米国債に回帰する生保 ヘッジコスト改善、6月FOMC後に潮目の変化

国内生命保険に米国債回帰の機運が高まっている。生保各社が為替変動リスクの回避(ヘッジ)目的で手掛ける円買い・ドル売りの先物予約や通貨オプションのコストはここにきて安定し、米長期金利は2.9%前後の高い水準にある。米10年~30年物国債の運用利回りはヘッジを付けても同じ期間の日本国債をだいぶ上回るようになってきた。国内の低金利環境は当分変わらないとみて、米債投資を再び積極化しようとする動きが出始めている。

米国で利上げが続いた2017年度、これまで外債の「主流」だった米国債投資には逆風が吹いていた。日米欧ともにドルの需給が引き締まり、国内の金融機関がドルを調達しようとすると、例年以上に高い上乗せ金利を求められた。ヘッジコストも上がり、日本より高い利回りが期待できるはずだった外債投資の魅力は半減。追い打ちをかけるように肝心の米長期金利も、米経済が金利上昇に耐えられないとの見方が広がったことでなかなか上がらなかった。

とれるリスクが限られる生保は、ヘッジなしでの運用を簡単には増やせない事情がある。一方、ヘッジをかければ目標とする利回りには到達できない。そんなジレンマの中、生保各社はヘッジ付きの欧州債や、リスクをとったオーストラリア(豪)ドル建て債券に傾いてきた。ただ、米長期金利の上昇によって生保各社を取り巻く環境が変わりつつある。

米長期金利の指標となる10年物国債利回りは17日、米国の利上げペースが速まるとの観測から、一時6年ぶりの高水準(価格は安い水準)となる3.12%を付けた。長期金利は将来の経済状況への思惑の影響を受けやすく、金利の引き上げ幅がインフレ抑制に不十分とみなされたり、財政懸念を増幅させたりすればより上昇する。短期金利は政策金利を織り込む形で緩やかに動くので、銀行や生保は現時点で長短金利差が広がった分を「利ざや」として稼げる。

メリルリンチ日本証券の大崎秀一金利ストラテジストは、「ヘッジを付けても米10年債投資の利回りは0.60%近い」と指摘する。日本の新発10年債が足元で0.040%、20年債は0.515%で推移しているので、ヘッジ付きの米10年債は日本の20年債よりも収益を上げられる。

明治安田生命の佐藤元彦運用企画部長は、今後の米債投資について「17年度に抑えた分を取り返す絶好のチャンス」と意気込む。そのうえで「4月以降、米金利の上昇に歩調を合わせて、米債を買い増している」と現状の買い入れ姿勢を説明する。生保のヘッジ外債は満期保有の比率が高く、購入後に相場が下落しても基本的には含み損を計上せずともよい。

明治安田が2月に発表した有価証券報告書によると、17年3月末に5兆9000億円程度あった外債への投資額は同年12月末までに5兆8000億円程度にまで減っていた。単純に考えれば1000億円程度、外債への投資余力がある計算になる。

ヘッジ比率の調整や償還前の売買を意識しているところにも積み増しのムードが出ている。富国生命の運用責任者は25日の決算報告で、「足元のドル高傾向が続くのか否か注視したい」と述べる一方、「米長期、超長期金利がこれ以上大きく上昇するとは想定していない」と語り、為替や債券価格の変動リスクをとった投資を活発化させる考えを示した。富国に限らず、18年度は米ドル建て債券の拡大に食指を動かす生保は多いようだ。

大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは「6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までは様子見の生保や銀行も米国の長短金利差が一定水準で落ち着くことを確かめられれば、本格的に米債投資に戻っておかしくない」と話していた。

【日経QUICKニュース(NQN)荒木望】

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