フリーマーケットアプリ大手のメルカリ(東京・港)の6月上場観測をきっかけに、新興企業向け市場を中心に中小型株の動きが慌ただしさを増している。メルカリの大株主であるUNITED(マザーズ、2497)は連日で急落している。1月下旬以降、中小型株は軟調な展開が続いているが、メルカリは地合いを一変させる起爆剤になるのか、それとも需給悪化を招く重荷になるのか――。
NHKが18日に「メルカリは6月にも東京証券取引所のマザーズ市場に株式を上場する見通しになった」と報じた。上場承認されれば、時価総額は2000億円を超える見通しとされ、昨年12月のSGホールディングス(9143)以来の大型上場だ。
SGHDのケースでは、市場全体への影響は限られた。上場承認は11月6日で上場は12月13日だったが、東証マザーズ指数はその間に6%上昇するなど、相場は好調だった。
上場観測をきっかけに、株価が真っ先に動いたのはメルカリに出資するUNITEDだ。
同社は2013年8月、メルカリの前身であるコウゾウと資本業務提携。コウゾウの株式1万1000株(発行済み株式総数の14.5%、2億2000万円)と新株予約権付社債(8000万円)を引き受けた経緯がある。
通常なら、投資先企業の上場による資産価値の増加を期待して買われてもよさそうなものだが、上場が伝わった18日以降の市場の反応は売り。直前17日から、きょうの安値(4300円)まで11%も下落した。市場は「材料出尽くしと受け止めた」(いちよし証券の宇田川克己・投資情報部課長)格好だ。
UNITEDは携帯向け広告配信のほか、ベンチャー投資も主力事業としている。メルカリ上場を先回りした買いで、株価は2月6日の安値から4月13日の高値まで8割上昇していた。
市場では、「若者を中心に人気が高いメルカリが上場すれば、店舗で中古品(リユース)売買を手掛ける企業の競争環境が悪化する」との見方もある。
コメ兵(東証2部、2780)や買取王国(ジャスダック、3181)、トレファク(東証1部、3093)、ブックオフ(東証1部、3313)、ゲオHD(東証1部、2681)などだ。「今後、メルカリ株購入のため、これらの株式を売却して資金を捻出する投資家もでてきそうだ」(証券ジャパンの大谷正之調査情報部長)との声がある。
一方、IPO情報関連サイトであるIPOジャパンの西堀敬氏は「メルカリが上場しても、既存の新興株から資金流出が広がるとは思わない」と話す。想定時価総額から考えて、公募・売り出しの多くは海外を含めた機関投資家に回る可能性があるためだという。
ただ西堀氏は、6月はメルカリ以外にもIPOが増えそうで、潜在的な需給悪化懸念はくすぶるともみている。
【日経QUICKニュース(NQN) 楠千弘】
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