自社株買い、経営者の不満と覚悟は「想定単価」に表れる

QUICKコメントチーム=本吉亮

「逆イールド」現象や4~6月期の減益決算など、景気や業績面でリスクが高まるなか、企業の自社株買いが相場の下支え役となりそうだ。ただ、一口に自社株買いといっても、投資魅力の向上(株主還元)を目的に実施されるものもあれば、大株主による売却の受け皿として実施される場合もある。その中身は吟味が必要だ。

ソニーは2月に株主還元目的としては初めてとなる自社株買いを発表し、発行済み株式の2.4%に相当する3000万株、金額ベースでは1000億円を上限に設定した。5月中旬には発行済み株式総数の4.7%に相当する6000万株、金額ベースでは2000億円を上限に自社株買いを行うと発表した。

このソニーの大規模な自社株買い実施自体はポジティブに評価されたが、実は設定上限金額を株数で割った想定取得単価は3333円。ソニー株は5000円強で取引をされているため、設定上限金額で自社株買いをしても取得株数は公表した株数を大きく下回ることになる。このように想定取得単価が現値を大きく下回る場合は、上限設定の取得株数は取得できない。

一方で、想定取得単価が現値を上回る場合は、上限設定取得株数を取得できるうえ、経営陣が現在の株価を割安であると訴えていることがわかる。「株安不満度が高い企業」による「異議申し立て」という見方もできそうだ。

この点をふまえ、7月以降に自社株買いを発表し、想定取得単価が現在の株価よりも高い(乖離率が大きい)銘柄を並べてみた。

<想定取得単価が現在の株価を大きく上回る銘柄>

・データは8月16日現在。上限取得株数が発行済み株式数の1%以上の銘柄を掲載
・発行済み株比率(%)=取得上限株数÷発行済み株式数、想定取得単価=取得上限金額÷取得上限株数、乖離率(%)=現在値÷想定取得単価

乖離率が最も大きいロコンド(3558)などは足元の業績が芳しくなく、株価が下落したことで想定取得単価との乖離が大きくなったケースだ。ただ、大和証券G(8601)、マネックスG(8698)などは発行済み株式の3%近い設定のため、それなりのインパクトはあると思われる。1Q決算で業績回復の兆候がみられた野村HD(8604)が急伸したところをみると、現値水準で証券株を打診買いする手はありそうだ。

NTT(9432)に関しては、2019年度の政府予算で計上された政府売却分(上限4866万株)の取得がメインのため若干割り引く必要があるが、比較的業績堅調にもかかわらず、現在値は想定取得単価よりも1割強低い水準となっており、押し目買いを意欲を高めそうだ。

このような自社株買い実施に関して、想定取得単価と現在値との乖離などに関するデータを取りまとめているのが、QUICKの情報端末からアクセスできる「QUICK Knowledge 特設サイト」の「自社株買いレポート」だ。投資戦略の一助として活用してほしい。

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