2019年、米国経済ひいては世界経済は大丈夫なのか? 年越しを前にした世界の市場関係者の最大の関心は、これに尽きるに違いない。さまざまな指標がある中で景況感や先行性のある統計に変化の兆しが出ている点に注意が必要だ。
まずは米大手企業の経営者団体ビジネス・ラウンドテーブルがまとめた「CEO経済見通し指数」から。
2018年10~12月期に前期から4.9ポイント低下し104.4となった。今年の1~3月期にデータがさかのぼれる03年以降で最高となる118.6を記録してから3四半期連続の低下。公表資料の解説によれば、指数自体は高水準を維持し先行きに強気が続いているとしているが、通商摩擦が落とす影にも言及し楽観論だけで押し通せない経営者マインドが透けて見える。さらに中身を見ると、雇用は横ばいなものの設備投資と売上については指数が低下した。
・ビジネス・ラウンドテーブルの「CEO経済見通し指数」はこちら
米企業の経営者よりも、グローバルの経済指標は徐々に世界経済の失速シグナルを灯し始めた。
コンテナ取扱量を指数化した「RWI/ISL コンテナ・スループット・インデックス」は10月にデータが取得可能な2007年以降で過去最高となる134.6を記録した。しかし、発表資料では8~9月が下方修正されたことで最新データ上振れやすかったと指摘している。
さらに「駆け込み需要の影響が考えられる。12月1日の米中首脳会談では米国による対中輸入2000億ドルに対する追加関税率の引き上げ見送りが合意された。しかし、トランプ大統領は直前まで追加関税率の引き上げを既定事項と述べており、税率引き上げを前提に企業が駆け込みに動いていた可能性が高い」(SMBC日興証券の丸山義正氏)という。
また10日に経済協力開発機構(OECD)が公表した10月の景気先行指数は前月から0.1ポイント低下し99.4となった。小数点以下第2位では11カ月連続の低下となった。さらに同指数にブラジルや中国、インド、インドネシア、ロシア、南アフリカを加えた指数では13カ月連続の低下となった。OECDも景況判断を「成長モメンタムが鈍化」としている。この指数は世界経済に対して6~9カ月ほどの先行性があるとされ「2019年前半にOECD地域が失速するリスクの高まりを意味する」(SMBC日興証券の丸山氏)との指摘がある。(岩切清司)
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