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日はまた昇る? Tロウ・プライス運用トップ「いまの日本株は安すぎ」

記事公開日 2019/6/19 10:14 最終更新日 2019/6/19 10:22 アーシバルド・シガネール ティー・ロウ・プライス 日本株 QUICK Market Eyes

日本株を運用する海外マネーはいまの株式市場をどう見ているのか。日本株ファンドの設定来、多くの期間でベンチマークを上回るパフォーマンスを出し続けるティー・ロウ・プライスのポートフォリオ・マネジャー、アーシバルド・シガネール氏はQUICKなどの取材に応じ「いまの日本株は安すぎる。東証株価指数(TOPIX)でみて、2019年末は1800を超えるだろう」などと指摘した。

アーシバルド・シガネール氏 ティー・ロウ・プライス・ジャパン専務取締役日本株式運用部長、ポートフォリオ・マネジャー。パリ政治学院を卒業(財務会計学専攻)。BNPパリバ証券のクレジットアナリスト、投資銀行部門のM&A担当ヴァイス・プレジデントなどを経て2007年にリサーチ・アナリストとして入社。通信、運輸、公益、メディア、消費財セクターの株式調査を担当を経て13年12月から現職

■ロングオンリーで3000億円、顧客の半数が欧州

日本株特化型ロングオンリーファンドで3000億円ほどの資金を運用している。5年前と比べて5倍に増えた。うち6割強は投資信託、残り3割強が年金など。顧客の半数は欧州マネーで、彼らは「日本が変わる」という自信を持って日本株に投資している。ファンドは中長期運用で、一度保有すると3~5年は保有する。ターンオーバー(売買回転率)は3割以下だ。名刺アプリを手がける「Sansan(サンサン)」に投資するなど、対象は上場企業に限らない(編注:Sansanは19日に上場)。内需株と外は需株をバランスよく組み入れることで、景気変動の影響を受けにくいポートフォリオを構築している。

大型株から中小型株まで幅広い銘柄に投資するため(1)「構造的な成長」が期待できる、(2)生まれ変わっていく期待がある、のいずれかで絞り込んでいる。(1)でいえば労働市場の変化で需要が増す自動化関連、雇用のタイト化でニーズが高まる福利厚生関連など。(2)であれば、20年前と比べてまったく別の会社に変わった日立(6501)などが当てはまるだろう。

 長期的にみると、日本株市場は欧州と比べて健全な成長が続いている。構成銘柄のトータルリターンを分解すると「MSCIジャパン」は大部分が1株あたり利益(EPS)の成長で説明できる。一方で「MSCI EU」は多くを配当に頼っている。欧州と比べ、個別株の成長力を吟味して投資する「ストック・ピック」のチャンスが非常に多いといえる。

■企業統治の改善が加速、スタートアップも増加

日本企業は企業統治(ガバナンス)の改善が進んでいる。以前からこのテーマに注目していたが、最近になって加速している。株主総会に向けて提案の数も増え、社内で賛否を議論するケースが増えている。社外取締役の割合が増え、資本効率もかなり改善してきた。自社株買いのペースは18年を上回り、新記録になりそうだ。これまでは景気が悪化した途端に配当金を減らしたり、自社株買いを中止したりしていたが、いまは利益成長が減速する中で自社株買いが増えており、変化を感じる。

たとえば、保守的な企業だった三菱地所(8802)が株主の声を聞いて初めて自社株買いに踏み切ったのは、かなりポジティブだった。ここ2~3年、経営陣との議論は建設的なものに変わってきている。ただ、すべての企業が変わっているわけではない。変わる企業と変わらない企業のギャップが広がっているからこそ、アクティブマネージャーの活躍の場が広がっている。

もう1つの追い風は、スタートアップ企業の増加だ。米国の主力企業は、30年前と比べて様変わりした。日本は30年前と似た企業がいまも主力企業として位置づけられているが、最近になってベンチャーキャピタルなどによる新興企業へのファンディングの規模が増えてきている。将来、大手企業の顔ぶれが変わるかもしれない。

■リスク織り込み年後半に期待、TOPIXで1800超が妥当

確かに、日本株市場を取り巻くリスクは19年に入り増えている。日本企業のEPSとグローバルでみた鉱工業生産との相関性は、新興国やほかの先進国などと比べて高い。米中貿易問題を理由に海外勢が日本株に弱気なのは当然だろう。10月には消費増税も控える。消費者物価指数(CPI)が小幅なプラス圏にとどまる中、デフレに逆戻りする可能性もあり、注意が必要だ。

ただ、株式市場はこうしたリスクの多くを織り込んでいる。株価収益率(PER)は12~13倍と先進国の中でも低い。リーマン・ショック後の平均(14倍)と比べても「安すぎ」だ。米中貿易問題がこれ以上悪化しなければ、年後半のパフォーマンスは期待できる。東証株価指数(TOPIX)でみて1800ちょっとがフェアバリューではないか。貿易問題によるダウンサイドリスクがあったとしても、リスク・リワードでみて決して悪くない。株式相場は下がることもあるが、3~5年保有を続ければ、高いリターンが得られるとみている。


(Tロウ・プライス調べ)

運用ファンドの主な銘柄(対TOPIX、3月末時点)

  • ●オーバーウエート上位10社
    ・GMOPG(3769)
    ・三浦工業(6005)
    ・ソフトバンクG(9984)
    ・ソラスト(6197)
    ・大王紙(3880)
    ・中外薬(4519)
    ・スズキ(7269)
    ・ZOZO(3092)
    ・SMS(2175)
    ・NTT(9432)
  • ●アンダーウエート上位10社
    ・トヨタ(7203)
    ・三菱UFJ(8306)
    ・ソニー(6758)
    ・三井住友(8316)
    ・ホンダ(7267)
    ・みずほFG(8411)
    ・三菱商事(8058)
    ・花王(4452)
    ・KDDI(9433)
    ・東京海上(8766)

(聞き手は松下隆介)

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