南欧混乱でも大怪我しない日本の債券投資家 イタリアと逆相関のドイツ債で分散効果

国内勢によるユーロ建て債券運用の分散が進んでいる。高利回りの南欧債と、相対的に安全なドイツやオーストリアなどの国債に同時に資金を振り向ける動きが広がっているようだ。その本領は早くも5月に発揮された。イタリアで5月下旬、政局不安や財政赤字の拡大懸念などから国債価格が急落した半面、同じユーロ圏内で安全資産とされるドイツ国債が上昇し、イタリア債の打撃を和らげた。

イタリアではどうにか新政権の誕生にこぎつけ、政治リスクへの警戒感はいったん収まったが、財政懸念は消えていない。新首相ジュセッペ・コンテ氏は5日の所信表明演説で、財政拡大を通じた経済政策を進める意向を示した。これを受けて5日の欧州債券市場ではイタリア10年物国債利回りが前日の2.5%台から2.7%台に上がり(価格は下落)、他の南欧債も一時売られた。一方、ドイツ国債利回りは低下(価格は上昇)し、分散効果は続いた。

イタリアは現時点でもユーロ圏で最も多くの公的債務を抱える。さらに支出を増やせば、国債相場の下値余地の大きさが改めて意識されるだろう。財政負担が重いスペインやギリシャの国債にもつれ安の圧力がかかる可能性は高い。それでも市場では「かつてのギリシャ危機のときに比べると欧州中央銀行(ECB)などの安全網の整備が進んでいる。ドイツが資金支援などで直ちに巨額の支出を強いられることはなく、ドイツ債は安全性を保てそうだ」との楽観論が支配的だ。

イタリア国債利回りのドイツ債に対する上乗せ幅(スプレッド)は足元で2.3%台まで拡大した。イタリア債の下落とドイツ債の上昇との「逆相関」が成り立っている。

微妙なのはフランス国債の立ち位置だ。フランス系の銀行が保有するイタリア国債の比率は高く、「今後イタリアへの懸念が強まれば、フランスにも売りが飛び火しかねない」(メリルリンチ日本証券の大崎秀一金利ストラテジスト)ためだ。フランス債は国内生命保険などの長期投資家が比率を高めている対象国の1つ。ただドイツ債の堅調さを揺るがすとの観測は今のところ少なく、ここでも分散投資が威力を発揮しそうだ。

財務省が5月10日に発表した対外・対内証券投資によると、国内マネーによる3月中の欧州債投資で最大規模を誇るのがドイツ債で、保有額は6兆1670億円。3月は1754億円の買い越しだった。イタリア国債の保有額は1兆6075億円だった。

JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは「国内勢のイタリア債保有額はあまり多くない。イタリア国債に含み損が出ても、主戦場であるドイツ国債の相場上昇によって十分穴埋めできる」と分析している。そもそも国内生保は債券を満期まで持つ場合、含み損を時価評価する必要がない。南欧の混乱が国内に波及するリスクは極めて低いと考えられそうだ。

【日経QUICKニュース(NQN) 荒木望】

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