「フィデリティUSリートB」と組み合わせに適した投信は? 「相関係数」活用術

いま保有している投資信託と組み合わせて別の投信を購入したいが、どんなファンドを選べばいいか分からない――。そんなときに参考になるのが「相関係数」だ。実際に購入可能なファンドを組み合わせ、QUICKの情報端末「Qr1」の銘柄比較機能を使ってリスクの分散効果を見ていく。      主に海外の不動産投資信託(REIT)に投資するタイプの投信で純資産総額(残高)が最大の「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」(3231203C)について、組み合わせに適したファンドを探す。 まず検証するのは、値動きの異なる「ひふみプラス」(9C311125)との相性。国内の株式に投資する「国内株式型」で、フィデリティUSリートBが属する「海外REIT型」との相関係数(日次1年)は0.49と低めだ。 両ファンドに50%ずつ1対1の割合で投資した「合成」のリターン(分配金再投資ベース、週次1年・年率)は12.27%。「フィデリティ・USリート・ファンドB」だけに投資した場合の▲3.30%と「ひふみプラス」だけに投資した27.85%の中間だった。 価格変動を示すリスク(標準偏差、週次1年・年率)は「フィデリティ・USリート・ファンドB」だけに投資した場合が13.23%で、「ひふみプラス」は15.55%。2ファンドの平均を単純に計算すると14.39%になる。ところが実際にこの組み合わせで同額ずつ投資した「合成」のリスクは12.62%で、平均値より1.77ポイント低くなる(図1参照)。この差がリスク低減の効果だ。 <QUICKの情報端末「Qr1」を使って簡単に比較> 次に比較的近い値動きをする「先進国株式型」の「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」(42311052)との組み合わせを見てみる。「海外REIT型」と「先進国株式型」の相関係数は0.75と高い。 「合成」のリターンは▲1.11%で、「フィデリティ・USリート・ファンドB」と「ピクテグローバルインカム株式F(毎月)」の中間の値になった。「合成」のリスクは10.68%で、2ファンドの平均(11.93%)を1.25ポイント下回る(図2参照)。 リスク低減効果は値動きの異なる「海外REIT型」と「国内株式型」の組み合わせの方が大きくなった。 このようにリターンはどちらの組み合わせでも2つのファンドを足して半分にした数値を維持する一方、リスクの低減幅は相関が低い組み合わせの方が大きくなった。複数のファンドに投資して分散効果を上げるには、相関が低く値動きの傾向が異なるファンドの組み合わせが有効と言える。 (QUICK資産運用研究所 望月瑞希)

つみたてNISA始動4カ月 金融庁が普及に腐心、金融機関は試行錯誤

積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)が始動し、4カ月が経過する。3月末の口座数は50万口座前後と伝わるなど、2014年に創設された従来のNISAの口座開設ペースと比べると10分の1以下。金融庁は個人に安定的な資産形成を促す制度の普及・利用促進に腐心するが、4年前と比べて盛り上がりに乏しいのは否めない。運用会社や販売会社など金融機関も試行錯誤を続けている。 金融庁が4月21日に個人投資家向けに開いた「つみたてNISAフェスティバル(つみフェス2018)」は、募集開始から4日間で定員の250人が埋まるほど人気化し、当日の会場は熱気に包まれた。同庁はより多くの人に資産形成に関心を持ってもらえるように、昨年4月から開いている個人投資家との意見交換会(つみたてNISA Meetup)もあっという間に定員が埋まっている。投資に興味・関心がある個人が着実に増えていることは事実だ。 「想定した資産形成層に想いは届いている。課題は普及のペースと稼働率を上げることだ」。運用会社の三菱UFJ国際投信が販売会社のキーパーソンを全国から招いて4月24日に開いた「つみたてフォーラム」で、プロダクト・マーケティング部長の吉田研一氏は力を込めた。つみたてNISA推進は「家計にとっては小さな成功体験が金融リテラシー(向上)につながり、金融機関にとっては安定的な資金ルートができる。つみたてNISAをきっかけとした金融取引のプラットフォームの提供も可能だ」と説いた。 つみたてフォーラムの様子 「つみたてフォーラム」のパネルディスカッションに参加したゆうちょ銀行は、つみたてNISAの推進で存在感を示している。申し込みのほとんどは投信を初めて買う新規顧客だという。テレビCMや店頭ののぼり旗に加え、大相撲の懸賞旗でもアピールするなど積極的な取り組みが目立つ。 CMによる販売促進では三菱UFJ銀行も引けを取らない。有名俳優を起用したミュージカル風の映像を目にした人は少なくないはずだ。同行は有人店舗とインターネットのハイブリッド化を進め、対面チャネルと非対面チャネルを上手に使い分けている。きっかけは店頭、契約はウェブサイトという流れも増えているようだ。 横浜銀行は申し込み・稼働率ともにまずまずといった見解を示した。従来NISAに比べ、つみたてNISAは現役世代の割合が圧倒的に多いのが特徴だ。土日を活用したセミナーや住宅ローンを契約した顧客へのアプローチなど、地道な取り組みが大きな基盤づくりにつながる可能性を秘める。 制度普及の成否はスタートが肝心。金融庁と金融機関は新たな投資家の開拓にひた走る日々が続きそうだ。 (QUICK資産運用研究所 小松めぐみ)

