影響は「一部に限定」、心配なのはトルコ  米長期金利と米ドルの上昇を背景に、トルコやアルゼンチンなど一部の新興国の通貨が下落した。この傾向が続いた場合、新興国にどのような影響をもたらすかと聞いたところ、「資金流出や通貨下落は一部の新興国に限定される」が7割を占め、「資金流出や通貨下落が新興国全体に広がる」が23%となった。 市場関係者からは「短期的には、資金流出や通貨下落が新興国全体に広がることはないが、2019年以降については、米国の利上げペースやインフレ動向次第で、広がる可能性が高まる」(投信投資顧)、「むしろ過剰流動性によって好景気を謳歌した中国こそ、米国の金利上昇の悪影響をかなり受けるものと警戒している」(その他)などの指摘もあった。 具体的に、資金流出や通貨下落の影響が大きい国・地域はどこかという質問には、「トルコ」(43%)、「アルゼンチン」(27%)、「中南米」(22%)、「ブラジル」(18%)、「南アフリカ」(10%)などが挙がった。 市場では「アルゼンチンやトルコの通貨が下落しているのは、両国ともインフレに直面しており、高水準の債務残高を抱えるなど、固有の問題があるため。一方、多くのアジア諸国は、過去に比べて財政収支や経常収支が改善している。通貨安がアジア諸国に波及し、金融市場全体に動揺が広がる可能性は低い」(投信投資顧問)といった指摘もある。

株式市場関係者、安倍内閣支持率7割超す、QUICK月次調査<株式>

官僚の相次ぐ不祥事で安倍内閣の支持率が43%(日本経済新聞社とテレビ東京による4月27~29日の世論調査)と低迷する一方、国内の株式市場関係者の支持率は7割を超えたことがQUICKの月次調査<株式>でわかった。ただ、政策を支持するより総裁交代に伴う日本株市場低迷のリスクを警戒し消去法的に支持率が伸びた面もあったようだ。調査期間は5月8~10日。証券会社および機関投資家の株式担当者158人が回答した。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表している。 世論調査に比べて高い支持率、その理由は…… 今回の調査では安倍内閣の先行きや株式市場にとって望ましい次の首相などにについて聞いた。安倍内閣を支持するか、との質問では「積極的に支持する」が28%、「どちらかといえば支持する」が46%と「支持する」との意見が7割以上を占めた。支持すると回答したある証券会社は「ポスト安倍候補は、総じて財政再建重視で緊縮的な財政運営を行うとみられ、総裁交代は景気や株価を下押しする懸念がある」と指摘する。 一方、「どちらかといえば支持しない」が17%、「全く支持しない」は9%にとどまった。市場では「安倍政権は、第三の矢を全く実現できておらず、早期退陣が望ましい。日本の直面する喫緊の課題は憲法改正などではない」(投信投資顧問)という声もあった。 高い支持率を集めた背景には、安倍首相の退陣に伴いアベノミクスの終焉を嫌気した海外投資家の日本株売り、日銀の出口戦略や緊縮財政への警戒感から日本株相場が低迷するといったリスク回避の意向が浮かび上がった。市場関係者からは「ポスト安倍」の候補が見当たらないといった声もあり、消去法的に支持する向きが増えた面もあったようだ。 安倍内閣の3選は6割超、退陣なら日本株相場は調整か  安倍内閣の先行きを聞いたところ、「(9月の)自民党総裁選で三選される」が65%と最も多かった。仮に総裁選までに安倍首相が退陣した場合の株式相場への影響を聞いたところ、「しばらく調整局面に入る」が49%と約半数を占めたものの、「一時的な調整があるが、上昇傾向を取り戻す」が34%と見方が分かれた。 株式相場にとって次の首相は誰が望ましいか質問したところ、「安倍晋三(続投)」との声が64%と最も多かった。次いで「小泉進次郎」が14%だった。現実味は乏しいものの、進次郎氏に対する期待は強く、市場では「変化を期待する株式市場では若さもある小泉進次郎氏が望ましい。国民人気も高く、実現すればアベノミクスを上回るような経済効果が生じても不思議ではない」といった声もあった。(敬称略) 小泉進次郎氏 ※「QUICK月次調査<株式>」はヒストリカルデータも含めて、QUICKの情報端末からダウンロードできます。

