世界的な金利上昇圧力が強まっている。中長期的に主要中銀が危機対応を目的とした金融緩和から徐々に正常化へ政策をシフトし始めたことが背景の一つにある。米10年物国債利回りが3%台にのせ、低位で安定していたボラティリティの復活が一段と鮮明になってきた。
振り返れば、2月の世界的な株価急落もインフレ懸念による金利の上昇がきっかけだった。金利は世界の投資家の視線を釘付けにしている。日本時間今晩にはECBが定例理事会を開く予定である。
2014年9月に始まったECBの資産購入プログラムは、「出口」へと進み始めた。2018年1月より、国債購入規模を各月600億ユーロから300憶ユーロに減額した。この買い入れ規模は2018年9月まで継続されることになっており、その後は量的金融緩和(QE)を終了する見通しだ。
各証券会社はリポートで、きょうの会合ではECBの政策スタンスに大きな変化は起きないと想定したうえで、今回の焦点を以下としている。
ECB理事会に対する各証券会社の見方
証券会社 | 見方 |
UBS | ECBスタッフの経済予測が発表される6月の会合まで様子見姿勢を継続 弱い経済データを踏まえ12月頃まで期限が延長される可能性が高い |
ゴールドマン・サックス | 今回の理事会で政策やフォワードガイダンス(先行き指針)を変更することは無さそうだ 月額300億ユーロの買入規模をゼロにする判断は9月から12月にかけて行われるだろう |
バンク・オブ・アメリカ | 大きな波乱はなく、花火が上がることはないだろう ユーロ圏の弱い指標を踏まえ、ハト派的な見方を強めるリスクがある 貿易保護主義などでユーロ高が続けば、緩和を続ける可能性もある |
ただ、ECB理事会は無風通過という市場の見通しに「死角」はないのか。「見えざる緩和縮小(ステルステーパリング)」を指摘する向きもいる。ドイツ銀は24日付のリポートで「ECBは企業セクタープログラム(CSPP)による4月の社債購入を約半減させ、週7億ユーロ程度しか買い入れなかった」と分析した。市場の想定以上に量的緩和(QE)の縮小が早く進めば、金利上昇でユーロ高が進むことも考えられドル安圧力になる。みずほ証券の三浦豊氏は「仮にユーロ買いがすすめば、ドル安円高にもつながり、ドル円の上値を抑えることも考えられる」としている。(伊藤央峻)
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