攻めのイベント「つみフェス2018」、ピンク色の会場に250人

21日午後の東京・赤坂のイベント会場は、ピンクの服や小物でコーディネートした人で溢れかえった。金融庁が個人投資家を対象に開いた「つみたてNISAフェスティバル(#つみフェス2018)」は、同庁の女性職員の発案で「something pink(何かピンクのモノ)」というドレスコードを事務局が呼びかけたからだ。 つみフェスは昨年9月に続き2回目の開催。国民の安定的な資産形成を目的に、今年から始まった積み立て型の少額投資非課税制度「つみたてNISA」の普及を促進する目玉イベントだ。前回の200人よりも定員を増やしたにも関わらず、募集からわずか4日間で250人の枠が埋まるほどの人気を集めた。 参加登録者の内訳は251人のうち、3分の2が男性で、年代別では30~40代が4分の3を占めた。来場者の8割程度が「つみたてNISA」を既に始めたか、始める手続きをしたと答えていた。  受付の様子 <参加登録者の内訳> 【性別】 男性:164人(65%) 女性:87人(35%) 【年代】 20代:24人(10%) 30代:105人(42%) 40代:87人(35%) 50代:30人(12%) 60歳以上:5人(2%) 【投資経験年数】 なし:36人(14%) 過去あり:5人(2%) 3年未満:90人(36%) 3年以上:120人(48%) ピンクのドレスコードは「春」「新しいことにスタート」をイメージして、明るく優しい色を選んだようだ。金融庁は女性職員がスーツにピンクのスカーフを首に巻くスタイルで統一し、イベントに華を添えた。 ■つみフェスは攻めのイベント 内閣府の村井英樹大臣政務官(経済再生・金融庁担当)による「つみフェスは役所では珍しい”攻めのイベント”」という開会宣言でイベントはスタート。投資教育家として著名なファイナンシャル・ヒーラー(ヒーラーは「癒し」の意味)の岡本和久氏の基調講話が続いた。岡本氏は「100年人生のお金との付き合い方」と題し、「将来の自分は今の自分が支える」とお金の呪縛に捕らわれずに長期に投資する生き様を丁寧に説いた。 油布参事官もsomething pink 次のセッションでは、つみたてNISA対象商品の誕生秘話を金融庁の油布志行参事官が審議の様子を振り返り、「お金を貯めてから投資しようという考えは捨てた方がいい。つみたてNISAは投資をしながら貯めるという発想に変わってほしいという考えで制度設計した」と強調した。 「はじめての投資!おススメの一冊ベスト10」発表の場に移ると、それまでとは雰囲気ががらりと変わり、たくさんの笑いに包まれた。投信ブロガーの虫とり小僧さんが進行役を務め、投信ブロガーの吊られた男さん、米国株ブロガーのたぱぞうさんと一緒に本の特徴を紹介した。 1位は投信ブロガーの水瀬ケンイチさんの著書「お金は寝かせて増やしなさい」。自らの山あり谷ありの実体験がありのまま記されているのが多くの支持を集めたようだ。水瀬さんは「投資未経験者・初心者に向けて漫画も使いながら執筆したので、1位に選ばれてたいへん光栄。投資は継続が大切というメッセージが伝わればうれしい」とのコメントを寄せた。 ■「つみたてワニーサ」が公式キャラクターに つみたてNISAの目印となる「つみたてNISA公式キャラクター」が公表された。応募総数343通の中から3作品に絞って一般投票で選出し、投票総数4515票の過半数を獲得した「つみたてワニーサ」(「積み立てはNISA」と読ませる)が採用された。 つみたてワニーサ 製作者は「20数年デザイナーをやってきて初めて国の役に立てたかなと思う。投資がまさに癒しになるよう、とかく堅いイメージの投資をやわらかく、かわいらしく表現した」と述べた。アートディレクターで審査委員の大山よしたか氏は「キャラクターとしての完成度が高く、背中が階段になっており一歩一歩積み立てていくイメージが素晴らしいと思う」と講評した。 金融庁はツイッターの公式アカウント「つみたてワニーサ(@Wa_nisa_FSA)」を開設。つみたてNISAや資産形成に関する情報をゆるく発信していく。 締めくくりは「有識者によるパネルディスカッション」で、経済評論家の山崎元氏、金融庁の八幡道典政策監理官らが登壇。参加者からの質問に応じる格好で、「親族がぼったくり商品を買っている場合、悟らせるにはどうしたらよいか」などにざっくばらんに答えた。 ■つみフェスは「金融庁によるファン感謝デー」 「つみフェス」は官から民への「ファン感謝デー」という色彩を帯びた、ある意味格別な無料イベントだったが、概ね好評だったと言えそうだ。つみたてNISAを「続ける、続ける、そして続ける」のメッセージも伝わった。 見逃せないのは、「おススメの一冊ベスト10」にインデックス投資の古典的名著とされる「敗者のゲーム」や「ウォール街のランダムウォーカー」が入ってきた点だ。投資理論を学ぼうとする個人投資家の知的好奇心は確実に高まっている。 金融庁職員や登壇者ら <ブロガーを中心に参加者の声> ■攻めのイベントが垣間見えた 「今回初参加。期待を上回る内容。『攻めのイベント』が垣間見えた。とはいえ金融庁は一般個人に迎合するのではなく、官僚らしく踏み込んではいけない一線を守っている点にも好感が持てた」(節税サラリーマンさん) 「データを示しながら投資のやり方やエッセンスなどを体系的にまとめた本を読むことは有意義だと思う。投資経験者が自分で役立ったと思う本を初心者に薦めるなら外れも少ないはず。イベントのプログラムに緩急があって、初心者にも経験者にもある程度楽しめるものだったのではないか。勉強会的要素と利用者(ファン)感謝デー的な要素がほどよく噛み合っていたように感じる」(虫とり小僧さん) 「個人投資家からの質問を軸としたパネルディスカッション、おススメ書籍の投票など、金融庁が個人投資家に寄り添うメッセージが伝わったのではないか。金融機関のような利害関係がない金融庁の公平な立場からの投資に関する知識や情報の発信は重要」(安房さん) 「前回のつみフェスは、ブロガーさんと金融庁職員の手作り感があったが、今回は岡本氏の講話など品格があった。とかく話が運用成績や金融商品に偏りがちな中、お金は幸せになる手段という岡本氏の見解は新鮮味があった。初心者・経験者とも満足できたフェスだった。内容は詰め込みすぎ感があり、講話と有識者ディスカッションの2部構成でも良い」(富山県在住のファイナンシャルアドバイザーの佐渡玉希氏) 「豪華ゲストで充実し、あっという間に終了。参加してよかった。時間を気にしながら短時間で終えるのはもったいなく、2倍くらいの時間が欲しいくらい。岡本氏の基調講演は聞きごたえ十分だった。金融庁主催なので、投資初心者の女性も安心して足を運べ、投資をよりリアルに身近なものに感じられるまたとない機会」(Wakabaさん) 「岡本氏の話はほんの20分ほどだったが、非常に印象に残るいいお話。『お金持ち』ではなく『幸せ持ち』に。リタイア後は、あるお金の中で最大限に幸せを高めることが大事で3000万円も5000万円も必要ない、といった話は、アーリーリタイアした自分の実感から見ても、まさにその通りという共感を覚えた」(NightWalkerさん) ■投資経験者と初心者の両方が楽しめる内容 「昨年に比べてかなり初心者向けになったような印象。著名な投信ブロガーが登壇者として参加するなど、かつてないほど金融庁と個人投資家との距離感が縮まっているのを感じた。今回は前回よりも聞きやすく、単なる座学ではなく事前のアンケートや投票を通しての参加型のイベントになっていたのが良かった」(nantesさん) 「物事には流行と、いつの時代も変わらぬ不易があり、投資は時代によって移ろう面もあるが、今回の投票でランクインした本は古いものも新しいものも時代を超えて読まれるのだろう。本当に良い本が選ばれた。自分が投資を始めた20年前には投資は『いかがわしい』というイメージが強かったが、投資が日常を豊かにする経済活動と認識され始めているのには、一個人投資家として隔世の感がある。ブログを中心にこの流れをサポートしていきたい」(たぱぞうさん) 「投資の話が聞きたくて北海道から駆け付けた。投資というと『金儲け』のイメージが強いかもしれないが、投資も社会貢献のひとつという岡本氏の話が印象に残った。つみたてNISAを使って積立投資の良さに気づける人が増えるといいなと思う」(札幌市在住のなるたくさん) 「豪華な出演者たちの講演やパネルディスカッションが面白そうだったので参加。つみたてNISAや一般NISAに対する金融庁の方の思いや本音にふれることができ、たいへん勉強になった。全国から集まった投資家さんたちと会うことができ、楽しく過ごせた」(水瀬ケンイチさん) 「今後、会社の内外で勉強会を実施するときのネタを見つけたく参加。インデックス投資は手軽に始められるが『つまらない』と思う時もある。多くの方と交流できると、つみたて投資を続けるモチベーションになるし、暴落が起きても安心して続けられる。今回学んだことや『気づき』を踏まえて、勉強会資料をアップデートし勉強会を開催していきたい」(ツイッターで発信しているTaku<金融系SEの投資のつぶやき>さん) 「2月からつみたてNISAを始めたばかりで、長く続けるコツを知りたいと思って参加。大勢の参加者を見て、長期投資を志す同志がこれだけいるというのは大きな励み。あっという間の3時間。ネットや本での投資勉強にはない、リアルイベントの良さを体感でき、本当に楽しかった。岡本氏の『資産形成の目標額を決める必要はなく、できる範囲で節約して資産形成に回す。資産活用期は手元にあるお金で幸福感を最大化すれば良い』という話は目から鱗だった」(青井ノボルさん) 「昨年のつみフェスは制度開始に向けての制度紹介や個人からの税制改正要望などやや投資経験者向きの印象だったが、今回はつみたてNISA普及に視点を置き、公式キャラクター募集など投資経験者、初心者両方が楽しめる内容だった。金融庁職員は全国各地でのつみップ(意見交換会)開催にも力を入れており、普及への本気度を感じる。国の政策イベントに一個人として参加できるのは幸せ」(リバモさん) 「いい意味で『お役所らしくない、お祭り』に近いイベントだった。幕間に流れるBGMの選曲も若い人を意識しているのがさりげなく伝わってきた。時間が短く感じられ、もっとじっくり話を聞いてみたかった。山崎氏が『他人任せの投資はダメ』と主張していたが、みんながみんな、最初から完全な自己判断で投資できるとは限らないのでは。その意味ではつみたてNISAでのバランスファンドは投資の入口としていいように感じる」(セロンさん) ■投資しながら貯めようは名言 「油布参事官の『投資しながら貯めよう』は名言。キャッチフレーズとして使うのにもピッタリ。商品の信託報酬上限基準が金融庁側からの提案だったのを初めて知り、びっくり。金融庁の本気度が表れていると感じた。ブロガー3氏による『おススメ一冊ベスト10』はリハーサルなしでこれだけの軽快トークとは凄い。イベントの様子を全国津々浦々にネットで配信するのを検討してはどうか」(毛流麦花さん) 「最初に岡本氏がお金、投資の本質的な話をしたのは良かった。お金というと汚いイメージがあるが、本来お金は感謝のしるし。時間軸・空間軸を広げることなどなど、SNSでも講演内容に好意的なコメントが多かった。今後は、これまで投資をしたことのない人につみたてNISAをどう訴求していけるかが課題。フェスティバルや各地の説明会(つみっプなど)で地道に啓蒙活動を続けていくことには意味があると思う」(フィナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子氏) 「ツイッターの実況中継で参加者の声がリアルタイムに見られることや、ブロガー3氏による本の紹介がくだけていて面白く印象的だった。つみたてNISAの制度を学ぶために参加したが、専門家のパネルディスカッションや制度の秘話を聞くことができ、充実した時間となった(きんゆう女子。 コミュニティマネージャーの金子圭都氏) 「昨年に引き続き、創意工夫された楽しく有意義なイベントだった。参加したかったけれど、すでに申し込みがいっぱいになっていたという声をたくさん聞いた。来年はさらに参加人数を増やして開催して欲しい」(総合司会を務めたファイナンシャルプランナーの岩城みずほ氏) (QUICK資産運用研究所 高瀬浩、小松めぐみ) ◯つみフェス2018のプログラムはこちら  ◯金融庁・つみップのサイトはこちら  