債券市場に一種の諦めムード? QUICK月次調査、みずほ上野氏が読み解く

再任された黒田東彦日銀総裁の新しい任期が、4月9日から始まった。これから5年間の最大のテーマは金融政策の正常化だという声が、市場の内外で聞かれている。だが、日本経済の実力や国民の物価観との対比であまりにも高すぎる「物価安定の目標」2%が、レンジの形に変えられて柔軟化されたり、1%に下方修正されたりするようなことは、少なくとも安倍首相が在任している間はきわめて難しいだろう。仮に首相が交代して「異次元緩和」に批判的な政治家が後継者になる場合でも、正常化を妨げる大きなハードルとして、円高急進行のリスクが立ちはだかる可能性が高い。1月9日に日銀が行った長期国債買い入れ減額に対する為替市場の反応などから、債券市場関係者はその点を痛感したのではないか。  4月の日銀展望レポートからは、2%目標達成時期の見通しである「19年度頃」という文言が削除された。だが、債券市場はこれを冷静に受け止めた。物価見通しに自信が持てない中、さらなる達成時期見通しの先送りと連動した「追加緩和ゲーム」の再開を日銀は事前に回避しようとしたのであり、金融政策の正常化に向けて一歩踏み出したわけでは全くない。追加緩和をできるだけ回避しつつ「粘り強く」日銀が金融緩和を続ける、それは事実上「エンドレス」なものになっているという状況は変わっていない。 そうなると、健全な価格形成という最も重要な点で機能の低下が著しい債券市場では、時間の経過とともに、あきらめムードが広がりやすい。 1日に発表された4月のQUICK月次調査<債券>では、黒田日銀が展開している緩和手段の評価が行われた。2%の物価目標に関しては、「不適切」43%と「妥当」40%がほぼ拮抗。すでに海外の市場参加者にも浸透した2%の物価目標をいまさら引き下げるわけにはいかず、もし引き下げれば円高が加速しやすいという点も念頭に置かれた回答の分布なのだろう。 筆者が最も驚かされたのは、長期金利ターゲットや大規模な国債買い入れの評価である。長期金利ターゲットについては、「妥当」が43%で最も多く、「不適切」は35%にとどまった(「どちらともいえない」が22%)。債券市場の値動きを強く制約しており、しかも景気・物価への刺激効果が乏しいとみられる手法について、4割を超える債券市場関係者が是としたわけである。長期国債買い入れについても、「妥当」が54%で最多。「不適切」は24%にとどまった。ちなみに、「ETFの買い入れ」は「不適切」が43%で多数派なのだが・・・。株式市場のゆがみや日銀のバランスシートへの信用リスクの取り込みには反対しつつも、債券市場の機能「封殺」は容認するという、あきらめ的な現状追認の、やや自虐的な感さえ漂う回答分布である。 もっとも、それらの政策手段が今後どうあるべきかという点では、長期金利ターゲットの引き上げが46%の支持を得たほか、国債買い入れの現行ペース比での減額が82%という圧倒的な支持を得た。債券市場の機能が少しでも改善してほしいという要望あるいは願望は、債券市場の中にまだ十分残っていると、前向きに受け止めることにしたい。(みずほ証券金融市場調査部チーフマーケットエコノミスト 上野泰也) ※『黒田日銀、やはり不評のマイナス金利 「2%物価目標」は評価分かれる QUICK月次調査<債券>』もあわせてお読みください。 ※Qr1などQUICKの情報端末では、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。また、月次調査の結果を基に市場関係者の見方をまとめた【月次調査レビュー】を配信しています。

黒田日銀、やはり不評のマイナス金利 「2%物価目標」は評価分かれる QUICK月次調査<債券>

2期目に入った黒田日銀。市場関係者は金融政策の手腕をどう評価しているのか。QUICKが1日まとめた月次調査<債券>によると、債券担当者の半数以上がマイナス金利について不適切とみており、解除すべきとの声が7割近くにのぼった。4月の「QUICK月次調査<債券>」※では、これまでの金融政策の評価と今後について聞いた。調査期間は4月24~26日。回答者数は140人。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。 黒田東彦氏が日銀の総裁に就任したのは2013年。1期目の5年間は大規模な金融緩和を推し進めてきたものの、就任当初に2年程度を目安としていた2%の物価目標は達成できなかった。債券担当者に日銀の金融政策・手段に対する評価を聞いたところ、最も不評だったのがマイナス金利だった。マイナス金利の導入は「不適切」だったとの回答が65%を占めたうえ、今後についてはマイナス金利を「解除すべき」との回答が66%に達した。 ETF(上場投資信託)の買い入れについても「不適切」だったとの見方が43%を占め、今後については「減額」すべきとの回答が68%と半数を超えた。国債の買い入れは妥当だったものの、今後は現行よりも買い入れペースを減額すべきとの回答が82%を占めた。 半面、2%の物価目標は「不適切」との回答が43%、「妥当」が40%と評価が割れる結果となった。 黒田総裁の1期目について100点満点で評価してもらったところ、単純平均で58.5点だった。最も多かったのは70点で、落第点とも及第点ともいえる微妙な採点結果。ちなみに、外為市場関係者の月次調査で同じ質問をした際は「60点以上80点未満」だった。 黒田総裁は4月に2期目の新体制をスタートさせ、27日に発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では2%の物価目標の実現時期について「2019年度ごろ」としていた文言を削除した。目標達成は容易ではないが、実現に有効な最手段を聞いたところ、「成長戦略・構造改革など」との回答が約6割を占めた。 ※Qr1などQUICKの情報端末では、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。

