上場企業の3月期決算の発表が今週、ピークを迎える。決算の発表時刻は海運が午前の取引終了後、鉄鋼や大手商社などが取引時間中(ザラバ)を選択するという例もあるが、主力企業の大半はその日の取引が終了した夕方以降だ。しかし、その傾向が変わる可能性がある。旗振り役になりそうなのがトヨタ自動車(7203)だ。
トヨタは9日に2018年3月期決算を発表する。これまで大引け後の15時に決算を発表していたが、今回は発表時刻を13時25分に前倒し、5分後の13時30分に記者会見を始める。決算説明と豊田章男社長による事業説明に分け、時間も計90分間と従来のほぼ2倍に拡充するという。
トヨタは期初に発表する通期業績の見通しが極めて保守的なことで知られる。市場予想との乖離(かいり)が大きくなりやすく、今回は決算発表直後に売りに押される公算が大きい。ただ、取引時間中に豊田章男社長から事業に関するポジティブな発言が出てくれば、次第に市場も買いで反応するとみられる。その意味でもトヨタ株の値動きから目が離せない。
2018年3月期のトヨタの期初の営業利益予想は1兆6000億円だったが、その後、四半期ごとに上方修正し、現在は前の期比1割増の2兆2000億円と予想している。2019年3月期予想に関しては、QUICKコンセンサス(17社平均)で営業利益2兆2122億円と前期比ほぼ横ばいが見込まれている。今期の会社計画との乖離がどのくらいになるのかが注目だ。
決算発表は45日以内の公表が制度化されているが、30日以内が望ましいとされており、3月期決算企業の場合、最初のピークは4月最終週の金曜日または4月末日となり、2次ピークは5月2週の金曜日または5月15日に当たる。今年は1次ピークは4月27日、2次ピークは5月11日だ。
国内の決算発表は、大引け後に報道機関が集まる東証の兜記者クラブの投函箱に資料を配布する企業担当者の長い列が風物詩となっている。一方、欧米では取引時間前や午前中に決算発表する主力企業が多く、決算発表時刻は分散されている。市場関係者にとっては決算発表が集中するよりも、分散される方が好ましいはずだ。
かつて株主総会の開催日は、総会屋対策から決算発表以上に集中する傾向が強かったが、現在は個人投資家の参加を促すため土日に開催する企業が増えている。国内時価総額トップのトヨタによる今回の試みは、決算発表の分散化を促す布石になるかもしれない。(本吉亮)
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