今回は5月16日に開催されたマレットジャパンのアートオークションから、日本を代表する女性芸術家のひとり、篠田桃紅(しのだ・とうこう)にスポットを当てる。
篠田は1913(大正2)年の生まれで、106歳になった今も活躍している。幼少の頃から書に親しみ、その道を極めた書家であったが、文字の概念から離れ、水墨による抽象画(墨象)というスタイルを確立。独自の表現で数多くの作品を発表している。ニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100人」(2005年)に選出されたこともあり、国内外で注目され続ける存在だ。
出品されたのは、銀地紙本・墨、彩色によるオリジナル作品の「無題」と、「Reminiscence」などの版画作品3点(うち2作品は2点セットで出品)である。「無題」は落札予想価格が200万~300万円だったのに対し、落札価格は上限の2.6倍の780万円にのぼった。
1990年制作の「Reminiscence」のほうは、落札予想価格15万~20万円に対し、上限の2倍近い37万円で落札された。2014年以降の国内オークションに出品された類似作品を抽出分析したACF美術品パフォーマンス指標を見てみると、落札価格平均は、落札予想の下限平均を下回ることなく推移していることがわかる。17年は全体的に低調だが、翌18年にはすぐに上昇に転じており、落札価格の上限平均を上回る好調ぶりである。今回の各作品も落札予想の上限の1.4~1.85倍で落札されており、パフォーマンス上昇の明るい材料となっている。
今回のマレットオークションでは国内作家作品116点、海外作家作品116点、合計232点がセールにかけられ、その内訳は 絵画作品(油彩・水彩)88点、版画作品(写真含)122点、立体・彫刻・その他22点だった。
落札点数は169、落札率72.8%で、落札総額は1億3616万円(落札手数料含まず)だった。
藤田嗣治が好んだモチーフを墨で描いた「猫と少女」が予想価格500万~600万円のところ960万円で落札され、今回のオークションでは最高額の落札となった。次いで、オークションカタログの表紙を飾った桂ゆきの油彩、紙と紐によるコラージュの作品「千本足」(800万円)、篠田の「無題」(780万円)、ディヴィッド・ホックニーのリトグラフ作品「ホテル・アカトラン、第2日<ムーヴィング・フォーカス>」(720万円)が高額落札の上位だった。この3作品は、いずれも長辺が180cm以上のサイズで、大型作品の積極的な落札が目立った。
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マレットオークションの次回開催予定は7月19日