市場関係者、最も強気な資産は「国内株」 半数以上が「米国債」に弱気 20日にQUICK月次調査セミナー

QUICKのまとめた月次調査によると、2018年度に国内の市場関係者が最も強気にみている資産クラスは「国内株式」だった。株式担当者の54%、外国為替の担当者の48%がそれぞれ国内株に楽観的な見方を示した。一方、最も弱気な資産は「米国債」。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ継続を背景に、市場関係者の50%以上が米国債に暗い見通しを持っている。 調査は証券会社などの株式や債券、外為の担当者を対象に3月27日から4月12日に実施した。いずれの担当者も株式に強気な一方、債券に弱気という傾向がはっきりした。国内株に強気と答えたのは株式担当者で半数を超え、弱気の13%を大きく引き離した。債券担当者も国内株への強気が38%(弱気は20%)にのぼった。米国株については株式担当者の45%が強気な見通しで、こちらも弱気の14%を大幅に上回った。 国内株式の見通し 回答者からは「18年度も世界的に景気回復基調が続き、物価と長期金利の上昇ペースは比較的緩やかなものにとどまる」(投信投資顧問)と、「適温相場」の継続を見込む声があった。「米政府の貿易政策強硬論に円高が加わり株価は大きく下落したが、日本企業の体力は強く業績面での不安は徐々に払拭される」(株式関係者)という見方も出ていた。 米国株式の見通し 債券に関しては、米国債への弱気が際立った。債券担当者の50%、外為担当者の55%、株式担当者の56%が米国債の行方を悲観している。欧州債券も圧倒的に弱気が多かった。FRBと欧州中央銀行(ECB)が金融の正常化に向けて大きく舵を切るなか、欧米債券の利回り上昇(価格の下落)は避けられないとみられている。 米国債券の見通し 国内債は債券と株式の関係者で弱気が強気を上回ったが、各市場とも多くが中立と回答した。海外金利は上昇しやすいが、「年内にイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)の修正など日銀の金融緩和の縮小が実施される可能性は低く、国内金利への上昇圧力は限定的」(信託銀行の債券担当者)とみられている。 国内債券の見通し QUICKは4月20日、月次調査とQUICK短観の回答者を東京・中央区のQUICK本社に招き、月次調査セミナーを開催する。今年のテーマは「日米金融政策の行方と2018年度の投資ベストポートフォリオ」。前日銀審議委員の木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストが基調講演し、株式や債券のアナリストや運用担当者が投資戦略や市場の見通しなどを討論する。今回まとめた月次調査の結果はパネルディスカッションの基礎資料となる。

円相場、市場の目線は円安・ドル高方向に QUICK月次調査<外為>

世界的な貿易摩擦や地政学リスクを背景にした円高・ドル安の進行は一巡か。QUICKが16日まとめた4月の月次調査<外為>によると、市場参加者は当面、円の対ドル相場が緩やかながら下落すると予想している。4月末の円相場の予想は1ドル=107円06銭と、3月調査(106円39銭)から円安・ドル高にシフトした。前月比で円安が予想されるのは5カ月ぶり。 ※QUICKは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。 外為担当者への調査は4月9~12日に実施。3カ月後となる6月末の円相場は107円72銭が見込まれている。3カ月後予想も5カ月ぶりの円安・ドル高だ。円相場の下値は堅いが、市場参加者の目線は円安・ドル高方向を向いている。   月次調査<外為>の各月末の円相場の予想(横軸は調査の月) 米国と中国の貿易摩擦は不安の種だが、「通商摩擦の激化への懸念は米中交渉が進む過程で弱まり、市場のリスク回避姿勢も緩和に向かうため、円安・ドル高方向で推移するだろう」(証券会社)。「トランプ米大統領は中間選挙に向けて夏場までに成果を誇りたいタイミング。夏に向けて政治面での不安材料が薄れ始めると金利差のドル優位が相場材料として重要視される」(銀行)。 保護主義的なトランプ氏に翻弄されがちな円相場だが、先行きは米連邦準備理事会(FRB)の政策が勝るという読みだ。今回の月次調査で米中が貿易戦争に突入すると思うかと聞いたところ、「思う」と答えたのは8%にとどまり、「思わない」が79%に上った。一方、仮に貿易戦争が始まると円相場はどのくらいの水準になるかとの問いには、62%が100円を突破して円高が進むと回答した。 ※Qr1などQUICKの情報端末では、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。

