三井住友トラストAM、インデックスシリーズのパイオニア (インデックスファンドNAVI)

資産形成をしている個人投資家の間で、指数連動型のインデックス投資が広まりつつある。運用各社は様々なインデックスファンドを展開し、信託報酬の引き下げや品ぞろえの拡充など独自の取り組みでしのぎを削っている。 「インデックスファンドNAVI」では、運用各社のインデックスファンドシリーズについて、それぞれの特徴や強みを解説する。第2回は国内で初めてインデックスファンドをシリーズ化したパイオニア、三井住友トラスト・アセットマネジメントの「SMTインデックスシリーズ」を取り上げる。 ※「インデックスファンドNAVI」シリーズの第1回は6月27日配信の三菱UFJ国際投信 ■国内初のインデックスファンドシリーズ 同社が国内初のインデックスファンドシリーズとして2008年に立ち上げたのが「SMTインデックスシリーズ」だ。信託銀行系列の資産運用会社で培った運用ノウハウを生かし、「分かりやすい、始めやすい、続けやすい」をコンセプトにしたこのシリーズを設定した。 目指したのは、投資初心者でも長期で安定した資産形成に取り組めるようなファンドシリーズ。それまで長く年金基金や機関投資家に投資商品を提供してきた実績とノウハウを個人向けの商品開発にも応用した。 シリーズの名前は、会社の略称(三井住友トラスト・アセットマネジメント=SMTAM)から付けられた。2008年1月の設定当初は6本だけだったが、現在は28本に増加。純資産総額(残高)の合計は、今年1月に2000億円を超えた(図1)。 昨年11月には新しいシリーズを投入。手数料ゼロのノーロードで、ネット専用の「i―SMTインデックスシリーズ」を新設した。 ■「高品質」「幅広い品ぞろえ」が強み これらのシリーズの強みは「品質の高さ」(商品戦略企画部の宇野直樹部長)。インデックス運用では指数の値動きとの乖離(かいり)をいかに最小限にとどめるかが評価尺度の1つだが、同社のインデックスファンドはこの「トラッキングエラー」が小さいことでも定評があるという。 幅広い品ぞろえも特徴だ。シリーズを構成するのは、市場全体の動きに連動する伝統的なインデックスファンドだけではない。インデックスに関する深い知識を生かして商品開発に取り組み、より効率的な運用を目指す「スマートベータ(賢い指数)型」のファンドも展開している。 例えば「配当貴族指数」に連動するファンドは、一定期間以上連続して増配している優良株に投資する「スマートベータ型」だ。日本と米国、欧州を対象にした3種類をそろえた。 ■人気の「世界経済インデックス」、GDPに応じて分散投資 「SMTインデックスシリーズ」には、5本のバランス型ファンドがある。このうち2017年8月に設定した「SMT 世界経済インデックス・オープン」(64311178)は、先進国と新興国、日本それぞれの株式と債券の6資産が投資対象だ。株式と債券に半分ずつ投資し、地域別の組み入れ比率は国内総生産(GDP)総額の比率に基づき決定する。 シリーズとは別で、2009年1月から運用している「世界経済インデックスファンド」(64315091)は、設定来のリターン(分配金再投資ベース)が18年6月末時点で119.09%と高く、個人投資家の支持を集めている。このファンドは地域別のGDPの比率を参考にしつつ、専門家の知見なども取り入れながら運用する。年1回ごと地域別構成比を見直す点や投資対象は「SMT 世界経済インデックス・オープン」と同じだ(図2)。 ■統合で運用力を強化 同社は今年10月に三井住友信託銀行の運用部門と統合する予定で、国内で最大規模の運用会社となる。年金運用に強みを持つ同部門との統合により運用力を強化していく。 今後は顧客ニーズの多様化にどう対応するかが課題の1つ。インターネットで取引する個人投資家には「i―SMTシリーズ」を活用してもらい、「SMTシリーズ」では伝統的な指数にこだわらず、さらに進化した指数連動型の商品を投入していく方針だ。 (QUICK資産運用研究所 小松めぐみ)

投信「半数の個人が損失」の驚き 金融庁の共通指標どう読み解く

「投信で損失、個人の半数」「銀行投信の個人客、半数が損失」--。金融庁が金融機関の投資信託販売における「顧客本位の業務運営」を客観的に評価できる共通の成果指標(KPI)を6月29日に発表したのにあわせて、発表資料の別紙に掲載されていた金融庁の集計・分析結果をメディアなどがこぞって取り上げた。SNS(交流サイト)などではヘッドラインがひとり歩きし、「投信=損失」「投信=危険」といった論調の書き込みも目立っている。もっとも共通KPIの定義をよく読むと、必ずしも実態を映しているとは言えない面がありそうだ。 ■運用損益別顧客比率、全部売却済みの銘柄は集計対象外 共通KPIの「投資信託・ファンドラップの運用損益別顧客比率」は一定の条件で各行が算出。金融庁は資料の別紙に主要銀行や地方銀行の計29行をとりまとめた結果を掲載した。その対象は、基準日(今回は2018年3月末)時点で①投資信託およびファンドラップを保有している顧客②対象顧客が保有している投信--などだ。 すなわち基準日時点で全部を売却してしまった銘柄が含まれないのがポイントだ。集計では46%の個人が損失を抱えているという結果になったが、「利益確定を目的に全部が売却された投信を加えれば、損失を出した投資家は共通KPIよりも少ない」(地方銀行)との指摘が出ている。 2012年末以降のアベノミクス相場で日本株高・円安が進んだのに加え、この間は海外株も堅調に推移しており、長期で投信を保有すれば利益が出やすい環境にあった。金融庁の集計・分析でも「顧客の投資信託の平均保有期間と各販売会社の運用損益率0以上の顧客割合」は、長期保有していると利益を得られやすい傾向を示した。 だから3月末で半数近くの個人が損失を抱えているとしたら、含み益のある投信を解約して別の投信に乗り換えさせることで購入時手数料を稼ぐ「回転売買」の影響を懸念すべきかもしれない。今年は3月にかけて世界的に株価が調整局面にあったから、短期保有の投信は損失が出やすい環境だった。 もちろんその逆もしかりだ。含み損が膨らむのに耐え切れずに売却した投信は集計に含まれていないから、実態以上に良く見えている可能性も否定できない。実際に「利益確定と損失限定の解約は同じぐらいだから、共通KPIは実態に近い」(別の地銀)との声も聞かれた。 ■共通KPIは販売会社を評価する「ものさし」 SNSでは「投信はギャンブル」「タンス預金が正しい」といった投信の商品性そのものを問う声があがっているが、今回の共通KPIはあくまでも販売状況の「見える化」で、販売会社の姿勢を評価する「ものさし」のひとつだ。積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」が象徴するように、金融庁は投信を個人の資産形成の中核商品と位置付けている。 QUICK資産運用研究所が17年12月に約5000人の20~60代の個人を対象に実施した「個人の資産形成に関する意識調査」では、「現在投資をしていない理由(複数回答あり)」の首位は「損をしそうだ(過去に損をした)から」が最多の36.7%だった。販売会社に「顧客本位の業務運営」を促すために設けた共通KPIだが、投信の悪いイメージにつながるようだと、貯蓄から資産形成への流れに水をさしかねない。 ◇金融庁の発表資料はこちら 【比較可能な共通KPI】 ①運用損益別顧客比率 投信(ファンドラップを含む)を保有している顧客について、基準日時点の保有投信の購入時以降の累積運用損益(手数料控除後)を算出し、運用損益別に顧客比率を示す。個々の顧客が保有している投信について、購入時以降どれくらいのリターンを得ているかがわかる。 ②投信預かり残高上位20銘柄のコスト・リターン ③投信預かり残高上位20銘柄のリスク・リターン 設定後5年以上の投信の預かり残高上位20銘柄について、銘柄毎および預かり残高加重平均のコストとリターンの関係、リスクとリターンの関係を示す。中長期的に販売会社がどのようなリターン実績を持つ商品を顧客に多く提供してきたかを確認できる。 (QUICK資産運用研究所 伊藤和之)

