「沈黙は損」、ESG対応は積極開示を 三井住友トラストAM堀井氏

国際金融都市構想を掲げる東京都が創設した「東京金融賞」を、2月にESG(環境・社会・企業統治)部門で受賞した三井住友トラスト・アセットマネジメント。建設的な対話(エンゲージメント)を通じて企業価値向上を目指す姿勢が評価された。欧米に比べESGへの意識が低いと思われがちな日本企業だが、実際は対応していても上手にアピールできていないと堀井浩之チーフ・スチュワードシップ・オフィサーは分析する。重視するESG課題や企業の対応などについて話を聞いた。
 
※金融市場で、環境・社会・企業統治(ESG)に注目する投資やSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指すインパクト投資への関心が高まっています。日経QUICKニュース社では、この分野に関連する専門家のインタビューや特集記事を不定期で配信します。

海洋プラごみ問題などに関心高まる

――ESGのなかでもどういった分野に特に注目していますか。
 
 「気候変動や水資源問題は国境がなく、グローバルなESG課題として取り上げるのにふさわしい。例えば海洋プラスチックごみはストローがウミガメの鼻に刺さった衝撃的な映像で話題を集めた。メーカーが代替の生分解性プラスチックを作ったり、利用者がプラスチック以外の製品を使ったりする動きが出て、関心の高さがうかがえる」
 
――ESGを重視する投資姿勢はリターンにつながるのでしょうか。
 
 「我々はお預かりしている資金を企業価値の毀損を防いだり、企業価値を上げたりして増やすために活動している。ESGの推進で(株価の)アップサイドのポテンシャルを追求できるし、ダウンサイドのリスクを抑制できる。特に気候変動や海洋汚染は放っておけば企業価値を毀損するリスクがある。環境問題を背景に世界で規制が強化されれば、ある製品が生産できなくなったり、石炭エネルギーを使いづらくなったりして企業への財務インパクトは避けられない。そうした問題意識を企業とのエンゲージメントを通じて高めていく」
 
――近年、企業のESG対応に変化はありますか。
 
 「日本企業のESGへの意識はだいぶ高まっている。日本は水も空気もきれいだが、企業が世界に進出するなかで自分たちの常識が世界の常識ではないと認識した結果、環境への意識は特に高まっているようだ。リサイクルシステムも日本で整備が進む。リサイクルできない一部のプラスチックは燃やす際、通常の燃焼炉であれば傷めてしまう。そうした焼却に対応した燃焼炉も日本には結構存在するが、知られていない。業界団体などは優れた日本のリサイクルシステムを発信する必要がある」
 
――日本企業にESG対応で足りない部分は何ですか。
 
 「先ほどの情報発信の話とも関係するが、積極的な開示姿勢だ。例えばESG情報データを扱う機関のアンケートで『児童労働問題に対応しているか』と質問されても、日本企業は児童に労働させるわけがないからと『対応していない』と回答する。すると評価が下がってしまう。『そのような非常識なことをやっているわけがない』と一蹴するのは、日本では通用しても世界では通用しない。この世界では沈黙は『金』ではなく『損』になる。日ごろの情報開示を進めていくことで、突然のネガティブサプライズを抑えられ、適正な価格形成につながる」
 
――具体的なエンゲージメントの成果は。
 
 「海外で森林資源の問題に関連するパーム油の生産会社に対し、持続可能な枠組みに沿って生産するよう促すエンゲージメントを実施した。実際、徐々に基準に適応して生産するようになった。海外の運用機関などとともに声を一つにすると、企業の行動にも反映されやすい」

「東証1部見直し」はチャンス

――ガバナンス(企業統治)に関して言えば、自動車業界や不動産業界で企業の不祥事が相次いでいます。背景についてどう考えますか。
 
 「一言では説明できないが、ガバナンスをチェックする仕組みが弱いのが一因ではないか。一部の部署による恣意的な不正行為をチェックする機能が働いていなかったのが原因になっているケースが多いと思う」
 
――日本企業の場合、親子上場の多さや社外取締役の少なさもガバナンスの足を引っ張っているとの指摘があります。
 
 「親子上場は世間で話題になる前から問題視している。子会社の社外取締役が3分の1以上を満たさなければ、すべての役員選任に反対する。社外取締役はボード(取締役会)のモニタリング機能強化と多様性をもたらす。最低でも3分の1はいないと少数株主の利益確保が難しいし、異なる経験や知見を持つ人がいればボードの機能はより活性化する」
 
――東京証券取引所が市場第1部の品質向上へ市場区分見直しを進める中、上場企業のガバナンスへの機運が向上するとの見方もあります。
 
 「実際にどのように見直しが進むかはまだ分からないが、変化はチャンスだ。変化を先にとらえ、いかに動くかを考えるのが運用機関の仕事。新しい投資のアイデアも出るだろう。市場区分の見直しに伴い1部から外れてしまった会社があったとする。1部への昇格意欲は高いが収益や時価総額が基準に届かない、そうした企業に投資対象を絞ってファンドを組成し、エンゲージメントを仕掛けることも考えられる」
 
〔日経QUICKニュース(NQN) 聞き手は内山佑輔〕

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