株式担当者、54%が国内株「強気」 「弱気」は13% QUICK月次調査<株式>

QUICKが9日まとめた月次調査<株式>によると、国内の証券会社や機関投資家の株式運用担当者の大半が株式投資に明るい見通しを持っている。回答者の54%が2018年度は国内株に強気だとの見方を示した。米中の貿易摩擦の不透明感から足元の相場は不安定だが、世界経済の拡大と企業業績の伸びが下支え役になるとの見方が多い。 調査期間は4月3日~5日で、株式担当者158人が回答した。国内株への強気スタンスは前年4月調査の17年度見通しと比べ3ポイント拡大した。弱気姿勢は13%にとどまった。米国株は45%が強気と答え、弱気の14%を大きく上回った。トランプ米政権の保護貿易シフトへの警戒から相場調整が進んだが、「これから先はむしろ現実的な解決策が出てきた場合の株式市場へのポジティブな影響をみておくべきだ」との指摘があった。 一方、債券に対しては慎重な見方が多かった。国内債は70%が中立姿勢で、弱気が22%。強気は9%しかなかった。米国債は米連邦準備理事会(FRB)による利上げ継続が見込まれており、56%と半数以上が弱気になっている。強気は8%どまりだった。世界的に景気回復基調が続き、物価と長期金利の上昇ペースが比較的緩やかなものになれば「債券を上回る株式のパフォーマンスが期待される」(投信投資顧問)という。いわゆる「適温相場」が続くと期待されている。 3月の月次調査<債券>で債券担当者に同じ質問をしたところ、国内株に対する強気な見方は38%と弱気の20%を上回り、その差は18ポイント。41ポイント差で強気が勝る株式担当者の回答からは楽観的な見通しが浮かぶ。国内の材料として注目の安倍晋三政権の行方は外交をてこに支持率が上向けば「自民党内の安倍降ろしムードが一段落し、株価は年内最高値を奪還する動きになる」(銀行)との予想もあった。 ※「QUICK月次調査<株式>」はヒストリカルデータも含めて、QUICKの情報端末からダウンロードできます。

保護貿易より米中間選挙を警戒、18年度のリスク要因を聞く QUICK月次調査<株式>

新年度入りした日本株相場は米中の貿易摩擦を嫌気し上値の重い展開だ。だが、市場関係者へのアンケートによると、通商問題より11月の米中間選挙で共和党が大敗するリスクを警戒していることがわかった。調査はQUICK月次調査<株式>を通じて、2018年度(2018年4月~2019年3月)に発生する可能性が高いリスク要因などについて聞いた。調査期間は4月3日~5日。証券会社および機関投資家の株式担当者158人が回答した。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表している。 米共和党の大敗など、米国発のリスクが並ぶ 株式市場関係者に18年度に起きる可能性が高いリスクについて聞いたところ、米中間選挙での共和党の大敗を挙げた人が最も多かった。与党・共和党は昨年12月のアラバマ州連邦上院補選に続き、3月の連邦下院補選で共和党の牙城とされていた米東部ペンシルベニア州でも野党・民主党に敗北したことから、11月の中間選挙を波乱要因とみているようだ。しかし、仮に共和党が大敗したとしても日本株への影響は限定的とみる向きが多かった。 次いで生じる可能性が高いリスクは「保護貿易の加速」「米長期金利の急上昇」と米国発のリスクが並んだ。トランプ大統領は5日、中国に対して1000億ドル(約10兆円)規模の制裁関税の追加を検討すると発表するなど、米中貿易摩擦の行方が懸念される。 ※リスクが発生する可能性を「ほぼゼロ」「小」「大」から選んでもらい、順に「0」「1」「2」に換算して算出した。日本株への影響は「限定的」「大きい」「非常に大きい」から選んでもらい、順に「0」「1」「2」に換算して算出 仮に起きた場合、日本株相場へのインパクトが最も大きいリスクについても聞いたところ、「90円を切る超円高」を挙げた人が多かった。日銀が2日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の18年度通期の想定為替レートは1ドル=109円66銭だった。 ※「QUICK月次調査<株式>」はヒストリカルデータも含めて、QUICKの情報端末からダウンロードできます。