著名ブロガーも金融庁職員も熱く語った 「インデックス投資ナイト」盛況

指数連動型運用を志向する個人投資家にとって夏の恒例行事となった「インデックス投資ナイト」が今年は七夕の7日夜に東京・渋谷のイベントハウス型飲食店「東京カルチャーカルチャー(運営はイッツ・コミュニケーションズ)」で開かれた。今回で11回目を迎えたイベントは年々注目度が増し、入場券は即完売。約160人が集まり、満員御礼となった会場を、QUICK資産運用研究所の研究員が突撃取材した。 2時間半にわたるイベントは三部構成。第一部は、たぱぞう氏(米国株投資ブロガー)、水瀬ケンイチ氏(インデックス投資ブロガー)、田村正之氏(日本経済新聞社 編集委員兼紙面解説委員)の3人が対談し、進行役はイーノ・ジュンイチ氏(投資ブロガー)。この数年は米株式相場が絶好調とあって、「米国株投資と国際分散投資、どっちがいいの?」をテーマに議論を交わした。 第二部は金融庁で個人投資家向け意見交換会「つみたてNISA Meetup(通称:つみップ)」を担当する今井利友氏(総務企画局 政策課 総合政策室 金融税制調整官)に対して、参加者が自由に質問。進行役は実行委員長のASK氏(投資ブロガー)が務めた。 第三部は、カン・チュンド氏(晋陽FPオフィス代表)を進行役に、ゆうき氏(投資ブロガー)と個人凍死家テリー氏(投資ブロガー)、山崎元氏(経済評論家)と竹川美奈子氏(ファイナンシャル・ジャーナリスト)の2組がそれぞれ「インデックス投資を継続するためのメンタリティ」の考え方を披露した。 登壇者のブロガーはゴーグルで目を隠したスノーボーダー・スタイルや、カモがネギをしょってくるのを風刺したかぶり物を身につけるなど、ユーモアたっぷりの姿で登場。登壇者からは「ビールを生で3杯ください」「私はワインがほしい」といったお酒の注文が次々と出され、舞台上はくつろぎ感が広がった。 もっとも参加者は登壇者や会場内のスクリーンを凝視しながらメモを取るなど真剣そのもの。知的探究心を満足させるには十分な内容だったようだ。金融庁で積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」の普及促進を中心とした広報活動に携わる女性職員も「内容のレベルは結構高く、自分でも勉強になった」と話していた。 ■「投資はストーリー」「自分のライフスタイルに合った投資を」 登壇者の熱い話に会場からは共感や賛同の意を示す拍手が度々起こった。コメントをまとめた。 「投資はストーリー。自分の投資の軸があれば、多少、運用成績が上下しても動じなくてすむ。動じないために心の中で投資の砦をつくること」「米国株でも国際分散投資でもどちらでもよい。自分の主張を通すために、他人のやり方を批判する必要はなく、多様性の中を生きている者どうし、お互いの意見を尊重すればいい」(たぱぞう氏) 「個別株に投資するには分析の時間が相当必要。自分はその時間を割くことができなかったので、ほったらかし投資ができる国際分散のインデックス投資にたどりついた」(水瀬氏) 「米国株の好調さは、企業経営者が利益を設備投資に回さず株主を重視する『短期経営主義』に支えられている面があり、『追い風参考記録』程度にみておくのがいいかもしれない」(田村氏) 「つみたてNISAなどNISA制度の恒久化に尽くしていきたい」「NISA制度の使い勝手をよくするには個人の非課税限度額の管理をしっかり行う必要があるが、実現にはブロックチェーン(分散型台帳)技術が使える可能性もある」(今井氏) 「自分は相場の上げで利益確定、下げで買いなど現金の比率を大きく調整するが、基本は一度買ったらそのまま保有するバイ&ホールドがおすすめ。長期運用の途中で退場しないためには、経済の仕組みや歴史を知ること、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用を知ることが大切」(ゆうき氏) 「ルールを決めて投資を始めた方は、何があってもそのルールを踏襲すること。そのうえで、興味のある個別株などインデックス投資以外を試すのがあってもいいと思う」(個人凍死家テリー氏) 「人についていってはいけない。自分のリスクは自分だけのもの。仕事の状況、収入、負債など自分の置かれている現状を把握して自分のライフスタイルに合った投資スタイルを見つけていって欲しい。投資方針書を作成するのも効果的」(竹川氏) 「投資額は許容できる損失額を目安に決めるのがいい。例えば、老後に65歳から95歳まで30年(360ヵ月)生きるとして、毎月の生活費が1万円減ってもいいなら360万円の損失が許容できるということ。投資額に対して最悪の場合に3分の1は損するとみなすと、投資可能額は360万円の3倍の1080万円になる」(山崎氏) ■参加者も「新たなつながり」「ホンネで語り合い」 主催者、登壇者、参加者に感想を聞いたところ、こうした交流の広がりを喜ぶ声が目立った。参加者の声をまとめた(名前はブログやツイッターのハンドルネームを含む)。 「本年も関心の高い個人投資家の方々が集まり、刺激的な良い交流の機会になったのではないか。会も盛況で、投資家自身が企画・開催していることに意義があると思うし、チケットが数分で完売になるほど多くの方が参加してくれとても光栄」(実行委員長のASK氏) 「例年以上の盛り上がりになったようだ。女性の比率も上がってきており、世の中的に投資が少し身近になってきたのかもしれない。10年間ずっと裏方の企画・運営をやってきて11年目にして初登壇。登壇者はこんなにも緊張するものなのかを知ると同時に、こんなにも楽しいものなのかと、改めて感じた」(実行委員の水瀬ケンイチ氏) 「実行委員の間でいちばん苦労したのは、インデックス投資をテーマにするマニアックなイベントで毎年違う内容を組み立てること。それでも今年も充実した内容を提供することができ、多くの参加者に楽しんでもらえてよかった」(実行委員のイーノ・ジュンイチ氏) 「実行委員は6人全員がボランティア。おおよその流れは事前に取り決めるが、細かくは決めておらず、本番はどうしても登壇者任せの面がある。今回は登壇者の人柄や巧みな話術でうまくまとまった感が強かった。懇親会もツイッターでは知っていても会うのは初めての方とも話ができ、大変有意義だった」(実行委員のkenz氏) 「いくつか課題は散見されたが、ツイッターやブログ等の反応をみるに、おおむね成功だったのではないか。これもひとえに参加者、登壇者、会場運営の東京カルチャーカルチャーのスタッフ、そして会場に来られなかった多くの参加希望者あってのものと感謝。本業を持ちながらも手弁当で企画を練り上げた、すばらしい実行委員会のメンバーに出会えてよかった」(実行委員のyb氏) 「新たに投資を始めた方の参加が例年以上に多く、投資への関心が増えていることを実感。ここ数年、『インデックス投資が報われた時代』になっているのは素直にうれしい。今後、厳しい相場環境がまたやってくるかもしれないが、そんな時にも投資家、そして自分への支えとなるよう、この会を長く続けていきたい」(実行委員のセロン氏) 「お台場で開催していた時から、チケットを取ろうとしても買えなかった。それが今回登壇者として参加できたのは大変うれしい。壇上のビールはうまさ格別。ついつい話しすぎた。10年の年月を経て、こうして着々と投資が広がり、偏見が薄れていく。私としては米国株をコアとした幅広い投資をこれからも発信していきたい」(たぱぞう氏) 「インデックス投資は本来、派手ではなく地味な分野。それにも関わらず、年々参加希望者が増えているのは、市場平均以上の運用パフォーマンスを追い求めるのが合理的な選択とは言えないとの考えが広がってきたからかもしれない。つみたてNISAの開始で運用コストが下がってきたのも影響している」(山崎氏) 「10年前に比べ、初心者や女性が増えてきた印象を受けた。コツコツ投資を続けるには『自動化(しくみ化)する』『ルール化する』『仲間を作る』のが大事。登壇者の話を聞くだけでなく、資産形成をしている仲間と交流できる機会があるのはよいことだと思う」(竹川氏) 「『株価が下がっているときの方が楽しい』という話をした。市況が悪化した時に株式の比率を上げていく私の投資法に起因しているが、こうしたタイミングを見て株式比率を上下させる手法には理論上の正当性はなく、他人には勧められないので、妻や友人にはつみたてNISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)での国際分散・積み立て・バイ&ホールドの投資を勧めている」(ゆうき氏) 「『かつて投資で後悔するという失敗をした』一人として、話をする機会を得た。これまでと比べて20代、30代の参加者が明らかに増え、インデックス投資、広く言えば資産形成が多くの若人に浸透しつつあるのを肌で感じた。今後、市場を荒波が襲う時もあるかと思うが、そのような時にも多くが集える場として、本会が継続されるのを強く願う」(個人凍死家テリー氏) 「『投資を始めたのは2016年や2017年』として手を挙げた人が30名程度はいたが、初心者ほど、『仲間』を求めていると思う。マニアックではなく片手間でできるインデックス投資がもっとメジャーになってくれば、投資に対する偏見も薄れていくのではないか」(カン氏) 「インデックス投資の本質に迫るテーマ設定だったため、登壇者同士のやり取りがマニアックになり過ぎず、中級者の私にはちょうど良い内容で大変参考になった。『金融庁に何でも聞く』も面白かったが、時間が少し短かった。事前の質問受け付けや会場にいない人からツイッターで質問してもらう、といった形式を採り入れるともっと面白くなるのではないか」(けいのすけ氏) 「今年は投資の続け方・リスクへの耐え方が大きなテーマだった。つみたてNISAを始めた初心者が相場の調整で『もうやめよう』という気分になってしまう懸念がある中、『リスク許容度には経済的と気分的の2つの側面があるとの認識が重要』など、リスクへの向き合い方が語られたのは有意義だった」(安房氏) 「初参加。金融庁開催のつみップとはまた一味違う、有志の方々が開催という『自由度』のメリットを最大限に活かした、まさに『投資家による投資家のための投資イベント』。普段、孤独になりがちな個人投資家らが全国から一同に集まり直接対面し、有識者や著名な方々とも直接交流できるのが大きな魅力。『毎年発売数分でチケット完売』なのも納得」(アキウマレ氏) 「久しぶりの参加。第一部のブロガー対談では二人とも『インデックス投資を勧めている点』や『米国株ブロガーが急速に増え、米国株に少し過熱感を感じている』など、互いの意見に共通点も多く、冷静で客観的な双方の視点は参加者にとって、とても参考になったのではないか」(つばさ氏) 「今回のインデックス投資ナイトは色々な要素が網羅されていて良かった。初心者とマニアの両方を満足させるのは難しいが、その難しいところをなんとかしてみようという運営委員の皆さんの心意気が感じられた。楽しかった」(虫とり小僧氏) 「20代、30代の投資家、女性の参加者が近年で一番多かった。インデックス投資の裾野が広がっていることを実感。11回目ということで、内容が洗練されていた。ブロガー、有識者と司会者のテンポよいかけあいが見事だった」(ファイナンシャルアドバイザーの佐渡玉希氏) 「米国株投資と国際分散投資をそれぞれ実践しているブロガーさんのリアルな話や、金融庁の方の登壇など、工夫を凝らした演出で楽しかった。参加者に女性が増えていたことや皆さんが熱心にメモを取っていたのが印象的」(ファイナンシャル・プランナーの岩城みずほ氏) 「同じテーブルに、会社の確定拠出年金をどう運用するのか勉強するためにインデックス投資家のブログを読み漁り、初めて参加した方が二人もいた。世間一般ではまだまだ投資の普及は広がっていないが、それでも徐々に老若男女問わずインデックス投資が広まってきていると実感」(シオイ氏) 「印象に残ったのは『相場が下落してからその後にどうしようではなく、下落に耐えられるよう前もって準備するのが重要で、例えるなら、地震が起きてからではなくその前から対応しておくのと同じ』という竹川さんの話。話のあと、本当の地震が起きたのにはびっくり」(リバモ氏) 「初参加。20代~30代の参加者が多く、ツイッターやノートなどに真剣にメモをとって考えを学ぼうとする勉強熱心な人が多いと感じた。多種多様な考えがあるのを改めて感じ、他人の投資手法を否定する人が少なくない中、自分自身が満足できる損益がでていればそれでいい、ということを再認識した」(ずずず氏) 「初参加だったが開場直後にほぼ満員となっていてびっくり。女性の参加者が意外と多く、登壇者が遠慮なくお酒を飲んでいたのが面白かった。金融庁の人がこのようなイベントでメッセージを出すのは素晴らしい取り組みだと思う」(YUMA氏) 「老若男女が普段の属性をすべて忘れて、投資への関心というただ一点を共通項として存分に語り合う大規模なオフ会。参加者同士の間でもブログの匿名ハンドルネームや本名で紹介しあい、お互いが交流を深めていく。普段は話しにくい『投資』について、1年分の熱意を皆が存分に吐き出せた7月の夜だった」(WATANKO氏) 「インデックス投資のブログを昨年から始めた。多くのインデックス投資家との交流を深めたくて参加。自分と同じ個人投資家の話を生で聞けたのが印象的だった。有識者による説明とは目線の違う、投資家が今まで培ってきた経験を聞くことができる機会はなかなかなく、とても有意義」(もことん氏) 「東京以外では投資家が集まる大規模なイベントはなかなかない。全国の投資家と意見交換ができる貴重な場のため可能な限り参加。ツイッターやブログで面識のある方と実際に交流することができて大変有意義。第一部の対談の中での『自身の投資法を主張するために他人の投資法を批判する必要はない』というコメントが最も印象的」(くは72氏) 「お酒を飲みながら金融商品について自由に語るというのは、金融機関の後ろ盾がなくタブーのない運営スタイルだからこそ実現できると感じた。参加者の投資経験が本当に幅広く(半数以上がリーマン・ショック未経験者)、色々な先輩投資家と気軽に意見交換ができる貴重な機会となった」(眼鏡小僧氏) 「『インデックス投資に端を発した長期投資の裾野の拡がり』を感じた。参加者に若い人、女性もたくさんいて、『普通の人』が増えてきたような気がする。異なる投資スタイルの人に対しても、お互いを理解できるマインドが醸成されてきているのを感じられてうれしかった」(NightWalker氏) 「初参加。私の場合、投資・資産運用に関する情報収集は書籍やネットが中心で、誰かと会うことはなく、半ば孤独の状態。友人や職場の同僚と気軽に話せる話題ではなく、ましてや対面での情報交換や議論の機会は皆無。多くの参加者や運営者、登壇者の方々と交流でき、新たなつながりを持てたのに満足」(ザリガニ氏) 「初参加。雰囲気が想像以上にカジュアルなのが一番印象的。登壇者の方がお酒を飲みながらも真面目に投資について語らう。親近感を感じながらしっかり勉強させてもらった。懇親会でも、実行委員や登壇者の方とフランクに話ができたうえ、長期投資を志す個人投資家の皆さんと交流が図れた」(青井ノボル氏) 「2016年以来2回目の参加。たぱぞうさんの説明は説得力があった。水瀬さんは最悪の事態を少しでも回避できるように単一国投資にはしないということで、自分もビビリなのでこの意見に大きく賛同。平時にきちんと投資方針書を作成し、『自動化』『ルール化』『仲間をつくる』という竹川さんの説明は自分に突き刺さった」(Hiro_san氏) 「初参加。登壇者、参加者ともにお酒を飲みながらということもあり、一方的に講演を聞くのではなく、参加者も隣同士で自然に会話が始まり、特に誰に気遣うこともなく、ホンネで語り合えるいい機会だと思う」(ファイナンシャル・プランナーの横田健一氏) 「現在25歳。大雨で乗車予定の夜行バスが運休になり、予定の2倍近くの出費になったけど、それだけの価値があった。日常ではなかなか『投資の話』ができる相手や機会がなく、孤独感を抱きがちなので、インデックス投資をしている同好の士に会うことができたので大満足」(ミドノン氏) 「登壇者や参加者のみなさんの投資に対する考え方を学び、自分の投資について客観的に見つめ直すいいきっかけとなった」(30代養護学校職員) 「4~5年前に最初に参加した時より『普通』の方や『投資マニア』ではない方が増えたように感じた。女性も増え、カジュアルに参加しやすい雰囲気だった。コツコツ買えば、年に一回リバランスをする程度で済むのがインデックス投資。年に一回このような会で楽しく情報収集するのを楽しみにしている」(おぱる氏) ▼インデックス投資ナイトのサイトはこちら (QUICK資産運用研究所 高瀬浩、望月瑞希)

