※QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はRHB OSK証券インドネシアのアンドレイ・ウィジャヤ氏がレポートします。この記事は10月30日にQUICKの端末サービス上で配信されたものです。
インフラプロジェクト増加…競争激化に懸念も
インドネシアのセメント需要に回復の兆しが見えている。9月の販売量は、8月に引き続き堅調な伸びを維持した。ジャワ島とカリマンタン島以外での販売量が拡大、インフラプロジェクトが増加したことが背景にある。当社が追跡しているセメント企業に関しては、新規のインフラ案件関連で受注したことが分かった。ただ、向こう2年間で供給量が増大する見通しであることから、競争が激化すると予想し、インドネシアのセメントセクターの投資判断は「ニュートラル(中立)」を維持する。
9月セメント販売量、年初来最高水準も伸び率は減少
■販売量の伸びは堅調に推移
9月の国内セメント販売量は、ジャワ島とカリマンタン島以外で販売量が拡大したほか、インフラ事業が増加したことから、年初来の最高水準となる570万トンに達した。8月の550万トンから4.7%増加している。1~9月の累計国内販売量は、4230万トンに達している。ただ、伸び率は前年同期比で1.7%減だった(1~8月では同2.3%減)。ジャワ島とカリマンタン島のセメント販売量が91万トン減少した一方で、スラウェシ島やスマトラ島、東部インドネシアでの販売量が18万トン拡大したことで、減少分の一部は相殺された。
■回復の兆し
2015年第3四半期のセメント販売量は1450万トンと、前年同期の1400万トンから3.6%増加した。当社が追跡しているセメント企業は、新規のインフラ案件関連を受注している。セメン・インドネシア(コード@SMGR/JK、買い、目標株価:1万500ルピア)は、軽量高架鉄道(LRT)、東カリマンタン州バリクパパン~サマリンダ高速道路や東ジャワ州スラバヤ外郭環状有料道路の建設事業、中ジャワ州スマランのアフマドヤニ空港の拡張工事へのセメント供給契約を獲得した。また、インドセメント・トゥンガル・プラカルサ(インドセメント、コード@INTP/JK、中立、目標株価:2万ルピア)は、ジャワ島横断高速道路の中ジャワ州ソロ~東ジャワ州クルトソノ間の第1区間、西ジャワ州バンドンのソレアン~パシルコジャ高速道路、ジャカルタ外郭環状線(JORR)の西ジャワ州デポック~南ジャカルタ・アンタサリ間に関してセメントの供給を受注している。
セメント供給、需要を上回る見通し
■セメン・インドネシアがシェア首位
セメン・インドネシアは、2015年第3四半期に市場シェアを前四半期の42.2%から42.9%に伸ばした。一方、インドセメントの市場シェアは、前年同期の29.8%から26.8%に縮小した。ホルシム・インドネシア(コード@SMCB/JK)の市場シェアは、同期間に14.7%から14.4%に縮小している。東部インドネシアの販売量が堅調に伸びたことで最大の恩恵を受けたのは、セメン・インドネシアだった。セメン・インドネシアとインドセメントの経営陣はまた、2015年第3四半期の平均販売価格(ASP)が前四半期比で約2%下落したことを明らかにしている。販売量に占めるバラセメントの割合が増加したことと、販売価格の低下が要因だという。
■投資判断:中立
セメント需要の拡大は見込めるが、供給量が需要を上回る速度で増加すると予測されることから、インドネシアのセメントセクターへの投資判断は「中立」を維持する。なぜなら当社は、国内セメント業界の競争が激化すると予想しているからだ。インドネシアのセメント生産能力は2015年度に前年度比20%、2016年度に同10%増加するのに対して、セメント販売量の増加率が2015年度に前年度比3.5%、2016年度には同6%にとどまると想定しており、当社の計算では2014年度に87%だった国内セメント生産設備の稼働率は、2016年度に72%に低下する見通しだ。
【翻訳・編集:NNA】