4日で230億円の損 売り出しのトラウマ招くかんぽ株

親会社の日本郵政(6178)が売り出したかんぽ生命(7181)株が23日、投資家の手に渡った。きょうの始値(前日比横ばいの2204円)は売り出し価格(2375円)を171円(7%)下回った。申し込み最終日からわずか4営業日しか経っていないにもかかわらず、売り出し株数ベースでは含みと実現の合計で約230億円の損が一時的に生じた計算だ。投資家にとってトラウマとなりかねないディールとなった。

22日時点の時価総額は1兆3200億円。4日の発表から1300億円以上減少した。とりわけ、投資家による申し込みと、幹事証券による株価買い支え、いわゆる「安定操作」が終わった17日以降の下落率が7%と目立つ。

株価純資産倍率(PBR)は0.6倍台、配当利回りは3%台だ。投資妙味の点で売り叩く理由は見当たらない。需給要因としか考えられない。

市場では「売り出し株を引き受けた個人が早々に見切り売りに動くと踏んで、機関投資家が先回り的に売ったのではないか」との声が聞かれる。だが、株価は上場来安値まで残り1割あまりの水準に沈み、大半の少数株主は含み損を抱えているはずだ。機関投資家が思惑で損切りするとは思えない。日本証券金融はかんぽ株の貸株の申し込みを制限しており、空売りも難しい。

一つ、可能性として考えられるのは、売れ残りを抱えた引き受け証券会社による処分売りだ。

売り出しでは通常、投資家は売り出し価格決定までの需要申告(ブックビルディング)期間中の購入希望は証券会社に申し出ればキャンセルできるが、売り出し価格決定後の正式な申し込みのキャンセルは受け付けられない。

引き受け証券が売れ残りを抱えたのだとしたら、ブックビルディングが不調だった可能性が高い。ただし、そうだとすれば、売り出し価格決定日の終値から最大10%まで可能だった売り出し価格を決める際の割引率が4%にとどまったのはなぜかという疑問が残る。

主幹事の1社の大和証券は「個別の案件には答えられない」(広報部)としている。

かんぽ株の売り出しを巡っては、自社株買い直後に売り出し価格を決めるやり方に、当初から「分かりにくい」と戸惑う声が多かった。3月の任天堂(7974)株の売り出しでは、売り出し価格決定後に自社株買いが実施された。任天堂株の売り出しの引き受け主幹事は、かんぽ株の主幹事には入らなかった野村証券だった。任天堂は売り出し価格を上回って推移している。

エクイティ(株主資本)による資金調達の成否は投資環境に左右される面が大きい。とはいえ、「投資家の利益の先に市場や証券会社の発展がある。売り出し人も発行体も証券会社も時代遅れの供給者論理に傾いてはいないだろか」。最近の株式市場での資金調達について、あるベテランの市場関係者はこう話していた。

【日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 永井洋一】

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