投信、相性の良い組み合わせは? 6月末時点の「相関係数」一覧

複数の投資信託に分散投資する際、有効な組み合わせを探すのに便利なのが「相関係数」と呼ばれる統計指標だ。投資対象で区分した「新QUICK投信分類(大分類)」について、6月末までの1年間(日次データ)と10年間(月次データ)の相関係数をまとめた。 複数のファンドに投資する場合、値動きの傾向が違うタイプを組み合わせると分散投資の効果が出やすい。例えば、投資家のリスク選好局面で買われやすい株式に投資するファンドと、逆に売られやすい債券に投資するファンド。この両方を持っていれば反対方向の値動きが打ち消しあって、全体のリスク(価格の振れ幅)を抑えることができる。 有効なファンドの組み合わせは「相関係数」を使うと探しやすい。相関係数は投資対象が異なる2つのファンドが似た値動きをするほどプラス1に近づき、逆の値動きをするほどマイナス1に近づく。ゼロなら値動きの関係がなかったことを示す。相関係数が低いファンド同士を組み合わせると、全体の価格変動リスクを低減しながらリターン向上を狙う分散投資効果が期待できる。 日次1年の表の「先進国株式型」を見ると「国内REIT型」との相関が0.22と低いが、「グローバル株式(先進・新興複合)型」との相関係数は0.95と高い。「先進国株式型」の投信を保有していて、もう1ファンド購入を検討している場合、「グローバル株式(先進・新興複合)型」を購入するよりも「国内REIT型」を組み合わせた方が、よりリスクを小さくすることができると言える。 (QUICK資産運用研究所)  

