金融庁、資産運用業の高度化に注力 アナリスト協会がセミナー

「自分の親戚、知人にも勧められると思う商品の販売に徹して欲しい」。日本証券アナリスト協会が16日に都内で開いたセミナーの基調講演に登壇した金融庁総合政策局の井藤英樹審議官(監督局担当)は、資産運用業の高度化へ向けた取り組みの重要性を強調し、顧客本位の業務運営の推進を促した。 ■金融庁長官が「思いを込めて資料作成」、審議官が代読 毎年恒例の同セミナーは2年前の基調講演で金融庁の森信親長官(当時)が資産運用業界の問題点を指摘し、業界関係者に大きな反響を巻き起こしたことで知られる。今回のテーマは「デジタル化時代の新たな資産運用ビジネス」で、180人近い業界関係者が集まった。 「日本の資産運用業界への期待」と題した基調講演は、金融庁の遠藤俊英長官が公務の都合で登壇できなくなり、井藤審議官が代理を務めた。遠藤長官が作成した64ページにのぼる分厚い資料が配布され、井藤審議官が「デジタライゼーションの加速的な進展への対応」など金融行政の重点施策について、ポイントを絞って説明した。 講演資料中の「2019年1月30日 主要行等との意見交換会における金融庁長官メッセージ(抜粋)」という部分に話が及ぶと、長官のメッセージを一字一句そのまま読み上げ、資産運用業の高度化へ向けた取り組みの重要性を強調した。 セミナー終了後のレセプション(懇親会)には遠藤長官も駆けつけ、乾杯の音頭を取った。遠藤長官は「思いを込めて講演資料を作成した」と語り、金融のデジタル化や資産運用業の高度化に注力していく考えを示した。 ■米運用大手がアクティブ運用の実績を力説 セミナーでは、アクティブ運用に強み持つ米運用大手のティー・ロウ・プライス グローバル・インベストメント・マネジメント・サービシズのアジア・パシフィック地域統括責任者であるニコラス・S.トゥルーマン氏が登壇。「アクティブ運用会社としての進化と歩み」と題して講演した。 自社の米国株アクティブ運用に関して過去20年間で10年リターンを毎月測ったところ、そのうちの約9割がベンチマークに対する超過収益(アルファ)を上げたと力説。運用の目標年に向けて資産配分を変えていく「ターゲット・デート型」のアクティブ運用は好成績を背景に運用資産規模が拡大し、同社は米大手3社の一角を占めているという。今後は運用のデジタル化を進め、アルファを効率的に生み出していくとした。 ■レオスの藤野氏「投資は素敵な経済活動」 日本のアクティブ運用者を代表して、レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長も「これからの投資信託の役割とは――投資文化の普及のために――」をテーマに講演。冒頭から「投資信託はおまけに過ぎず、消費者が欲しいのは投資によって得られる『快適な生活』。将来得られる安心感やリターンが売り物であって、投資信託そのものではない」との持論を展開し、聴衆を引き込んだ。 日本人の手元に眠り、40兆円あまりあるとされるタンス預金。このお金が資産運用に回りだすと、資産運用業界は成長産業になると指摘。タンス預金を保有している個人に「投資は素敵な経済活動」とその魅力を理解してもらうのがカギだと結んだ。 パネルディスカッションは、投信評価会社モーニングスターの朝倉智也社長、一般社団法人国際資産運用センター推進機構の有友圭一代表理事、ウェルスナビ(東京・渋谷)の柴山和久社長の3人が登壇。モデレーターをPwCあらた有限責任監査法人の清水毅氏が務め、「デジタル化時代の新たな資産運用ビジネス」について活発な議論を交わした。 (QUICK資産運用研究所 望月瑞希、高瀬浩)

