沈むメキシコペソ 頭痛の種は隣国の大統領と自国の大統領選

外国為替市場でメキシコペソが下落基調だ。対ドルは5日までに1ドル=20ペソ台、対円は1ペソ=5円台半ばを付けるなど、それぞれ2017年3月と2月以来の安値圏で推移している。継続的な米利上げ観測を背景にドル高の圧力がかかる中、米国との間で通商問題を抱え、政治では先行き不透明感がくすぶるメキシコのペソは売られやすくなった。

米国は1日、メキシコに対して鉄鋼やアルミの追加関税を課す輸入制限に踏み切った。5月中とされた北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の期限が切れたことで、米国は「輸入制限という脅しのカードを実際に切らざるを得なくなった」(SMBC日興証券の平山広太新興国担当シニアエコノミスト)ためだ。

これに対しメキシコ政府は4日、世界貿易機関(WTO)に米国の輸入制限措置を提訴したと伝わった。さらに米国産豚肉の輸入を制限するなどの対抗措置を検討しているとの報道もあり、事態収拾の糸口は見えない。市場では「11月に予定される米中間選挙まではトランプ米大統領も強硬姿勢を崩せず、混乱が長引く」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長)との声が出ている。

メキシコ固有の問題もある。7月1日に実施される大統領選挙だ。ポピュリズム(大衆迎合主義)色の強い新興左派政党の国家再生運動(Morena)から立候補している、ロペスオブラドール元メキシコシティ市長が支持を広げてきた。地元紙の世論調査では支持率が5割を超える。投資家の多くは「ロペスオブラドール氏の当選が濃厚になってきた」と警戒感を隠さない。

ロペスオブラドール氏は現政権が進める石油事業の民営化などの経済政策を大幅に転換すると主張している。米国との通商交渉にもトランプ米大統領ばりの強気の構えで臨むようだと、経済の混乱は避けられそうにない。「好況に沸く米国とは異なり、メキシコへの投資には踏み切りにくい」との声も聞こえ始めた。7月1日の大統領選挙まではペソの下落が続く――。市場ではそんな予想が増えている。

今年に入ってからの新興国通貨の下落はペソに限ったことではなかった。とりわけ悪材料の多いトルコのリラやアルゼンチンのペソは大幅に下落した。例えばトルコリラは5月に史上最安値の1ペソ=22円台前半を付けたが、トルコもアルゼンチンも中銀が通貨防衛のスタンスを強めている。大統領の利上げに対するけん制がきつかったトルコでさえ引き締め的な金融政策をとり、リラ安に歯止めをかけた。

一方、メキシコ銀行(中央銀行)は5月17日に開いた金融政策決定会合で政策金利を7.50%のまま据え置くと発表しており、今のところ通貨防衛を目的とする利上げに動くかは不透明な情勢だ。第一生命経済研究所の西浜徹・主席エコノミストは「対ドルで1ドル=21ペソ付近の過去最安値圏に沈む可能性がある」と指摘する。ペソには相対的に売りが出やすい構図がまだ続きそうだ。

【日経QUICKニュース(NQN) 荒木望】

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