変わりゆく「伝統的4資産」 企業年金の運用、グローバル区分の概念に

企業年金を運用する際の資産配分で国内と海外という地域の区分を取り払い、グローバル株式、グローバル債券として管理する傾向が強まっている。日銀の大規模な金融緩和が長引き、国内債券の収益低下に歯止めがかからない状況が背景にあるようだ。JPモルガン・アセット・マネジメントの調査によると、グローバル区分を採用する企業年金の比率は増加傾向にあり、2018年の調査では2割を超えた。 ■「伝統的4資産」の概念に変化、「代替投資」シフト鮮明 資産運用では投資対象を商品と地域から①国内株式②国内債券③海外株式④海外債券--の4つに区分するのが一般的で、この4つが「伝統的資産」と位置付けられている。一方、インフラ、実物不動産、不動産投資信託(REIT)、ヘッジファンド、コモディティといった伝統的資産以外の対象は「オルタナティブ(代替投資)」と呼ばれる。 JPモルガン・アセットが18年3~6月に国内の確定給付年金(DB)を中心に123の企業年金を対象に調査(2017年度企業年金運用動向調査)したところ、資産配分・資産管理で「伝統的資産」の概念が変化していることが明らかになった。 グローバル区分の採用が増える一方、代替投資の配分比率が高まる傾向も鮮明だ。企業年金があらかじめ計画する資産配分のベースで、代替投資の配分比率は17.1%と、08年度の調査開始以来で最高となった。     代替投資は株式や債券とは異なるリスク・リターン特性を有するため、運用効率の向上が図れるとして、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用資産の一部に組み入れ始めるなど、年金運用で活用が目立ってきた。 ■企業年金の運用は保守的で、予定利率も低下傾向 企業年金の運用は元来、予定利率を確実に達成する保守的な運用に徹し、リスクを取って大きく稼ぐのを目指す運用とは無縁だった。ところが国内の超低金利の長期化で、国内債券の収益が悪化し、企業年金の予定利率も低下傾向が続く。調査対象企業年金の平均で7年前の約2.8%から足元では約2.3%まで低下した。 グローバル区分採用や代替投資シフトは、予定利率を引き下げても国内債券を軸にした運用では達成するのは難しいという状況を反映している。JPモルガン・アセットは「現在は米国を中心とした世界的景気拡大の後期にあるが、いずれは景気後退のサイクルに入るので、運用難が続くことを踏まえる必要がある」と指摘する。企業年金の資産配分や資産管理の考え方も変化を迫られている。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

ESG投資の浸透で変わる企業経営 真価を問うアクティブ運用

企業によるESG(環境・社会・企業統治)重視の経営が熱を帯びてきている。大きなきっかけは、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が3つのESG指数に連動した日本株運用を2017年から始めたことだ。運用資産額が160兆円を超える世界最大規模の機関投資家は、他の投資家の運用に与える影響も大きく、投資対象となる企業にとっても軽視できない。 ■「企業経営とESGは一心同体」「真価の評価はアクティブ運用」 「いまや企業経営とESGは一心同体」。日本電産の永安正洋IR・CSR推進部長は、6月下旬に都内で開かれたESG投資セミナーのパネルディスカッションに登壇し、「GPIFのESG指数の評価ポイントである環境負荷管理や労働者の人権擁護、企業統治の確立などに取り組むのは会社として当たり前の最低ライン」と強調した。 永安氏は「ESG全般を考慮に入れたGPIFの総合型ESG指数の採用銘柄選定基準は企業のリスク管理面の評価が軸」と分析し、「企業がグローバルな社会的課題に対しどのように取り組み、ステークホルダーと呼ぶ利害関係者すべて(顧客、取引先、従業員、株主、地域コミュニティ、地球環境)が満足するよう貢献していくのかという将来を含めたESG活動の真価を評価するのは、(指数との連動を目指す)パッシブ運用ではなく、(運用担当者の采配で投資する)アクティブ運用の役割」と説いた。 GPIFのESG指数の採用銘柄候補について「現状では時価総額の大きい500銘柄に限定されており、東証1部に上場する約2000社のうち、4分の3はESG指数に採用される可能性がない」とも指摘した。 ■「本業で社会的課題を解決するのがESG」「キーワードはインクルージョン」 従来のCSR(企業の社会的責任)やSRI(社会的責任投資)が企業の社会的な貢献活動を評価する側面が強かったのに対して、ESGはあくまで本業そのもので社会的課題の解決をするという考え方が浸透してきた。製造業だけにとどまらず、小売業・金融業も同じだ。 一緒に登壇した丸井グループの加藤浩嗣IR部長兼経営企画・ESG推進担当は「国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)の中で示されている『誰も置き去りにしないで、すべての人が幸せを感じる』という意味の『インクルージョン(包摂)』に着目し、インクルージョンを事業経営のキーワードにしている」と説明した。 実際、同社が発行した統合報告書(共創経営レポート2017)の中では「インクルージョン」「インクルーシブ」という言葉が何度も繰り返し出てくる。具体例として、日本人女性の足のサイズをほぼ100%カバーするようサイズを揃えた履き心地の良い靴の販売や、既存の金融機関が対応しきれていない若者向けの金融サービスなどを挙げ、「インクルージョンを本業で展開し、消費者需要を掘り起こすのにつなげている」という。 ■欧州では自主的な「責任投資」が「義務」化への流れも 高崎経済大学の水口剛教授はパネルディスカッションに先立って「世界のESG投資の動向と今後の展望」というテーマで基調講演。「世界では官民でESG投資を推進する動きが目立ってきている」と指摘し、「日本では例えば、環境省が主催し、金融業界首脳を交えてESG金融のあり方などを議論している『ESG金融懇談会』が近々、提言をまとめる見通しになっている」と加えた。 欧州でのESG投資はこれまで機関投資家による自主的な「責任投資」に委ねられていたが、機関投資家によるESGの考慮や、投資アドバイザーが顧客にESGを重視するか否かを確認するのを「法制として義務化」しようとする動きも出てきたという。 今回のセミナーを主催した三井住友アセットマネジメントは、ESG評価を基にしたアクティブ型投資信託「三井住友・日本株式ESGファンド」(79312182)の運用を2月から始めた。信託報酬は税込み年率1.1664%、販売手数料の上限は税込みで3.24%。 運用の特色として、ESGに主体的に取り組む企業は中長期的には企業価値が高まっていくことを見込んで銘柄を発掘し、アナリストの独自分析で、今後ESG評価が高くなると期待される日本企業に投資する。6月末まで4カ月間のリターンはマイナス0.9%で、配当込みTOPIX(東証株価指数)のマイナス1%をわずかながら上回った。 セミナーは投信の販売会社を中心に120人近くが参加した。ESGに取り組んでいる企業の声を直接聞くことで、企業の経営や意識が大きく変わりつつあることを実感したようだ。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

投信販社の評価に共通3指標 金融庁、コストや収益を「見える化」

金融庁は29日、金融機関の投資信託販売における「顧客本位の業務運営」を客観的に評価できる共通の成果指標(KPI)を発表した。これまでは一部の販売会社が自主的に設定・公表してきたため、投資家が比較するのが難しかった。金融庁が長期的にリスクや手数料に見合ったリターンがどの程度かなどを「見える化」した3つの指標を導入したことで、今後は共通KPIと自主的なKPIの両方を総合的に判断して販売会社を評価することができる。 共通KPIは以下の通り。金融庁は販売会社が毎年3月末を基準として年次更新で公表することを期待している。 【比較可能な共通KPI】  ①運用損益別顧客比率 投信(ファンドラップを含む)を保有している顧客について、基準日時点の保有投信の購入時以降の累積運用損益(手数料控除後)を算出し、運用損益別に顧客比率を示す。個々の顧客が保有している投信について、購入時以降どれくらいのリターンを得ているかがわかる。  ②投信預かり残高上位20銘柄のコスト・リターン  ③投信預かり残高上位20銘柄のリスク・リターン 設定後5年以上の投信の預かり残高上位20銘柄について、銘柄毎および預かり残高加重平均のコストとリターンの関係、リスクとリターンの関係を示す。中長期的に販売会社がどのようなリターン実績を持つ商品を顧客に多く提供してきたかを確認できる。 共通KPIによって、販売会社が高コストの投信ばかりを売っていないか、リスクに見合ったリターンが出ている投信を販売しているかなどがより鮮明となる。販売会社は従来以上に「顧客本位の業務運営」の実践が求められそうだ。 ◇金融庁の発表資料はこちら 投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIについて (QUICK資産運用研究所)

三菱UFJ国際投信、「eMAXIS」など投資家のニーズに幅広く対応 (インデックスファンドNAVI)

