トルコ中央銀行は25日開いた金融政策決定会合で、最も重視している政策金利「後期流動性貸出金利」を0.75%引き上げ13.50%にすると発表した。26日から新金利を適用する。通貨リラは発表直後に対ドルで上昇したものの、すぐに売りが優勢の展開に変わった。中銀の決定内容は、インフレ抑制には不十分と受け止められた。
中銀が金融機関に貸し出す際の事実上の上限金利としている「後期流動性貸出金利」を引き上げるのは2017年12月以来、4カ月ぶりとなる。その他の主要な政策金利は据え置いた。結果公表後にリラは一時1ドル=4.02リラ台まで上昇したが、ほどなく下げに転じて4.10リラ台となった。前日24日は4.08リラ程度で取引を終えていた。
市場では0.5%の利上げを予想する声が比較的多かったものの、1%の引き上げを予想する声も少なくなかった。それだけに、トルコ中銀の決定は積極的な買いを誘う材料にはならなかった。
18日には、19年に予定されていた大統領選と国会の選挙が今年6月に前倒しされることが決まった。景気の下支えを重視するエルドアン氏だが、リラ安が深刻になるなかで、選挙を控えた今回は為替安定のため、利上げに一定の理解を示すのではないかとの見方が市場では出ていた。
みずほ銀行欧州資金部の本多秀俊氏は、従来に比べると引き締めに動きやすい状況だったにもかかわらず「対応が後期流動性貸出金利の小幅な引き上げにとどまったことは、政権に配慮して政策運営をする中銀の姿勢が容易には変わらないことを印象づけた」と指摘した。
トルコ経済は、利上げを嫌ってきたエルドアン大統領や政権からの圧力で中銀の対応が後手に回り、消費者物価指数(CPI)が10%を超す高インフレが続いている。市場では、物価高と通貨安の悪循環に歯止めをかけるには、思い切った利上げが必要とみられている。
中銀の弱腰姿勢が嫌気されているのに加え、米長期金利が節目の3%台に乗せるなど上昇基調を強めているのもトルコリラの重荷だ。国際通貨基金(IMF)は、トルコの18年度の経常赤字額が491億ドル(約5兆3500億円)と17度から4%増え、国内総生産(GDP)に対する比率は5%台で高止まりすると推計している。
米国の金融政策正常化や米金利の上昇が続けば、ファンダメンタルズ(実体経済)の脆弱なトルコからの資金流出が加速しかねない。11日につけた1ドル=4.19リラ台の過去最安値を更新する展開は十分考えられる。
トルコリラの推移・日足(QUICK Qr1多機能チャートより)
【NQNロンドン 椎名遥香】
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