ソニー(6758)は27日、2018年3月期の連結決算(米国会計基準)と19年3月期の収益見通しを発表する。前期は半導体や映画、ゲーム、音楽などの採算改善で20年ぶりに営業最高益を更新したとみられるが、その高いハードルを越えて今期も増益を維持できるのかが焦点だ。一部では減益の予想もある。米アップルの「iPhoneX(テン)」の販売不振がスマートフォン向け画像センサー事業にどの程度影響するか。13年秋の発売から6期目を迎える家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)4」の先行きは――。注目点を担当アナリストに聞いた。
■「画像センサーの落ち込みを他事業で補えるか疑問」
石野雅彦・東海東京調査センターシニアアナリスト
連結営業利益は18年3月期の会社予想の7200億円に対し、19年3月期は7000億円を下回りそうだ。前期に計上した(半導体事業の資産売却益など)500億円程度の一時利益を差し引いても、今期は営業減益になる可能性がある。前期の収益改善をけん引した半導体事業は、(中国などの)スマホ販売低迷で画像センサーの出荷が落ち込み、前の期に比べ下振れする余地が大きい。
半導体事業のうち、カメラの「目」にあたる画像センサーはスマホ向けが収益の大半を占めており、自動運転車向けの需要はまだ本格化していない。車の商品サイクルは5年程度とスマホに比べ長いため、短期的に車載用が部門のけん引役になるとは思えない。
売り上げ全体の約2割を占めるゲーム事業で、PS4はゲームの人気が持続するとされる発売後3~4年の期間を超えている。今期はハードの販売の落ち込みをソフトで補えるのかどうか不透明感が強い。映画事業についても今期はヒットするような作品が見当たらない。画像センサーの不振を他事業で補えるのか疑問だ。
これまで携帯事業を率いてきた十時裕樹氏が、4月に最高財務責任者(CFO)に就いた。ソニーはこれまで構造改革で不採算部門の切り離しなどを進めてきた。同氏が今回の決算記者会見で、採算の良くない携帯事業の戦略にどう言及するかに関心がある。
■「ゲーム事業、6年目のPS4に懸念」
小野雅弘・モルガン・スタンレーMUFG証券アナリスト
前期の連結営業利益は(会社予想を上回る)7524億円だったとみている。今期は6829億円と予想する。ゲーム事業のPS4は投入から6年目となり、販売の最盛期を越えたことによる影響を懸念している。ハードとソフトで安定的な収益を確保するのは難しそうだ。PS4向けソフト「モンスターハンター:ワールド」のヒットでハードの販売好調が続いた前期の再現は期待しづらい。
次世代の「PS5」の発売時期が未発表のなか、PS4を値下げして販売台数を確保する戦略をとるかもしれないが、採算が悪化する懸念がある。音楽事業は、前期にスマホゲーム「Fate/Grand Order」がヒットした反動が出るだろう。
半導体事業は、前期の一時利益を考慮した実質ベースで営業増益を維持するとみている。画像センサーはiPhoneXの販売不振の影響を受けるだろうが、アップル以外の高級スマホやデジカメ向けの需要が補い、全体では販売数量が伸び悩む程度ですむと予想する。
ソニーは(ハードの売り切りではなく、ソフト更新やサービス利用料で稼ぐ)リカーリング型の事業の拡大を進めている。例えばゲームソフトであり、カメラの交換レンズだ。株式市場では、リカーリングが軌道に乗れば3年後のソニーの営業利益は1兆円に達するとの予想もある。今月就任した吉田憲一郎・社長兼最高経営責任者(CEO)のもと、リカーリング事業でどの程度成果を上げられるか、市場の期待値は高まっている。
<連結業績(米国会計基準)の市場予想>
2017年3月期実績 18年3月期 19年3月期
売上高 7兆6032億円 8兆5552億円 8兆7137億円
営業利益 2887億円 7312億円 7450億円
純利益 732億円 4812億円 4706億円
※23日時点のQUICKコンセンサス
【日経QUICKニュース(NQN) 大石祥代】
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