積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の開始や個人型確定拠出年金(イデコ)の加入者拡大が追い風となり、投資初心者にも分かりやすい指数連動型(インデックス型)の投資信託に対する関心が一段と高まっている。 ファンドマネジャーが主に市場平均以上の成績を目指して運用するアクティブ型と違って、インデックス型は運用の巧拙で成果に差がつきにくいとあって、運用各社はコストの引き下げや品ぞろえなど独自の取り組みでしのぎを削っている。 各社のインデックスシリーズにどのような特徴や強みがあるのか、「インデックスファンドNAVI」として、運用会社ごとに解説していく。第1回は三菱UFJ国際投信。同社が運用する主なインデックスシリーズは「eMAXIS(イーマクシス)」「eMAXIS Slim」「つみたてんとう」の3種類がある(表A)。 ■古株の「eMAXIS」、安さと豊富なラインアップで残高伸ばす  同社が最初に設定したのは「eMAXIS」。設定は2009年10月で、他社のインデックスシリーズと比べても古株に入る。当時は販売手数料ゼロの「ノーロード」が珍しく、安いコストと豊富なラインアップなどが投資家に受け入れられ、右肩上がりで純資産総額(残高)を伸ばした。現在では、国内の主なネット向けインデックスシリーズの中で最大規模に成長した。 当初はシリーズで8本だけだったが、徐々にラインアップを増やし現在では36本をそろえる。2014年には少額投資非課税制度(NISA)での利用が増え、残高が大きく伸びた。全国各地の地銀に販路を拡大していたことも奏功し、特に「eMAXIS バランス(8資産均等型)」への資金流入が増加した。  ■低コストの「Slim」誕生  17年2月、新たに誕生したのが「eMAXIS Slim」シリーズだ。運用コストに敏感なネット投資家が増えてきたのに合わせ、「コストを徹底的に下げた」(プロダクト・マーケティング部長の吉田研一氏)新しいシリーズを立ち上げた。  「Slim」は目論見書や運用報告書などを電子交付にして印刷コストを削減。スリムな商品ラインアップとスリムな信託報酬がコンセプトで、信託報酬については「業界最低水準の運用コストを将来にわたってめざし続ける」という思い切った方針を打ち出した。この発想が多くの個人投資家の共感を呼び、ネット証券各社の積み立て投資額ランキングでは上位に顔を出している。  今年始まった「つみたてNISA」の開始に合わせて投入した「つみたてんとう」シリーズの売れ行きも順調だ。同シリーズは主に金融機関の対面販売向けの商品。信託報酬は「Slim」シリーズほど安くないが、つみたてNISAの制度説明も網羅した販売用資料や金融機関の販売員向けの研修などで手厚くバックアップする体制を整えた。  吉田氏はつみたてNISAに関して「利幅は薄いが、制度を利用して投資を始めるきっかけとなれば、その意義は大きい」と話す。 ■「投資家のニーズに幅広く対応」が強み  同社は積み立て投資の働きかけに力を入れている。資産運用を始める人、続ける人を応援するサイト「ポートステーション」を開設。投資家が5つの簡単な質問に答えるだけで「eMAXIS最適化バランス」シリーズの5ファンドの中からおススメ商品を提案する無料のロボット・アドバイザー(ロボアド)「ポートスター」も導入した。  また、都営地下鉄の駅構内には、漫画仕立ての冊子「つみたてNISAによろしく」を陳列した。若年層が抱える「投資が怖い」「損をする」といった誤解や警戒感を解きたいとの思いが根底にある。  3種類のインデックスシリーズをそろえる同社の最大の強みは「投資家のニーズに幅広く対応できる」(吉田氏)ことだ。金融機関の窓口で販売員に相談しながら積み立て投資を始めるなら「つみたてんとう」シリーズ、コストにこだわりネット証券などで自ら商品を選ぶ人には「eMAXIS Slim」が向く。ほかの2つのシリーズにはないラインアップから選んだり、ロボアドの助言を受けたい人は「eMAXIS」が選択肢になりそうだ。 <関連サイト> ◇「eMAXIS」 ◇「eMAXIS Slim」 ◇「ポートステーション」 ◇「ポートスター」 ◇「つみたてNISAによろしく」 (QUICK資産運用研究所 小松めぐみ)

お金のデザインが拓く「新しい資産運用」 ポイント投資やロボアドで異業種連携

ロボアドバイザーサービス「THEO(テオ)」を運営するお金のデザインが資産運用の裾野拡大に向けた取り組みを加速している。ポイントサービスを使った疑似投資では、JR東日本、NTTドコモと相次いで連携。ロボアドでも提携先を着々と広げるなど、同社が仕掛ける「新しい資産運用」は、若年層や投資未経験者の需要を喚起している。 ■dポイント投資、利用者は3週間で10万人超 ドコモのdポイントを使ったポイント投資は、5月中旬に開始してから6月初旬までの3週間で、利用者が10万人を超えた。総運用ポイント数は約2億2000万ポイント(6月7日時点)で、1ポイント1円換算で2億2000万円に相当する。利用者10万人で単純に割ると、1人当たりの運用ポイント数は約2200ポイント(同2200円)になる計算だ。 ドコモの決算説明資料によると、dポイントクラブ会員数は6560万人(18年3月末時点)だから、ポイント投資利用者が増えていく余地は大きい。本人確認とマイナンバー登録が不要であるため、手軽に始められるからだ。 ポイント投資で連動するのは、ロボアドではなく、同社が5月中旬に新規設定した2本の追加型株式投資信託だ。「THEOグロース・AIファンド(世界の株式中心)」(AR311185)と「THEOインカム・AIファンド(世界の債券中心)」(AR312185)を組み合わせた2つのコースを用意した。 アクティブコースは「世界の株式中心」と「世界の債券中心」を80%対20%の割合で組み合わせた運用成績、バランスコースは45%対55%の合成運用にそれぞれ連動する。ユーザーは毎日17時頃に投資ポイントの増減を確認できる。 2本の投信は6月7日時点の純資産総額がそれぞれ1億6400万円、4600万円で計2億1000万円と、総運用ポイント換算値とほぼ一致。dポイントを運営するNTTドコモがポイント投資サービスの利用に合わせ、投信を実際に売買している公算が高い。 両ファンドへの資金流入額(推計値)は5月17日の設定から6月22日までの1カ月強の一日平均で計900万円程度。足元ではdポイントから投資に回るポイントが毎日じわりと増えてきている状況だ。 ■地銀経由のロボアド利用者は6割が投資未経験 一方で、THEOのロボアド・サービスは地方銀行を中心に提携先が増えている。地銀は6月22日時点で13行がサービスを利用できる。 THEOの総口座数は4万3700口座(18年5月末時点)で、地銀経由の申し込み者数は未公表だが、資産運用の拡大への貢献度は高い。6月中旬まで1年あまりの実績集計によると、地銀経由の利用者全体の54%を20代と30代で占め、投資未経験者は57%に達する。 インターネットやスマホの扱いに慣れているはずの若者も、ロボアドで資産運用を始めるのは地銀経由が少なくない状況だ。お金のデザインの中村仁社長は「地方では地銀が金融機関の要(かなめ)。親譲りの口座や地元企業の給料振り込み銀行として地銀は若者にとっても身近な金融機関になっている」と指摘し、「若い層がネットで資産運用を始めるかと言えば、まだそうなっておらず、既に預金口座をもっている銀行で始めるケースが多い」と解説する。 ポイントによる疑似投資を経て、THEOで実際に運用を始める利用者も出始めているという。中村社長は「資産運用を人々の毎日の日常生活の一部として何気なく当たり前のようにするのが、資産形成が本格的に根付いていくうえでの第一歩」と強調する。資産運用への入り口が増えることで、裾野が広がっていこうとしている。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)  

資産形成を本気で考える「官僚たちの夏」 霞が関セミナーに600人

国の省庁が集まる東京・霞が関にある文部科学省の講堂が20日夜、中央省庁に勤務する職員で埋め尽くされた。内閣官房内閣人事局、金融庁と厚生労働省が合同で開いた「霞が関iDeCo・つみたてNISAセミナー」に参加するためだ。 ■ライフプランに基づいた資産運用の考え方を解説 講師は独立系ファイナンシャルプランナー(FP)の神戸孝氏が務め、「ライフプランに基づいた資産運用の考え方とiDeCo・つみたてNISAの活用方法」と題した40ページあまりの資料をもとに、1時間半にわたって資産運用の考え方について説いた。 参加者は600人を超え、男女比は6対4、年齢は20、30、40歳代がそれぞれ3割前後だった。 神戸氏は「なぜ資産運用が必要か」「ライフプランとはどんなものでどう設計するか」「資産を運用するうえでのポートフォリオの作り方やメンテナンス方法」といった資産形成・資産運用の重要性や具体的な方法を解説。資産運用を2つに色分けし、儲けるためにドキドキ感のある「趣味としての投資」と、退屈で面白くないがお金に働いてもらう「仕事としての運用」があると強調した。個人型確定拠出年金(iDeCo)や積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の説明は概略にとどめた。 ■セミナー後に質問の列 金融庁はつみたてNISAの浸透策のひとつとして、働く職場を通じて普及を図る「職場つみたてNISA」の活用に力を入れている。中央省庁職員が率先して職場つみたてNISAを活用するのは、「まずは隗(かい)より始めよ」として国民に資産形成の手本を示す意味合いからも重要だ。今回の大規模セミナーはそのきっかけになりそうだ。 参加者は熱心に耳を傾け、真剣な面持ちでペンを走らせていた。講演後も20人近くが会場に残り、神戸氏への質問の順番待ちの列を作った。一般NISAとつみたてNISAの使い分け方法、アクティブファンドを選ぶ際のポイントなどの質問をぶつけた。1度目の質問を終えてからまた列に戻り、2度目の質問をしていた女性もいた。 セミナー開始前にも、テーブルに置かれた銀行や証券会社、生命保険会社の関連販売資料を受け取るために、大勢が列をなすなど、資産運用への関心の高まりがうかがえるセミナーとなった。中央省庁職員が自らの資産形成にも本腰を入れ始めた。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