SBI証券、投信積み立てが拡大 月間100億円超、橋本執行役員に聞く

SBI証券が取り扱う投資信託の積み立ては、月間の設定額が今年に入って100億円を突破した。QUICK資産運用研究所の調べでは、ネット専業証券の中で最大規模となる。 月間の投信積み立て設定額は今年2月に初めて100億円を上回り、3月も増加傾向が続いた。2年前の50億円程度と比べ倍増した。長期的な視点で取り組んできた投資家層の拡大戦略が実を結んだ格好だ。 同社の投信ビジネスを先導してきたキーパーソンの橋本隆吾執行役員(投信・債券部長)に話を聞いた。 橋本隆吾氏(執行役員 投信・債券部長) ――100億円突破までの道のりは。 「月間100億円になるまでに10年以上の年月を要しました。2008年の米リーマン・ショック直後あたりが黎明期です。有名な投信ブロガーの方々の影響もあって、三菱UFJ国際投信の『eMAXISシリーズ』など指数連動型で低コストのインデックスシリーズが注目を集めました」 「2012年には少額投資を推進するために最低投資額を500円に引き下げたこともあり、積み立て投資の手法が脚光を浴び始めました。14年に始まった少額投資非課税制度(NISA)をきっかけに積み立て口座数が飛躍的に伸び、当社ビジネスの中核として成長する勢いを感じました」 「16年12月頃からはトランプ・ラリーによる相場上昇が追い風となり、成功体験を積んだ投資家も少なくなかったようです。17年10月には積み立て機能を拡充し、新しく始めた『毎日積み立て』などが投資家に支持されています。18年1月からスタートした『つみたてNISA』も浸透してきました」 ――SBI証券の投信積み立ての特徴や強みは。 「商品数の多さが特徴の一つです。2500本を超える豊富な投信のラインアップがあり、その中で当社の課税口座や一般NISA口座で積み立て設定ができるのはだいたい1900本から2000本くらいあります。幅広い投資家層のニーズに対応するために品ぞろえの充実は常に意識しています」 「もう一つは、総合ネット証券として投信以外にも多様な投資商品を取り扱っていることです。国内外の株式やIPO(新規株式公開)、PO(公募増資・売り出し)、個人向け社債、外債などを幅広く取りそろえているので、投信以外の金融商品と組み合わせて投資することができます。こうした規模の大きさや総合力が集客につながっている面があります」 ――どのような顧客が多いですか。 「株式や一般の投信保有者に比べると、投信積み立ては20歳代から40歳代の資産形成層と呼ばれる年代の投資家が多いです。また、株式投資と比べ女性の比率がわずかに高くなっています」 「金融リテラシーの高い顧客も多いと感じています。ドル・コスト平均法や長期・分散などといった資産運用の基本を理解している印象で、小口の100円から気軽に始められる当社の投信積み立てを活用しながら、独創的な投資手法でトータルリターン(総合収益)を高めている投資家もいるようです」 1982年住友信託銀行(現:三井住友信託銀行)入社。年金運用、債券トレ-ディング業務等を経て、2005年住信アセットマネジメント(現:三井住友トラスト・アセットマネジメント)に出向。投資信託の運用、商品企画、営業を担当し、2013年11月SBI証券入社、現在に至る。 ――投信積み立て機能拡充の反響は。 「2017年10月に実施した投信積み立て機能の拡充で、毎日、毎週、毎月、複数日、隔月の5コースの中から積み立てコースを選べるようにしました。その後も従来からの毎月積み立ては安定して伸びています。さらに究極の時間分散といえる『毎日積み立て』も大きく増えており、月間設定額100億円突破のドライバーの一つになったと言っても過言ではありません」 ――どのような開発体制で機能拡充に臨んだのですか。 「全社でプロジェクトチームを立ち上げるような大規模な取り組みではありません。当社のシステム担当者とサービス企画推進(フロント)担当者、SBIグループ内のシステム開発担当者のメンバー数名で議論を繰り返し、納得のいくサービスに仕立てていきました」 「少ない要員でも比較的短期間で開発が実現できた背景には、フロント担当者がシステムや画面設計に詳しく、要件定義を主導しながら全体開発を進めていけたことがあります。コールセンターに寄せられた顧客の要望なども吟味し、操作性を高める工夫をしていきました」 「投信積み立ての独自機能である『NISA枠ぎりぎり注文』などは、その過程で生まれた発想です。『NISA枠ぎりぎり注文』はNISAで投資できる残り枠に応じて自動で注文金額を調整し、枠を超える金額は発注されない仕組みです。株式など他の商品のシステム開発を掛け持ちしている担当者も多いのでスピードを要する開発には苦難を伴いますが、グループ独自の開発でシステム設計できる体制は当社の強みといえます」 ――今後の戦略を教えてください。 「総合ネット証券として全方位で取り組む姿勢に変わりありません。主戦場であるネット画面の操作性を高めるべく、シミュレーターやスクリーニング機能などを拡充していきたいです。投資家が自ら投信を選びやすくなるような啓蒙コンテンツの提供にも力を入れていきます」 「また、四半期に1回程度のペースで長年続けてきた投信積み立てのキャンペーンを地道に続けていくつもりです。会場型セミナーなども積極的に取り組みながら、投資家とともにレベルアップを図っていきたいと思います」 (QUICK資産運用研究所 大沢崇)

ポイント運用「気軽に楽しく投資体験」 クレディセゾン発案者に聞く

知らないうちに貯まったポイントで、ほったらかしの資産運用――。クレジットカード会社大手のクレディセゾン(8253)が提供する「ポイント運用サービス」が新しい資産形成のカタチを生み出しつつある。 ポイント運用サービスは、セゾンカードやUCカードを利用するなどして得た「永久不滅ポイント」を使って気軽に資産運用を疑似体験できる仕組みだ。利用者はアクティブコースかバランスコースのどちらかを選択し、その運用成果によってポイントが日々増減する。2016年12月のサービス開始から1年3カ月あまりで利用者数は12万人にのぼり、永久不滅ポイントの交換先ランキングで上位に顔を出すなど盛り上がっている。 今年3月14日からは、より景気の変動を感じやすい日米の代表的な株価指数に連動する「日本株(TOPIX)コース」と「アメリカ株(VOO)コース」の2つを追加し、「つみたて機能」を新たに搭載した。この2つのコースは、サービス開始からわずか2週間あまりで利用者が1万人を超え、関心の高さがうかがえる。 今春以降は株価連動型ポイント運用システムを手掛けるストックポイント(東京・千代田)と連携し、実在する企業の株価に連動する「株式コース」も開始する予定だ。株式1株の価格に相当するポイント数になると、その銘柄に交換することが可能になるという。 ポイント運用サービスの狙いや今後の展開などについて、同サービスの発案者である美好琢磨氏 、同社で一緒に資産運用ビジネスを推進している橋村奈緒子氏に話を聞いた。 写真左:橋村奈緒子氏(経営企画部グループ戦略室) 写真右:美好琢磨氏(アセット・マネジメント・ビジネス・オフィサー) ■「世界初の試み」、長期投資への思いが根底に ――新しい試みとしてのポイント運用が人気です。 「世界で初の試みだと思います。当社は証券会社ではないので、お金による有価証券の購入仲介はできません。あくまでポイントという『おまけ』を株式相場と連動するものに交換し、資産運用を疑似体験してもらうというサービスです。関係官庁に相談しましたが、永久不滅ポイントはお金で購入できないため、(商品券やプリペイドカードといった)前払式支払手段にも該当しません」 ――発案の背景や思いなどは。 「永久不滅ポイントの引当金は昨年末時点で1000億円を超えており、有効期限がないためアイテムへの交換などをせずに貯め続けている人が多いという認識がありました。ポイントで何か楽しいことをしていただきたい、日々の暮らしに彩りを添えたいと考えていたとき、私がもともと資産運用に関わる仕事をしていたこともあり、ポイントで気軽に運用できる仕組みを思いつきました。生活を豊かにすることの1つに個人の資産形成があると思っています」 「日本に長期投資を根付かせたい、という思いが根底にあります。若年層や女性など投資になじみのない人は、資産運用をしようと思っても、いきなり『投資信託』とか『ロボットアドバイザー』などと言われると難しく感じる人が多いのではないでしょうか。ポイントというおまけで楽しみながら長期運用を体験する。そこで生まれた体験が実際の投資へつながっていけばと思っています」   1987年千代田生命保険相互会社(現ジブラルタ生命保険)に入社、外資系の銀行・運用会社などを経て、マネックスグループ執行役員に就任。15年にクレディセゾンに移り、セゾン投信役員兼職、マネックス・セゾン・バンガード投資顧問の設立に関わり役員を兼職、現在に至る。 ■「投資教育」とは言わない、「楽しさ」を重視 ――利用者数増加への手ごたえは。 「このサービスを企画・立案した時点の目標数は早い段階でクリアしました。想定していた以上に皆様の関心が高いですね。一般的なネット証券のユーザーと比べ、若年層と女性の比率が高いことには驚いています」 「大々的に『投資教育』といった言葉は使っていません。あくまでちょっとしたお得感、プラスアルファを味わう感覚で運用を始めてみる。楽しいことだったらやってみたい、そのような気持ちが長期投資を感じてもらうきっかけを作ってくれていると思います」 ――投資信託でよく議論になる諸費用や税金についてはどうお考えですか。 「日本の制度上、ポイントは非課税です。また弊社はポイント運用の申込分をヘッジ(損失回避)で運用していますが、お客様の体験としては、あくまでポイントが指数や運用結果に連動して増減するだけです」 ――積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)は意識されましたか。 「もちろん意識して作りました。『つみたて』を平仮名にしたり、新たに追加した2コースもつみたてNISAの対象指数に基づいて運用するものを採用したりとできる限り近づけました」 「日本株(TOPIX)コースとアメリカ株(VOO)コースを追加したのは、株式相場を身近に感じやすいと考えたからです。米国の大統領の発言だけでも株価が動くのだな、といったことを実際に感じてもらえればうれしいですね」 ■ポイント運用、他社との連携も視野 ――クレジットカード会社が資産運用ビジネスを展開した背景は。 「クレジットカードの取扱高は個人消費動向の影響を受けるため、長期的な視点ではその個人消費は日本の人口とともに減っていくと考えられます。 一方、個人の金融資産はまだ増えていく可能性があります。中期経営計画でも、資産運用ビジネスは事業戦略における柱の一つとして掲げています」 ――ストックポイント社との連携を発表しました。日本人はポイントが大好きな国民と言われますが、他のポイントとの連携は考えていますか。 「広く連携していきたいという気持ちでいます。私たちが構築した仕組みは、誰でも真似できるものではないと考えています」 ◇クレディセゾンの発表 ポイント運用プラットフォーム「運用口座」約2週間で、利用者 1 万人突破! (聞き手は資産運用研究所 小松めぐみ、イノベーション本部 吉田晃宗)

