機械株の失速が鮮明だ。17日の東京株式市場では相場全体が底堅く推移するなか、物流機器大手のダイフク(6383)が一時5%近く下落した。ファナック(6954)や安川電(6506)といった産業機械株は軒並み年初来高値から2割近く下がり、ダイフクの下落率は一時3割に迫った。企業の省力化投資の拡大が株高の追い風だったが、足元は景況感のピークアウトが鮮明。ロボット関連の波に乗ってきた機械株の行方には暗雲が垂れ込め始めている。
この日、ダイフクが大きく下げた一因は高成長期待が一服したこと。17日付の日本経済新聞朝刊によると、ダイフクの2019年3月期の連結営業利益は前期の推定値と比べて1割弱増え、420億円程度になるという。人手不足を背景に物流の現場を自動化する機器の引き合いが強く4年連続で最高益を更新する見込みだが、市場予想(493億円)には届かなかった。
業績の先行きを占う受注動向をみると市場の期待は高い。ダイフクの連結受注高は2017年4~12月期で3875億円と、17年3月期通期の実績(3565億円)を上回った。QUICKファクトセットのデータによると、市場では18年3月期通期が4891億円まで伸び、19年3月期には5325億円まで拡大すると予想されている。
だが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券はそんな強気な見方とは一線を画す。同社は16日付でダイフク株を3段階中真ん中の「ニュートラル(中立)」として投資判断を始めた。八木亮アナリストは韓国メーカーの薄型パネル向けの投資が一服するのを背景に、ダイフクの連結受注高は19年3月期に4823億円と減少に転じると予想。同社のPER(株価収益率)は受注高の伸び率と連動しているため「バリュエーション(投資尺度)の切り上がりも見込みがたい」と指摘する。
製造業を取り巻く環境は厳しくなりつつある。QUICKが17日発表した4月の企業短期経済観測調査(QUICK短観)では景況感を示す業況判断指数(DI)が製造業でプラス29と、11カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。先行きもプラス33と前月から4ポイント悪化しており、景況感は改善一服が鮮明だ。
大和証券の石黒英之シニアストラテジストは「世界的に景況感が落ち込みつつあることで、投資家も設備投資関連株の先行きを慎重に見始めている」と話す。世界的な高齢化に伴う生産年齢人口の減少で、中長期的には期待が残る省力化投資。近く18年3月期決算の発表が本格化するが、機械株が上げの勢いを取り戻せるかどうかは不透明だ。
【日経QUICKニュース(NQN) 神能淳志】
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