最後の楽園? 利回り求め、北欧カバード債投信に向かうマネー

低金利環境が続く日本で、数少ない高利回りの運用商品として注目を集めているのが北欧などのカバード債投資信託だ。地銀などの機関投資家向け私募投信としては既に市民権を得て、日米国債の償還などでだぶついた資金の受け皿になってきた。2018年は個人向けの品ぞろえも始まっている。

カバード債は、住宅ローンなどの債権を一つにまとめそれを裏付けとして金融機関が発行する仕組みの証券。米国における不動産担保証券(MBS)と似ているものの、債券発行後も担保と債権が発行会社のバランスシート(貸借対照表)に残る。

資産をまるごと特別目的会社(SPC)に売ってしまうMBSとは異なり、仮に債務不履行(デフォルト)が起きても投資家がリスクを直接負うことはない。債券を発行する金融機関は担保資産の価格下落に備えて超過担保の拠出などを義務付けられる。市場では「商業用不動産ローン担保証券(CMBS)や住宅ローン担保証券(RMBS)と比べてカバード債は安全性が高い」(野村証券の中島武信クオンツ・ストラテジスト)との受け止めが一般的だ。

MBSなどの運用リスクに敏感な国内の機関投資家の間では数年前から人気に火がつき、一部の証券会社から販売が広がっていた。私募投信の場合、契約内容や運用対象別の規模はほとんど明らかにならない。それでも総資産が数十兆円にのぼる私募投信市場に占めるカバード債の存在感は明らかに増しているとの指摘は多い。個人の認知度もじわじわ高まっているようだ。

個人向けファンドの1つが、ニッセイアセットマネジメント(AM)が4月に設定した「ニッセイ・デンマーク・カバード債券ファンド(愛称:デニッシュ・インカム)」だ。最大2.6%台にも達する利回りをセールスポイントとし、高金利運用の「ラストリゾート(最後の楽園)」と位置付ける。

ユーロ圏やデンマークは欧州中央銀行(ECB)によるマイナス金利政策の影響で日本よりも金利水準が低く、為替スワップやベーシススワップで為替差損を回避(ヘッジ)すると上乗せ金利(プレミアム)が得られる。運用利回りもそれだけ高まる計算だ。

しかもデンマークのカバード債はドイツやフランスなど他の欧州主要国での発行債よりも利回りが高い。「デンマークに絞ることで勝機があると判断した」(ニッセイAMの高田保豊常務)という。爆発的に売れる商品にはなりにくいため、販売開始から数カ月の運用残高は数十億円にとどまるが地道に販売を続ける構えだ。

カバード債運用における最大のリスクは市場規模の小ささだろう。ニッセイAM機関投資家営業部の工藤義博部長は「長期カバード債の市場規模は世界最大のデンマークでさえ10兆円ほど。外貨建て運用を推進する大手邦銀が数千億円規模で参入すると、売りたいときに売れない状況に陥りかねない」と話す。高田氏も「最近は日本に限らず他のアジア系金融機関もデンマークに関心を示している」と競合他社の動きに警戒感を隠さない。

デンマークがラストリゾートでいられる期間はそう長くはないだろう。ニッセイAMは他の北欧諸国の動向にも目を光らせるが、ノルウェーもスウェーデンもデンマークと同様に市場規模は小さい。少しでも高い利回りを求める投資家の競争は遠からず北欧を離れ、さらに激しくなっていくかもしれない。

〔日経QUICKニュース(NQN)荒木望〕

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