第1回 QUICKが選ぶ「中長期投資にふさわしい投信」 ~運用成績を定量評価~

QUICK資産運用研究所は個人投資家が投資信託を選ぶ際の参考になるように、運用成績を定量的に評価し、この1年間に活躍した投信の中から「中長期投資にふさわしい投信」を選んだ。今回は第1回で、今後は年1回のペースで公表する。 運用方針、投資対象、コスト、運用体制・・・。投信は中長期的な資産形成の中核的な金融商品と位置付けられているが、いざ自分に合った商品を選ぶとなると難しいのが実情だ。中長期で保有するからこそ、運用の実力は重要なチェックポイントのひとつだ。 ■運用成績を定量評価、リスク階級ごとに5本を選定 そこで恣意性を排除した手法で運用成績を評価し、リスク階級ごとに1本ずつ計5本を選んだ。リスク階級別に選定したのは、中長期投資では自分がどの程度のリスクをとるかを想定するのが重要という考え方に基づく。 選定対象は国内公募の追加型株式投信で、指数に連動する運用成果を目指すインデックス型も含めた。一般購入できない販売停止中や限定追加型、中長期投資に向かない毎月分配型や運用実績の短い投信などは除外した。評価は今年2月末時点のデータを使った。 具体的には、運用で取ったリスクに見合うリターンを上げたかどうかを測る指標の「シャープレシオ」を用いて、個々の投信を評価した。2017年3月から18年2月まで1年間の各月末時点における5期間(5年間、3年間、1年間、6カ月間、3カ月間)のシャープレシオの平均値を合計し、リスク階級別に最大の投信を選んだ。期間の異なるシャープレシオを合算することで、中長期の成績を反映する一方、足元の動向が与える影響の比重を高めた。 選定結果はリスク階級の小さい順に「マイストーリー・株25(01311018)」「結い2101(9Q311103)」「三井住友・げんきシニアライフ・オープン(79311005)」「SBI中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ(89311067)」「SBI小型成長株ファンド ジェイクール(8931105C)」の5本(図A)となった。   図Aの1年リターンの水準やグラフの値動き(図B)を見ると、リスク階級が高いほどリターンが大きい傾向にある半面、振れ幅も大きいことが鮮明だ。ハイリスクであるほど将来の高いリターンが期待できるが、裏目に出れば元本割れの可能性も高くなりやすいことを意味する。 ■4本が日本株アクティブファンド リスク階級が1(最小)の「マイストーリー・株25」は、内外の株式と内外の債券に国際分散投資するバランス型で株式の基本配分を全体の25%とし、リスクを抑えている。野村アセットマネジメントが選定したファンドに投資するファンド・オブ・ファンズ形態でアクティブ(積極)運用するので、実質信託報酬は1%を超え、やや高めだが、安定的な運用成績を収めている。 「結い2101」は鎌倉投信独自の考え方に基づき、社会の持続的な発展に役立つ「いい会社」に投資。中小型株を主体として、投資に回さず現金で保有する割合が多いのも特色で、ファンド資産全体に占める現金相当は現在4割程度あり、一般の日本株ファンドに比べ、値動きは緩やかとなっている。 三井住友アセットマネジメントの「三井住友・げんきシニアライフ・オープン」は健康関連をテーマにして、高齢化社会が生み出す新ビジネスに着目して銘柄選別し、中小型株にも積極投資する。 「SBI中小型割安成長株ファンド ジェイリバイブ」と「SBI小型成長株ファンド ジェイクール」はともにSBIアセットマネジメントが、有望な中小型株発掘の「目利き」役として「エンジェルジャパン・アセットマネジメント」の投資助言を受ける形で運用。「ジェイリバイブ」の投資対象が「中小型株」で「ジェイクール」は「小型株」という違いがリスク階級で1段階の差となっている。 「マイストーリー・株25」以外の4本は、いずれもアクティブ運用型の日本株ファンドだ。運用対象の資産別に分類したQUICK投信分類平均(大分類は16)でみると、過去1年のリターンは「国内株式」が最大となるなど日本株の成績が好調だったことを反映。低コストのインデックス型投信に注目が集まりがちだが、アクティブ運用の実力発揮が浮き彫りとなった。 【選定対象・方法】 ①対象は決算回数が年1回または年2回の国内公募の追加型株式投資信託。2018年2月末時点で(1)運用実績が6年以上(2)償還予定日までの期間が1年以上(3)原則として残高が10億円以上--の条件を満たす。原則としてETF(上場投資信託)、確定拠出年金(DC)専用、販売停止中、販売停止予定、限定追加型、マネープール相当、ブルベア型、ラップ口座専用、ミリオン型、一般財形型は除外した。 ②リスク階級は価格変動リスク(過去の価格変動の度合い)をTOPIX(東証株価指数)との相対評価で表した「QUICKファンドリスク(QFR)」を用いる。QFRはリスクが最も小さい「1」から最大の「5*」まで6段階を付与しているが、ブルベア型などが含まれる「5*」は除外とした。 ③17年3月から18年2月まで1年間の各月末時点における5期間(5年間、3年間、1年間、6カ月間、3カ月間)の運用実績データ(シャープレシオ)を使った定量評価。過去12カ月間における上記5期間のシャープレシオ(年率換算)の平均値を合計し、この合計値が最大となる投信をリスク階級別(1~5)に1本ずつ選定した。 (QUICK資産運用研究所)

「新社会人が知っておきたいお金の話」③発想の転換で資産形成の第一歩を

これから社会に出るみなさんへのメッセージとして「新社会人が知っておきたいお金の話」を3回にわたって連載する。最終回は「発想の転換で資産形成の第一歩を」。 第1回はコチラ→ 「新社会人が知っておきたいお金の話」①資産形成のイロハ  第2回はコチラ→ 「新社会人が知っておきたいお金の話」②人生100年時代の資産形成 ■目的にあわせて手段を選択 将来的な資産形成を考える前に、目先の結婚資金や住宅資金などをしっかりと確保したい人や、趣味や旅行などでうっかり使いすぎてしまう人は、給与振込口座と別の口座を持つことが手段のひとつ。社内預金や財形貯蓄など、会社の制度を利用すれば、金利や税制面の優遇があり、引き出す際の手間も増えるため、「貯蓄」という意味ではいい選択肢となるだろう。 会社によっては「従業員持株会」という勤務先もしくはその親会社の株式を購入する制度がある。もちろん株価が下落するリスクはあるが、少額から無理のない範囲で始めることができる。業績が拡大すれば株式の価値が高まるため、仕事のモチベーションにもつながり、一株主として会社を応援する意味で入会するのも一案だ。 ■発想の転換で資産形成の第一歩を 新入社員にとっては少し先の話になるが、子供の教育費や住宅ローンの返済など何かと出費がかさむ30~50代に向けた資産作りはどうすべきか。お金を郵便局に預けっ放しにしていたら2倍に増えたという時代は遠い昔の話で、再来しそうな気配もない。いまやお金に働いてもらわなければならない時代へと突入した。 「そもそも投資するほどお金がない」「基本的な経済の知識がない」「何となく投資って怪しい気がする」――など様々な理由で資産形成を敬遠している人が少なくない。 実際にQUICK資産運用研究所が昨年12月実施した個人の資産形成に関する意識調査で「どんなきっかけがあれば資産形成を始めると思いますか」と聞いたところ、「まとまった資金ができたら」や「金融に関する知識が習得できたら」との回答が多かった。 そこで発想の転換を提案したい。まずは「投資はお金に余裕があって、経済に詳しい人がするもの」という概念を捨て、「資産形成は未来の自分への仕送り」と捉えてみたらどうだろう。「10年後の自分へ海外旅行の資金を」「15年後の自分に子供の教育費を」と言った具合だ。 新社会人には何と言っても「時間」という武器がある。その強みを最大限生かせるしくみを活用しながら、資産形成の一歩を踏み出してみたい。 ■できたてホヤホヤ「つみたてNISA」 今年1月から始まった「つみたてNISA」(積み立て型の少額投資非課税制度)は、これから投資を始める人に最適の仕組みだ。 その理由の1つは、投資できる金融商品が、金融庁が長期投資に適すると判断した投資信託もしくはETF(上場投信)に限定される点だ。初心者は最初に商品選びでつまずくことが多い。つみたてNISAは金融庁が太鼓判を押した商品から選ぶという安心感がある。対象商品には、1つの投信で日本をはじめとする世界の株式や債券、不動産に投資できるタイプもあるので、手軽に分散投資を始めることができる。 通常は金融商品の利益には、20.315%の所得税(復興特別所得税含む)が課されるが、つみたてNISA口座で購入した金融商品は税金がかからない。運用期間は最長で20年(この間、解約はいつでも可能)、投資限度額は年間40万円。つまり最大800万円のお金を非課税で運用できる。資産形成の鉄則である「長期・分散・積立」の3つを税制メリットを受けつつ実践できるという訳だ。 言うまでもなく、絶対に損をしない金融商品や投資手法は存在しない。積立投資も例外ではなく、常に右肩上がりに資産が増えていく訳ではない。自分の資産が目減りし、投資に対して不安や懸念が生まれる時は、静観することも大事になる。目先の運用成績の上下に一喜一憂することなく、俯瞰的な視野を持って資産形成に挑戦してほしい。 (QUICK資産運用研究所)

