ファーウェイ・ショック 真の標的は5G、アジアで関連株急落

カナダ当局による中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の副会長逮捕が、アジアの株式市場を揺らしている。逮捕は米国の要請とされ、米中対立激化への懸念が再び高まった。ファーウェイは非上場企業だが、6日の香港や台湾市場ではスマートフォン(スマホ)関連銘柄に売りが波及した。米国の標的は覇権争いの渦中にある次世代通信規格「5G」とみられ、問題は長引きそうだ。

6日の香港市場ではファーウェイの同業である中興通訊(ZTE)の株価が一時10%近く下落した。スマホ部品の舜宇光学科技や瑞声科技控股(AACテクノロジーズ)も売られた。台湾では光学レンズの大立光電(ラーガン・プレシジョン)が制限値幅の下限(ストップ安水準)となる10%安となった。

ファーウェイはスマホの世界シェアが韓国サムスン電子に次ぐ2位で、米アップルをしのぐ。通信基地局では世界最大手で、通信業界での存在感は大きい。

創業者の任正非・最高経営責任者は中国人民解放軍出身で、逮捕された孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)は任氏の娘だ。容疑の詳細は明らかではないが、米司法省がイランへの違法輸出に関わった疑いでファーウェイを捜査していると複数の米メディアは4月に報じていた。この関連容疑で拘束されたとみられる孟氏について米国は身柄の引き渡しを求めており、中国政府は「重大な人権侵害だ」と抗議する。

逮捕の背後にあるとみられるのが「5G」での中国と欧米の覇権争いだ。ファーウェイを巡っては、オーストラリアやニュージーランドが安全保障上の理由で5Gの整備事業への参入を禁止した。英通信大手は5Gでは同社製品を使用しないと決めている。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは11月下旬に「米政府が日本やドイツなどの同盟国にファーウェイ製品を使わないように説得を始めた」と報じていた。

米国と英国、豪州、カナダ、ニュージーランドは機密情報を共有する枠組み「ファイブアイズ」のメンバーだ。次世代の通信インフラを中国勢が握れば経済的な利益を失うばかりでなく、重要情報が中国政府に漏れて安全保障上のリスクになりかねないとの警戒感も強い。中国は先端分野で世界一を目指す産業政策「中国製造2025」の重点領域の一つとして5Gを掲げており、譲歩しないとの見方が多い。

ハイテク分野の米中対立ではZTEが今春、米企業との取引禁止の制裁を受け大打撃を受けたのが記憶に新しい。ZTEは米国製の半導体を調達できずに通信設備やスマホといった主力事業が停滞し、1~9月期は72億6千万元の最終赤字だった。同社は米国のベネズエラへの制裁に違反したとの疑惑も出て、11月に複数の米上院議員が米政府に調査を求めた。株式市場では、ファーウェイ幹部逮捕は「ZTE問題の再燃も連想されやすい」(岡三国際の小泉めぐみストラテジスト)との声がある。

今週には台湾電子機器製造の鴻海(ホンハイ)精密工業が米アップル「iPhone」の中国からベトナムへの生産移管を検討していると伝わった。同社の郭台銘董事長は「米中摩擦は5~10年続き、世界のサプライチェーンに大きな変化が起きる」と語った。米中摩擦の激化は、産業構造の大きな変動も促しつつある。

NQN香港=柘植康文】

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