インドネシアのセメント業界、成長余地残すも目先は供給過剰か

QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はインドネシアの現地記者アディ・ビナルソ氏がレポートします。※この記事は2016年5月17日にQUICK端末で配信した記事です。

セメント各社、大幅な需要増見込む一方で供給過剰懸念も

インドネシアのセメント企業は、今年も生産能力を拡張する姿勢を維持している。ただ、海外からの新規参入によって短期的に供給過剰になり、地場企業の利益率が圧迫される可能性が浮上している。

セメント各社は、向こう3~5年間の大幅な需要増に対応する方針を固めている。インドネシアでは今後、インフラ整備が全力で進められ、国内のセメント需要が拡大する見込みだ。国内で2番目に大きいセメント企業であるインドセメント・トゥンガル・プラカルサ(コード@INTP/JK)は、昨年の純利益4兆2,000億ルピアのうち2兆7,000億ルピアを流通網の拡大と新工場の取得に充てる方針を打ち出した。競合の国営セメン・インドネシア(コード@SMGR/JK)もまた、中ジャワ州レンバンと西スマトラ州パダンにそれぞれ年産能力300万トンの工場を設置した。

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セメント総生産能力は数年以内に年1億トンを上回る見通し

外国企業もインドネシアのセメント分野への投資に積極的なことから、セメント総生産能力は数年以内に年1億トンを上回る見通しだ。外国企業の投資案件としては、インドのウルトラテック・セメント(コード@532538/INI)が中ジャワ州ウォノギリで年産能力400万トンの工場建設を予定している。ほかに、東アジア各国で最大手のセメント企業、中国建材集団(CNBM、コード@3223/HK)も中ジャワ州グロボガンに年産能力2,300万トンの工場を建設している。

ファンドマネジャーや業界関係者は、経済が伸び悩んでいる影響で住宅部門のセメント需要がまだ増加傾向にないことをふまえ、生産能力の高まりが短期的に供給過剰に陥る可ことを危惧している。CIMBプリンシパル・アセットマネジメント(資産運用額6兆ルピア)のチョリス・バイドウィ(Cholis Baidowi)取締役兼最高投資責任者(CIO)は、「今年のセメント企業への投資判断はニュートラル(中立)だ。セメント需要は政府のインフラ関連事業に支えられているものの、小口の顧客(retail customer)や住宅部門への販売量が低迷したままであれば大幅に増えることはないだろう」と述べている。

インドセメント社長「セメント市場は現在供給過剰状態にあり、価格はさらに下落するだろう」

インドネシア・セメント協会(ASI)の最新の予想によると、今年の国内セメント販売量は前年比わずか5%増の6,300万トンにとどまる見通しだ。ただ、セメントメーカー側は長期的な視野で事業計画を立てている。インドネシアの国民1人当たりのセメント消費量は年間241キログラムと、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の平均である400キログラムを下回っている。このことは、インドネシアのセメント業界に大きな成長の余地があることを示している。

また、インドネシア政府は、遅れが生じている低所得者層向けの住宅100万戸の建設計画を年内に完了させるため、建設認可手続きの簡素化を進めている。さらに、インドネシアでは港湾や有料道路の建設計画のほか、ジョコ・ウィドド大統領が公約に掲げる2019年までに3万5,000メガワット相当の発電設備を導入する目標を実現するためにも、建材需要が高まるとみられている。インドセメントのクリスチャン・カルタウィジャヤ社長は、「セメント市場は現在供給過剰状態にあり、価格はさらに下落するだろう。しかし、これは自然な成り行きであり、将来的には供給と需要のバランスがとれるはずだ」と述べている。【翻訳・編集:NNA】

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