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「投資収益マイナスの月なし」 日本で月32兆円売買するHST、その正体は

記事公開日 2019/6/21 14:29 最終更新日 2019/6/21 14:48 HFT HST マーケットメーク 東京証券取引所 金融庁 NQNセレクト

コンピュータープログラム経由のアルゴリズム取引は、いまや日本市場の取引の過半を占めるとも言われながら、その内情は外部からは不透明だ。シンガポール拠点のグラスホッパー社は、高頻度取引(HFT)業者の一種である、高速取引行為者(HST)。金融庁に登録して日本を主戦場とし、東京証券取引所では株価指数連動型上場投資信託(ETF)の気配値提示義務を負うマーケットメーカーも務める。日本での月間取引額は3000億米ドル(約32兆円)を超えるという。最高財務責任者(CFO)のジェームズ・リョン氏が主要日系メディアの取材に初めて応じ、日本での取引の実情を明かした。

ジェームズ・リョンCFO

■日本株の指数先物市場でシェア1~3%

――取引の内容や規模について教えてください。

「日本、シンガポール、米国市場を中心に先物や株式、ETFなどを売買している。日本は我々にとって最大の市場だ。世界で取引している額は個々の取引金額の合計で月間5000億ドルほどだが、うち7割程度は日本での取引だと思う。特に日本の株価指数先物市場の取引に占める割合は高く、現在も売買高の1~3%ほどを占めている」

――取引が日本の相場動向に影響を与えることもあるのでしょうか。

「我々は買いと売りの指し値のわずかなスプレッド(価格差)で稼ぐ売買を高頻度で繰り返すマーケットメーク戦略が中心だ。(相場の方向性に賭ける)ディレクショナルな取引はほとんどしないため、戦略が日本市場の相場水準に影響を与えることはない。我々の今の仕事は適切に流動性を供給して可能な限り速く取引をする、という技術的な面に集約される。売買は通常数秒から数分で完結し、翌日にポジション(持ち高)を持ち越すことはほとんどない」

■従業員の半数がシステム開発担当

――マーケットメーク戦略をとる取引業者が増えて競争が激化していますが、どうやって利益を確保しているのですか。

「競争は非常に激しい。買いと売りのスプレッドが縮小して利益を出すのが難しくなったうえ、欧米から強大な競合相手が参入している。(規制で)参入が難しい中国を除けば日本はアジア最大の市場で、誰もが日本での取引を望んでいるが、生き残り続けるのは簡単ではない。6年ほど前にはシンガポールで日本市場の取引をするプロの投資家は500~600社あったが、現在はおそらく50社以下しか残っていないのではないか」

「生き残りのカギは独自開発のプログラムだ。市場のマイクロストラクチャー(需給構造)から市場参加者の動向を把握、予想し、状況に合った注文を出す。速さが非常に重要だ。相場変動が大きい局面では想定通り取引できないリスクがあるため、安全なタイミングを見極めるのもプログラムの役割だ。取引はほぼ自動的に執行されるが、アルゴリズムの調整や挙動の確認は人間のトレーダーが行う。従来の運用会社のような形では運用成績を記録していないが、言えるのは非常に安定しているということだ。これまで投資収益がマイナスになった月はない」

――技術力が重要なのですね。従業員は技術者が多いのですか。

「我々も2006年の創業時は伝統的な運用会社だった。テクノロジーこそが重要との考えに至り、08年に1人目のデベロッパー(開発担当)を採用した。1からプログラムの独自開発を始めたのは11年。ようやく完成した15年にはすでに欧米から数百人規模の開発人員を抱える競合相手が続々とアジアに参入していた。出遅れていたら太刀打ちできなかっただろう。今は60人超の従業員のうち、開発者が約半数を占める。私自身もプログラムを1から学ぶことになった。テクノロジーはいまや必要不可欠で、市場の変化に参加者も適応していかなければならない」

■大手の寡占化、参加者の多様性失う

――金融庁が18年にHSTの登録制度を導入するなど、日本で高速取引の規制が進んでいます。日本の制度をどう考えていますか。

「規制は確実に必要で、登録制度自体は好ましい。ただ結果的に新規参入の排除につながるため、小規模な事業者も受け入れられるよう何らかの手立てが必要だ。日本での取引停止を避けるため、我々は昨年、HST登録を最優先事項として取り組んだが、今となっては正解だった。登録待ちの業者がまだ大勢いる。手続きにかかる労力は膨大で、創業間もないような事業者には極めて難しい」

「大手に有利な環境が続けば、市場参加者の多様性が一段と失われ、市場システムが不健全になりかねない。特に先物市場では以前に比べて1回当たりの注文規模が大幅に縮小した。理由の1つは米国などで取引業者の統合などが進み、大手業者の存在感が高まっていることだ。寡占化につながるうえ、いわゆるインターナライゼーション(顧客の注文を取引所に出さず自社内で成立させること)が増えて流動性が細る。多様性を維持するためにも、マーケットメークの意義を一般向けにも積極的に発信し、高速取引が市場をゆがめるかのような誤解を払拭したいと考えている」

(聞き手はNQNシンガポール 村田菜々子)

  • <グラスホッパー社> シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の立会取引出身で、日本でも先物取引などを手掛けたトレーダーのジョン・リン氏(現最高経営責任者)が06年にシンガポールで創業。翌年、当時金融市場とは無縁だったリョン氏にトレーダーの才能を見いだし、1人目の従業員として同社に引き入れた。08年にテクノロジーを軸とした取引に路線変更し、15年から独自プログラムを使った高速取引を開始。18年に日本の金融庁にHST登録した。東証がETFの取引活性化のために導入したマーケットメーク制度にも参加し、気配値提示を請け負っている。子会社では仮想通貨取引を手掛ける


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