債券担当者、新年度は米国債「弱気」・国内株「強気」 QUICK月次調査

市場関係者は新年度、どの資産クラスに強気か弱気か。QUICKが2日まとめた月次調査<債券>によると、債券運用担当者は債券に弱気な一方、株式には強気な見通しを示した。株式相場は世界的な景気回復の流れが支えとなり、債券相場は米連邦準備理事会(FRB)による利上げ継続の影響が強まるとみられている。 米国債券について、回答者の50%が弱気の見通しを示し、強気は11%にとどまった。欧州債券も47%と半数近くが弱気と答え、強気の16%を大きく上回った。欧米の中央銀行による金融正常化の動きが欧米の長期金利の上昇(債券価格の下落)につながる。 国内債券の見通しは弱気が23%で、強気は13%。中立が最も多く65%だったが、全体に弱気派が目立つ。国内金利は日銀が低水準に押さえつけている一方、「国内経済の改善などにより一定の金利上昇圧力が発生する」(銀行)。「安倍首相の支持率低下から政治リスクが意識され、金融緩和の出口論が出てくることには注意が必要」(証券会社)との指摘もあった。 株式に関しては国内や米国、欧州、新興国を問わず、強気の比率が弱気を上回った。米国株は39%が強気で、弱気は22%。国内株は強気が38%に対し弱気と答えたのは20%にとどまった。新興国株も強気が31%と弱気を4ポイント上回った。トランプ米政権が仕掛けた保護主義政策による世界的な貿易摩擦への懸念も「結局は米国景気や世界経済に影響を与えるほどのものにはならない」(銀行)。 国内では安倍晋三政権が「森友問題」に揺れているようにみえるが、「自民党総裁選では安倍総理の再選が予想される。アベノミクス再起動から、18年度下期には大型補正予算の編成が見込まれる」(証券会社)といった見方もあった。 安倍氏はいつまで首相を務めるのかとの質問には、回答者の36%が自民党総裁3期が満了する2021年9月と回答。3期中との答え(27%)と合わせ、63%が2期満了となる18年9月以降も安倍氏が首相を続けると予想している。安倍首相の求心力が低下するなか、アベノミクスは10%が強化されると読み、61%が維持されるという見通しを示した。 ※Qr1などQUICKの情報端末では、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。

黒田日銀、1期目は及第点?「60点以上80点未満」49% QUICK月次調査<外為>

日銀は9日の金融政策決定会合で、現行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の維持を決めた。再任される見通しの黒田東彦総裁は記者会見で5年間の金融政策運営を振り返り、日本経済は改善し、デフレではなくなったと成果を強調した。ただ市場では、マイナス金利に伴う金融機関の収益力低下など副作用の指摘も多い。3月の「QUICK月次調査<外為>」※では、黒田総裁の1期目の評価について聞いた。調査期間は3月5~8日。回答者数は76人。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。 80点以上は22% 9日の記者会見でも「2%の物価安定目標は達成されていない」として、現行の金融緩和を今後も粘り強く続ける方針を表明した黒田総裁。9日は現体制最後の金融政策決定会合となったが、外為市場関係者の1期目の評価で最も多かったのは「60点以上80点未満」で約半数の49%を占めた。 「60点以上」で見ると、全体の71%。少なくとも外為市場関係者は黒田総裁が主導した異次元の金融緩和に及第点をつけたかたちだ。 高得点と判断できる80点以上は「100点」を合わせて22%にとどまったが「(金融政策で)ぎりぎりまで踏み込んだのは評価できる」と好意的な意見は少なくなかった。 結果として円安が進んで企業業績が上向き、完全失業率は大幅に低下。「経済パフォーマンスが安定し、雇用環境が良好なことは大いに評価できる」との声が上がった。 一方で大規模な国債買い入れにもかかわらず、2%の物価安定目標に近づけない現状に冷めた評価もある。今回は「0点」との評価はなかったものの「政府の協力もなく物価を上げろと言われた日銀に対しては、多少の同情の余地があるため『20点未満』としたが0点でもよい」との回答もあった。 ※Qr1などQUICKの情報端末では、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。

米利上げペース加速か 年内「4回」予想33%に上昇 QUICK月次調査<外為>

米議会上下両院で就任後初の議会証言に臨んだパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は、景気や物価の先行きに強気の見通しを示し、市場は利上げペース加速の可能性を嗅ぎ取った。3月の「QUICK月次調査<外為>」※では、2018年の米利上げ回数について、外国為替市場の担当者に聞いた。調査期間は3月5~8日。回答者数は76人。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。 年内利上げ回数 「4回」が大幅に増加 今回の調査期間外だが、前週末9日に発表された2月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数が市場予想を上回り、米景気の改善持続を印象付けた。市場ではこれまで米利上げ回数は3回との予想が多かったが、パウエル議長の議会証言に加え、ニューヨーク連銀のダドリー総裁が講演で「年4回の利上げでもペースは緩やかだ」と語るなど、上振れの可能性が出始めている。 市場関係者に米国の2018年の利上げ回数を聞いたところ、最も多かったのは1月調査に続いて「3回」で5割強を占めた。しかしむしろ目を引くのは「4回」を予想する回答が33%と1月の14%から大幅に増加し、逆に「2回」が1月の35%から大きく減少して12%まで落ち込んだことだ。市場の利上げ観測は確実に強まっている。 市場では「米景気が堅調を持続するなかでインフレ圧力が高まり、FRBが利上げペースを加速させる可能性が出ている」との指摘がある。 ※Qr1などQUICKの情報端末では、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。

