トルコリラの上値が重い。米国の利上げペースが鈍るとの思惑や米中貿易交渉への楽観論などから米株式相場は持ち直し、投資家のリスク回避姿勢は緩んでいる。トルコなど高金利国の通貨には本来追い風のはずだが、主な買い手である日本の外為証拠金(FX)投資家「ミセスワタナベ」は年初のフラッシュ・クラッシュ(瞬時の急落)でかなりの痛手をこうむり、まだ十分に立ち直れていないようだ。
■トルコリラ(グラフ青)とドル、ユーロの対円相場
トルコリラの対円相場は足元で1リラ=19円台後半で推移している。3日のフラッシュ・クラッシュで17~18円台まで下げた後、米株高などにつれて4日には20円台半ばまで戻したものの、昨年12月終盤に付けていた20円台後半~21円ちょうど近辺には届かないまま再びずるずると下げた。
FX大手外為どっとコムによると、3日のトルコリラの買い持ち高は前日比で23%程度減少した。値動きから考えて売りのほとんどが損失確定の注文とみられる。3日は他の通貨に対しても軒並み円高が加速したため、ユーロやドル、オセアニアの通貨などを並行して買っていた投資家はダブルパンチ、トリプルパンチだった公算が大きい。体力回復には時間がかかるだろう。
FXは「レバレッジ」と呼ばれる仕組みにより、差し入れた証拠金の25倍まで運用額を増やせる。リラの利息収入に相当する「スワップポイント」は1万通貨で1日あたり最大100円を超えることもある。1リラを買うのに必要な円の元手はユーロや英ポンドに比べるとはるかに少ないので、金利重視でリラを買う戦略の人気は根強い。だが、レバレッジに傾きすぎると逆回転にもろくなる。
レバレッジを抑えリスクを落としたら落としたで買いのインパクトは弱まる。トルコの政治・経済に新たな悪材料が出ているわけではなく、ミセスワタナベに余力が戻ればリラの需要は相応に増えそうだが、相場の上昇エネルギーは簡単には高まらないだろう。昨年末の水準は近くて遠い。
〔日経QUICKニュース(NQN) 編集委員=今 晶〕
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