投信の共通KPI、顧客の6割が含み益 「見える化」課題も多く

QUICK資産運用研究所=西田玲子、石井輝尚 投資信託の販売会社が金融庁の求めに応じて公表した共通の成果指標(KPI)について、QUICK資産運用研究所が172社を対象に調べたところ、2019年3月末時点で含み益の顧客割合を各社で単純平均すると約6割だった。5割強だった18年3月末時点(136社平均)と比べてやや増加した。   ■品ぞろえや期間まちまち、難しい単純比較   昨年は金融庁が18年3月末のデータで銀行29行の数字をまとめて算出したところ、46%の顧客は保有投信の評価損益がマイナスとなり、「投信で個人の半数が損」をしたと話題になった。2回目の公表となった今回は含み益の顧客割合が増える一方で、共通KPIの課題も改めて浮き彫りになった。   この指標の公表は、投信の販売会社における顧客本位の取り組み状況を横並び比較可能な形で「見える化」するのが狙い。しかし、各社で品ぞろえなどに大きな差があり、さかのぼる期間がバラバラなこともあって、この指標だけで顧客思いの会社かどうかを単純に評価するのは難しい。   ■探しにくいデータ、前回数値なしの会社も   課題の1つは見つけにくさ。共通KPIが各社ホームページのどの部分に掲載されているか探しづらく、いつ公表したのかもわからないケースが少なくない。2回目の公表にもかかわらず、前回のデータを併記していない販売会社もある。ファンドラップでは最大手の一部などが今回もデータを公開していない。   前回も問題になったが、全売却された投信が集計対象に含まれないのは引き続き留意点だ。今回目立ったのは、含み益の顧客割合が前回比で大きく伸びたある販売会社のケース。同社によると、主因は販売した投信の運用成績が向上したからではなく、損失を抱えていた顧客が「損切り」に動いたからのようだ。   ■レオスは「ひふみ」人気が裏目に   個別に見ると、ゆうちょ銀行は76.0%の顧客が含み益だった。6月に高齢者への不適切な投信販売が発覚したが、運用損益がプラスの顧客割合では172社のうち17番目に高いという結果だった。   「ひふみ投信」(9C31108A)を直接販売する独立系のレオス・キャピタルワークスは、含み益の顧客が45.0%にとどまった。前回の91.0%を大幅に下回る。前回の結果を踏まえた金融庁のヒアリングでは、含み益の顧客割合が上位の独立系で「積み立て投資」の有効性が強調された。しかし、今回のレオスの場合は「ひふみ」の人気に火がついた17~18年に口座開設した顧客の割合が多いことが裏目に出て、長期積み立ての効果が表れる前に直近の運用成績の影響をより大きく受けた。   ■公表の積極性も販売会社選びの参考に   こうした事例を見ても、販売会社の「顧客本位」の本気度を共通KPIの運用損益別顧客比率だけではかるのは適切とは言えそうにない。各社が共通KPIと同時に独自で公表している指標なども含め、蓄積したデータを時系列で見ていくことが重要になりそうだ。   データのまとめ方や公表方法が的確で誠実かどうかや、金融庁に言われたから開示したという「やらされ感」が醸し出ていないかなどデータ公表の積極性も、個人投資家にとって販売会社選びの参考になりそうだ。   投信販売会社の共通KPI一覧はこちら

含み益の顧客、ゆうちょ銀76% 投信の共通KPI(159社・業態別一覧)

QUICK資産運用研究所 投資信託を販売する金融機関が昨年から自主的に公表を始めた共通の成果指標(KPI)。金融庁が定めた基準で2回目となる2019年3月末時点のデータがほぼ出そろった。QUICK資産運用研究所が調べた159社について、業態別で一覧にまとめた。データを公開した投信の販売会社は前回の117社(18年3月末時点、金融庁に19年3月末までに報告した金融事業者)を上回った。 19年3月末時点で運用損益がプラス(含み益)の顧客割合が前年と比較できるのは115社。このうち前年比で割合が増えたのは86社(横ばいを含む)、減ったのは29社だった。 含み益の顧客割合は19年3月末時点の平均(159社)が61.2%と、前年の55.0%(115社平均)を約6ポイント上回った。 159社のうち、含み益の顧客割合が最も高かったのはセゾン投信の97.8%。前年より12.9ポイント上昇した。同社の顧客は投信の平均保有期間が12.04年と比較的長い。 一方、含み益の顧客割合が前年比で最も大きく下がったのは、レオス・キャピタルワークスの45.0%。前年の91.0%から46.0ポイント低下した。レオスは17~18年に口座開設した顧客が全体の7割を占めており、最近の運用成績の影響を大きく受けた。 6月に高齢者への不適切な投信販売が発覚したゆうちょ銀行は、76.0%の顧客が含み益だった。 ファンドラップの共通KPIを公表したのは15社。前年と比較できる13社のうち、ほぼ半分の6社は含み益の顧客割合が減少した。最大手の野村證券はファンドラップの共通KPIを公表していない。   ※QUICK資産運用研究所調べ(2019年7月上旬までに各社ホームページで確認できた主な販売会社が対象)、▲は減少。業態・種類ごとに含み益の顧客割合が高い順にランキング。含み益の顧客割合は各社が公表資料に掲載した数値または運用損益別の区分がプラスの割合の単純合算、小数点第2位を含めてランキング。18年3月末時点は原則として前回公表データ(前回分が大きく修正された場合や、今回初めて公表した販売会社のうち2年分を同時公表した場合は今回発表分を採用)。  