学生投資連合×金融庁 「つみップ」参戦、質問攻めに

サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会で日本が初戦を迎えた19日夜、多くの人が応援のために街に繰り出し始めた時間帯に、金融庁の会議室にカジュアルな服装の若者が集まった。金融庁が積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)普及の一環で開いている個人投資家向け意見交換会「つみたてNISA Meetup」(通称:つみップ)に参加するためだ。 参加者は主に首都圏の大学の投資サークルで活動している約50人。理念に「学生と金融をつなげ、学生の金融リテラシーを高める」を掲げて、全国の投資サークルの取りまとめ役である「学生投資連合USIC(Union Students Investment Clubs)」が所属メンバーに声をかける形で実現した。 参加申込者の内訳は大学1~2年生が約7割で、3年生が約2割、残りが4年生と大学院生だった。ゲストとして、投信ブロガー「虫とり小僧」さんらも加わった。 ■「さあ、皆さんはどう思いますか?」に率直な質問が次々と 冒頭で金融庁の「つみップ」担当者が「つみたてNISA」を制度化した背景や個人にとってのメリットなどを解説。参加者が大学生ということで、金融庁の生い立ちや役割などの概略も説明した。 担当者からの「さあ、皆さんはどう思いますか?」という問いかけをきっかけに、大学生が次々と手を挙げ、率直な疑問や質問をぶつけた。 【大学生の疑問・質問】 ・成人年齢の引き下げが決まったので、親の同意無しに投資できる年齢も下がると想定される中で、学校での早い段階の投資教育が重要になると思うがどう考えるか。 ・投資信託の販売手数料が(欧米などと比べて)高止まりしているのはそもそもなぜか。 ・楽天ポイントで投資できるようだが、現状を知りたい。ポイント投資によって個人の金融資産を構成する現預金と株式・投信の割合はどう変わるのか。 ・手数料が高いというラップ口座についてどう考えているか。 ・つみたてNISAで長期に儲かる確率が高いのは分かったが、損するリスクはないのか。     ■多くは仮想通貨に関心、女性は「長期志向」との声も 投資サークルに入っていることもあり、多くは短期の個別株投資や仮想通貨への関心が高いものの、つみたてNISAへの関心はまだ低いようだった。つみたてNISAは成人にならないと始められないのを知らない学生も多かった。大学生が毎月一定額を投資するのは難しい事情もある。虫とり小僧さんは「話しかけてくる学生のほとんどが仮想通貨のことを聞いてきた」と話していた。  参加者はつみたてNISAに関心があったからというよりは、「一度、金融庁に来てみたかった。懇親会でゲストの方々と話をしてみたかった」という動機も多かったようだ。「金融庁のビルは格式が高く立派。入るのに少しドキドキ緊張したが、みんなと一緒なので大丈夫だった」という声が聞かれた。  投資サークルとは別に参加した女子大学生は「リスクをとっても起業(スタートアップ)にはとても関心があるが、投資で短期に儲けようとは思わない。つみたてNISAにも興味がある。女性の方が長期志向だからかもしれない」と話していた。  今回集まったのは既に株式や仮想通貨投資の経験があるか、または関心がある大学生だ。今後は「投資は怖い」と思うような若年層に資産形成をどう根付かせていくのかも課題になる。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

「ブラジル・ボンド・オープン (毎月)」と組み合わせに適した投信は?  「相関係数」活用術

いま保有している投資信託と組み合わせて別の投信を購入したいが、何を選べばいいか分からない――。そんなときに参考になるのが「相関係数」だ。 米国の長期金利の上昇などを背景に不安定な値動きが続く「新興国債券型」との組み合わせに適した投信を探してみる。通貨レアルの下落で運用悪化が目立つブラジル関連で残高が最大の「ブラジル・ボンド・オープン(毎月決算型)」(0431508B)は過去1年間のリターン(分配金再投資ベース)がマイナス5.69%と、既に保有している投資家にとっては心配な運用成績だ。 そこで、分散投資効果のより高いファンドと組み合わせてみる。まずは値動きの相関が薄い「MHAM J-REIT インデックスファンド(毎月決算型)」(4731403A)との相性を検証する。国内の不動産投資信託(REIT)に投資する「国内REIT型」は、「新興国債券型」との1年間の相関係数(日次データで算出)が0.12と低い。 両ファンドに50%ずつの割合で投資した「合成」の1年間のリターン(分配金再投資ベース)はマイナス1.87%。「ブラジル・ボンド・OP (毎月)」だけに投資した場合と、「MHAM J-REIT インデックスF (毎月)」だけに投資した場合のプラス1.96%の中間だった。 価格変動を示す1年間のリスク(標準偏差)は「ブラジル・ボンド・OP (毎月)」だけに投資した場合が13.32%で、「MHAM J-REIT インデックスF (毎月)」は10.24%。2つの投信の平均を単純に計算すると11.78%になるが、実際にこの組み合わせで同額ずつ投資した「合成」のリスクは8.74%と、3.04ポイント低くなる(図1参照)。この差が相関係数の活用によって得られるリスク低減の効果だ。 <QUICKの情報端末「Qr1」を使って簡単に比較> 次に比較的近い値動きをする「グローバル債券(先進・新興複合)型」の「世界のサイフ」(0231106C)との組み合わせを確認してみる。「新興国債券型」と「グローバル債券(先進・新興複合)型」の相関係数は0.93と高い。 「合成」のリターンはマイナス3.39%で、「ブラジル・ボンド・OP (毎月)」と「世界のサイフ」の中間の値になった。「合成」のリスクは8.70%で、2つの投信の平均(9.79%)を1.09ポイント下回る(図2参照)が、低減効果は「新興国債券型」と「国内REIT型」の組み合わせより小さい。 このようにリターンはどちらの組み合わせでも2つの投信の平均になる一方、リスクの低減効果は相関が低い組み合わせのほうが大きくなる。複数の投信に投資して分散効果を上げるには、値動きの相関が低い投信の組み合わせが有効と言える。   (QUICK資産運用研究所 望月瑞希)

米ブラックロック、日本企業とも精力的に対話 「ESGへの取り組み」重視 

米資産運用大手のブラックロック。「iシェアーズ」シリーズという上場投資信託(ETF)を手掛ける運用会社として日本の個人投資家にも知られているが、同時に名だたる日本企業の大株主でもある。長期保有の機関投資家として、上場企業との目的を持った建設的な対話(エンゲージメント)活動を精力的にこなしている。2017年度(17年4月~18年3月)に経営幹部との話し合いの場を持った日本企業229社の株式時価総額を合計すると、東証1部の約半分に達したという。 ■ESG情報と財務情報、補完し合って効果発揮 同社の対話は「企業のESG(環境・社会・企業統治)への取り組み状況を確認するのが重要」(日本法人であるブラックロック・ジャパンの江良明嗣インベストメント・スチュワードシップ部長)というスタンスだ。気候変動が経済活動に及ぼす影響が大きくなると同時に、企業が短期経営主義(ショート・ターミズム)に陥らず持続的に成長するには、企業のESGへの積極的な対応が欠かせないという認識が世界的に高まっているためだ。 一方で「ESGという言葉は曖昧で色々な解釈ができる」(江良氏)ため、独自の視点で企業のESG要因を見極め、企業価値評価に活用している。例えば、企業の長期的な価値を評価するうえで競合他社との差別化要因やその持続性を調査するが、ESG要因となる非財務情報だけでは不十分で、従来の基本的な財務分析を補完する形で初めてESG情報が有効になると考えている。 ■ESG評価と財務評価の溝は「対話」で見極め 江良氏は「企業のESG要因はESG評価機関が付与している格付けなどのデータを使って分析することが多いが、同じ企業に対する評価が複数の評価機関で違っていたり、評価時点が1年前など最新の企業活動を反映していなかったりする場合も少なくない」と指摘する。評価機関によるESG評価は、財務分析も踏まえた同社の評価とかい離が大きい場合もある。 企業との対話ではESG情報の特性を有効活用し、ESGと財務評価のギャップ(溝)を経営状況を見極めるヒントにしている。同社は指数に連動する成績を目指すパッシブ運用を得意とするが、「指数(市場平均)との連動性を低運用コストで維持するのが運用目標のため、運用戦略の一環として指数を構成する企業とのエンゲージメントが必要になると必ずしも言えない部分もある」(江良氏)。パッシブ運用では株式の売却に制約がかかることによって保有期間が長期化するため、長期投資家の観点から株式市場全体の底上げを図る重要性を認識し、対話しているようだ。 ■個人にもESG重視の視点 米国ではミレニアル世代(1980年代から2000年頃までに生まれた主に35歳以下)の若い世代や女性のESGへの関心は他の世代や男性よりも高いという調査データがあり、江良氏は「日本でも企業経営者から『国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)』に熱心なことで人材をひきつけやすくなってきた」という話を耳にするという。 長期投資に対する考え方や投信への意見、パフォーマンスなどを積極的にネット発信している投信ブロガーと呼ばれる人々の間でも、全国各地で様々な事業活動を応援するクラウドファンディング(一般から小口資金を募集)型のマイクロ投資ファンドや、インターネット経由で個人が企業に融資するソーシャルレンディングといった社会貢献型の金融商品を購入する動きもみられる。個人の間でも「ESG」への意識が高まっているだけに、運用会社にはESG視点での商品開発や運用が一段と求められそうだ。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