円高シフト「105円~110円レンジに移行した」73% QUICK月次調査<外為>

昨年は1ドル=110~115円を中心に推移していた円相場だが、2018年2月に入ってから米国の長期金利の大幅上昇をきっかけに、世界同時株安を招き、円高が加速した。一時は1年3か月ぶりの高値水準を付ける場面もあった。3月の「QUICK月次調査<外為>」※では、2018年度の為替相場の中心レンジ予想や、円相場を動かす注目要因などについて、外国為替市場の担当者に聞いた。調査期間は3月5~8日。回答者数は76人。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。  前週末9日に公表された2月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数が市場予想を大幅に上回り、米利上げに追い風になる内容だった。結果を受けて円売り・ドル買いが進む場面もあったが、あまり持続性があるようにも見られない。円相場はすでに1ドル105円~110円のレンジに移行したのか。市場関係者へのアンケートでは「移行した」との回答が73%を占める結果となった。 18年度下期は「110~115円」が42% 2018年度(2018年4月~2019年3月)の為替相場の中心レンジについて上期で最も多かったのは「105~110円」で7割を占めた。一方、下期で多かったのは「110~115円」で42%だった。 市場関係者からは「米国の金融政策正常化の動きは円安を促す材料。米国の税制改革で物価上昇率が高まれば、米利上げペースが速まりドル高圧力が高まる」、「日銀の出口戦略の議論は封印された状況が続くこともあり、夏場にかけては再びドル上昇が予想される」と日米の金融政策の方向性の違いが円安・ドル高基調に戻すとの見方がある。 一方で「100~105円」とさらなる円高を見込む予想も25%と上期より増加しており、見方が割れて上期より予想レンジが上下に広がる結果となった。 「3か月以内の100円割れ」33% 今後3か月以内に円相場が心理的な節目の1ドル=100円を一時的に割り込むとの予想も33%に達した。「米国が貿易政策を急速に転換し、赤字削減の為にはドル安も辞さない態度を強める方向にあるため、100円割れの可能性が高まった」と、大幅な円高を試す展開を予想する意見は少なくない。 注目要因「トランプ政権の貿易政策」が81% 円相場を動かす要因として注目している材料(上位3つを回答)は「トランプ政権の通商政策と米中貿易摩擦」が81%とトップだった。「米経済・物価動向とFRBの金融政策」が78%、「新執行部での日銀の金融政策」が55%で続く。再び関心が高まる米国の通商政策。トランプ米大統領は8日、鉄鋼とアルミニウムの異例の輸入制限の発動を命じる文書に署名し、中国や欧州が強く反発している。 トランプ米大統領の強硬姿勢は今秋の中間選挙をにらんだ動きとみられるが「トランプ政権の貿易政策が一気に保護主義的方向に転換することとなり、これまでの状況とは異なった相場動向になる恐れが強まった。米貿易赤字縮小のため我が国も無傷ではいられない」「すでに欧州連合(EU)や中国などは報復措置を示唆し、世界的な貿易取引が縮小して景気の冷え込みから資本取引も停滞する」と懸念する声が寄せられた。 3月末は1ドル=106円39銭 予想は円高方向にシフト 毎月定点調査している為替相場見通しによると、金融機関の外為業務担当者の為替見通しは3月末の平均値で1ドル=106円39銭と、2月調査(109円99銭)から円高へシフトした。3カ月後の5月末には107円10銭、6カ月後の8月末には107円93銭の予想。今後6カ月程度を想定した注目の変動要因は、ドルは「政治/外交」、円とユーロは「金利/金融政策」で、特に円に関しては引き続き注目度7割を超えている。 ファンドの運用担当者に外貨建て資産の組入状況について聞いたところ、「ニュートラル」が36%から82%に大幅に上昇した一方で、「オーバーウエート」が27%から9%に低下し、「アンダーウエート」も36%から9%に急激に低下した。 事業法人の業績予想の前提為替レートは、平均値で1ドル=110円00銭と現在の水準(105円39銭~106円14銭)より円安の予想だが、対ユーロでは1ユーロ=127円00銭と現在の水準(129円45銭~131円49銭)より円高の予想となっている。 ※Qr1などQUICKの情報端末では、月次調査の詳細とヒストリカルデータをご覧いただけます。

