原油は温めの65~70ドルがいい 「ほどほどの減産」を巡る米とサウジの都合

6月に入って以降の原油相場が狭い範囲でもみ合っている。ニューヨークの先物は5月22日に一時1バレル72.83ドルと、約3年半ぶりの水準まで上昇した後に調整し、65ドル前後での推移が続く。ほどほどの減産継続が適度に需給を引き締まらせる――。市場では、景気や相場が熱しすぎず冷めすぎずの状況をあらわす「ゴルディロックス(適温)」が足元の原油価格にも当てはまるとの見方がある。

ここ10年の原油相場をみると、2008年7月に147ドルと史上最高値を付けた直後のリーマン・ショックで下落局面に転換。米シェールオイルの台頭などで供給過剰感が強まった16年1~2月には30ドルを割り込んだが、石油輸出国機構(OPEC)加盟国などによる産油調整や世界的な景気回復に伴って上昇に転じた。10年単位の長期トレンドを重視する市場参加者の間では、147ドルと20ドル台をそれぞれ相場のピークとボトム(底値)ととらえ、その中央値付近に位置する65~70ドル程度を適温とみなすムードが出始めているようだ。

70ドルは大産油国サウジアラビアの財政均衡点と言われている。国営石油会社の新規株式公開(IPO)を控えるサウジなど産油国は恩恵を受けるはずだ。一方でトランプ大統領は原油価格が70ドルに接近した4月下旬、ツイッターで「原油価格は人為的にとても高くなっている。受け入れられない」と述べるなど、70ドルを相場の許容上限とみなしているフシがある。

サウジとロシアは5月25日、これまで続けてきた協調減産を緩和し、日量100万バレル程度の増産を検討していると示唆した。原油価格は両国の見解表明後はずっと70ドルを下回っている。

米国が「70ドル」にこだわるのはなぜだろうか。70ドルを超えると、生活に不可欠なガソリンの価格に必要以上に上昇圧力がかかるからだ。

米エネルギー情報局(EIA)の統計によると、全米のガソリンの小売価格は5月28日時点で1ガロン(約3.8リットル)あたり3.039ドルになった。3ドル超えは消費者からの不満が出る節目とされる。トランプ政権の支持率にも影響しかねない。

石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミストは「トランプ氏からの圧力が強まるのを恐れてサウジやロシアは姿勢を変えたのではないか」と読む。中東情勢が緊張するなか、いざというとき後ろ盾になってもらうためにもサウジは米国との関係を悪くしたくないとの思惑が見え隠れする。

米のガソリン価格は6月4日時点の最新の統計では3.018ドルと前週よりやや安くなった。今週に入って原油価格が64ドル台まで一時調整したのを踏まえると、来週以降の統計ではもう少しガソリン価格が落ち着くとも考えられる。現在の65ドル前後の値段が増産を要するレベルなのか否かが今後の焦点となるだろう。

ゴルディロックスは英国の童話「3匹のクマ」に登場する少女の名前だ。ある日、少女は深い森の中にあるクマの家でボウルに入ったおかゆが3つ、テーブルの上に置いてあるのを見つける。最初の2つは冷たすぎたり熱すぎたりしたが、3つめはぬるめの適温だったので全部食べてしまう。

「3匹のクマ」の物語ではクマが家に戻り、少女が一目散に逃げるところで終わる。クマは英語でベアといい、市場では「弱気相場」を意味する。次の焦点は22日のOPEC総会。もし増産が決まらなくても、サウジが米国を意識して「将来の増産も検討する」などとリップサービスすればベア相場に転じるかもしれない。

【日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥】

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