低金利下、アジア債券に投資妙味 マニュライフのアジア債券部門トップ

経済成長力の鈍化と大規模な金融緩和を背景に、先進国を中心に国債利回りの低下圧力がかかっている。イールドハンティングの動きが一段と加速しそうな中、いま投資家の関心を集めているのがアジアのクレジット市場だ。マニュライフ・アセット・マネジメントのアジア債券部門で最高投資責任者(CIO)を務めるアンドレ・ピダーソン氏はQUICKのインタビューに応じ「ファンダメンタルズ、需給の両面でほかの新興国債券と比べて投資妙味が大きく、世界のマネーが向かっている」などとコメントした。主な一問一答は以下のとおり。

アンドレ・ピダーソン氏
マニュライフ・アセット・マネジメントのアジア債券担当の最高投資責任者(日本除く)としてアジア債券戦略を統括。シニア・マネージング・ディレクター。DBSアセット・マネジメント、F&Cマネジメントなどの債券担当ポートフォリオ・マネージャーを務め、2008年よりマニュライフ・アセット・マネジメント

――アジアでクレジット市場の拡大が続いている。
「アジアの米ドル建て債券市場で、債券の発行体は企業(全体の65%)、政府機関(22%)、国(13%)の3つにわけられ、発行額は年初から1290億ドルに達している。2017年や18年と同じペースで、市場規模は20年までの間に1兆ドルに達するだろう。発行の6割は中国企業。海外投資のための資金調達や調達先の多様化を目的に債券を発行している」

――なぜアジア債券の魅力が高いと考えているのか。
「米利上げや米中貿易問題などで18年は逆風が吹いたが、ファンダメンタルズは堅調だ。安定した経済成長による高い収益力に加え、欧米企業と比べ負債も相対的に少なく健全なバランスシートを持つ企業が多い。それにもかかわらず、同程度の格付けの米国債券と比べて投資適格債は平均で0.75%程度の高い利回り、ハイイールド債では、直近で1%程度の高い利回り(19年4月末)が得られる『アジア・プレミアム』がある。流動性の低さや情報開示の少なさなどがあるのだろう」

■アジア企業の負債は相対的に少ないが……(マニュライフ・アセット・マネジメント調べ)

■利回り面では「アジア・プレミアム」も

「経済成長が続いているだけに、ほかの新興国・地域と比べてデフォルトが少ないのも大きな魅力だ。ハイイールド債でみた場合、アジア企業のデフォルト率は19年で2.5%程度にとどまると見込んでいる。ラテンアメリカの企業は3.0%だ。特に、債務削減(デレバレッジ)の流れの中で18年にデフォルト率が上昇した中国が19年は一転して金融緩和に舵を切っていることが大きい」

「アジアの投資家層が拡大している点も重要だ。2018年3月末時点の米ドル建てアジア社債は、投資家の8割がアジア勢だった。一方で欧米投資家は減少傾向が続いている。金融市場の混乱を受けて域外にマネーが流出するリスクは以前と比べ低くなっており、これまでよりも値動きなどが安定しやすくなっている」

――米中貿易問題の影響はないのか。
「もちろん18年のように下落するリスクはある。だが、アジアは中国がすべてではない。インドやインドネシアは国内経済が堅調で、貿易摩擦の影響は小さい。米格付け会社のスタンダード&プアーズは強い経済成長と財政政策を理由に、5月末にインドネシアの格付けをBBBに1段階引き上げた。高い経済成長を維持するベトナムも中国から撤退する工場の移転先となる等の恩恵を受けている」

――銘柄選別にESGを活用していると聞いた。
「弊社ではESG専門のリサーチチームを抱えており、クレジットアナリストと一緒に企業分析をしている。さまざまな項目についてESGの観点から評価し、社内格付けに反映させている。コーポレートガバナンスのリスクは、アジア企業を投資対象とする際に特に重要だ。財務情報が十分開示されているかだけでなく、経営者の経歴や安定株主の有無、少数株主や債権者の利益が毀損されないかなど、さまざまなリスクを分析する。これまで、ESGの観点で『不適格』となった約30の発行体への投資を見送った」

――実際、運用するファンドに資金は流入しているか。
「もちろんだ。先進国債券の利回り低下を受けて、相対的に利回りの高いアジア債券が投資資金の受け皿になっている。主要な債券指数に中国の債券が組み入れられたほか、ポートフォリオ分散のニーズもあるのだろう。投資家は成長著しいアジア市場でアルファを獲得するため、実績のある運用会社を探している」

「日本からの資金流入が拡大している点は新しい傾向だ。機関投資家、個人投資家問わず、アジア債券への関心が高まっているようだ。中国やインドネシアなどの調査が広く行き届いていない非効率な市場で、リスクを抑えながら安定的なリターンを追及したいという需要から、現地に根ざした調査体制を有する弊社の運用戦略への関心が高まっている」(聞き手は松下隆介)

※QUICKデリバティブズコメントはトレーダーやディーラー、運用者の方々へ日経平均先物・オプション、債券現物、先物を中心に旬のマーケット情報をお伝えしています。ライター独自の分析に加え、証券会社や機関投資家など運用・調査部門への独自のネットワークから情報を収集し、ご提供しています。特設サイト上で「US Dashboard」のサービスを始めました。米経済・市場の変化を見極めるツールです。またQUICKエクイティコメントは、国内株を中心に相場動向をリアルタイムでLIVE解説するQUICKのオプションサービスです。

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