欧州債市場で日本の投資家が物色対象を広げている。5月は国内勢によるスペインの中長期債(国債とそれに準ずる債券)の買越額が過去最高となった。アイルランド債やノルウェー債の買い越しも目立った。これまで人気だったフランス債から相対的に金利水準が高い他の欧州債にシフトする動きが鮮明になっている。
財務省と日銀がまとめている対外・対内証券投資(指定報告機関ベース)によると、国内勢は5月にスペインの中長期債を3927億円買い越した。統計で遡ることができる2014年以降では最大だ。アイルランド債の買越額は1000億円を超え、ノルウェー債の買越額も467億円と1年4カ月ぶりの高水準に達した。
一方、1~3月に国内勢が大きく買い越したフランス債は4月に続き5月も大幅売り越しで、この2カ月で売越額は2兆円を超えた。年初に0.7%台だったフランス10年債利回りは、6月に史上初めてマイナスを付けた。一方、スペインの10年債利回りは低下しているとはいえ0.3%台後半。「フランス国債の魅力が相対的に下がり、スペインなど他の欧州債へ買いが向かった」(仏ソシエテ・ジェネラル)。
国内大手生命保険10社が4月に公表した2019年度の資金運用計画では、市場の状況に応じて相対的に利回りが高いスペイン債への投資を検討していた生保があった。運用計画に沿った動きが統計に反映されてきたようだ。
国内の機関投資家の多くは、米ドルに比べてヘッジコストが安く比較的高い利回りの欧州債か、為替リスクがなくわずかではあるがプラスの利回りが確保できる日本の超長期国債のどちらに投資するかで頭を悩ませる。6月は国債の大量償還月だったが、「日本の超長期国債の利回りである0.2~0.3%以上の利回りが狙えるとして欧州債に資金の一部が向かった」(外資系証券の債券ストラテジスト)との指摘があった。世界的な金利低下に伴い、国内勢による欧州債の物色対象の拡大は当面、続きそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN ) 張間正義】
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