日本版「適温相場」持続の条件は個人マネー QUICK月次調査<株式>から

株式市場は2月に入って世界的に調整色を強め、日経平均は年初来7.0%下落した(3月2日)。需給面の主因は外国人投資家であり、年初から現物市場で1.27兆円、先物市場で4.13兆円売り越した(2月23日)。この売りを吸収したのが、日銀のETF買入と共に、個人投資家や投資信託である。年初来、現物市場で各々9470億円、4160億円買い越した。 5日発表のQUICK月次調査<株式>によると、個人と投資信託の相場への影響の評価指数は、昨年末から上昇し、3月調査では各々64.1、61.3となった。 <個人と投信の株式相場への影響の評価> 注:「投資主体の株式相場へのインパクト」は、個人と投信の株式相場への影響を5段階の回答で評価し、50を中立として指数化値。尚、QUICK月次調査では、外国人、金融機関、企業年金・公的資金、事業会社、自己についても同様に評価を指数化。 出所:「QUICK月次調査<株式>」よりMUMSS作成 最近、その存在があまり注目されなかったが、日本の個人資金はしばしば上昇相場の積極的な買い主体であった。1999~2000年、2005~06年には両者の評価指数が70を上回っていた(図表)。 特に投資信託は株式に詳しい個人だけではなく、より幅広い個人が利用しており、資金フローが続く傾向がある。株価にやや遅行する傾向があるが、投資信託は1999・2000年度や2005年度に1兆円以上買い越した。今回、投資信託が2017年秋まで売り越しであったが、個人資金は昨年後半からテーマ型や中小型株を中心に日本株ファンドに流入している。 日本の個人が投資に無関心であった訳ではない。これまで円安が進む中で、個人資金は年間10%前後の配当金を出す毎月分配型投信を通じて外国証券に向かった。 しかし、大手ファンドの減配発表や高金利国通貨の下落を受けて、仕組みのリスクや高い信託報酬が意識されるようになり、毎月分配型投信は2016年末からネットで資金流出に転じた。収益分配額を含めて2017年8月から月間5000億円以上の資金が流出し、毎月分配型投信の純資産残高はピーク43.2兆円から29.5兆円に減少した(2018年1月)。 また、株式投信のうち、2014年以降、地域型金融機関などが利用するケースが多い私募投信の資産残高が相対的に増えている。金融機関は低金利が長期化する中、外債投資を増やしてきたが、米国で利上げが進み、為替ヘッジのコストが上昇している。配当は銀行では業務純益、保険会社では基礎利益に含まれる。今後、一部の金融機関は配当利回りを重視して株式に投資する可能性があろう。 今月のQUICK調査では、今回の株価急落が「適温相場」の転換点であるかについて意見が分かれた。景気拡大と低金利の下での需給要因が株価上昇を支えたと見れば、個人資金の株式市場への流入が日本版「適温相場」が続く一つの条件となるだろう。 株式調査の詳細はこちらのサイトをご覧下さい。 ※QUICK月次調査<株式>の結果を外部の有識者の方に匿名で読み解いていただいた記事です。

3月のQUICK投資家心理指数が急低下 「鉄鋼」アンダーウエート増加 米保護主義警戒か 

3月のQUICK投資家心理指数は50.34と、前月の71.77から急低下した。判断の分かれ目となる50をかろうじて維持した。米長期金利の上昇や、トランプ米大統領が示している鉄鋼などの輸入制限措置が現実味を帯び世界的な貿易摩擦に発展するとの懸念が投資家心理を冷え込ませたようだ。 【QUICK投資家心理指数と日経平均株価の推移】 (注)日経平均株価は各月末の終値 国内機関投資家の資産運用担当者に現在の日本株の組み入れ状況について聞いたところ、基準とする組み入れ比率に対して「ややアンダーウエート」になっているとの回答が17%(前回10%)と増加した一方、「ややオーバーウエート」が29%(同38%)に低下した。 セクター別の投資スタンスでは、オーバーウエートにする業種として「消費」「通信」「電機・精密」を挙げた運用担当者が増加した。半面、アンダーウエートにする業種には、トランプ政権の輸入制限を警戒してか「鉄鋼・機械」セクターとの回答が増加した。 QUICK投資家心理指数は、QUICKが実施している「QUICK月次調査<株式>」の中から、国内機関投資家が運用するファンドの国内株式組み入れ比率のデータに基づいて算出・指数化したもので、50を上回れば国内機関投資家の投資姿勢が「強気」、下回れば「弱気」になっていることを示す。今回の調査は2月27~3月1日に実施した。

