アボガドから電気自動車まで、存在感増す中国の消費者 HSBCリポート

HSBC中国の社長兼CEO(最高経営責任者)のデイヴィッド・リャオ氏が、存在感を増している中国の消費者についてリポートします。

■新世代と消費の洗練
中国において消費者の味覚は急激に変化しています。7年前には中国のアボカドの輸入量は約30トンに過ぎず、中国の食卓に滅多に上がることのない、中米原産の果物で変わった食材でしかありませんでした。

しかし2017年になると、チリやメキシコ、ペルーから中国が輸入したアボカドの量は3万2200トンと、アボカド・トースト2億食分をまかなうのに十分な量に達しています。

中国のニューリッチの贅沢さや、スイスの高級時計からデザイナー・ハンドバッグ、スーパーヨットまであらゆるモノへの並外れた影響については近年多く語られてきています。しかし、中国は単に「クレイジー・リッチ!」(2018年公開の米国映画)の国ということだけではなく、富が都市中心部から地方の中核地域に波及するにつれ、インターネットに精通し聡明でより高学歴の新世代が中心となり、消費がさらに洗練され包括的になっていることはあまり認識されていません。

保護主義の高まりや貿易摩擦により世界中で企業にとっての不安が増すなか、今こそ国際的企業はこうした新しい消費者と商品需要をけん引するその潜在力に目を向けるときなのです。

中国がグローバル企業にとって重要なターゲット市場であることに疑問の余地はありません。公式推計によると、中国は2018年から2022年の5年間に8兆米ドル相当の商品を輸入するとみられていますが、これは1年当たり平均1兆6000億米ドルに上り、昨年のカナダまたは韓国のGDPにほぼ匹敵します。

■中国、世界の商品が向かう市場に
訪日する中国人の数も増加し続け、中国人旅行客の数は他国を上回っています。経済産業省の平成29年度の「電子商取引に関する市場調査」によると、中国でクロスボーダー(国境を越えた)電子商取引を用いて日本の商品を購入した買い物客の40.4%が、過去の訪日時に買ったお気に入りの商品を再度購入したと答えています。

日本の企業から中国の消費者がクロスボーダー電子商取引を通じて購入した総額は前年の1兆366億円から25.2%増加して1兆2978億円に上りました。

HSBCの「ナビゲーター・レポート」によると、加工用の中間財および増加する中国の富裕層を満足させる最終財の双方の需要を反映し、2017年から2030年の間に中国の財貨輸入は平均で年間約8%増加すると予想しています。中国はすでに日本の第2位の輸出相手国です。2030年までに中国は米国に代わり日本の最大の輸出市場になると予想されています。

これは中国が輸出および国家主導型の投資にもとづいた成長から脱却しつつ、その14億人もの人々の消費を一層促進しているということです。「メイド・イン・チャイナ」商品が全世界の市場に向けて輸出されるという古いモデルは、逆に中国自体が他のどこかで作られた製品が向かう先になるというモデルにゆっくりと、しかし着実に移行しているのです。

このリバランスの兆しは、上海でまもなく開催される中国国際輸入博覧会(CIIE)にみられます。過去において中国で開催された展示会は中国企業の世界に向けた輸出に関するものばかりでしたが、それとは対照的に、このイベントは外国企業による中国市場での販売を目的としたものです。11月5~10日の6日間にわたり、数十万平方メートルもの展示スペースが国際的な出展者に提供され、食品から医薬品、家電、自動車などの製品が展示されます。

■可処分所得、40年で100倍
中国政府が経済改革に着手し、外国投資家に国を開放して以来40年の間に拡大してきた購買力が企業を引き寄せています。2017年には都市部世帯の一人当たり可処分所得は3万6396元(5600米ドル)となり、1978年当時の100倍に達しました。また、農村部世帯の所得も増加しています。

こうした中国の消費者は単に豊かになってきただけではありません。マッキンゼーのレポートによると、中国の消費者はより健康志向で、環境に配慮しており、ブランドや購入する物の品質についてますます意識が高くなっています。

アボカドに象徴されるこのような中国の消費者の嗜好の変化に企業は気づき始めています。

2008年に撤退し、昨年中国に再参入したタコベル(Taco Bell)は、余計な脂を削減し、より健康的なアボカド・ブリトーを新たな中国の第1号店舗で販売しています。上海だけでも、現在では160店舗以上のレストランでスマッシュド・アボカドを載せたトーストが提供されています。これは、西洋のミレニアル世代の間で人気が出たことにより有名になったメニューです。

スターバックスは中国でコーヒー愛飲者が増加したことにより、同社の最大市場が米国から中国に代わるとみており、テスラも2025年までに世界の電気自動車販売台数の約半分を購入すると予想されている中国のドライバーをターゲットにしています。

さらに電子商取引の拡大もあり、消費の裾野が広がってきています。アリババやJDドットコムなどのプラットフォーム運営企業が、裕福な沿岸地域から内陸部の比較的小規模な都市や町まで世界中の商品を届けています。最近では、奥地の農村地域の消費者でも、村に拠点を置く貨物倉庫やオート三輪またはドローンを使ってブランド物の粉ミルクやオムツを赤ん坊のために購入することが可能です。

■長期的に潜在力は大きく
確かに、中国のように巨大で複雑かつ急速に進展している市場に売り込むには困難が伴います。

経済が成熟するほど、所得はかつてほど急速に増えるものではありません。そして現在の貿易摩擦が企業や消費者心理に悪影響を及ぼすことは言うまでもありません。

そのうえ、外国企業は変化し続ける消費者の嗜好と、電子商取引とデジタル・ペイメント・ツールの目まぐるしい急速な発展に対応する必要があります。また、俊敏でハイテク化の進んだ現地企業との激化する競争にも備える必要があります。テスラの場合、「中国のテスラ」を目指してしのぎを削る数多くの現地の電気自動車企業と競合しており、コーヒー業界では北京に本拠を置くラッキン・コーヒーが設立から1年足らずのうちに何百店舗をも開店し、スターバックスを脅かしています。

しかし、こうしたことは14億人の消費者が全世界の輸出企業の対象となる、極めて大きな長期的潜在力を弱めるものでは決してありません。上海のカフェでブランチを楽しんでいるミレニアル世代から湖南省の村でオムツが届くのを待っている子育て世代に至るまで、中国の消費者はより一層裕福に、そして見識も豊かになっています。かつてないほど中国の消費者は企業にとって、最も重要なターゲット市場となっています。それが世界中の輸出企業が11月に上海に集う理由であり、国際的に収益を拡大したいすべての企業が、すぐに中国に参入すべき理由なのです。

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