トルコリラ安を受けて外国為替市場では南アフリカランド、アルゼンチンペソなども売られ、アルゼンチン中央銀行は急きょ、政策金利を5%引き上げて火消しに走った。霧が晴れるまでは、売買を手控える投資家も多いだろう。ちょうど夏季休暇に入り国内外の機関投資家は積極的な売買をしにくいとみられ、商いも細りやすい。
こうした状況で頼みの綱となる個人マネーも、危うい。
トルコリラや南アランドは、外国為替証拠金取引(FX)投資家が大好きな通貨。高いスワップ金利収入が得られ、中長期の買い持ちの投資家が多いとみられる。くりっく365のデータによると、トルコリラ/円の7月末時点での建玉は31万枚で米ドル/円の54万枚に次ぐ大きさ。南アフリカランド/円も17万枚あった。株の投資家とFXの投資家は必ずしも重ならないが、今回の急落をきっかけに、痛手を被った投資家がいることは間違いないだろう。
(注)月末時点の建玉数量は、くりっく365のデータ
QUICK資産運用研究所によると、トルコ関連の公募投信は、規模が小さいとはいえそれでも上位10銘柄で2000億円近い預かり資産残高があった。松井証券によると、信用買いを手掛ける個人の評価損益率は13日時点でマイナス13.171%。10日時点のマイナス11.17%から悪化して7月6日以来およそ1カ月ぶりの水準だ。こうした個人マネーの投資マインドの冷え込みが、相場の重荷になる可能性もある。
市場にはさほど悲観的な見方はない。これまでの新興国危機で引き金になったのは、たいていドルの流動性不足からくる、米国への資金の巻き戻し。SMBC日興証券によると、今回の騒動の発端となったトルコリラ安について「流動性が米国に吸い上げられているわけではなく、単にトルコの不適切な経済政策を嫌気してトルコ国外に逃げているに過ぎず、深刻度は低い」(13日付リポート)という。
実際、今回の問題のきっかけは、高いインフレ率にもかかわらず、トルコ中銀が政策金利を据え置いたこと。トルコ在住の米国人牧師の解放を巡ってトランプ米大統領がトルコからの鉄鋼輸入などについて関税を引き上げたことが背景だ。悪影響があるとしてもトルコ国内の経済に限った話。アルゼンチン中銀の利上げも、トルコリラのあおりを受けた対応に過ぎない。
トルコの経常赤字額は対GDP比で5%強と小さくない。インフレ率の急激な上昇も背景に、トルコリラは軟調な動きが続く可能性が高いとの見方が市場では多いが、日本企業の収益悪化やグローバルな信用リスクの高まりにつながる可能性は低いとみられる。(松下隆介)
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