7月10日は参院選。日本国民が政治の意思表明をする大切な日ですが、一方、投資家には選挙結果によって株価がどう動くのかも気になるところ。今回は選挙後の株価の動きという観点から、2000年以降に実施された選挙と、その後の日経平均株価の値動きを解説します。
選挙結果を受けて、株価はどう動くのか?
2000年以降に実施された全10回の国政選挙と日経平均株価の値動き(選挙前日の終値からの乖離率)を調査したのが下のグラフです。選挙日の全営業日を基準に、選挙後の1か月間でどのように株価が推移したのかを表しました。
上のグラフに、各回の選挙結果を加えて簡略化したのが下記の表です。
まず、選挙結果がサプライズとなって株価に影響を与えたのかに注目します。すなわち、選挙日の翌営業日に株価が動いたのかですが、上記の限りでは、選挙結果の如何によらず大きく株価が動いたケースはありません。すべて、翌営業日の日経平均株価は前日比±2%の範囲内に収まっており、通常の日経平均株価の値動きの範囲と言えます。
2009年衆院選や2012年衆院選では、与野党の議席数が逆転して「政権交代」が達成された歴史的な選挙となりましたが、翌営業日の日経平均株価は小幅な値動きでした。選挙前の世論調査で既に大勢が判明していたため、市場にとっては「織り込み済み」の結果だったことが原因でしょう。
1か月後に株価が上昇した選挙とは?
続いて、選挙から更に時間が経過した後の日経平均株価に注目すると、選挙から1か月後に日経平均株価がプラスに推移したケースは2回しかありません。いずれも衆院選(2005、2012)で、自民公明が大勝した選挙です。自民公明が国会の絶対安定多数(衆院で議席3分の2)を獲得したことが、政治的な安定感をもたらしたとの評価と見ることができます。
とはいえ、前回2014年の衆院選では自民公明が絶対安定多数を獲得したのにもかかわらず、1か月後の日経平均株価はマイナスに落ち込みました。必ずしも、衆院選で自民公明が大勝すると株価が上がる、というわけではなさそうです。
参院選の後は株価が下がる?
さて、7月に行われるのは参院選。参院選が株価にどう影響するのか注目した場合、過去の参院選は全て1か月後に日経平均株価がマイナスに推移したことが分かります。
しかし、そうであっても「参院選の影響で株価が下がった」とは結論づけられません。その理由は参院選が行われる「時期」にあります。2000年以降の参院選は全て「7月」に実施されました。今年の参院選も、過去の例にもれず7月に実施されます。参議院は衆議院と異なり「解散総選挙」が無いため、選挙時期がほぼ固定されるからです。
さて、QUICKの「マーケットカレンダー」を見てみると、7月~9月の夏期は日経平均株価の勝率が下がることが分かります。このように、夏期になると株価が下がる経験則(=アノマリー)を、市場では「夏枯れ相場」と呼びます。国内外の投資家が夏季休暇を取得し、相場が閑散とすることが原因といわれています。
このことから、「参院選で株価が落ち込んだ」というよりも、「夏場に入ったから株価が落ち込んだ」ことの結果であり、参院選の選挙結果が株価に直接影響したとは言えないようです。そもそも、参院選で1度に改選する議席数は参議院全体の半分、参議院は衆議院と比べると権限が低いことから、衆院選に比べると政治上のドラスティックな変化とはなりにくいかと思われます。
よって、過去の事例では、「参院選が株価に影響した」ことが無いようです。そもそも、日本の選挙は事前の世論調査で大勢が判明しており、選挙結果に株価を動かすほどの「サプライズ」が生まれにくいです。投資家は、参院選の結果にやきもきするよりも、過去の日経平均株価のアノマリー(マーケットカレンダー)を気にしたほうがいいかもしれません。
(編集 QUICK Money World)