平成・危機の目撃者⓬ 伊藤嘉洋が見たバブル崩壊(1992)

市場の宿命、令和の時代も必ず起きる

平成の日本はバブル崩壊とその後始末に追われた。海外でも1997(平成9)年のアジア通貨危機や2008年のリーマン・ショックに直面し、18年にはインターネット上の仮想通貨ビットコインなどのバブル崩壊が起きた。それらの出来事が示すのは、投資家が利益を追求する限りバブルは避けられないということだ。株式市場にかかわって今年で57年、酸いも甘いも知る大ベテランの伊藤嘉洋・岡三オンライン証券チーフストラテジストは「バブルは次の令和の時代でもまたやってくる」と断言する。

伊藤嘉洋氏

いとう・よしひろ 1962年に岡三証券に入社し、取引所のフロアで独特のサインを駆使して売買注文を出す「場立ち」から市場でのキャリアをスタート。90年には株式部長に就任し、約9年間にわたってメディアの解説者やセミナー講師としても活躍。その後は岡三投資顧問、岡三アセットマネジメントを経て2010年から現職。長年の経験を生かした相場見通しや銘柄解説は評価が高い

◆「敗戦処理」に明け暮れた日々
岡三証券の株式部長に就任したのは1990(平成2)年4月だった。前年の12月に日経平均株価が3万8915円の史上最高値を付け、世の中は浮かれきっていた。大手証券会社からは5万円などという今から思えばとんでもない予想まで飛び出した。資産価値がどんどん高くなって給料やボーナスも増え、それが一段の株高につながっていたのだが、いったん崩れるとあっという間だ。

相場があれよあれよと下げ始めたのは92年のこと。証券各社が何度予想を切り下げても止まらず、日経平均はついに2万円の節目を割り込んだ。(損失が生じた)顧客に毎日頭を下げ続ける文字通りの「敗戦処理」となったが、それを乗り越えて99年まで株式部長を務められたのを誇りに思う。

岡三投資顧問に移った後に経験したのが99~2000年にかけてのIT(情報技術)ブームだ。コンピューターやインターネットの発達でネット企業に対する投資熱が高まり、自動車や機械といった「オールドエコノミー」から主役が交代していく動きを目の当たりにした。だが、ここでもバブルは起きた。

2つのバブルのけん引役はいずれも海外マネーによる先物の買いだった。日本で先物取引が始まったのはバブル終盤の88年でまだ歴史が浅く、先物を積極的に取引する国内投資家はまだ少なかった。今でこそ「海外の先物買い」はよく知られているものの、当時は姿があまりはっきりせず、気がつくと先を越されていた。特に個人がついて行けない。「高値づかみ」をした結果、相場の下落局面で痛手をこうむるのをたくさん見てきた。

◆家計に巨額の貯蓄、投資余力は大きく
2008年のリーマン・ショックや12年以降のギリシャの財政不安などいくつかの危機を乗り越え、日経平均は昨年10月に2万4000円台と、27年ぶりの高値を付けた。90年代のバブル崩壊の傷がようやく癒えようとしているなかで「令和」の新時代を迎える。秋には消費増税を控え、働く世代の懐は苦しくなりそうだが、家計全体では依然として巨額の貯蓄を抱える。個人の投資余力は大きく、バブルはどこかのタイミングでまた繰り返されるだろう。

個人が平成初期のバブル時代に買った不動産や株などの資産価値は当時には到底及ばないため、売るに売れない状況が続きそうだ。ただそんな人たちも子供がいれば遠からず相続の時期が来る。相続する側は資産が含み損を抱えているとの認識は乏しい。特に不動産の現金化にはためらいはないだろう。

不動産や株の売却が進むと相場を一時的には押し下げるかもしれないが、懐の潤った個人は新たな消費や投資に動く可能性が高い。株式市場にも新たなお金を呼び込みそうだ。

しかも日欧を中心に世界はなおも歴史的な低金利環境にある。市中にあふれて行き場をなくしたマネーは株式などのリスク資産に移らざるを得ず、景気の悪化局面でもしばらくは株高を促すはずだ。

◆過去に学び、転換点を見逃すな

ジョン・テンプルトンが残した有名な相場格言に「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」とある。リーマン・ショック後の米経済が長期回復をしながら先行き不透明感が残っているように、足元は「懐疑」に向かっている段階だと思う。株価の本格上昇は実はここからではないか。それでもバブルは必ず崩壊する。

日本の個人がまた負けないために大事なのは、過去の教訓に学んで相場の転換点を見逃さないことだろう。日々の動きは「あや」にすぎないと割り切り、相場が大局的にみて「上昇」、「横ばい」、「下降」のどの段階なのか冷静に見極めてほしい。そのうえで、自らの決めたルールに従って損失を確定させる潔さが必要だ。

=聞き手は日経QUICKニュース(NQN)尾崎也弥

=随時掲載

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