投信「不適切販売」ゆうちょ銀、上位に毎月分配型めだつ

ゆうちょ銀行が不適切な手続きで高齢者に投資信託を販売していたことが判明した。ゆうちょ銀行で過去6カ月に販売金額が多かったファンドを見てみると、ランキング上位には毎月分配型が目立った。どれも規模が比較的大きく、市場全体でも資金流入が続いているファンドだ。 販売金額トップ5のうち、3本は毎月分配金を支払うタイプだった(図表1)。首位は「東京海上・円資産バランスファンド(毎月決算型)<愛称:円奏会>」(4931112B)。このファンドは1カ月と3カ月の販売金額ランキングでもトップだった。バランス型では国内最大規模で、大手証券を含む80社以上で販売している。 3位の「スマート・ファイブ(毎月決算型)」(02312137)は、ゆうちょ銀行のみで販売しているが、過去3年で3000億円近い資金が流入した。4位は国内公募追加型株式投信(ETFを除く)の中で残高が最も大きい「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」(42311052)だった。 この3本に共通するのは、市場全体で毎月分配型の人気が落ち込んだ時期に資金流入傾向が続いた点だ。例えば「スマート・ファイブ」は、過去3年にわたり月次ベースで資金流入超が続いた(図表2-a)。ほかの2本も過去3年の合計は資金流入超だった。 直近の2年あまりは毎月分配型に逆風が吹いた時期で、17年5月以降はずっと資金流出傾向が続いていた(図表2-b)。それまで人気だったのは、主に海外の不動産投資信託(REIT)で運用し、高い分配金を支払うファンド。定期的に現金収入を得たい高齢者を中心にニーズを集めたが、主要ファンドの分配金減額をきっかけに投資マネーが逃げ出した。金融庁が「顧客本位ではない」と問題視したことで、多くの金融機関が販売を手控えた面もある。 そんな逆境下で資金流入傾向を維持した毎月分配型ファンドを支えた要因のひとつがゆうちょ銀行による販売。同行が投信販売の戦略見直しに動けば、これらのファンドを巡る資金の流れにも影響が及びそうだ。  (QUICK資産運用研究所)

「ゆうバランス(安定成長)」残高が1000億円突破 ゆうちょ銀で販売

JP投信が運用する「JP4資産バランスファンド安定成長コース<愛称:ゆうバランス>」(AK312162)の純資産総額(残高)が11月30日に1000億円を突破した。30日の残高は1004億円。 「ゆうバランス」は日本と海外の債券と株式、計4つの資産に分散投資するバランス型ファンド。各資産の配分比率は固定され、「安定成長」コースは株式を50%組み入れる。 このほかに株式の組み入れ比率が30%の「安定」コース(AK311162)と、70%の「成長」コース(AK313162)があり、3つのファンド間でスイッチング(コースの切り替え)ができる。 「安定成長」コースは11月末時点の設定来リターン(分配金再投資ベース)が16.86%、1年リターンはマイナス1.37%だった。2016年2月に設定され、資金流入傾向が続く。販売会社はゆうちょ銀行とスルガ銀行。 (QUICK資産運用研究所)

「人生100年見据えた資産形成を」 QUICKが資産運用討論会

QUICKは23日午後、「資産運用新時代 覚醒する1800兆円」と題した討論会を開いた。野村アセットマネジメントの栗崎修常務執行役員は講演で、投資信託について「資産寿命を延ばすことが重要だ」と指摘。投信市場の拡大に向けて「『人生100年時代』を見据えた、安心で計画的な商品提案が求められる」と強調した。 ゆうちょ銀行の小藤田実・営業部門執行役は、投信の販売状況について「新規の口座開設件数は順調に拡大しており、意識が浸透し始めている」と語った。また「(比較的若い世代の)20~40代の潜在的なニーズにも働きかけていきたい」と課題も挙げた。 ロボット投資を手掛けるお金のデザイン(東京・港)の中村仁社長は、若年層の投資への理解を深めるためには「まず経験することが重要」と指摘した。NTTドコモの「dポイント」を投資に活用するサービスは、想定をはるかに上回るユーザー数を獲得できたという。「資産運用が毎日の当たり前のサービスとして溶け込んでいくようになる」との展望を示した。 お金のデザインの中村仁社長 討論会では講演のほか、金融庁の油布志行参事官と北沢千秋・QUICK資産運用研究所長が、家計の資産形成について対談した。油布氏は少額投資非課税制度(NISA)について「恒久化が非常に大きな課題だ」と指摘。今年から始まった「つみたてNISA」なども含め、より利便性を高めていく意向を示した。 対談する金融庁の油布志行参事官(右)と北沢千秋・QUICK資産運用研究所長 資産運用討論会は今年で5回目。証券会社や運用会社の担当者など約250人が参加した。 【日経QUICKニュース(NQN)】

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