「投資を自然なことに」おつりで投資のトラノコ バロック社長に聞く

日々の暮らしに投資は溶け込むか――。TORANOTEC(トラノテック、東京・港)が手がける投資サービス「トラノコ」の開始から2019年6月で2年を迎える。トラノコは買い物のおつり分を投資することで手軽に資産運用できるサービスだ。 「おつり」とは、事前に登録したクレジットカードや電子マネーでの買い物金額の端数のこと。利用者はおつりのうちどのくらい投資に回すかを決め、リスクの異なる3つの投資信託から投資先を1つ選ぶ。家計簿アプリを使えば現金決済のおつりも投資資金にできる。月額利用料が税込みで300円かかる一方、投信の運用報酬(信託報酬)は年率0.324%と低く抑えている。残高が小さいうちは利用料の比率が高いものの、残高が積み上がるにつれて相対的にコストが低くなっていく仕組みだ(図1)。 おつりによる少額積み立てということもあって、3つの投信の純資産総額(残高)合計は5億円程度にとどまるが、利用者は増えているという。 月額利用料の学割や他業種との連携など、目新しい取り組みが目立つトラノコ。投資の文化を日本に作っていきたいと熱い思いを秘めるトラノテック代表取締役社長のジャスティン・バロック氏に話を聞いた。 ――「おつりで投資」のきっかけは。 「日本の資産運用サービスは初めて利用する際のハードルが高く、初心者でも使えるサービスが少なかったように思います」 「日本の貯金の文化を、うまく投資に活用する仕組みがあれば投資の文化もできる。そのためには、少額からコツコツと投資ができるサービスの提供が必要だと考えました。加えて、日々の生活に投資が結びつき、自然なものとなるためにはどうしたらよいか。普段の消費活動で投資にアクセスできないかと考え、生まれたのがおつりでの投資です」 ――月額利用料という費用体系は独特です。 「サブスクリプション(定額制)は面白いサービスだと考えています。利用者から見て分かりやすいですし、積み立てを続けて投資残高が増えると、割合として利用料の負担は減っていきます」 「他社との提携のしやすさもメリットです。月額利用料の無料期間の延長や割引といった施策が簡単に実施できるため、パートナーの要望に柔軟に対応できます」(図2) ――投資関連サービスで「学割」は珍しいです。 「学生のうちは月額利用料を無料にすることで、投資に一歩踏み出すきっかけを与えたい。将来にわたって続けるためにも学生のうちはずっと無料にして、長期投資を実践しやすくしました。若いうちから資産運用の世界に触れることができれば、投資の文化は根付くと思います」 ――利用者の特徴は。 「若年層や投資未経験者の方が多く、年収や金融資産がそれほど多くないのが特徴です(図3)。一方で、投資経験が5年以上ある利用者が1割近くいらっしゃいます。投資経験が豊富な方にもサービスの価値を感じていただけていると思います。月額利用料は誰でも最初の3カ月間は無料ですが、この期間が終わっても9割以上の方がサービスの利用を続けています」 「初心者の方でも分かりやすく、面倒に感じないように投資先をまずは3ファンドにしぼりました。3つのファンドは投資配分だけでなく、為替ヘッジの割合を変えています。一番人気は最もリスクの高い、リターン重視のものです」 ――トラノコの未来は。 「『すべての人を投資家に』と掲げている通り、投資を簡単に、当たり前にしていきます。具体的にはトラノコの認知度を広げる活動を引き続き進めていくこと。さらに、提携する企業を通して利用者にサービスを提供する「BtоBtоC」のビジネスモデルを加速させます。銀行をはじめ、通信キャリアや小売り、インフラなど様々な分野の企業とパートナーシップを組んでいますが、今後も提携企業を拡大する予定です」 「アプリ内でポイントやマイルを現金に交換して、投資に回すサービスも展開しています。実際の投資にこだわっているので、ポイントやマイルのままではなく、必ず現金化してから投資します。金融庁の支援案件として採用された『リアルおつり投資』プロジェクトの実証実験も始まります。これは小銭を専用のATMに投入するだけで簡単に投資を行うことができるサービスです。投資が自然なことになるよう、様々な角度からアプローチを続けていきます」 (QUICK資産運用研究所 小松めぐみ、イノベーション本部 吉田晃宗)

