30日午前の東京株式市場で日経平均株価は400円安と大幅続落し、節目の2万2000円を一時割り込んだ。イタリアやスペインの政治不安が広がり、国内外の投資家から株価指数先物に損失回避を目的とした売りが膨らんだ。株価変動率の急上昇で売りが売りを呼ぶ2月の「VIXショック」と似通うが、前回との違いもある。相場の急変を予想し、一部の投資家は下落への備えを進めていた可能性が高い点だ。
投資家の不安心理を測る指標は2つある。一つは恐怖指数の別名で知られるVIX。もう一つは、めったに起こらない大惨事を意味する「ブラックスワン(黒い白鳥)」を代名詞に持つスキュー指数だ。
VIXは足元の相場状況を反映しやすいのに対し、スキューは投資家のヘッジ需要が高まると上昇するという構造上の違いがある。
米S&P500種株価指数を対象としたVIXとスキュー指数をみると、2月のケースではVIXの上昇がスキュー指数に先行していた。これは、相場下落に対して投資家のヘッジが遅れていたことを示す。
一方、今回はスキュー指数の上昇がVIXに先行している。これは、投資家が先回りでヘッジに動いていたことを示す傍証だ。
実際、29日の米スキュー指数は141と、4月18日以来およそ1カ月ぶりの高水準を付けた。「140の『警戒ライン』を上回るとヘッジ需要優勢を意味する」(国内証券ストラテジスト)。
【スキュー指数(青)とVIX(赤)の推移】
東京市場でも欧州の政治リスクに備える動きが前週から出ていたとの声がある。
例えばイタリアでポピュリズム政党と極右政党が連立政権の樹立で合意した18日以降、23日と24日、29日は10時すぎに日経平均が急落した。
ある国内銀行の株式担当者は、この時間帯の株安について、「イタリア政治の不安を警戒した欧州の投資家が日本株先物に損失回避(ヘッジ)を目的とした売りを出していた」と話す。
市場では「景気も減速し始め、日本株の持ち高を減らさなければならない瀬戸際にきている」(ピクテ投信投資顧問の松元浩常務執行役員)と弱気の声が増えている。それでも、すでに下落への備えを進めている投資家が多ければ、2月のような連日の急落劇は避けられるかもしれない。
【日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行】
※スキュー指数はQUICKのサービス「US Dashboard」でご確認いただけます。
※日経QUICKニュース(NQN)が配信した注目記事を一部再編集しました。QUICKの情報端末ではすべてのNQN記事をリアルタイムでご覧いただけます。