改革開放40年、中国経済の「これから」(HSBCリポート)

QUICKは「アジア特Q便」と題し、アジア各国・地域の現地の声をニュース形式で配信しています。今回はHSBCグループ香港上海銀行副会長兼チーフ・エグゼクティブのピーター・ウォン(Peter Wong)氏が40周年を迎える中国の改革開放についてリポートします。

人の一生と同じ時間軸の中で、中国は農業共同体による農民中心の国から最先端のデジタル技術と消費が主導する大国に変貌を遂げた。これはスマートフォンを財布代わりに利用する消費者がけん引した変化である。

今年中国は、経済改革と開放に舵を切ってから40周年を迎える。千里の道も一歩からという諺(ことわざ)があるが、まさに1978年12月18日に中国は開放政策を取り入れ国内経済の運営と方向性を転換させることを宣言してその第一歩を踏み出した。

それ以来、中国の経済運営は、かつての厳格な中央統制の下で国家が主導する輸出主体の経済から市場の役割を高めた内需主導の経済へと発展してきた。

過去40年間の中国の国内総生産(GDP)成長率は平均で年率10%であり、同期間の米国のGDP成長率の3倍を記録している。また一人当たりGDPは1978年当時の156米ドルから2016年には8123米ドルまで増加し、8億人を超える国民が貧困を脱した。2016年の米国の一人当たりGDPが5万7638米ドルであることと比較すれば、中国には今後一段の成長余地がある。

現在すでに中国の経済規模は購買力平価ベースで世界最大である。また工業製品輸出と外貨準備高も世界最大である。さらに中国はグローバリゼーションや気候変動対策において主導的役割を担うことを積極的に目指している。こうした目覚しい実績の全ては、中国の経済と社会の弛まぬ努力と広範な変革によってもたらされたものである。

■改革開放からグローバルな役割への旅立ち

中国は、かつて国内経済の基盤だった農業の集団生産化を改めることで経済の不均衡を是正する取り組みに着手した。それには農業に契約責任制を導入することなどが盛り込まれ、農業従事者は集団で生産するのではなく土地ごとに割り当てられた収穫高を上回る生産高を達成すれば、その超過部分を獲得することができるようになった。また中国政府は郷鎮企業というシステムを確立した。それをきっかけに食品やその他の消費財の供給が格段に増加し、国内経済の活力と事業環境は大きく変化していった。地方の改革は中国の将来の経済成長やグローバル経済へ参加するための基礎となるものである。

1980年代には中国は国際貿易を拡張し、外国から国内への対内直接投資(FDI)を解禁した。1980年に深セン、珠海、厦門、汕頭の4つの経済特区が設けられたことがそれを最も端的に表している。

経済特区は外国資本の誘致や改革実験の推進、輸出主導の経済の創出において成功を収めている。1991年の中国へのFDIは43億7000万米ドルだったが、それ以降中国へのFDIの絶対額と比率は大幅に上昇し、2016年には1260億米ドルに到達している。

さらに中国は沿岸や国境沿いの都市、内陸部の主要都市を徐々に開放し、最終的にはその他の都市も開放している。それにより先進国経済圏の労働集約的な製造業が中国に引き寄せられてきた。現在では経済特区モデルが11の新しい自由貿易試験区に発展し、サービス業やイノベーションの改革をはじめとする将来の国家的改革の試験場として機能している。

中国の経済システムの変更を目指す主要局面では国有企業(SOE)のガバナンス(統治能力)が改善され、価格の段階的な自由化や財政の分権化が進み本格的かつ近代的な銀行システムが確立されている。

SOE改革は企業の自主性の拡大を目指すものであり、政府の干渉を抑制して市場体制を創り出し民間企業間の競争により多くの産業を開放することで、管理された計画経済から価格主体の市場経済に転換していくものである。

SOE改革のプロセスは現在もなお進行中である。さらに中央政府は国有セクターの合理化と近代化を通じて世界で競争できるコングロマリットを創設する取り組みを続けている。この改革には、組織再編や経営統合、余剰生産能力の削減、労働者の移住などへの対応が盛り込まれている。

中国は2006年末までに金融市場への外国資本参入を自由化するとの約束を世界貿易機構(WTO)と交わし、2003年末から金融市場の改革を加速させてきた。その改革の焦点は銀行、証券、保険といった中国の金融サービスの主要分野に絞られていた。その過程で銀行の資本構成の多様化やガバナンスの向上、プルーデンス規制の導入、国有銀行の株式会社化などが進められ、また主要な証券会社は再編され保険セクターの改革も進展した。