ウェルスナビ 「品質」「透明性」「協業」でロボアド市場けん引 柴山CEOに聞く

金融機関の窓口に行ったり、ネットで自ら投資先を探したりしなくても、資産運用ができる時代が本格的にやってきた。台頭するサービスの1つに、コンピューターのプログラムが資産運用を指南するロボットアドバイザー(ロボアド)がある。このロボアド市場の一角を担うのがウェルスナビ(東京・渋谷)だ。 預かり資産1300億円超、国内最大規模 ウェルスナビは、年代や資産状況、運用の目的など6つの質問でリスク許容度を5段階に分け、許容度に応じた資産配分を提案。低コストの米国ETF(上場投資信託)で運用し、資産配分の見直し(リバランス)もする。運用手数料は残高の1.08%(3000万円を超える部分は0.54%)。 2016年7月のサービス開始から成長のスピードは衰えず、預かり資産は1300億円を突破(図1)。ロボアドとしては国内最大規模だ。口座申込件数は18万件にのぼり、20~50代の働く世代が9割以上を占める。 また、ウェルスナビでは銀行や証券会社、空港会社などさまざまな企業と提携することで、サービスを提供しているのが特徴だ。既存の金融機関に限らず、異業種を巻き込んでロボアド市場をけん引する同社の柴山和久代表取締役CEOに話を聞いた。 最低投資金額を10万円に引き下げ ――利用状況は。 「投資経験のある人から支持を集めているのが特徴の1つで、その割合は7割を超えます。利用者からの口コミが新たな利用者の呼び水になることも多いです」  「昨年からは投資未経験者にも裾野が広がってきました。当初100万円だった最低投資金額を10万円に下げたことやテレビCMなどマス広告の効果が出ています。おつりで投資ができるサービス『マメタス』の人気もあって、女性の利用者や若年層の割合が増えています」 ――成長し続ける背景は。 「今まで日本になかった新しいタイプのサービスを提供できたことにあると思います。『働く世代の資産運用』として、忙しく働く人たちでもスマホで隙間時間に高品質の資産運用を可能にするサービスを実現しました」 「かつては同じ会社に終身雇用で勤め上げ、退職金で住宅ローンを返して年金で暮らす、という典型的なモデルがあり、働きながら資産運用するニーズがなかったように感じます。しかし現在は、人材の流動性でキャリアプランが変わり、年金への不安も大きくなっています。こうした変化で生まれた資産運用ニーズを満たすサービスがロボアドです」 ――預かり資産残高はロボアド他社を圧倒しています。  「他の企業と連携するオープンイノベーションを先駆けてやってきた成果です。ウェルスナビの残高と、提携パートナーを経由した残高がほぼ半々となっています」 「ロボアドは革新的なビジネスモデルですが、収益性の高いビジネスではないですし、簡単に使ってもらえるサービスでもありません。働く世代を豊かに、といった同じようなミッションやビジョンが共有できる他社と協力することで、サービスをより広めていくことが可能になると考えています」 柴山和久・代表取締役CEO ――ウェルスナビの強みは。 「質の高さと透明性の両方が満たされていることでしょうか。弊社は社員の半分近くがエンジニアで、モノづくりする金融機関として、技術力で品質を追求します。自動でお任せの資産運用をうたっているので、運用手法などがブラックボックスではダメです。資産運用のアルゴリズムや手数料などの情報をWEB上で公開し、『ガラス張り』であることを意識しています」 ――今後に向けての抱負は。 「現在の預かり資産額では、まだスタート地点に立っているとさえ言えません。まずは1兆円。それでも社会的インパクトはほぼゼロに近いかもしれません」 「社会インフラの1つとなるよう、長期的なコミットメントを重視しつつ、パートナー企業との協業を進めていきます。どこにいても安心して預けられるサービスとして、全国津々浦々に普及させていきたいですね」 (QUICK資産運用研究所 小松めぐみ、イノベーション本部 吉田晃宗)