「新社会人が知っておきたいお金の話」②人生100年時代の資産形成

これから社会に出るみなさんへのメッセージとして「新社会人が知っておきたいお金の話」を3回にわたって連載する。第2回は「人生100年時代の資産形成」。 第1回はコチラ→ 「新社会人が知っておきたいお金の話」①資産形成のイロハ ■年金・退職金制度を理解しよう! では実際には何から始めればいいのか――。まずは勤務先や雇用形態によって異なる「年金・退職金制度」を理解しておきたい。 日本の年金制度は①日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金(基礎年金)②民間企業の従業員などが加入する厚生年金保険③その他企業や個人が用意する年金--という3階建ての構造になっている(図3)。 ①②は公的年金で、③は「確定給付企業年金(DB)」「確定拠出年金(DC)」などを指す。DCには、企業型と個人型があり、企業と個人のどちらが掛け金を拠出するかの違いがある。また、DBは企業が運用の責任を負うのに対して、DCは個人が自らの責任で運用を行う。 DCは運用益が非課税になるだけでなく、掛金の全額が所得税と住民税の計算から除外される「所得控除(小規模企業共済等掛金控除)」を受けられる。つまり年間500万円の所得のある人が掛け金として月に2万円、年間で24万円を拠出した場合、年末調整や確定申告をすることによって、所得は476万円とみなされ、税額が軽減される(他の所得控除は考慮していない)。   ■柔軟性が増しつつあるイデコ 企業が用意する年金制度では、企業型DCのみの場合や、DBと企業型DCの併用の場合がある。どちらも導入していない企業は、個人型DC(iDeCo=イデコ)への加入が許可されている場合がある。 イデコは2017年から公務員や主婦も加入できるようになった。DBや企業型DCに加えてイデコに加入することを認めている企業もある。また、企業型DCでは、従業員が追加で掛け金を上乗せできる「マッチング拠出」という仕組みを取り入れているところもある。 イデコやマッチング拠出が利用できる環境であれば、有効に使っておきたい。DCは転職した際も新しい会社へ持ち運べる「ポータビリティ」という仕組みがあるし、自営業者や主婦になっても続けることができる。何より、資産形成の基本である「長期・分散・積立」の実践を少額から始めることができる。 もちろんDCの運用責任は自分にあるので元本を割る可能性は十分にある。イデコの場合は、口座管理費用など、運用以外の費用負担もある。DCは60歳まで原則引き出すことはできないため、あくまで老後の生活資金であるという点も注意が必要だ。制度をよく理解したうえで、可能な範囲で少額から拠出してみてはどうだろう。 ■意外と知られていない個人年金保険 意外と知られていないのが、老後資金を準備しながら税制メリットを受けられる「個人年金保険」だ。10年以上毎月掛け金を払い続け、60歳以降に10年かけて受け取ることを前提に加入する商品で、所得控除(個人年金保険料控除)として所得税と住民税の控除を受けることができる。 満期まで保有すれば元本割れをしない商品が多く、現在の金利状態が続くと仮定すれば、預金より利回りが期待できるメリットがある。ただし、途中で解約すると支払った額より少ない金額しか戻らないケースもある。また、固定金利の商品も多いので、金利が上昇した場合には不利になる点は留意しておきたい。 (QUICK資産運用研究所)

つみップで「投信あるある」 金融庁が「毎月分配」のカラクリを説明

金融庁が16日夜に開いた個人との意見交換会「つみたてNISA Meetup」(通称:つみップ)は、つみップ担当の職員がツイッター上で呼びかけた「投信あるある」をテーマに取り上げた。投信でよくありそうな誤解に対して、ゲストとして登壇した識者が回答し、金融庁は毎月分配のカラクリを詳しく解説した。 つみップは金融庁が昨年4月から開いている積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)に関する個人との意見交換会で、今回で16回を数える。 投信あるあるは投信に関する誤った認識や体験談などをつぶやきあうことで、広く情報を共有しようという試み。金融庁の職員が2月23日夜に「#投信あるある104」というハッシュタグを付けて投稿を呼びかけると、投信ブロガーをはじめとする個人投資家や識者らにつぶやきの輪が広がっていった。今回のつみップでは、集まったつぶやきを材料に投信への理解を深めた。 ■参加者は3分の2が20~30代 金融庁の会議室に集まったのは、男性17人、女性13人の計30人。年代別では20代6人、30代14人、40代7人、50代3人で、20~30代の若い世代が3分の2を占めた。投資経験は3年以上12人、3年未満14人、経験なし3人、現在は休止中が1人と幅広かった。 ゲストは経済評論家の山崎元氏ら識者3人に、著名投信ブロガーの「水瀬ケンイチさん」「NightWalkerさん」「虫とり小僧さん」の3人が加わった。 ■「投信あるある」でよくある誤解を確認 金融庁は「収益調整金」を説明 つみップでは「#投信あるある104」から選んだつぶやきを掲載した冊子「投資信託についてよくある誤解 厳選集」が参加者に配られた。主な誤解や勘違いについて列挙すると、以下の通り。 「販売額ランキング上位のファンドは、みんなが買っているので良い商品なのでしょう」 「店舗のある銀行や大きな証券会社のほうが、専門家が親切にどの投信がよいか教えてくれるので信用できる」 「環境関連のテーマ型投信を前に積み立て投資していた。既に売却したが、その商品は結局、繰り上げ償還された」 「投資の基準価額は資金流入額が多いほど、多くの人が買うので上がるはず」 「インデックスファンドは基準価額が高いほうが優秀」 「分配金が出ないファンドは分配金を出すファンドより儲からない」 「販売手数料や信託報酬が低いと、それは粗悪品で安物買いの銭失い、という説明がある」 「特別分配金は普通とは違うので特別にお金を振り込んでくれるサービスのこと」 「ノーロードは道路と関係あるのか」 「日本株ファンドの基準価額には組み入れ銘柄の配当金が上乗せされるのに、配当を含まずに計算する『TOPIX』と比較して、運用成績をよくみせようとするケースが少なくない」 「販売会社が経営破たんすると自分のお金が戻ってこない」 金融庁は毎月分配型などで元本を取り崩した分配を可能にする「収益調整金」という追加型株式投資信託特有の仕組みをスライドを使って説明。投信を後から購入した人の「元本」の一部が分配原資に加わっていくため、基準価額が下落しても誰かの「元本」を原資にすることで分配しているというカラクリを解いた。 参加者からは「イメージはつかめた」との声があがった。投信ブロガーの「毛流麦花(モールバッカ)さん」は「投信経理の本を読んで分配金の仕組みについて理解を深めたい」と意欲を示していた。  ■答えがいのあるハイレベルな質疑 「投信あるある」に先立って、金融庁が「つみたてNISA」制度をスタートした背景や狙い、その特長や長期・分散投資の効果、対象商品などを説明した。配布資料には図表に合わせたイラストが差し込まれているのが今回の特色のひとつで、個人がより理解しやすくなるように工夫されていた。 参加者からの質問は「つみたてNISA」の制度に関するものが多かった。 【参加者からの質問】 ・販売手数料の海外(特に米国)との違い ・レバレッジをかけた投信(日経平均の2~3倍の値動き)が対象外となった理由 ・つみたてNISAでの投信販売実績 ・海外留学や海外赴任時の取り扱い ・売却手数料の信託財産留保額がある投信は対象外なのか ・バブル時には身近で投資の話をしやすかったか ・日経平均を20年積み立て投資してプラスになったというグラフがあるが、最終的に上昇した期間なので当然ではないのか ・「一般NISA」から「つみたてNISA」に切り替えてしまうと、5年後に「つみたてNISA」を止めても「一般NISA」のロールオーバーは不可との説明を金融機関から受けたが確かか ゲストの投信ブロガーからは「答えがいのあるハイレベルな質問が多かった」「『どんな投信がいいのか、資産配分はどうしたらいいのか』といった素朴な質問はなかった」などの感想が漏れた。 ■「つみップ」参加で指南役へ、草の根の活動も 参加者からは「職場では投資の話はなかなかできないので、『つみップ』での情報や懇親会での交流は、自分の投資にとても役立つ」(30代男性会社員)との声が聞かれた。 前回の女子部に続き2回目の参加で今年から「つみたてNISA」を毎日800円(月2万円程度)で始めたという30代の女性会社員は「全部は理解できないが、金融庁の説明は説得力があり、これで『外れ商品』に引っかからないと思うと安心」と明るい笑顔で語った。 その話をそばで聞いていた投資経験豊富な30代男性会社員は「投資入門としては最高の選択。『つみたてNISA』の制度には不満な点もあるが、金融庁の制度定着への本気度は感じる」と熱を込めていた。 地方の大学生も参加した。4月から宮崎県での就職が決まっているという山口県在住の大学4年生の男性は「去年は『つみップ』にとんぼ帰りで参加したが、今回は卒業旅行を兼ねて参加。水瀬さんをはじめ著名ブロガーの方にまた会えて感激」と話す。少しずつではあるが「つみたてNISA」が若い世代に浸透し始めている。 「つみップ」に参加するだけではなく学んだことを基にして、「つみたてNISA」の教え役に回っているケースもある。会社を早期退職し現在は職業訓練校に通っている女性は「学校のクラスメート20人あまりに『つみたてNISA』についてプレゼンテーションする機会を持ち、『つみたてNISA』を知らなかった人が関心をもってくれた」と話していた。 「つみたてNISA」は今年1月に始まったばかりで、投信市場での存在感はまだ小さい。学生での関心の高まりやこうした草の根の活動が徐々に広がっていくにつれ、おおきなうねりに変わっていくのはそう遠くないかもしれない。 ■東京では4月に「つみたてNISAフェスティバル 2018」 つみップはこの後、名古屋市、鯖江市などで開催し、東京では4月21日に「つみたてNISAフェスティバル 2018」を開催する。つみたてNISAフェスティバルは昨年9月に続く2回目。さらなる持ち上がりが期待できそうだ。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩、小松めぐみ)

