1日の東京外国為替市場で円の対ドル相場は続落した。前日に日銀が「当分の間、きわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している」とのフォワードガイダンス(将来の指針)を導入したことを受け、海外市場では「日銀の緩和策が継続」との素直な解釈が多かった。運営方針の「弾力性」に将来の金利上昇を意識した国内勢とは、受け止め方に温度差があったようだ。
国内と比べ、海外ではフォワードガイダンスをより重視する傾向がある。「市場との対話の機会を持とうとする日銀の意思が感じられ、安心感がある」(ステート・ストリート銀行の若林徳広東京支店長)という。加えて、声明で2019年秋の消費税増税による影響にまで言及したのも、緩和からの出口に動くのは少なくとも19年秋以降との連想を誘い、「ずいぶん先になるとの印象を強くした」(りそな銀行の井口慶一・市場トレーディング室クライアントマネージャー)効果があったようだ。
UBS証券ウェルス・マネジメント本部の青木大樹・日本地域担当最高投資責任者は「欧州中央銀行(ECB)の手法をなぞった感がある」と指摘する。ECBは6月の理事会で量的金融緩和の年内終了を決めたと同時に「少なくとも19年夏までは従来の低金利を維持する」方針を明示。金融政策の方向としては正常化を見据えながらも、正常化には時間がかかると強調して市場の混乱を回避した。この時の印象が強く残る海外勢は、今回の日銀の声明もECBの際と似た感触で受け止めたようだと、青木氏はみる。
フォワードガイダンスは、文字通りに読めば将来の政策を示す「指針」であって、方向性は必ずしも緩和に向いているとは限らない。それでも2008年に米連邦準備理事会(FRB)がガイダンスを導入したのは金融緩和の継続を示唆するためだったとの経緯から、市場では「フォワードガイダンス=低金利維持」との印象が強いのかもしれない。
1日の東京市場の取引時間帯では、国内金利の上昇につれて円買いが強まる場面があった。だが円買いの勢いは長続きせず、午後時点では1ドル=112円台と同日の安値圏で推移した。日銀は今後の政策運営に柔軟性を持たせながらも、円の対ドル相場を円安・ドル高に傾かせた。国内ではフォワードガイダンスよりも政策運営の弾力性により関心が集まったが、フォワードガイダンスの導入も一定の効果を発揮しているようだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 蔭山道子】
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