中国は、国内の経済資源の配分を改善するためには高度に機能する金融システムが重要であることを認識している。そのため中国政府はこの数年間に数多くの改革に着手してきた。依然として中国人民銀行が基準金利で金利誘導を行ってはいるものの、銀行の預金金利と貸出金利は現在すでに完全に自由化され、今や商業銀行はこれらの金利を自由に設定することができる。また、2015年5月から明確な預金保険プログラムが導入された。

改革のもう一つの側面は、中国の「走出去(海外進出推進)」政策に焦点が当てられている。

国内の資本取引についても、中国当局はQDII(適格国内機関投資家)やQFII(適格海外機関投資家)といった厳格な管理プログラムを通じて慎重かつ緩やかではあるものの過去40年にわたって開放を進めてきた。さらに、香港市場と本土市場の間で株式取引と債券取引をつなぐストックコネクトとボンドコネクトが先に実現したことで海外から中国の資本市場へ参加する動きは拡大している。

中国の資本取引の自由化は実際の数字にも表れてきている。現在の中国は世界第2位の株式市場を擁している。国内株式市場の時価総額は2003年時点の5130億米ドルから2017年10月には17倍の8兆7000億米ドルに成長した。債券市場もすでに世界第3位の規模に達した。

人民元の国際化にもすでに大きな進展が見られている。わずか10年前までは人民元の利用は中国本土にほぼ限定されていたが、現在では中国の貿易全体の10%超が人民元建てで決済されている。また様々なクロスボーダー取引を通じて海外投資家が中国本土の株式や債券を購入することが可能になった。

人民元が準備通貨としての役割を果たす事例も徐々に見られるようになってきた。人民元は2016年10月1日に国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)構成通貨に正式に採用され、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンドの仲間入りを果たしている。世界各国における人民元建ての外貨準備の合計は2016年時点で850億米ドルと全体の0.78%だが、人民元に投資する世界の中央銀行の数は2013年時点の3行から2017年には45行に急増した。さらに昨年にはMSCIが、中国A株をエマージング・マーケット指数とMSCI ACWI指数に今年6月から組み入れることを発表している。

中国はこれまで40年にわたって主にFDIの受け手であったが、現在では大規模なFDIの出資者でもある。1999年に始まった走出去政策の下で、中国の金融関連以外の対外直接投資(ODI)は2000年時点の10億米ドル未満から2016年には1700億米ドルまで急増している。

また中国は、壮大な「一帯一路構想」を支えるアジアインフラ投資銀行、新開発銀行、シルクロード基金といった数千億米ドル規模の資本を有する国際的金融機関や基金の創設も先導している。こうした機関や基金によって、2016年から2030年にかけてアジアの開発途上国で26兆米ドルのインフラ資金ニーズが満たされることになるだろう。

■移行の新時代

中国は「改革開放」の取り組みにより、消費や革新、グリーンエネルギーが主導する新しい経済成長の時代に踏み出すことが可能になった。

変化はすでに現れている。内需が着実に拡大する中で2017年は最終消費支出が経済成長の58.8%を占め、その比率は5年前から4%ポイント近く高まっている。サービス・セクターで創出された価値はGDPの52%を占め、この比率も5年前から6%ポイント上昇した。

拡大する中間層と、より自由な消費活動をする若いデジタル世代の消費者にけん引される中国は、デジタル技術と革新において世界をリードする存在になってきた。昨年に中国国内でインターネットへのアクセスを持つ人口は7億7200万人に達し、欧州全体の人口を超えた。今や中国は世界のどの国よりもEコマースが活発な国になった。世界全体のEコマース取扱高の42%を占めるほか、世界で最も成功しているテクノロジー新興企業の3分の1以上を擁し、モバイル決済の取扱高は米国の11倍にもなっている。

ただし今後については大きな課題もある。約40年前に膨張する人口に対処するべく大胆な政策を実行した中国だが、現在は人口の高齢化に対処しなければならないという課題を抱えている。従って保険、医療、介護、資産運用などの分野の需要が一段と増加するとみられ、そのために多様化した金融システムが必要になるだろう。さらに経済を持続可能かつ環境重視型にすることが、国民や環境のためばかりでなく長期的に持続可能な経済構造のためにも極めて重要になってきた。

世界の貿易と投資をけん引する原動力として、中国はアジア経済成長の中心的な役割を担いつつアジア地域内の連携を一帯一路構想によってさらに強めようとしている。それによりアジアは2050年までに世界全体のGDPの約52%を生み出す存在になると推計され、世界経済の中心的な存在になっていくと考えられる。従って中国は将来、あらゆる側面で米国を凌駕する世界最大の消費者市場と経済規模を有する存在になるだろう。

 

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