「新社会人が知っておきたいお金の話」①資産形成のイロハ

新たな社会人にとって初めて手にする給与は大きな楽しみだ。だからこそ陥りやすいのが使いすぎ。自分へのご褒美、両親へのお礼、新しい仲間との付き合い、自己啓発……などと張り切っていると、お金は羽が生えたように出て行ってしまう。 さらに健康保険や年金保険といった社会保険料が給与から天引きされたり、税金の支払いや奨学金の返済など逃れられない支出が待っていたりする。それだけに社会人として、お金との付き合い方や資産形成の基本は知っておきたい。 これから社会に出るみなさんへのメッセージとして「新社会人が知っておきたいお金の話」を3回にわたって連載する。第1回は「資産形成のイロハ」。 ■資産形成は将来資金の自己防衛? そもそも、なぜ資産形成の意義や重要性がこれほどまでにささやかれるのか――。「超高齢化社会」「人生100年時代」「働き方改革」など誰もが耳にしたことのある言葉に代表されるように、日本の社会構造そのものが変化している。国や会社が老後の面倒を一から十まで見てくれる時代は終わり、個人(家計)の自己責任による資産形成が求められている。 平均寿命は延び、少子高齢化により年金保険料の負担は大きくなる。一方で現役世代は何歳からいくら年金をもらえるかは定かではないし、給与水準が上がる機運も高くない。ならば自分で蓄えようと銀行に預けても利息はゼロに近い。お金を現預金で保有していても、政府や日銀の目論見通り物価が上昇すれば、その実質的な価値は目減りしてしまう。 そこでどうにか資産を殖やすために、お金に働いてもらう資産形成に焦点が当たったという訳だ。国が税制優遇のある仕組みや制度を整えて普及活動に勤しむのは、将来の資金は自ら形成してほしいというメッセージといっても過言ではない。 ■資産形成の王道は「長期・分散・積立」 資産形成の基本として押さえておきたいのは「長期・分散・積立」という3つの柱だ。 一般的に投資期間が長ければ、マーケットの変動によるリスクを軽減できる。2008年9月の米リーマン・ショックでは世界的に株価が暴落するなどマーケットが大混乱したが、それを挟んだ過去20年間でみると、日米の株価指数は上昇している(図1)。 投資先を分ける分散もリスク抑制に有効だ。資産をひとつの金融商品に集中すると、それが値下がりしただけで全体が減ってしまう。一方、複数の商品に分散すれば、どれかが値下がりしても他の商品が値上がりすることで、資産全体の値動きを抑える効果が期待できる。株や債券といった資産だけでなく、通貨や地域・国などを分散する方法もある。 投資は「価格が安い時に買って、高くなったら売る」ことで、利益を得ることができる。もっとも現在の価格が安いのか高いのかは、後になってみないとわからない。高値づかみのリスクを軽減する方法としては、積み立て投資がある。例えば、一度に金融商品を購入せず、毎月1万円ずつ一定期間にわたって購入することで、リスク分散の効果が期待できる。いわゆる「ドルコスト平均法」だ(図2)。 新社会人の強みは、何と言っても「時間」を持っていることだ。時間を味方につけ、資産の種類や地域、通貨を分散した「コツコツ投資」を続けることが資産形成の王道と言える。 (QUICK資産運用研究所)

つみたてNISA対象投信に資金流入 インデックスは日経平均型、アクティブはひふみ

今年1月から積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)がスタートし、対象となる投資信託が選好されている。世界的に株式相場が崩れた2月に「逆張り」の個人マネーが加わったこともあり、金融庁の「お墨付き」ファンドに資金が流れ込んでいる。 つみたてNISAの対象商品として届け出られ、金融庁が認めた投信は2月末時点で141本。金融庁が指定した指数に連動するインデックス型が126本、それ以外のアクティブ型が15本ある。 日本経済新聞によると、つみたてNISAの1月末時点の申込件数は主要証券・銀行11社で37.8万件。1つの口座で積み立てできる上限は月3万3000円程度なので、つみたてNISA経由の資金流入額は単純計算で最大でもひと月あたり125億円にとどまる。1月と2月を合わせても250億円ほどだ。 今年に入って設定から解約を差し引いた資金流入額(推計値)は、つみたてNISA対象の141ファンド合計で2291億円。専用ファンドではないため、つみたてNISA向け以外にも資金の出入りがある。特に2月はこれまで堅調だった世界の株式相場が急変したため、流れに逆らう「逆張り」や押し目拾いの資金流入が膨らんだ。 ■インデックス型は「日経平均連動型」が上位に つみたてNISA対象のインデックス型投信を年初からの資金流入額が多い順にランキングしてみると、上位3本は日経平均株価に連動するタイプが占めた。上位20本のうち18本は株式で運用するタイプだった。 首位は「野村インデックスファンド・日経225」(0131510B)で、今年の資金流入額は118億円。月平均では59億円と、昨年1年間(2.5億円の流出超)を大きく上回った。 上位20本はすべて今年の資金流入額の月平均が昨年より多かった。株価が調整した2月だけでなく、堅調を維持していた1月も資金流入額が昨年の月平均を上回るファンドが続出した。 ■アクティブ型は「ひふみプラス」が首位 つみたてNISA向けに金融庁が指定したインデックス型以外の投信(アクティブ型)で、今年に入って資金流入額が最も多かったのはレオス・キャピタルワークスの「ひふみプラス」(9C311125)。1月と2月の合計で1000億円を超す資金が流入した。2位もレオスが直販する「ひふみ投信」(9C31108A)だった。いずれも主に国内の株式で運用している。 3位にはセゾン投信の「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド 」(96311073)が入った。国内外の株式や債券で運用するバランス型のファンドだ。 アクティブ型15本のうち、今年の資金流入額の月平均が昨年を上回ったのは13本にのぼった。 ■バランス型、残高の積み増しに時間 特定の資産の相場動向に左右されにくいバランス型に絞ってみると、資金流入ペースに大きな変化は見られない。つみたてNISA対象のインデックス型126本のうち、複数の資産に投資するバランス型は53本。このうち今年の資金流入額の上位20本に入ったのはわずか2本だった。 つみたてNISA対象のアクティブ型も含め、今年に入ってからバランス型の大半は資金流入額の月平均が昨年を上回ったが、増加幅はそれほど大きくない。つみたてNISAは定時定額で少額をコツコツ積み立てていく仕組みとあって、その影響が対象ファンドへの資金フローや残高の積み増しに表れてくるにはまだ時間がかかりそうだ。 (QUICK資産運用研究所 望月瑞希、西田玲子)

ツイッターで広がる「投信あるある」 金融庁職員が呼びかけ

「債券でしか運用していないのに、なぜ株式投資信託?」 「基準価額が高いと割高で、低いと割安?」 2月23日夕に「#投信あるある104」というハッシュタグを付けた投稿がツイッター上に登場すると、瞬く間に投信ブロガーをはじめとする個人投資家や識者らによるつぶやきの輪が広がった。 呼びかけたのは、積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)に関する個人投資家の意見交換会(つみたてNISA Meetup、通称:つみップ)を担当する金融庁の職員だ。ハッシュタグは「#」の後に言葉を書くことで特定のテーマであることを示す検索用のキーワードで、「104」は「とうし(投資)」を意味する。 金融庁は昨年からつみップの開催を重ねている。参加者から投資対象となる投資信託の仕組みに関する初歩的な質問を受け、「確かに投信ってわからないことが多い」と感じたのが投信あるあるを始めたきっかけという。 投信の制度や仕組みは難解な専門用語が多く、未経験者や初心者にはわかりにくい。投信でよくありそうな勘違いや投信購入時の体験などをつぶやくことで、広く情報を共有しようというわけだ。   「債券は満期まで保有すれば元本が確保されるのに、債券で運用する投信に元本割れリスクがあるのはなぜか」 「金利の高低と債券価格の上下との関係は?」 「国内非居住者になる海外赴任者は投信を購入できるのか」 「実際の取引に適用されるのはいつの基準価額か」 インターネットなどで調べても正しい答えにたどり着くのが容易でない「投信の常識」がサイバー空間の集合知で浮かび上がりつつある。 金融庁は「貯蓄から資産形成へ」の旗を振り、投資家の裾野拡大に腐心する。3月16日に東京で開催するつみップでは、「#投信あるある104」を参考にしながら、「投信のよくある誤解」について、ゲストを交えて話し合うことも予定しているようだ。 (QUICK資産運用研究所)

三菱UFJ国際投信、「AIで市況コメント自動生成」を研究 東大と共同で

三菱UFJ国際投信はIT(情報技術)を活用した業務効率化の一環として、東京大学と産学共同で「AI(人工知能)を使った金融市況分析テキストの自動生成」の研究に取り組んでいる。投資信託の運用報告書などに掲載する市況分析コメントの作成をAIに任せることで、運用担当者が本来の業務に集中できる環境を整えるのが狙いだ。 ■テキストマイニングで生産性を向上 コメントの自動生成は、テキスト(文字列)データを分析する「テキストマイニング」のAI技術を駆使。研究を担っている東京大学大学院工学系研究科の和泉潔教授と成蹊大学理工学部情報科学科の酒井浩之准教授は「AIが得意とすることは、AIに任せて人の作業を代替し、人は人にしかできない本来の業務に専念することで、社会全体の生産性を向上する成果を目指す」と強調する。 和泉教授 運用報告書などの市況分析コメントは、投信の運用成績に関連する市場の動向を保有者に説明するためのものだ。例えば、国内株式を運用対象にする投信では「8月の国内株式市況は、中国の景気減速懸念が台頭したことなどを背景とした世界的な株安を受けて大きく下落しました。日経平均株価は8.23%の下落となりました・・・」といった文章で、現在は運用担当者が執筆している。 ■株価変動の因果関係を組み合わせた文章を自動生成 こうしたコメントを自動生成するためには、ある期間において株価が大きく変動したイベントを調べて(例えば、人民元の切り下げなど)、その中から株価が変動した理由(要因)と結果を抽出し、それらを組み合わせて人が読みやすい文章に仕上げる技術が必要になる。 共同研究では、この一連の手順を「ある特定期間に日経平均が大幅に変動した」という情報を元に、数千本の記事から関係するキーワードやそれぞれの因果関係を自動抽出し、運用担当者が作成しているコメントに近い形の読みやすい文章にまとめ上げるのに成功した。実際に運用担当者が作成したコメントと比較しても高い類似度を示したという。 酒井准教授 テキストマイニングは、単に業務の効率化だけでなく、投資判断を支援する技術としての活用も期待される。記事やレポート、開示資料など金融・資本市場に関する莫大な量のテキストを有効活用するために、機械的に解析する技術が求められている。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