「為替ヘッジあり」投信、コスト上昇に要注意   

米国の10年物国債利回りが3%前後まで上昇するなどドル金利の魅力が高まる一方、為替差損を回避(ヘッジ)するためのコストが跳ね上がっている。日米の金利差が拡大しているからだ。海外の資産で運用する投資信託を保有している人、これから購入を検討している人は注意が必要だ。 QUICK資産運用研究所の試算によると、米ドルの為替ヘッジコストは足元で2.5%程度(図表1)まで急上昇している。米連邦準備理事会(FRB)が事実上のゼロ金利政策を続けていた2015年12月頃まで1%以下で推移していたが、利上げに転じた後はじわじわコスト高が進んでいる。 為替ヘッジは、先物予約などを活用して為替変動による運用成績の悪化を防ぐのが目的だ。為替変動リスクを抑える代わりに、その分のコストがかかる。為替ヘッジコストは理論上、通貨間の短期金利差で決まり、通貨それぞれの需給要因も影響する。日銀のマイナス金利政策が続く一方で、FRBの段階的な利上げによって日米金利差が拡大し、米ドルの為替ヘッジコストが上昇傾向にある。 為替ヘッジコストが安かった時期には、為替変動リスクを抑えながら相対的に利回りの高い海外債券で運用する投信が安定運用志向の強い投資家の人気を集めた。そのころにヘッジ付きの外債投信を購入した人は、改めて投信の為替ヘッジコストや通貨構成比率などを確認したい。 こうした情報は、運用会社が毎月発行する運用レポート(月報)などに掲載されていることが多い。主に債券で運用するファンドの場合は、最終利回りも併せて確かめたい。最終利回りが為替ヘッジコストと信託報酬の合計よりも低いと、運用損が生じる可能性が高いので気を付けたい。 例えば、為替ヘッジをしながら主に米国の国債で運用するファンドがあるとする。現在の米10年債利回りは3%程度。ここから為替ヘッジのコスト(2.5%)と信託報酬(1%程度と仮定)を単純に差し引くと、運用益は0.5%のマイナスになる。 海外資産で運用する投信は、「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」のコースを選べるケースが多い。どちらを選択すべきか悩むひとのために、為替ヘッジのメリットとデメリットを簡単にまとめた(図表2)。 「ヘッジあり」は値動き(変動率)が相対的に小さくなるが、為替ヘッジのためのコストがかかり、リターンのマイナス要因になる。特に円より金利が高く、金利差が大きい通貨ほどコストが高くなる傾向があるので注意が必要だ。需給要因などでヘッジコストがマイナスになり、「為替ヘッジプレミアム」を獲得できる場合もある。また、ヘッジ付きの運用は円高局面で為替差損を抑えられる半面、円安局面では為替差益を享受できない。 一方、「ヘッジなし」は値動きが相対的に高くなる。為替変動がそのままファンドの値動きに反映されるためだ。ヘッジなしで海外資産に投資する場合、為替要因も含めてリスクが自分の許容範囲に収まっているか確認しておく必要がある。また、ヘッジしないと円安局面で為替差益を得られるが、円高が進むと損失が広がるリスクがある。 北米の投資適格債券で運用する外債投信について、為替ヘッジありとなしの平均的な値動きをみると(図3)、「ヘッジあり」は変動が小さくなだらかだ。一方、「ヘッジなし」は米ドルに対する円相場に連動する形で値動きの振れが大きいことが分かる。 ヘッジありとなしのどちらを選ぶかは、自分が円高局面の損失リスクに耐えられるかどうかに加え、今後の相場見通しもポイントになる。今後の円安基調を見込むなら「ヘッジなし」、反対に円高基調を予想する場合はヘッジコストの水準に注意しながら「ヘッジあり」が候補になる(図表4)。 ただし、為替相場の先行きを予測するのは専門家でも難しい。どうなるか分からない場合は「ヘッジあり」と「ヘッジなし」の両方を組み合わせて保有したり、一括購入せず積み立てで買ったりするといったやり方もある。ファンドによっては部分的にヘッジしたり、為替水準に応じてヘッジするかどうかを判断したりするタイプもある。 為替相場だけでなく、為替ヘッジコストも常に変動する。購入後は運用会社の運用レポート(月報)やマーケットレポートなどを定期的に確認することも重要だ。 (QUICK資産運用研究所 石井輝尚)

家族そろって「つみップ」 金融庁が都内で「ママ部」開催

金融庁が2日午後に都内で開いた「つみたてNISA Meetup」(通称:つみップ)の「mama(ママ)部」は、家族連れを含む約30人の女性が参加した。今回は「経済に強いママを増やす会」と組み、新人ママ向けのイベントとして参加者を募った。 つみップは積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)に関する個人との意見交換会。昨年4月から開始し、これまで女性を対象とした「女子部」は3回、「mama部」は名古屋で1回開催していた。 ■家族連れで参加、立ったまま赤ちゃんをあやすママも 東京証券取引所の協力のもと、会場は東京証券会館(東京・中央)内のカフェと、東京開催では定番である金融庁の会議室を飛び出した。集まったママは、30代が4割弱、40代が4割強。ママに連れられた夫、赤ちゃんを含む子供十数人も参加した。家族で参加した投資経験8年の女性会社員は「夫につみたてNISAの良さを知ってほしい」と話していた。 泣きやまぬ赤ちゃんの声が場に溶け込んで自然と気にならないアットホームな雰囲気に包まれて進行。立ったまま赤ちゃんを抱っこし、あやしながら耳を傾けるママの姿も見られた。 川元氏(経済に強いママを増やす会) ■先輩ママから説得力あるアドバイス イベントの冒頭では、金融庁のつみップ担当職員が「今なぜ、つみたてNISAなのか」をテーマに制度の背景と狙いを説明。続いて、経済に強いママを増やす会を主宰する川元由喜子氏が「貯蓄と投資はどう違うの?」と題して講演した。 日本株ファンドの運用経験を持つ川元氏は「日本経済がデフレ期にあった過去の長い期間に、個人が現預金を保有したままだったのは間違った選択ではなかった。ただ、これから日本経済が長い目で見て成長するとみるならば、日本株市場全体に投資したほうが良い」と説いた。 また「株式投資は上がったり下がったりする紙切れを売買するイメージを持たれやすいが、ちゃんと実態が伴っている。会社の設備投資など経営活動に回り、会社の利益の増減が株式の価値に反映される」という点を企業のバランスシートの図と照らし合わせて解説した。 最後に、独立系ファイナンシャルプランナー(FP)の岩城みずほ氏は「誰でも始められる資産運用の方法」として「お金の人生設計」を「6つのステップ」に分けて考える方法を紹介した。投資商品や金融機関の決定は最後の最後で、まずは「人生設計の基本公式」を参考にするなどして、老後に必要となる毎月の積み立て額やリスク資産をいくら保有するかを決めるのが先と説明した。 岩城氏は老後の生活に備える以前の問題として、住宅ローンの支払いや教育費の工面の苦労があり、自身の体験からも「教育費は本当に大変。子供が進路を変更し当初の想定通りにはいかないことも」と早めの計画的な準備の大切さを強調した。 ■積極的な質疑応答が展開 少し遠慮ぎみに始まった質疑応答も、1人目が口火を切ると、積極的な質疑応答が展開された。概要は下記の通り。 岩城氏(ファイナンシャルプランナー) Q:「出口や20年後から先はどうしたらいいのか」 A:「いつ止めるかの出口をあまり考える必要はなく、淡々と積み立てていき、必要な時に必要な額を解約するのでいい。値下がりしていて解約したくなければ、現金から必要資金を充てるのでもいい。20年後も課税口座で積み立てを続けるのは可能」(岩城氏) 「『国民の資産形成になくてはならない制度』という声が高まれば、非課税期間の制約が撤廃され恒久化する可能性もある。英国がそうだった」(金融庁職員) Q:「ジュニアNISAの活用方法は」 A:「夫婦そろって『つみたてNISA』を満額活用することをまずは優先し、それでも余裕資金があれば『ジュニアNISA』を活用するという考え方でいいのでは。子供への投資教育を念頭に少額で『ジュニアNISA』を活用する使い道もある」(金融庁職員の個人的意見) 子供が成長した時に「長期・分散・積み立て投資」の成果を体感してもらうために、生きた投資教育の教材として「ジュニアNISA」を少額で使うというのは、子供思いのママの知恵かもしれない。子供2人と一緒に参加していた投資ブロガーの「アキウマレ」さんもそうした少額投資実践者の一人で、「3人の子それぞれの名義の『ジュニアNISA』で、毎月5千円ずつ積み立てしている」という。 ■夫からも質問の挙手 Q:「どのようなタイミングで投資内容を見直したらよいか」 A:「内外の株式・債券の4資産に分散投資するのが基本とされるが、国内債券型ファンドに関しては、今の金融緩和による低金利状態では運用コストを払ってまで投資する価値が乏しいのが一例」(岩城氏) A:「運用成績が良くないから見直すというのは間違いで、自分がとれるリスクを超えた時に資産配分を調整しリスクを抑えるのが正しい。最悪の場合、3割くらいは損することを覚悟し、2割くらいまで下がっても驚かず、慌てないのが大事。そこで売ってしまったら損が確定するが、長期には上昇し回復する可能性が高い」(金融庁職員の個人的見解) 「株価や投資信託の価格を毎日見る必要はない。値段を毎日チェックすると誤った判断につながりやすい」(川元氏) 質問の挙手は同行した夫からも上がった。 Q:「岩城氏のいう『お金の運用方法は誰でも同じ』には大いに共感する。低コスト化のおかげで運用コストの差が小さくなっている『つみたてNISA対象ファンド』の中で、最も効率的な運用をするにはどのような点に注目したらいいか」 A:「目論見書の運用方針や運用残高の伸びなどを自分でチェックして、自己責任で運用するのが大事」(岩城氏) ■つみたてNISA、7割が投信を初めて購入 金融庁職員によると、一般NISAの口座数は退職金などまとまった資金を持つ60歳以上の高齢層が半数以上。これに対して、つみたてNISAの口座開設者の85%が50歳代以下の現役世代でしかも、全体の約7割が初めて投信を購入したという。 投資初心者がつみたてNISAに向ける関心度合いは高い。つみップ参加者の投資経験もそれを裏付ける。今回の「mama部」は「投資経験なし」が全体の4割を占めた。5月に広島、福岡、姫路、大阪(女子部)で開催したつみップでは、「投資経験なし」が申し込み者のそれぞれ24%、12%、61%、34%だった。 「mama部」の参加者には「将来の教育費を工面」するうえでの「つみたてNISA」の活用が響いたようだ。2歳の子供を持つ女性は「教育費を準備するために学資保険に入っているので参考になった」という。別の女性は「一般NISAで投資しているが今年5年の非課税満期を迎える。高校生の子の学費はその収益を充てることになりそうだが、その後はどうするか思案中」と話していた。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

