海外の債券市場で政治リスクを警戒した金利の上昇が目立つ。6月に大統領選の前倒し実施が決まったトルコの10年物国債利回りは16日に15%に迫る場面があり過去最高を更新した。10月にはブラジルでも大統領選を控えるなど、今年は新興国を中心に世界的な「選挙イヤー」。ポピュリズム(大衆迎合主義)の台頭で拡張的な財政政策などが意識され、債券が売られている。
トルコのエルドアン大統領は今週、選挙を意識して中央銀行への統制を強める考えを示唆した。有効な金融政策が打てずにインフレが進むとの見方が国債利回りを押し上げている。イタリアの10年物国債利回りは16日に一時2%台に上昇し総選挙があった3月以来、2カ月ぶりの水準を付けた。連立協議中の政党が欧州中央銀行(ECB)に対する債務帳消しの要請を検討しているとの報道があり、債務問題への懸念が債券売りを促した。反欧州連合(EU)の動きが広がるとの警戒感も高まった。
中南米では今月20日にベネズエラ、27日にコロンビアがそれぞれ大統領選を予定し、メキシコでは7月に大統領選がある。メキシコの大統領選は新進左派政党、国家再生運動(Morena)のロペスオブラドール氏がポピュリズム的政策で支持率を高めており、金融市場では放漫財政への懸念が高まっている。
米連邦準備理事会(FRB)が段階的な利上げを続け、ECBも量的緩和の縮小を進めている。先進国の金融引き締めで新興国から資金が流出するとの見方が強まり、米長期金利の上昇に目が向きがちだ。だが、各国の政治情勢に目配りする重要性も高まっている。
【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】
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