「格差社会」の日本株 PER二極化、買われすぎる割高銘柄に潜むリスク

「トランプ相場」の混乱はすぐには収まりそうにない。米国による対中関税の引き上げ表明を受けて米中貿易交渉が頓挫するとの警戒感が高まり、「恐怖指数」と呼ばれる米VIX指数が急上昇。8日の東京市場でも日経平均株価は300円安で始まった。

加えて、日本株には固有のリスクもある。「バリュエーションバブル」。ある市場関係者はこう表現し、日経平均先物のショートポジションを維持し続ける。東証1部企業の株価収益率(PER、12カ月先予想)は7日時点で平均12.7倍。過去5年平均(13.8倍)を下回り、米国株などと比べても出遅れが顕著だ。多くの市場参加者は「日本株は割安だ」と口をそろえるが、この市場関係者は額面どおりに受け止めない。買われるべき銘柄がすでに割高すぎる水準まで買われているためだ。

たとえば、市場の関心が高くバリュエーションを切り上げ続けてきたOLC(4661)。足元の2020年3月期は3割の最終減益を見込むが、株価は大きな調整もなく、PERは70倍近い。来期まで3割の最終増益が続くと見込まれるGMOPG(3769)は、20年9月期予想をベースにしたPERが90倍に達する。

上記2銘柄を含む7日時点でのTOPIX500銘柄を対象に、11年夏以降のPER上位100銘柄と自動車や銀行など”万年割安株”が多く含まれる下位100銘柄の平均PERを週次ベースで算出し、2つの値を割った倍率(格差)の推移が下のグラフの赤い折れ線だ。17年ごろから急速に広がり、7日時点では6倍強と、11年以降で最も拡大している。「成長期待が根強い割高株の割高さが加速する一方で万年割安株が放置され続けている」といえる。

※PERの格差(赤線・左軸、単位倍)と東証株価指数(青線・右軸)の推移。PERの格差はPER上位100銘柄の平均PERを下位100銘柄の平均PERで割って算出(7日時点でのTOPIX500採用銘柄)

もちろん、このデータだけで日本株の売り材料にはならない。割高株を売って割安株にシフトする循環物色の動きが広がればいい。ただ、いまは割安株への懸念が多すぎる。米国による中国製品への関税引き上げ表明を受けて、大和総研エコノミストの小林俊介氏は中国と米国の実質国内総生産(GDP)をそれぞれ0.22%、0.28%引き下げると分析する。米自動車販売の伸び悩みや長引く低金利による利ざや圧迫、円高への警戒など買わない材料に事欠かない。

割高株への「一極集中」は最終的に何をもたらすのか。先の市場関係者はいう。「何かのきっかけでアセットレベルで株式を落とそうとする資金の逆流が起きると、まっさきに売られるのはこうした、相場を支えしてきたバリュエーションバブルの銘柄。割安さの修正余地が乏しい『トラップ』の割安株に資金は向かわず、けん引役を失った株式相場は大幅な調整を余儀なくされる」

米中貿易交渉の妥結期待で大きく上げ、失望で大きく下げる。猫の目のような相場展開が続く裏でひっそりと割高株からの資金流出が目立ち始めたら要注意だ。(松下隆介)

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