スマホで「テーマ投資」の次の展開は FOLIO・甲斐CEOに聞く

テーマで選ぶ、かんたん投資――。昨年末からテレビCMや電車内広告で目にする機会がぐんと増えた「テーマ投資」。サービスを提供するのは、2015年に設立されたネット証券のFOLIO(フォリオ、東京・千代田)だ。 フォリオのサービスは、企業ではなくテーマで投資先を選ぶ「テーマ投資」が大きな特徴。利用者が「温泉」や「VR(仮想現実)」のようなテーマを選ぶと、そのテーマに関連した厳選企業10社の株式に10万円程度で分散投資ができる。昨年11月には独自開発したロボットアドバイザー(ロボアド)による「おまかせ投資」サービスもリリースした。同様のサービスは、無料対話アプリLINEでも「スマート投資」として展開しており、今春には、ワンコインで手軽にコツコツ積み立て運用ができる新たなサービスも登場する予定だ。 金融業界に新風を吹き込むフォリオ。「2018年までは開発フェーズ、2019年は口座数をどこまで伸ばせるかの事業フェーズ」と意気込む代表取締役CEOの甲斐真一郎氏に、現状と今後の展望を聞いた。 FOLIO・甲斐真一郎CEO ――テーマ投資とスマート投資、利用者の特徴は。 「自社アプリで提供しているテーマ投資の利用者は、30代前半の男性が多いです。口座開設の申し込み件数は昨年末からの宣伝効果で10倍になりました。一方、LINEで提供しているスマート投資は女性が多いですね。いずれも、昨年後半の株価下落時でも解約は少なく、短期売買というより中長期での保有が多いと言えます。リバランス機能(※)も多くの方々が活用してくれています」 (※)投資比率の変更や銘柄の変更によって資産配分を調整すること。フォリオではテーマや投資スタイルごとに適宜リバランスを提案。実際にリバランスをするか否かは本人の決定による。 ――フォリオの強みは。 「テーマ投資に優位性があります。数銘柄でテーマを設定し、テーマ全体への最低投資金額を10万円程度に抑えるには、単元未満株の取引に特化したディーリングシステムや在庫管理、それらをまとめ売り・まとめ買いできるようなシステムが必要となります。我々はそれらをほぼすべて内製で、ゼロから作り上げました。テーマを構成する銘柄も、社内に抱えるプロフェッショナルが選んでいます」 「全てのプロダクトを内製しているので、使いやすさへのこだわりは徹底しています。業界内で有名なアプリエンジニアやデザイナーを起用し、開発・デザイン能力にも優れていると思います」 ――フォリオが目指す資産運用サービスのあり方とは。 「資産運用を始めようとするあらゆる人にリーチしたいと思います。平均点を目指すパッシブ(受動的)な運用がしたい人、例えば、普段忙しくて投資に時間をかけたくない人は、手軽にインデックス(指数連動)型で国際分散ができるおまかせ投資(ロボアドバイザー)。自分で選んでアクティブ(積極的)に平均点以上を目指した投資をしたい人にはテーマ投資。今後展開するワンコインからの積み立て投資では、金融リテラシーは高くないものの気軽に老後の資産形成を始めたい層をターゲットとしています」(図1はイメージ) 「パッシブ型とアクティブ型、どちらが優れているという考えは持っていません。両方の機会を提供することが金融機関としてフェア(公正)だと思っています。投資できる金額も人それぞれですし、タイミングによっても違いますよね。弊社ではそれらをシームレスにつなげていくことを目指しています」 「テーマ投資で経済との接点を得ることができた、と言った声が届きます。このような機会をもっと広げていくために、テーマの追加や、オウンドメディア(自社媒体)での金融教育なども進めていきます」 ――今後、会社としての展望は。 「様々な会社との連携、とりわけ地域金融機関との提携を進めていきたいと思っています。例えば地方特化のテーマを追加することもできます。デザインを含めた開発分野においては、イチから要望に応えられるレベルの技術があると自負しています」 「長期的には上場を視野に入れていますが、今後も資金調達は継続する予定です。目先は単月黒字化を安易に追わず、顧客獲得に注力していく方針です」 (QUICK資産運用研究所 小松めぐみ、イノベーション本部 吉田晃宗)