投信に広がる「見える化」 三井住友アセットはメディア向けオフィスツアー 

投資信託業界で「見える化」の動きが広がり、オフィスを公開する運用会社が増えてきた。三井住友アセットマネジメントは2016年4月から販売会社や独立系金融アドバイザー(IFA)会社、一般投資家向けに「オフィスツアー」を開いてきたが、この2月に初めてメディア向けに開催した。日頃は表に出る機会が少ないオフィスをメディアに公開することで、実態を知ってもらい、資産形成の裾野拡大につなげるのが狙いだ。 ■運用部門やバックオフィス部門を公開 同社のオフィス(東京・港)は650人近くが働き、国内の運用会社では4番目に多いという。ツアーはエコノミストやストラテジストが所属する調査部、目論見書や月次レポートを作成するディスクロージャー部、基準価額の算定業務に関わる資産管理部、そして心臓部の運用部門、ESG(環境・社会・企業統治)関連の調査などを担うスチュワードシップ推進室といった部署を順に巡り、幹部社員がそれぞれ業務内容を説明した。運用会社の業務フローを理解してもらうためにバックオフィス部門の見学も組み込んだ。 ■エコノミスト、ファンドマネジャーを身近に いつもメディアの取材に対応しているエコノミストやファンドマネジャーらがどのような環境で働いているかを知ることで、より身近に感じてもらうことに期待を寄せる。ツアーに先立ち、チーフエコノミストの宅森昭吉氏、株式運用グループヘッドの山口健氏による勉強会も開いた。 ファンドマネジャーを前面に出した「顔の見える投信」は独立系投信が先行してきたが、ここにきて大手が追随。投資家らに信頼・安心を与える取り組みの一環としてオフィス公開も広がりそう。金融庁が金融機関に「顧客本位の業務運営」を求めていることもあって、運用会社による見える化や情報発信の強化が進んでいる。 (勉強会の要旨は下記の通り) ◇宅森氏、街角景気で日経平均のトレンド転換を判断 経済動向を分析するうえで、生活実感が伴う肌感覚の「身近なデータ」の変化を重視。中でも内閣府が毎月6営業日後に公表する「景気ウォッチャー調査(通称、街角景気調査)」が役に立つとして、同社サイトで「宅森昭吉のエコノミックレポート」としてその内容を解説している。 この調査結果で示される景気判断指数は、タクシー運転手や小売り業者など全国約2000人に景気の良し悪し(3カ月前と比較した現状判断と数カ月後の先行き判断の2種類)を5段階に分けて尋ね、それを数値変換して指数化したものだ。 景気に先行する日経平均株価と現状判断指数は、転換点がほぼ同じになる傾向がみられるという。例えば、2月8日公表の指数値は前月から大きく下げ、株価に「売りサイン」が灯った。過去6年間に遡って、現状判断指数の上下トレンド転換点を判別し、転換日に合わせ日経平均株価をドテン(保有している持ち高を決済する一方、それと売り買いが逆の持ち高を構築)したとすると、8000円台で始まった日経平均に対し、10000円以上儲かった計算になる。 その他には音楽シングルCDの初動販売枚数に注目。販売枚数が50万枚を超えたCDがあると景気の足腰は強いと判断している。消費税率が引き上げられた14年4月の月末に人気グループ「嵐」のCDが発売されたが、そのCD初動販売数は50万枚を超えていた。多くが増税による景気の底割れを危惧したが、同氏は増税後も景気後退にならないと判断していた。昨年後半は、嵐や乃木坂46、欅坂46などのCD初動販売数が50万枚を超え、景気の強さを示していたという。 日銀の金融政策に関し、仏滅の日に政策金利が変更されるのはごくまれというジンクスもある。平成元年以降23回連続して仏滅の日に政策金利変更が実施されたことはなく、仏滅だったのは11年前の2月の最後の利上げの日だけだという。経済の現状や先行きを読み解く身近なデータには事欠かないようだ。 ◇山口氏「日本企業の業績の為替感応度が相当低下」 最近の世界的株式相場の波乱を「ポートフォリオのボラティリティー(価格変動リスク)水準を一定に保つ投資戦略をとる金融商品において、昨年から続いた市場のボラティリティーの低下からレバレッジをかける形で投資額が膨み収益も上がっていた」と分析。ところが「米国の賃金上昇が予想以上となり米国長期債が売られ金融市場でのボラティリティーが上昇に転じた。その結果、ポートフォリオ全体の価格変動リスクを一定以下に抑えるためレバレッジを低下させる動きが加速し、これが世界的な株安につながった」と解説する。 こうした中、日本株の相場動向については「日本企業の企業業績は堅調であり、大手メーカーを中心に世界の現地生産が進み、企業業績の為替感応度は相当低くなっており、多少の円高でも企業業績が下振れしにくくなっている」と指摘。「堅調な業績見通しに変化はないが、米国長期債の値動きによる株価への悪影響にはまだ留意が必要で、当面3カ月程度、日本株相場はもみ合いの展開となるだろう」との見方を示した。 (QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

金融庁が「つみップ」女子部を開催 率直で実践的な質問が続々

バレンタインデー明けとなる2月15日の夜、金融庁の会議室に30人近くの女性が集った。金融庁が主催する積み立て型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の意見交換会「つみたてNISA Meetup」(通称:つみップ)の14回目。昨年11月に続く2回目の「女子部」は、文字通り女性だけを対象に参加者を募って開催した。 ■金融庁の制度説明、iDeCoとの違いにも言及 ゲストには、おなじみの経済評論家の山崎元氏やファイナンシャルプランナー(FP)の岩城みずほ氏らに、男性ベテラン投信ブロガーの「NightWalker」さん、「虫とり小僧」さん、「吊られた男」さんの3名が加わった。さらに女子部に花を添える形で、ブログやツイッターで自身の資産運用について積極的な情報発信し、つみたてNISAを既に始めるなど投資経験豊富な「おぱる」さん、「スバル」さん、公務員の「yoko」さんの女性3名が特別ゲストに招かれ、豪華な顔ぶれが揃った。 参加者約30人のうち、6人の投資未経験者を含む半数ほどが投資歴3年未満で、経験歴の分け隔てなく「つみたてNISA」への関心が高いことがうかがえる。 金融庁担当者からは、つみたてNISAを制度化した背景や投資信託の仕組みに加え、同じく税制優遇が受けられる個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)との税制上の違いも説明に盛り込まれたのが今回の特色だった。 ■制度乱立の不便さや償還の不安などリアルな声飛ぶ 質疑・応答の時間では、障害を持つ娘にはつみたてNISAとiDeCoのどちらを勧めたらよいか、子供にはジュニアNISA(子供名義)とつみたてNISA(親名義)のいずれを選択すべきかといった女性目線での質問が目立った。 年間非課税枠がどうして12で割り切れない40万円なのかといった制度に関する素朴な疑問も出た。NISA(一般NISA、ジュニアNISA、つみたてNISA)をすべて一本化してもらった方が便利などの実直な要望もあり、金融庁担当者が熱心に耳を傾ける姿が印象的だった。 つみたてNISA対象ファンドの繰り上げ償還の可能性に関する質問に対して、投信ブロガーからは「繰り上げ償還をそれほど不安視せずにまずは始めることの方が重要」とのアドバイスもあり、そのうえで別の投信ブロガーからは投信制度そのもので「繰り上げ償還されると換金益に課税されるなど、何かと投資家に不利益になるのは改善して欲しい」と金融庁への要望が出る場面もあった。 今回開催されたつみップ女子部の感想を聞くと、ゲストの女性投資家からは「率直で実践的な質問」が多かったとの声が上がっていた。「ジュニアNISA口座で金融機関の変更ができないのは不便」という金融庁への要望もその一つだ。投信ブロガーからは「最近の波乱相場に関連した質問がなかったのは意外」との感想がもれた。   ■懇親会ではゲストを囲む華の輪 木曜日の夜にも関わらず、懇親会には約20人が参加し、ゲストや金融庁職員を囲みながら談笑する華の輪ができた。 ゲストのアドバイスがとても参考になったとの声もあった。「インデックスファンドの低コスト化が進んでいるが、乗り換えた方が良いのか」との質問に対し、山崎氏からは乗り換え時に換金税がかかる場合は「期待リターン×税率」が目安になるとの説明があった。例えば、外国株ファンドの期待リターンをおよそ年率5%とし、税率が約20%なので、信託報酬の差が両者を掛け合わせた1%以上だと乗り換え、1%未満だとそのまま保持、という基準だ。 投資信託の仕組みのイロハを「金融当局」が丁寧に解説していたのは「凄い」とゲストの女性投資家は感心していた。「投信の資産は信託銀行において、ファンドの保有者ごとにきちっと分別管理・保全されている」ので安全という説明が金融庁からあった。 ■50代女性「コツコツ投資もいいかな」 上場企業に勤める50代の独身女性は「職場の周りは自分と同年代の男性ばかり。私もそうだが、みんな定年後の生活に不安をもっているはずなのに、資産運用について話をするような雰囲気は全くない。今回参加して、ブロガーの皆さんと知り合えてよかった。つみたてNISAの非課税期間が20年といっても、定年が近い自分には無関係と思っていたが、今日の話を聞いて少し考えが変わった。一般NISAをつみたてNISAに切り替えてコツコツ投資してもいいかなと考えている」と話していた。 30代の会社員はNISAを少し前に始めたが、「職場の同僚から最近『つみたてNISAのことを教えて』とよく聞かれても、うまく答えられないので今回参加してみた。ヒントをつかめたような気がする」という。働く女性の間では、つみたてNISAの関心度合いがじわり高まってきているのかもしれない。 ゲストの岩城氏は「質疑のレベルが高かった半面、今回参加した投資未経験者が『つみたてNISAをどのように活用し始めたらよいか』を考えるのにどのくらい役立ったか少し不安。昨年11月の女子部では、つみたてNISAを始めるにあたり、その前に必要となる資産形成の金額や適切な運用場所などを5つのステップに分けて考える手順を紹介した。金融庁のつみップのサイトに説明資料が残っているので、投資未経験者の参考になれば」と話していた。 ■「20年という投資なんて・・・」、女性の歌声響く 懇親会の締めの挨拶は山崎氏。「つみたてNISAは失敗しにくい制度なので、『始める』『続ける』そしてそのよさを『教える』を是非実践して欲しい」と述べた後、恒例になりつつある合唱の音頭取りに移った。 今回ひねり出した曲は「20年」と「女性」にひっかけて、1997年に大ヒットした歌姫・安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」。歌詞のサビを「20年という投資なんて知らなかったよね」に置き換えて歌うというシャレタ計らいだった。 ■再び地方へ、つみたてNISAキャラクターも誕生 3月のつみップは地方へ繰り出す。昨年12月のQUICK資産運用研究所の調査では、首都圏に比べ地方の方がつみたてNISAの認知度はやや低い傾向にある。東京でのつみップの熱気がどこまで伝播するか注目だ。 そして、金融庁はつみたてNISAのマスコットキャラクターを募集することを発表した。2月中には募集を開始する予定のようだ。   ◯「個人の資産形成に関する意識調査」の概要はこちら <金融庁> つみたてNISA Meetup (QUICK資産運用研究所 高瀬浩、小松めぐみ)

