堅調REIT、イールド狩りの「宴」の後の危うさも

トランプ米大統領が対中追加関税の税率を引き上げると表明して以降、日本株は調整色を強めてきた。予防線を張るかのように米連邦準備理事会(FRB)も緩和的な姿勢を示し始めた。円高も加わり外部環境が不透明感を強める中、堅調に推移してきた資産がある。不動産投資信託(REIT)だ。

世界的な金利低下にあって4~5月は上場投資信託(ETF)を通じたREITへの資金流入が加速した。一方で、ETF買いの加速は時価総額の小さい銘柄の投資口価格を実態以上に上昇させた側面も持ち合わせたとみられる。ファンダメンタルズに着目した投資判断が求められる局面が到来している。

■「時価総額が小さめ・利回りは高め」に注目

米中貿易摩擦が激化した4月末以降の東証株価指数(TOPIX)は、先週末の終値時点で下落率が4%となった。一方で、東証REIT指数は、同期間で3%上昇するなど値動きは対照的だ。下落局面で東証REIT指数が堅調に推移する動きは、足元で定着しつつある。18年12月の世界的に株式市場が下落した局面でも、TOPIXの12月中の下落率が10.4%だった一方で、東証REIT指数の下落率は2.4%に留まった。

3月末までのREIT指数をけん引したのは海外投資家だった。東京証券取引所の投資部門別売買状況によると、18年10月から19年3月までの7カ月間で最大の買い越し主体であり、その額は約2770億円に及んだ。しかし、4月に入ると海外投資家は717億円の大幅売り越しに転じた。

この海外からの売りを吸収し始めたのは証券会社の自己売買部門だ。REITのETFを購入したマネーフローを反映するとされる。4月は438億円、5月も97億円を買い越した。6月に入ってからも「ETFを通じたREITへの買い入れは好調」(運用会社REIT担当者)との声も聞かれる。

マネーフローの変化はREITの銘柄間の値動きに影響を与えている。差異が目立つのが時価総額の水準。時価総額の大きい銘柄10社と小さい銘柄10社をバスケット化し、年初来の値動きを示したのが下のグラフだ。4月以降、両者のパフォーマンスに明確な差が現れ始めた。

■買い手が変容、ETF経由でマネー流入

背景を探るにあたりETFを通じた資金流入は無視できない。東証REIT指数の構成比率は、浮動株ベースの時価総額荷重型だ。取引量が少なく時価総額の小さいREIT銘柄は、大量の注文による価格の変動(マーケットインパクト)を受けやすい。時価総額の小さい銘柄は相対的に高利回りの銘柄も多く、より高い金利を求めて物色された動きも価格の押し上げに寄与した可能性が高い。

しかし、順調に推移してきただけに割安感は薄れてきている。REITの割安・割高を判断する指標で、株式の株価純資産倍率(PBR)に相当するNAV倍率(株価/一口当たりの保有不動産の時価から有利子負債などを引いた値)の加重平均は足元で1.17倍程度まで上昇しており、02年以降の長期平均に接近している。「REITの割安感が薄れてきたことから、海外投資家の投資意欲は低下してきている」とみずほ証券の大畠陽介シニアアナリストは指摘する。

海外投資家とは対照的に、足元では金利が低下傾向にあることから、国内投資家の積極的な利回り追求の動きが継続すると考えられるようだ。大畠氏によると「REITを買い入れる流れは、大手地方銀行から信用金庫・信用組合へも広がって来ている。ただ、個別銘柄を分析するほどの陣容が整っていないためETFを通じて買いを入れている」という。

■増税を控え、商業施設型には逆風?

さらに大畠氏はREITの投資に際しては構造的要因と循環的要因に分けて考える必要があるとしている。堅調な推移が見込めるのは、テナント入れ替えによる賃料単価の上昇が見込める住宅型やオフィス型、物流型。オフィス市況が堅調であることと、物流はeコマースの進展から規模の拡大が期待できるようだ。

一方で、商業施設は相対的に厳しい。国内消費が低迷しつつあり、商業施設型REITのファンダメンタルズの改善が見込みにくい。また、ホテル型REITは景気変動の影響を真っ先に受けると指摘している。契約更新が最短1日であることから、賃料の影響を受けやすいようだ。

消去法的なREIT買い。目先の利回りに目を奪われがちだが、ETFを通じた「まとめ買い」が相場を押し上げているのは事実。東証REIT指数は20日に約3年2カ月ぶりの高値を付けた。

好調な相場の一方で、トレーダーの間でもじわりと慎重な見方が増えてきた。ファンダメンタルズ分析をおざなりにした結果、適正価格以上の値段がついたREITは調整局面に入った場面で容赦ない売りを浴びる可能性が残る。パッシブ運用は銘柄選別といったファンドマネジャー本来の業務を忌避するのに役立つツールだが、頼りすぎるとしっぺ返しを食らうことになりかねないのではないか。(大野弘貴)

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