※QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回は、香港の現地記者ジェスロ・オー氏がレポートします。この記事は10月28日にQUICKの端末サービス上で配信されたものです。
習主席の米英訪問、中国の重要計画展開に寄与
中国の習近平国家主席が過去2カ月間、次々と忙しく外国を訪問した。9月の米国公式訪問に続き、10月には400億ポンド超のビジネス契約を「手土産」に英国を華々しく訪問、中英両国は包括的戦略パートナーシップを構築すると高らかに発表した。このように中国の指導者が2カ月間で米国と英国を相次いで訪問するということは極めて異例だ。
今回の習主席の米英訪問は、中国共産党の第13次「5カ年計画」策定前であることに特別な意味がある。習主席の外交強化は、次期5カ年計画で「一帯一路(新シルクロード)」やアジアインフラ投資銀行(AIIB)といった重要な計画を本格的に展開するうえでプラスとなる。
「5カ年計画」、成否のカギは中米相互の信頼関係か
「5カ年計画」は中国政府の経済と社会の発展に関する遠大な計画である。第1次「5カ年計画」は「一五計画」と称され、1953~57年にかけて実施された。これまでに12回の「5カ年計画」が行われている。そして、習主席が訪英から帰国した後の10月末に開催される中国共産党の中央委員会第5回全体会議(5中全会)で、2016~20年の第13次「5カ年計画」の枠組みが決定される。このような重要な国家計画に関する会議を前にして習主席が米国や英国を続けて訪問したのは、彼が既に政権を掌握することで中国の政局が比較的安定しており、今後は経済発展の促進に全力で取り組むという姿勢を対外的に示すためだと思われる。また、積極的な外国訪問は習主席が主張する「一帯一路」やAIIBが発展していく上での障害物を取り除くことにもなる。
「一帯一路」とAIIBは、中国が近隣国との経済的な連携を強め、経済や貿易に関する発言権を一段と発揮する場となる。この2つの計画により、中国は欧米が牛耳る世界銀行や国際通貨基金(IMF)に対抗するのだという見方もある。しかし、経済的な観点では、中国は「一帯一路」とAIIBを通じて発展資金を渇望するアジア新興国市場に資金と市場開拓のチャンスを提供することに協力する。
同時に、中国は余剰生産能力を「輸出」することができ、双方に利するウィン・ウィンの関係だと言える。「一帯一路」沿線国は、中国がインフラ建設発展への融資の旗振り役となって協力し、中国と経済貿易の地域的な連携を強めることを大いに歓迎している。ただ、米国はこれまで、この2つの計画に疑問を抱き、非協力的な姿勢を示してきた。このため、習主席の訪米で中米の相互信頼を高めれば、2つの計画への参加に関心を抱く他の諸国の計画に対する自信を一段と強める。
一方、英国は欧州の中で率先してAIIBに参加した国だ。習主席の訪英はAIIBに対する英国の支持に謝意を示すと同時に、両国の関係を強化することで2つの計画を全力で推進するための基盤を固めることになる。習主席とキャメロン英国首相は一緒にパブへ行き、フィッシュ&チップスやビールを味わっており、両者は友好をそれなりに深めたようだ。
市場はインフラ関連銘柄に注目
5中全会は10月26~29日まで開催される。すなわち、習主席の帰国後に開かれるタイミングだ。国有企業改革とインフラ強化による経済発展が焦点になると伝わっている。習主席の訪米と訪英で「一帯一路」とAIIBの発展基盤が強化され、外交の場が確立されたことで、中国は次期「5カ年計画」でインフラプロジェクトの海外進出チャンスの拡大に全力で取り組むことになるだろう。このため、インフラ関連銘柄は今後の中国・香港株式市場で引き続き輝かしいスター銘柄であり続けるとみられる。