FXはパチンコや競馬と違う by 太田二郎氏(シリーズ:ベテランに聞く)

日本の外国為替証拠金(FX)取引は今も昔も、一定のレンジを前提に相場の流れに逆らう「逆張り」が主流だ。相場経験が浅い人は戦略なしに何となくレンジを決めることが多く、1990年代後半から相次いだ金融危機や市場の混乱にうまく対応できなかった。FX取引がまだマージントレードと呼ばれていた草創期から投資家の浮き沈みをつぶさに眺めてきた為替ストラテジストの太田二郎氏は「ともかく1つのやり方を極めるべきだ」と諭す。【聞き手は日経QUICKニュース(NQN)編集委員=今晶】

太田二郎(おおた・じろう)
1970年代の終わりに外国為替業界入りし、米ファーストボストン(現クレディ・スイス)やドイツのBHF銀行を経て98年、英ナットウェスト銀行でマージントレードの営業を始める。その後はFX向け取引システムのフロンティアである米GFT(Global Forex Trading)東京支店でキャリアを積んだ。現在は個人向けの外為アナリスト、ストラテジストとして情報提供を続ける

■直感頼みは通じない

現代の外為取引で重要なのはいかに自らを律するかだ。(自己資金よりも多い額を運用できる仕組みの)レバレッジの比率を抑えたり、予想が外れたらすぐに損失覚悟の持ち高解消を進めたりするのは当然だ。もう1つ、チャートでもファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)でも何でも構わないのでこだわりを持つとよい。

ある投資家は、テクニカル分析の「ギャン・ルール」を用いたトレーディングに専念している。法則を発見したウィリアム・ギャン氏はルールに厳格に従い、勝率を高めたことで知られる。ここで言いたいのはギャン・ルールが良いか悪いかではない。1つの分野を極めていこうとする探究心だ。

かつてのディーリング部門は自らの経験と勘に頼る職人の世界で、リスク管理などあってないような足元では考えられないところだった。英ナットウェスト銀行(現ロイヤルバンク・オブ・スコットランド)にいたころは自己勘定でディーリングをしながら顧客対応をし、銀行全体の収益を押し上げた。同時代のトレーダーには大損の危険を顧みず巨額の持ち高を振り回していた猛者が多い。当時は参加者の数が少なかったので直感頼みでもどうにかなったが、市場が拡大した一方でとれるリスクが少ない現在では無理だ。

為替相場は株や債券に比べるとはるかにランダムに動く。勝てたとしても打率はせいぜい3~4割だろう。漫然とディーリングをしていてはせっかくの勝機にきちんと資金を投じられない。

■「このやり方で必ず勝てる」は絶対にない

FXを手掛ける個人のマインドはあまり変わっていない。パチンコや競馬をするようなレジャー感覚で、ともかく楽をしてもうけたいとの考えが強い。安易にレバレッジ運用に傾くために想定外の事態にもろく、2000年にかけての日本の金融危機や01年の米同時多発テロ、03年のイラク戦争、08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災の後の大荒れの市場に耐えきれず次々と去っていった。

退場者には共通項がある。書籍やウェブサイトで「このやり方なら必ず勝てる」といった根拠がはっきりしない取引手法や経験則を疑いもせずに取り入れるのだ。自分で考えを巡らせていないのでまったく応用がきかない。

各国の経済情勢や金融政策は奥が深い。例えば米雇用統計では非農業部門雇用者数や失業率だけでなく、時間当たりの賃金や広義の失業率などチェックすべきポイントが少なくない。それに対し1つのパターンや取引手法で語れるはずがない。にもかかわらず、たいてい「必勝法」のやすきに流れてしまう。努力が必ず報われるわけではないが、楽をしていては絶対に勝てない。

■為替の需給、かなり複雑に

17年に起きたインターネット上の仮想通貨バブルと18年初めにかけての崩壊をみると08年までのFX隆盛期を思い出す。FXもかつてははるかに規制が緩く、レバレッジ比率の上限は会社によっては数百倍にも達していた。「簡単にもうけられる」との甘い言葉に乗り、ろくにリスクを考慮せずに高いレバレッジをかけて多額の損失をこうむるケースが後を絶たなかった。

為替需給はここ10年ほどでかなり複雑になった。昔の常識は当てはまらないと割り切るべきだろう。主要国の経済は総じて成熟し、日米欧ともに潜在成長率が下がって為替の大きな変動をもたらすような金利差は生じにくくなってきた。

それでも相場に対する心構えの基本は変わらないはずだ。テクニカルを用いるにせよ、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に傾斜するにせよ、何らかの勝ちパターンを見つけてこだわってほしいと思っている。

(随時掲載)

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