投資商品、重視するポイントは? 【個人の資産形成に関する意識調査⑩】

QUICK資産運用研究所が昨年11月に実施した「個人の資産形成に関する意識調査」。10回目は金融商品の保有状況について聞いた結果を掲載。商品を選ぶ際に重視するポイントについても尋ねた。(調査概要と過去の配信はこちら) ■リスク性資産の保有、国内株式がトップ 現在保有している金融商品は、「定期性預貯金」が抜きんでて高かった。次いで「いずれも保有していない」の割合が大きかった。 リスク性資産の中では「国内株式」が23.4%でトップ。「個人年金保険」と「投資信託」、「終身保険」は15%前後で横並びだった。 今後については「保有したい・取引額を増やしたい商品はない」の48.6%が最も高かった。 ■利回りの高さや値上がりを重視 資産形成・資産運用をしている人(下記に区分方法を掲載)に対し、運用する商品を選ぶ際に重視することを聞いた結果、「利回りの高さ」や「値上がり期待」といった回答が多かった。 年代別でみると、若年層ほど「商品内容のわかりやすさ」や「手数料や信託報酬の水準」を気にする傾向が強い。60代以上では「元本保証」や「換金のしやすさ」の比率が高かった。 投資経験別では、投資経験の長い方が「利回りの高さ」と「値上がり期待」をより重視する傾向にある。投資経験が10年以上のベテランは「株主優待」や「投資先が好きな企業であること」の回答が目立った。 ◇資産形成・資産運用をしている人:下記の金融商品を保有していると答えた人 <金融商品:外貨預金/国内株式/外国株式/個人向け国債/その他債券 /投資信託(ETF、ETN、REIT含む)/個人年金保険(円建て)※公的年金、企業年金は除く/個人年金保険(外貨建て)/定期保険・養老保険(満期金あり、円建て)/定期保険・養老保険(満期金あり、外貨建て)/終身保険(満期なし、円建て)/終身保険(満期なし、外貨建て)/MMF・中期国債ファンド 外貨建てMMF/ラップ口座(ファンドラップ、SMAなど)/外国為替証拠金(FX)取引、差金決済(CFD)取引/先物・オプション商品、カバードワラント/仮想通貨(ビットコインなど)/金などの貴金属投資> ◇投資経験の目安※自己申告によるもの 初級  :投資経験1年未満 中級  :投資経験1年以上5年未満 上級  :投資経験5年以上10年未満 ベテラン:投資経験10年以上 (QUICK資産運用研究所)

