25日の米株式相場は取引終了にかけて上げ幅を一気に拡大した。「米、EUに車関税の留保検討 貿易交渉開始で合意」と伝わったのが要因だ。米EU首脳会談の結果に市場はひとまず一安心、といったところだろう。
ただ、既に米経済のファンダメンタルズには通商問題の「影響」が出始めている。日本時間27日夜に発表予定の4~6月期の米実質国内総生産(GDP)は成長率が4%を超えて非常に高まるとの見方が多い。アトランタ連銀が算出する「GPDナウ」も高水準を維持したまま発表日を迎えようとしている。
統計として非連続性が発生したようにも見える今回の米GDP。モルガン・スタンレーのエコノミストは、追加関税が課せられる前に米国内外の企業が備蓄に動いた可能性を念頭に「4.7%成長のうち、『備蓄』的な動きによる輸出増が1.5ポイント分に相当するかもしれない」と指摘する。米国外の企業が前倒しして米製品の購入に動いたというわけだ。
加えて「『備蓄』は米企業でもある一定規模では行われているようである。4~6月の在庫積み増しは、それ以前の2四半期の+100億ドルペースに対し+380億ドルペースとなっている。より興味深いのは在庫が増えている分野が電気製品、機械設備、自動車及び部品などの貿易問題対象分野と重なっている点だ」という。そのうえで「これらが一過性調整要因であり両方ともに持続不可能で需要の先取りを反映したものであることから、その反動が来ることを懸念している」とした。追加関税の回避が実現すれば喜ばしいが、米経済は持続不可能な経済成長の過程にあるだけに不安はぬぐえない。
それでもトランプ政権は財政の拡張路線にある。このため米経済について「実際の歳出拡大が実体経済を押し上げるのは、これからが本番である。歳出拡大に伴う財政刺激効果が大きく表れるのは2018年後半から2019年の前半になり、米国の成長率は短期的に潜在成長率を引き続き上回る」(バンクオブアメリカ・メリルリンチ)との見方も出ている。米経済の先行きを考える不透明要因がどんどん増しているようにも見える。(岩切清司)
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