楽天証券、IFA経由の預かり資産拡大  「3つのA」と「全天候型」を重視

インターネット証券大手の楽天証券が「対面型」の独立系金融アドバイザー(IFA)を介した預かり資産を伸ばしている。IFAは特定の金融機関に所属せず、顧客に資産運用のアドバイスをすると同時に、金融商品の売買に関する仲介業務を担う。楽天証券は2008年にIFA事業を始め、今年3月末時点で70社(所属IFAは計857人)と契約、預かり資産残高は3226億円、顧客口座数は約2万4000に達した。預かり資産と口座数は1年間でそれぞれ41%、29%増えた。 ■「3つのA」と「全天候型」を重視 「預かり資産(asset under management)残高」「アドバイザー(advisor)数」「口座(account)数」――。同社の常務執行役員でIFA事業部長の大嶋広康氏がIFAビジネスを進めるうえで何より重視しているのは3つのAだ。「収益は後からついてくる。預かり資産の拡大を優先するのは、IFAサービスが顧客から受け入れられていることの何よりの証左となる」と力説する。 同社はIFA事業者と契約する際、将来にわたる事業の継続性を最重視する一方、事業者が持つバックグラウンドの多様性を許容する。結果として「様々な専門性を持つIFAが集まり、全体として市場環境の変動に左右されにくい『全天候型』の分散された顧客資産基盤が構築されている」(大嶋氏)からだ。 ■カンファレンスで契約IFAを表彰 今月25日には都内で18回目となる「楽天証券IFAカンファレンス」を開催した。同社と契約しているIFA事業者と所属IFAを対象に、半期の事業基盤の伸びなどをランキングし、上位の会社と個人を表彰する催し。東京・大阪2拠点で開催し、東京会場には全国から200名あまりのIFAが集まった。 ランキングは上位3社に「アイ・パートナーズフィナンシャル」「CSアセット」「ファイナンシャルスタンダード」が入った。 楽天証券は毎月のようにIFAを志願する個人への説明会も開催している。2017年は約250人が参加した。大手金融機関で営業活動に従事している30代半ばの若手も多いが、「金融商品の販売には長けているのに、個人の資産運用に関して総合的にアドバイスやコンサルティングする実力は十分ではないケースがある」(大嶋氏)のが実情のようだ。 ■IFA養成のビジネススクールを7月に開始 楽天証券はきんざい(東京・新宿)と連携して7月からプロのIFAを養成する「楽天ファイナンシャルアドバイザー・ビジネススクール」を開講する。CFP(認定ファイナンシャル・プランナー)や証券アナリストなどの知識を学ぶ基礎コースと、金融商品に関する専門知識に加え、顧客に対して包括的なアドバイスを提供するための実務力を養成する実践コースに分かれ、どちらも有料だ。 「金融商品を販売するのではなく、顧客に寄り添った生涯のコーチとして、付加価値の高い提案ができる実務家を養成するのが主な目標。IFAとしてのその後の独立や、既存の契約IFA事業者への紹介も積極的に取り組む予定」(同社IFA事業部の渡邊めぐ美氏)という。 楽天証券全体の預かり資産残高は3月末時点で5兆円を突破しており、IFA経由はまだ全体の1割に満たない。楽天証券の契約IFAの平均像をみると、IFA1社当たりの預かり資産残高は平均で46億円、1人当たりは4億円弱。IFA事業の収益性は「2017年の平均で預かり資産残高に対して年率1.5%程度」(大嶋氏)のようだ。 預かり資産を拡大しながらIFA事業の収益性を上げていくうえで、顧客の収益や満足度を高める顧客本位のアドバイザーをどのように育成していくのかが重要になってきそうだ。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

「人生100年見据えた資産形成を」 QUICKが資産運用討論会

QUICKは23日午後、「資産運用新時代 覚醒する1800兆円」と題した討論会を開いた。野村アセットマネジメントの栗崎修常務執行役員は講演で、投資信託について「資産寿命を延ばすことが重要だ」と指摘。投信市場の拡大に向けて「『人生100年時代』を見据えた、安心で計画的な商品提案が求められる」と強調した。 ゆうちょ銀行の小藤田実・営業部門執行役は、投信の販売状況について「新規の口座開設件数は順調に拡大しており、意識が浸透し始めている」と語った。また「(比較的若い世代の)20~40代の潜在的なニーズにも働きかけていきたい」と課題も挙げた。 ロボット投資を手掛けるお金のデザイン(東京・港)の中村仁社長は、若年層の投資への理解を深めるためには「まず経験することが重要」と指摘した。NTTドコモの「dポイント」を投資に活用するサービスは、想定をはるかに上回るユーザー数を獲得できたという。「資産運用が毎日の当たり前のサービスとして溶け込んでいくようになる」との展望を示した。 お金のデザインの中村仁社長 討論会では講演のほか、金融庁の油布志行参事官と北沢千秋・QUICK資産運用研究所長が、家計の資産形成について対談した。油布氏は少額投資非課税制度(NISA)について「恒久化が非常に大きな課題だ」と指摘。今年から始まった「つみたてNISA」なども含め、より利便性を高めていく意向を示した。 対談する金融庁の油布志行参事官(右)と北沢千秋・QUICK資産運用研究所長 資産運用討論会は今年で5回目。証券会社や運用会社の担当者など約250人が参加した。 【日経QUICKニュース(NQN)】

「フィデリティUSリートB」と組み合わせに適した投信は? 「相関係数」活用術

いま保有している投資信託と組み合わせて別の投信を購入したいが、どんなファンドを選べばいいか分からない――。そんなときに参考になるのが「相関係数」だ。実際に購入可能なファンドを組み合わせ、QUICKの情報端末「Qr1」の銘柄比較機能を使ってリスクの分散効果を見ていく。      主に海外の不動産投資信託(REIT)に投資するタイプの投信で純資産総額(残高)が最大の「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」(3231203C)について、組み合わせに適したファンドを探す。 まず検証するのは、値動きの異なる「ひふみプラス」(9C311125)との相性。国内の株式に投資する「国内株式型」で、フィデリティUSリートBが属する「海外REIT型」との相関係数(日次1年)は0.49と低めだ。 両ファンドに50%ずつ1対1の割合で投資した「合成」のリターン(分配金再投資ベース、週次1年・年率)は12.27%。「フィデリティ・USリート・ファンドB」だけに投資した場合の▲3.30%と「ひふみプラス」だけに投資した27.85%の中間だった。 価格変動を示すリスク(標準偏差、週次1年・年率)は「フィデリティ・USリート・ファンドB」だけに投資した場合が13.23%で、「ひふみプラス」は15.55%。2ファンドの平均を単純に計算すると14.39%になる。ところが実際にこの組み合わせで同額ずつ投資した「合成」のリスクは12.62%で、平均値より1.77ポイント低くなる(図1参照)。この差がリスク低減の効果だ。 <QUICKの情報端末「Qr1」を使って簡単に比較> 次に比較的近い値動きをする「先進国株式型」の「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」(42311052)との組み合わせを見てみる。「海外REIT型」と「先進国株式型」の相関係数は0.75と高い。 「合成」のリターンは▲1.11%で、「フィデリティ・USリート・ファンドB」と「ピクテグローバルインカム株式F(毎月)」の中間の値になった。「合成」のリスクは10.68%で、2ファンドの平均(11.93%)を1.25ポイント下回る(図2参照)。 リスク低減効果は値動きの異なる「海外REIT型」と「国内株式型」の組み合わせの方が大きくなった。 このようにリターンはどちらの組み合わせでも2つのファンドを足して半分にした数値を維持する一方、リスクの低減幅は相関が低い組み合わせの方が大きくなった。複数のファンドに投資して分散効果を上げるには、相関が低く値動きの傾向が異なるファンドの組み合わせが有効と言える。 (QUICK資産運用研究所 望月瑞希)

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