NISA5年、投信窓販20年「異業種参入が顧客開拓に寄与」 QUICK資産運用討論会

QUICKは19日夕に東京都内で「総括討論 NISA5年、投信窓販20年」と題した資産運用討論会を開いた。金融庁の田原泰雅総合政策局総合政策課長は基調講演で、「資産形成ビジネスの拡大は日本経済にとっても重要だ」と述べた。登壇者からは異業種の参入で「新しい顧客の開拓が進む」との指摘も出た。 資産形成を後押しするために始めた少額投資非課税制度(NISA)について、金融庁の田原氏は「リスク性の高い資産への投資が伸び悩んだ理由について考える必要がある」とも語った。 パネルディスカッションでは「貯蓄から資産形成の5年間」をテーマに議論した。日銀の購入分を除く追加型株式投信の純資産残高が足元で伸び悩んでいることについて、大和証券の相沢淳一専務取締役は「成功体験が得られず、(個人の資産形成はこの5年間で)大きく進まなかった」と振り返った。三菱UFJフィナンシャル・グループの臼井均常務執行役員も、保険に比べて「(資産形成は)自分ごととして考えるようにはまだなっていない」と話した。 パネリストは向かって右から大和証券の相沢氏、コモンズ投信の伊井氏、MUFGの臼井氏、金融庁の田原氏 一方で、コモンズ投信の伊井哲朗社長はインターネット専業証券会社で毎月の積立投資が増えていると指摘し、「非対面チャネルでは30~40代の資産形成層が市場に入り、大きな流れが出てきた」と強調した。金融庁の田原氏も「新しい制度やサービスを使おうという人が出てきているため、彼らを成功体験につなげることが重要」と指摘した。 日本の金融資産の多くを持つ高齢層に向けてのサービスについても議論した。大和証券の相沢氏は「従来の営業担当者とは違う評価体系の『あんしんプランナー』を設け、高齢層に対応している。健康や医療といった運用以外のニーズへの対応も含めたパッケージを商品として提供することも検討している」と述べた。 コモンズ投信の伊井氏は「親の口座の大きな資金の動きが子供世代が把握できるなど、テクノロジーで解決できる部分もある」と話した。三菱UFJFGの臼井氏は「長生きリスクと資産がある層に向けた対応が必要だ。3者契約を結び、取引状況を定期的に家族に通知するというサービスも手がけている」と説明した。金融庁の田原氏は「高齢化が進む中で、どのようなサービスが求められるかを考えてほしい」と話した。 20年が経過した銀行での金融商品販売については、コモンズ投信の伊井氏は「チャネルが加わったことで新しく(金融資産を)保有する人が増えたのはプラスだったが、毎月分配型などに傾斜しすぎたのは残念だった」と述べた。大和証券の相沢氏は「銀行で初めて買った人が来店して相談するケースもあり、貯蓄から投資という点では後押しになった」と説明した。 最近は、通信会社など異業種から資産運用ビジネスへの参入も目立つ。三菱UFJFGの臼井氏は「業界の競争は厳しくなるが、顧客基盤を持っている企業の参入は業界の裾野拡大に貢献する」と述べた。大和証券の相沢氏は「(資産運用ビジネスの)プラットフォームを外部企業に提供することで資産形成層にサービスを提供することが可能になる」と話した。コモンズ投信の伊井氏は「丸井グループなど異業種の参入が活発になり、新しい層を開拓している」と指摘した。 討論会には228人が参加した。パネルディスカッションのモデレーターはQUICKの北沢千秋資産運用研究所長が務めた。 【日経QUICKニュース(NQN)】

変わりゆく「伝統的4資産」 企業年金の運用、グローバル区分の概念に

企業年金を運用する際の資産配分で国内と海外という地域の区分を取り払い、グローバル株式、グローバル債券として管理する傾向が強まっている。日銀の大規模な金融緩和が長引き、国内債券の収益低下に歯止めがかからない状況が背景にあるようだ。JPモルガン・アセット・マネジメントの調査によると、グローバル区分を採用する企業年金の比率は増加傾向にあり、2018年の調査では2割を超えた。 ■「伝統的4資産」の概念に変化、「代替投資」シフト鮮明 資産運用では投資対象を商品と地域から①国内株式②国内債券③海外株式④海外債券--の4つに区分するのが一般的で、この4つが「伝統的資産」と位置付けられている。一方、インフラ、実物不動産、不動産投資信託(REIT)、ヘッジファンド、コモディティといった伝統的資産以外の対象は「オルタナティブ(代替投資)」と呼ばれる。 JPモルガン・アセットが18年3~6月に国内の確定給付年金(DB)を中心に123の企業年金を対象に調査(2017年度企業年金運用動向調査)したところ、資産配分・資産管理で「伝統的資産」の概念が変化していることが明らかになった。 グローバル区分の採用が増える一方、代替投資の配分比率が高まる傾向も鮮明だ。企業年金があらかじめ計画する資産配分のベースで、代替投資の配分比率は17.1%と、08年度の調査開始以来で最高となった。     代替投資は株式や債券とは異なるリスク・リターン特性を有するため、運用効率の向上が図れるとして、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用資産の一部に組み入れ始めるなど、年金運用で活用が目立ってきた。 ■企業年金の運用は保守的で、予定利率も低下傾向 企業年金の運用は元来、予定利率を確実に達成する保守的な運用に徹し、リスクを取って大きく稼ぐのを目指す運用とは無縁だった。ところが国内の超低金利の長期化で、国内債券の収益が悪化し、企業年金の予定利率も低下傾向が続く。調査対象企業年金の平均で7年前の約2.8%から足元では約2.3%まで低下した。 グローバル区分採用や代替投資シフトは、予定利率を引き下げても国内債券を軸にした運用では達成するのは難しいという状況を反映している。JPモルガン・アセットは「現在は米国を中心とした世界的景気拡大の後期にあるが、いずれは景気後退のサイクルに入るので、運用難が続くことを踏まえる必要がある」と指摘する。企業年金の資産配分や資産管理の考え方も変化を迫られている。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

