ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)とロンドン市場の北海ブレントという2つの代表的な原油先物相場の価格差が一段と拡大している。原油相場が上昇する場面で開きやすいが、今は値下がり局面にもかかわらず拡大している。米国内で原油がだぶつくのではないかとの観測がより強いため、WTIの割安さが目立っている。
北海ブレントの1日の清算値が1バレル76.79ドルだったのに対しWTIは65.81ドルとなり、その差は10.98ドルと2015年3月以来、3年3カ月ぶりの大きさに広がった。
格差は今年に入り拡大基調が続いている。一大産油地の中東情勢の緊迫化で原油相場が上昇するなかで、地理的に近い欧州産の原油である北海ブレントの方が影響を受けやすかったのが背景だった。
北海ブレント先物は5月17日に80.50ドル、WTIは同22日に72.83ドルとそれぞれ直近の高値を付けた後、反落に向かった。今月22日の石油輸出国機構(OPEC)総会に向けて、加盟国とロシアなど非加盟国が協調減産を緩めるとの観測が浮上したのが相場を押し下げた。
値上がり局面では「シェールオイルを中心に米国の原油生産が拡大するので需給の引き締まりは北海ブレントほど厳しくない」との見方がWTIの上値を抑える一因になっていた。相場が下がればシェールオイルの生産をためらう業者も増えそうだが、消費財のように機動的に増産と減産を繰り返すわけにはいかないのが原油産業だ。
さらに、輸送手段となるパイプライン拡張がシェールオイルの増産に追いつかないというボトルネックがWTIを一段と押し下げている。米国では生産の活発さを示す石油掘削設備(リグ)の稼働数が増加している一方、シェールオイルの生産が多い米南西部の2州をまたぐパーミアン地区では「新しいパイプラインの完成は19年にならないと見込めない」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミスト)という。野神氏は「すでに輸送能力不足が顕在化しつつあり、増産分が内陸部の在庫として積み上がりかねない」と懸念する。
裁定取引の機会拡大に向けWTIの割安さを一段と強めようと、投機筋などによる売り仕掛けも活発になりつつあるようだ。欧米格差は目先、拡大が続きそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 片岡奈美】
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