上場間際ソフトバンクの強みと課題 香港の投資ファンドこうみる 

19日に迫ったソフトバンクグループ(SBG、9984)の国内通信子会社ソフトバンク(SB、9434)の新規上場は国内投資家だけでなく、日本株に投資する海外勢からも注目度が高い。SBの事業価値や親会社の株価への影響をどうみているのか。香港の投資ファンドで日本企業を含む銘柄調査を担当する専門家に聞いた。

「携帯市場の競争激化に不安」

◎豊盛金融集団(馮宏遠アナリスト)

――SBの企業価値をどう評価していますか。
「日本の携帯通信市場は競争が激化する見通しで、投資対象として魅力的ではない。市場が既に飽和しつつあるところに、来年秋には楽天が新たに参入する。さらに日本政府も通信料金の大幅な引き下げを求めている。先行きは明らかに通信料が低下しそうだ」

「配当性向の高さは日本の個人投資家をある程度引きつけそうだが、将来的に通信料収入が減少しても維持できるのか疑問が残る」

――親会社SBGの株式にはどのような影響がありますか。
「今回の上場は親会社のSBGにとっては前向きな材料だ。上場による資金調達で国内通信の価値を顕在化しつつ、設備投資負担の重い通信事業を自律的な形に切り離せる。ただ、我々は親会社のSBGの事業環境にも慎重で、現在は株式を保有していない」

――上場を評価しながら、SBGの先行きに慎重な理由は。
「今後のSBGの中心となる『ビジョン・ファンド』の投資先は主にテクノロジーやスタートアップ企業だ。こうした業界は投資尺度からみて既にかなり割高な企業が多いうえ、現在のように世界景気が減速し始めている状況では投資の回収に時間を要するだろう」

「(SBGの)負債の大きさも先行きに慎重な理由だ。少なくとも2019年後半までは米利上げが継続するとみられるなか、負債の多い企業は投資家から敬遠されやすい」

「ファンドの中核がサウジアラビアからの資金であることも懸念材料だ。サウジは記者殺害事件で外交的な問題を抱えるのに加えて、足元の原油価格の下落もあり、長期的に安定して資金を供給し続けられるのか不安がある」

――日本株全体の先行きの見方を教えてください。
「今後1~2年の日本株は、米国などと比べて相対的に堅調だとみている。ただ足元は世界景気が後退局面に近づきつつあり、世界の株式相場はそれほど割安ではない。日本株も目先が買い場とはみていない」

「業界別では化粧品や食品に対して強気だ。景気が減速しても食事や日用品、パーソナルケアで質の高さを求める傾向は続くだろう。訪日旅行客の増加で、日本の化粧品や食品のブランド力が中国市場で高まっていることも評価できる」

「5Gでグループの優位性」

◎易方資本王華CIO、関博文シニアアナリスト)

――SBGに対する投資スタンスを教えてください。
王氏「SBGは米アルファベット(グーグル)と並んで長期保有している銘柄だ。次世代通信規格『5G』の時代になればグループとしての優位性が大きい。通信速度が飛躍的に高まる5Gでは、位置情報など利用者データを活用したサービスが広がる。英半導体設計のARMのほか、ヒト型ロボットの『ペッパー』などを有しており、通信事業からの膨大なデータをうまく活用しやすい立場だ。あらゆるモノがネットにつながる『IoT』で独自のエコシステム(生態系)を築く存在になり得る」

――子会社SBの上場がSBG株に与える影響は。

関氏「SBGは通信会社からAI(人工知能)やロボットなど、純粋なテクノロジー企業の側面が強まる。日本国内での通信料金の引き下げ圧力や、5G関連の設備投資が負担になる通信事業の分離は投資家にとって好ましい。一方、こうした理由から新規上場するSBの株式に対しては慎重だ」

――5Gで提携するファーウェイの孟晩舟・副会長がカナダで逮捕されました。
王氏「SBだけでなく、通信業界全体にとって基地局などでファーウェイの製品を使わないことにより設備投資の負担が増す可能性がある。北欧のノキアやエリクソン、日本のNEC、富士通といったあたりが設備の代替メーカーになりそうだが、一般にファーウェイ製品より価格は高いだろう」

――ソフトバンク・ビジョン・ファンドの資金の出し手であるサウジアラビアは記者殺害事件で外交的に孤立し、投資家からも不安視する声があります。
王氏「サウジアラビアの問題は確かにSBGにとって懸念材料だ。この問題の今後の展開を予想するのは難しい。ただ、現段階では上記のような優位性があるSBGの株式を売却するほど深刻だとは捉えていない」

――SBG以外で将来性を評価している日本企業はありますか。
王氏「ソニー(6758)と村田製作所(6981)に投資している。ソニーはスマートフォン向け画像センサーや仮想現実(VR)端末『プレイステーションVR』が先行きの収益に寄与するとみている。村田製は積層セラミックコンデンサー(MLCC)の自動車向け需要の増加がテーマだ」

(聞き手はNQN香港=柘植康文、易方資本は書面でのインタビュー)

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