QUICKではアジア特Q便と題し、アジア各国・地域のアナリストや記者の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はシンガポールの現地記者クリストファー タン シ(Christopher Tan, Si)氏がレポートします。
原油価格は反発、現状は40ドル程度で推移
原油安の最悪期は脱したという期待から、アジアの株式相場は先週、反発した。原油価格は1月に1バレル30米ドル以下に下落したが、その後回復し、この数週間は1バレル約40米ドルとなっている。
米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスの一次産品・実物資産部門のグローバル統括、ジョディ・ガンズバーグ氏は、原油価格の底打ちを意味しているかもしれないと分析。ガンズバーグ氏はインタビューで、石油価格は底値から15%回復しており、下げ相場が去った明らかな兆候と指摘した。同時に、石油生産者は安定供給を続けると明言していることから、生産状況をより明確に認識できるようになった。米雇用者数も1月に24万人増え、労働市場の回復傾向を維持している。
DBS最高投資責任者「反騰はまもなく消失する可能性」…顧客への覚書で
各国の中央銀行も市場の不安定さを懸念し、市場センチメントを支えるような心強い発言を始めている。米連邦準備理事会(FRB)は今後数カ月間にさらなる利上げを行うかどうかを明らかにしない一方で、中国人民銀行(中央銀行)は、この12カ月で6回目の預金準備率の引き下げを行った。このような各国中央銀行による穏健派的な声明は投資家を元気づけ、それに支えられてMSCIアジア太平洋指数(日本を除く)は2月中旬以降に約8%上昇した。
しかし祝杯をあげるのはまだ早すぎるかもしれないと、DBS銀行傘下のDBSプライベート・バンクの最高投資責任者、リム・セイブーン氏は話した。同氏は、現在の反騰はアジア株式市場の長期的な下落傾向の中での反発にすぎないと考えている。「ゴルディロックスの完璧な状態(熱すぎず、冷たすぎない)が過ぎ去って久しい」と、同氏は顧客への覚書で警告した。
同氏は「今やゴルディロックスは去り、1)貿易不振、2)企業収益の低迷、3)世界的な景気後退の恐れという3匹のベアしかいない」と語り、「この反騰はまもなく消失する可能性があり、再び下げ相場が始まるだろう。長期的な投資ホライズンでは、根本的に強力な資産を持っていれば、時間は友達という道理に安らぎを求めることができる。たとえ良い株であっても、株価は循環するものだ」と付け加えた。
ベア相場継続か…FRBの動向に注目集まる
CMCマーケッツのアナリスト、マーガレット・ヤン氏も同意し、大きな構図は今年の年初から変わっていないと言及した。「中国の貿易黒字は、市場予測の501.5億米ドルを下回る326億米ドルだった。輸出は予測の12.5%減に対して25.4%減となり、2009年5月以降で最大の下落幅を記録した」と同氏は話した。
しかし、下げ相場が再び始まるまで、この市場の反発はいつまで続くのだろうか?1つのヒントは、今週後半にFRBのFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催される時に分かるだろう。この場合、どの方向であっても主要な動きに市場が肯定的な反応を示すかどうか分からない。もしFRBが好調な労働市場を背景に利上げに踏み切れば、好機を捉えて市場はテーブルからより多くのお金を持ち去るだろう。もしFRBが市場は立ち直りつつあるが、金利の現状維持を決めたら、株式市場が高騰し続ける前に一息つく暇を与えてくれるだろう。【翻訳・編集:NNA】