「グローバル・ロボティクス株式(1年)」と組み合わせに適した投信は? 「相関係数」活用術

いま保有している投資信託と組み合わせて別の投信を購入したいが、どんなファンドを選べばいいか分からない――。そんなときに参考になるのが「相関係数」だ。 主に先進国の株式に投資するタイプの投信で「グローバル・ロボティクス株式ファンド(1年決算型)」(02311158)を選んだ。この「先進国株式型」投信との組み合わせに適したファンドを探す。 まず検証するのは、比較的近い値動きをするバランス型の「投資のソムリエ」(4731312A)との相性。様々な資産に投資する「バランス型」だ。「先進国株式型」と「バランス型」の相関係数は0.93と高い。 5対5の割合で投資した「合成」のリターン(分配金再投資ベース、週次1年・年率)は11.49%。「グローバル・ロボティクス株式(1年)」だけに投資した場合の21.81%と「投資のソムリエ」だけに投資した1.17%の中間となる。 価格変動を示すリスク(標準偏差、週次1年・年率)は「グローバル・ロボティクス株式(1年)」だけに投資した場合が16.02%で、「投資のソムリエ」は3.04%。2ファンドの平均を単純に計算すると9.53%になる。実際にこの組み合わせで同額ずつ投資した「合成」のリスクは9.12%で、平均値より0.41ポイント低くなる(図1参照)。この差がリスク低減の効果だ。 <QUICKの情報端末「Qr1」を使って簡単に比較> 次に国内株式型の「三井住友・げんきシニアライフ・オープン」(79311005)との組み合わせを見てみる。「先進国株式型」と「国内株式型」の相関係数は0.60と、バランス型との組み合わせより低い。 「合成」のリターンは28.34%で、「グローバル・ロボティクス株式(1年)」と「げんきシニアライフ」の中間の値になった。「合成」のリスクは13.90%で、2ファンドの平均(14.80%)を0.90ポイント程度下回る(図2参照)。 リスク低減効果は相関係数が小さい「先進国株式型」と「国内株式型」の組み合わせの方が大きくなった。 このようにリターンはどちらの組み合わせでも2つのファンドを足して半分にした数値を維持する一方、リスクの低減幅は相関が低い組み合わせの方が大きくなった。複数のファンドに投資して分散効果を上げるには、相関が低く値動きの傾向が異なるファンドの組み合わせが有効と言える。 (QUICK資産運用研究所 望月瑞希)

三菱UFJ国際投信「基準価額」、QUICKが速報 公開APIから情報取得

QUICKは、三菱UFJ国際投信が運用する国内公募投資信託の「基準価額」の速報を始めた。三菱UFJ国際投信が外部システムと接続しやすくする技術仕様「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」を使って公開している投信情報を取得することによって、QUICKサービスでの更新時刻を繰り上げる。通常は21~22時前後だが、Qr1など端末サービスに搭載しているQUICK資産運用研究所の特設サイトでは18時ごろに確認できるようした。 三菱UFJ国際投信は情報発信を強化し、顧客の利便性向上を図るため、2017年9月27日から投信情報のAPI公開を始めた。同11月30日には公開対象を同社が運用する国内公募投信すべてに拡大。外部からアクセスすることが容易になったことで、QUICKによる速報が実現した。 <三菱UFJ国際投信「投信情報API」>   同社FinTech推進室長の水野善公氏は「我が社だけでは十分ではないと考えている。他社に先行して、できる限りの情報をオープンにし、QUICKの協力によって競争優位となれば、他社が追随する形で結果として業界全体でのイノベーションに繋がるものと信じている」と語る。今後もAPIによる情報提供を拡大していく方針で、投信がより身近な金融商品として顧客に利用してもらえるように、さらに敏速な情報開示を目指すという。 <QUICK資産運用研究所の特設サイト> (QUICK資産運用研究所)

QUICKファンドスコアで投信比較! ひふみプラスが8、フィデリティ日本成長株は9

長期投資にふさわしいかどうかの視点から個別の投資信託をランク付けした「QUICKファンドスコア」。QUICK資産運用研究所が算出し、日本経済新聞電子版などで公開している。国内の株式で運用する投信のうち、純資産総額(残高)が大きい投信のスコアを比べてみた。 ■5つの項目から分析、「顧客本位」の評価 QUICKファンドスコアは、各投信を①運用成績の安定度②リスクの適正さ③リターンに見合ったコスト④下げ相場での抵抗力⑤分配金の健全度――の5項目によってそれぞれ分析し、10段階で点数化した「総合スコア」を算出。点数が高いほど、分類が同じ投信の中で相対的に長期保有に向いていることを示す「顧客本位」の投信評価だ。 国内株式型で残高上位の投信のスコア(2017年12月末時点)を見ると、1~10まで評価がばらついている(図表1)。過去3年、5年のリターン(分配金再投資ベース)は全てプラス。いずれも好成績を収めているにも関わらずスコアがバラバラなのは、QUICKファンドスコアが残高の大きさや運用成績だけにとらわれず、長期投資に向いているかどうかを評価軸にしている特徴の表れだ。 全体的に比較してみると、評価が低かったのは毎月分配型。通貨選択型やカバードコール型などの複雑な運用手法を用いるファンドのスコアが1~3と低かった。一方、高評価の投信には分配金を支払わずに運用を続け、高いリターンを上げている積極運用のアクティブ型や、指数に連動した成果を目指すインデックス型が目立った。 ■「ひふみプラス」が8、「フィデリティ日本成長株ファンド」は9 具体的に個別のスコアを見てみると(図表2)、残高トップの「ひふみプラス」(9C311125)の総合スコアは8。過去3年、5年のリターンは群を抜いて高かったが、運用期間がまだ5年半と比較的短いこともあってスコアはあまり伸びなかった。QUICKファンドスコアは運用実績が長くなるほど評価が高くなる仕組みになっているからだ。 「ひふみプラス」の総合スコアの元になる5項目の点数を詳しく見ると、「リスク」と「下値抵抗力」の点数が低いことがわかる。これは同じリスク階級に属する投信の中で値動きの振れ幅が相対的に大きかったことや、基準価額の一時的な落ち込みが同じ分類の投信の中で大きめだったことを示している。 残高2位の「フィデリティ・日本成長株・ファンド」(32311984)の総合スコアは9と高い。ただ、項目ごとに見ると「コスト」の点数は低かった。この項目は投資家が支払う信託報酬と購入時手数料の合計が割高だと点数が低くなる。 同ファンドの購入時手数料上限は3.24%で、同じ投信分類の平均値である1.965%(QUICK資産運用研究所調べ)を上回った。年率の実質信託報酬も1.6524%で、平均値の1.118%より高かった。ファンドマネジャーの裁量で組み入れ銘柄を積極的に入れ替えるアクティブ型で、調査費用などのコストがかかる分だけインデックス型よりも信託報酬が高くなりやすい。 一方、「日本株アルファ・カルテット(毎月分配型)」(22314144)はスコアが最も低い1だった。評価項目はどれも低かった。元本を取り崩して分配金を支払ってきたため「分配金健全度」が低く、商品設計が複雑なゆえにリスクやコストが相対的に高かったことなどが評価を押し下げた。 このように投信を運用成績だけでなく、視点を変えた評価項目で比べてみるとそれぞれの特徴をとらえやすくなる。これから長期の資産形成を目指すなら、QUICKファンドスコアを参考にして長期投資に向く投信を慎重に選びたい。 (QUICK資産運用研究所 望月瑞希) QUICKファンドスコアについて詳しくはこちら →  QUICKファンドスコア 個別投信のQUICKファンドスコアの確認はこちら→  日経電子版「投資信託」

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