株式市場では3月期本決算が本格化してまいりました。各企業から今年度の業績予想が発表され、事前の市場予想との差、つまりサプライズが見えてくるようになります。3月末までのサプライズ決算を振り返ることで、ここからの決算発表を、どのような心構えで迎えればいいのか、おさらいしたいと思います。
こちらの画像は2016年3月28日までの一週間の間にあった決算企業のサプライズ指標となります。
2016年3月28日作成
サプライズレシオのマイナス幅が大きいほど、発表された業績内容がアナリストの予測を下回っていた企業(=過大評価されていた企業)となります。株価というのは帳簿上の価値だけでなく、「将来これだけの収益を上げるだろう」という市場の「期待」を加味して決定される者ですので、こういった期待はずれの企業というのは当然、株価が下落します。
では、マイナス方向のサプライズを発表した企業は、「単純に売り」と捉えるべきなのでしょうか。確かに多くの場合は、発表直後に急落し、そのままずるずると下げます。
ですが、そうではない銘柄もあります。マイナス方向へのサプライズなのに、数日後、場合によっては発表翌日に、上昇に転じる銘柄です。市場でよく「悪材料出尽くし」と言われる現象ですが、どういう仕組みなのでしょうか。
「悪材料出尽くし」のタイミングこそ「中~長期で割安な優良銘柄」を拾うチャンスでもあります。今回は画像にある三井物産と三菱商事をモデルに分析してみます。
予想を裏切った理由をきちんと把握する
実際、三井物産も三菱商事も、会社予想の修正を発表した後に、4月初旬にかけて売られましたが、2月につけた年初来安値を下回ることなく、足元の株価は反発に転じています。
この値動きをどう考えるべきでしょうか。
サプライズメーターの画面では三菱商事をクリックすることで、個別銘柄の項目に飛ぶことができます。
ここでまず注目していただきたいのは、右側にある「会社概要」です。簡単な業務の内容が載っていますが、これが「市場の期待を裏切った理由」を読み解くヒントとなっています。
たとえば今回の三菱商事の場合、「エネルギー産業との取引に強み。資源開発で先行」とあります。
2015年の後半以降、報道されている通り資源、特に原油の価格は下落の一途を辿っており、関連企業の業績悪化や資源国の経済不安を耳にされている方も多いのではないでしょうか。
つまり、時事のニュースと会社概要、そして決算内容をつなげることで「もしかして今回業績が悪かったのは三菱商事に何か問題があったわけでなく、資源相場下落による損失が原因ではないだろうか?」という仮説をたてることができます。
実際、三菱商事と三井物産の下方修正は、銅を中心とした資源価格の下落が原因でした。業績修正発表資料のなかにも記載がありますので、ここはきちんと把握しておきたいところです。
業績修正の理由はどれくらい織込まれていたか?を把握しよう
では、下げが限定的だった理由とはなんでしょうか。下方修正の理由であった資源の価格に注目することが重要です。
以下は銅と原油の国際的指標のチャートです。ともに昨年後半に下げ足を速め、今年の2月ごろに安値をつけています。ですがその後の価格は回復基調。つまり、下方修正の原因である資源価格の下落はすでに一服しているのです。
株価はこういった周辺情報からの思惑で動くものです。資源価格の下落に大手商社の株価が連動していたのであれば、大手商社の安値も資源価格と同じ2月ではないか。むしろ、資源価格は足元、上昇基調ではないか。こう考えれば、今回の大手商社株の決算後の反応は、売りは限られ、どこかで悪材料出尽くし感が広がる、と捉えることができます。
こういった指標を追いかけて、大手商社の業績下方修正を警戒することができた市場関係者はどれくらいいるのか。ここを見極めることができれば、悪材料出尽くしのタイミングを掴むことができます。とはいえ、こればかりは定量的に把握することが難しいので、値動きを見ながら、タイミングを測るしかありません。
体力のない企業は一度の下方修正でも危ない
ここで注意していただきたいのは「規模」と「安全性」です。
この数値が両方とも極端に低い企業の場合、「業績が回復する前に倒産」してしまう可能性があるため、長期保有には向きません。
QUICKスコアの「規模」と「安全性」を見ながら、大幅下方修正でも目先を乗り切れそうな大量のある企業を見極める必要があります。
以上、決算サプライズをスタートとした、銘柄選別の方法でした。
こういった「予想外」のことが起こったタイミングこそがチャンスになります。今回説明した決算分析を繰り返し、慣れてきたところで、予想外の曲面での逆張りに挑戦してみるのも良いかもしれません。
編集:QUICK Money World