お金のデザインが拓く「新しい資産運用」 ポイント投資やロボアドで異業種連携

ロボアドバイザーサービス「THEO(テオ)」を運営するお金のデザインが資産運用の裾野拡大に向けた取り組みを加速している。ポイントサービスを使った疑似投資では、JR東日本、NTTドコモと相次いで連携。ロボアドでも提携先を着々と広げるなど、同社が仕掛ける「新しい資産運用」は、若年層や投資未経験者の需要を喚起している。 ■dポイント投資、利用者は3週間で10万人超 ドコモのdポイントを使ったポイント投資は、5月中旬に開始してから6月初旬までの3週間で、利用者が10万人を超えた。総運用ポイント数は約2億2000万ポイント(6月7日時点)で、1ポイント1円換算で2億2000万円に相当する。利用者10万人で単純に割ると、1人当たりの運用ポイント数は約2200ポイント(同2200円)になる計算だ。 ドコモの決算説明資料によると、dポイントクラブ会員数は6560万人(18年3月末時点)だから、ポイント投資利用者が増えていく余地は大きい。本人確認とマイナンバー登録が不要であるため、手軽に始められるからだ。 ポイント投資で連動するのは、ロボアドではなく、同社が5月中旬に新規設定した2本の追加型株式投資信託だ。「THEOグロース・AIファンド(世界の株式中心)」(AR311185)と「THEOインカム・AIファンド(世界の債券中心)」(AR312185)を組み合わせた2つのコースを用意した。 アクティブコースは「世界の株式中心」と「世界の債券中心」を80%対20%の割合で組み合わせた運用成績、バランスコースは45%対55%の合成運用にそれぞれ連動する。ユーザーは毎日17時頃に投資ポイントの増減を確認できる。 2本の投信は6月7日時点の純資産総額がそれぞれ1億6400万円、4600万円で計2億1000万円と、総運用ポイント換算値とほぼ一致。dポイントを運営するNTTドコモがポイント投資サービスの利用に合わせ、投信を実際に売買している公算が高い。 両ファンドへの資金流入額(推計値)は5月17日の設定から6月22日までの1カ月強の一日平均で計900万円程度。足元ではdポイントから投資に回るポイントが毎日じわりと増えてきている状況だ。 ■地銀経由のロボアド利用者は6割が投資未経験 一方で、THEOのロボアド・サービスは地方銀行を中心に提携先が増えている。地銀は6月22日時点で13行がサービスを利用できる。 THEOの総口座数は4万3700口座(18年5月末時点)で、地銀経由の申し込み者数は未公表だが、資産運用の拡大への貢献度は高い。6月中旬まで1年あまりの実績集計によると、地銀経由の利用者全体の54%を20代と30代で占め、投資未経験者は57%に達する。 インターネットやスマホの扱いに慣れているはずの若者も、ロボアドで資産運用を始めるのは地銀経由が少なくない状況だ。お金のデザインの中村仁社長は「地方では地銀が金融機関の要(かなめ)。親譲りの口座や地元企業の給料振り込み銀行として地銀は若者にとっても身近な金融機関になっている」と指摘し、「若い層がネットで資産運用を始めるかと言えば、まだそうなっておらず、既に預金口座をもっている銀行で始めるケースが多い」と解説する。 ポイントによる疑似投資を経て、THEOで実際に運用を始める利用者も出始めているという。中村社長は「資産運用を人々の毎日の日常生活の一部として何気なく当たり前のようにするのが、資産形成が本格的に根付いていくうえでの第一歩」と強調する。資産運用への入り口が増えることで、裾野が広がっていこうとしている。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)  

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