「適温相場」は転換点か 米長期金利上昇どこまで? QUICK月次調査<株式>

2月27日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が就任後初の議会証言で、景気や雇用情勢の改善から物価目標達成の確信が強まったと述べた。タカ派的な内容と受け止められ、米国の利上げペースが加速するとの思惑が浮上。米長期金利の指標となる10年物国債利回りは一時、2.92%まで上昇し、ダウ平均は300ドル近く下落した。日本株も売りで反応し、2月の日経平均株価の下落率は2016年6月以来、1年8カ月ぶりの大きさとなった。ついに「適温相場」は転換点を迎えたのだろうか。 毎月実施している株式の市場関係者を対象とした「QUICK月次調査<株式>」で、今回は年央に向けての米長期金利と円ドル相場の展開と、「適温相場」の持続性について聞いた。調査期間は2月27日~3月1日。証券会社および機関投資家の株式担当者158人が回答した。 ※QUICKでは株式や債券、外為部門などの市場関係者を対象に毎月、足元の景気や相場動向についてアンケートを実施。結果を「QUICK月次調査」として各部門ごとに公表しています。 米長期金利「3%前後」が44% FOMCに関心 株式市場では、景気拡大と低金利が共存する「適温相場」が続いていたが、米長期金利の大幅な上昇を受け、株価が世界的に調整している。年央に向けて米長期金利(10年物国債)は何%程度になると予想するかと聞いたところ、最も多かったのは「3%前後」で44%、次いで「3%台前半」で38%、「2%台後半」で12%だった。 市場関係者からは「米金利は短期的に行き過ぎ感があり上昇一服を見込むが、年末にかけては3%を試し、超える可能性が高い。ただし、株価に影響を与えると考えられる3%台後半まで上昇する可能性は低い」との回答があった。半面、「米10年債利回りは3%弱の水準で定着を探ると思われるが、FRBの金利見通しが引き上げられれば、上昇余地が生じる」との指摘もあり、米連邦公開市場委員会(FOMC)での議論に関心が高まる。 一段の円高予測は1割どまりも企業業績に重荷 教科書通りなら金利が上がる国の通貨は買われやすく円相場は対ドルで下落しやすいはず。しかし実際には米長期金利が上昇する一方で円が買われている。2日の外国為替市場では2016年11月10日以来、ほぼ1年4カ月ぶりの円高水準を付けた。年央に向けての円の対ドル相場の展開を聞いたところ、最も多かったのは「110円近辺まで円安が進む」で41%、次いで「105円前後でもみ合う」が32%だった。一段と円高が進むとの予想は、「100円近辺まで円高が進む」(11%)と「90円台になる」(1%)を合わせても1割程度にとどまった。 市場では「ドル安への警戒もあるが、それほど大きなものではない」と円高は早晩一服するとの見方が大勢のようだ。ただ「国内企業は1ドル=110円程度なら2ケタに近い経常増益が見込まれるが、105円だと1ケタ台後半に伸びが鈍化する公算が大きい」と、現状の円相場水準でも企業業績への影響を懸念する市場関係者も少なくない。 「日米金利差の拡大にも関わらず継続するドル安が気がかり」との声があるのも事実で「足元は若干修正されつつあるが、リスクオフの中での円買い圧力もあり、円相場は節目の1ドル=105円を超えて上昇する可能性もある」との意見もあった。 「適温相場」の終焉に警戒感も 2月に入ってからの株式相場の急落がこれまでの「適温相場」の転換点だと思うかと聞いたところ、「転換点だと思う」とする回答は27%だった。「金利は上昇するが、株価の上昇傾向は続く」が最も多い30%、「一時的であり、適温相場は続く」が25%と、株式相場に強気な見方は根強いが、ピークアウトへの警戒感も広がりつつある状況だ。 市場関係者からは「昨年の適温相場(景気拡大とインフレ見通し低位安定)から、今年はリフレーション相場(景気拡大ペース一服とインフレ見通し上昇)になる」との意見が聞かれた。「円高進行による株安で当面は下落する可能性が高い」との見方もあった。 一方で「米景気の改善は続き、1年を通してみれば適温相場は継続する」「低金利・株高という意味合いでの適温相場は終了したと思うが、景気や金融市場には余熱がある。株式市場の明確な調整局面入りはまだ先」との指摘もあった。 日経平均予想は2万2449円 大幅に下方シフト 「QUICK月次調査<株式>」で毎月調査している日経平均株価の見通しは、3月末の水準で2万2449円(平均値)で、前回調査(確報)の2万3465円から大幅に下方へシフトした。5月末には2万3070円、8月末は2万3448円を見込む。今後6カ月程度の株価の変動要因としては、「景気・企業業績」の注目度が前月比5ポイント低下し39%となった一方、「海外株式・債券市場」が10ポイント上昇して28%だった。 国内の資産運用担当者61人を対象にセクター別の投資スタンスについて質問したところ、オーバーウエートの比率が最も高かったのは「電機・精密」で30%、次いで「消費」が14%。逆にアンダーウエートの比率が最も高くなったセクターは「公益」だった。 ※「QUICK月次調査<株式>」はヒストリカルデータも含めて、QUICKの情報端末からダウンロードできます。

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