16日の東京株式市場でヤマダ電機(9831)株が一時10%安となり、昨年11月以来、およそ5カ月ぶりに600円を割り込んだ。13日の取引終了後、2018年3月期の業績見込みを大幅に下方修正したことがきっかけ。従来のように家電だけでなく、インテリアなどを一括提案する新規業態店舗への変更に伴う在庫の正常化作業が重荷となった。
米アマゾン・ドット・コムなどネット販売の存在感が重みを増すなか、従来型の家電量販店は新たな成長モデルを模索する。新業態の「生みの苦しみ」が一時的な業績悪化で終わるのか、それとも収益性が伴わず長期化するのか。市場の関心はこの点に集中する。
ヤマダ電は13日、18年3月期の連結純利益が前の期比16%減の290億円になったと発表した。従来予想していた36%増の470億円から一転減益となったほか、もとより会社計画より弱めの数値を見込んでいた市場予想(11日時点のQUICKコンセンサス、9社)の380億円も下回った。配当性向目標に沿って18年3月期の期末配当予想を減額したことも売り材料視された。
下方修正の理由は明らかだ。家電に加え、家具や生活雑貨、住宅リフォームまで取り扱い、住宅まるごと消費者に提案する新業態店舗「家電住まいる館」への転換に伴う在庫処分などで粗利益率が低下。在庫適正化に向けて仕入れが減少したことで販売奨励金も減った。
在庫正常化の完了によって、19年3月期に業績は回復に向かうとの見方は市場では多い。しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は「バリュエーション(投資指標)面でみた調整は済んでおり、業績回復が示されるにつれて徐々に株価は底入れする」と指摘する。
気掛かりなのは、実際の売上高の伸びが低調な点だ。18年3月期は1兆5730億円と前の期比1%増を確保したものの、構成比が高い家電の国内市場は少子化などで頭打ち傾向。価格競争力を発揮して急速に追い上げてきた米アマゾンなどネット通販事業者とも消費者を奪い合う関係にある。消費者はネット通販での販売価格を参考に購買先を決める傾向が強まっている。ポイントなどを活用した実質値引き競争が激化した場合、消耗戦につながりかねない。
日本経済新聞社が15日にまとめた18年の賃金動向調査では平均の賃上げ率が20年ぶりの高水準となった。20年の東京五輪を前にテレビの「買い替え特需」が予想されるなど消費環境には追い風も吹くが、今後も市場そのものの急激な拡大を期待することは難しい。
こうした環境下で、ヤマダ電は11年に注文住宅のエス・バイ・エル(現ヤマダ・エスバイエルホーム、1919)、17年には住宅リフォームのナカヤマ(埼玉県上尾市)を買収するなど住関連事業の強化を進めてきた。第2の柱となりうる非家電事業の強化を評価する声は多いが、ヤマダS×Lは18年2月期に2期連続で最終赤字になるなど、利益貢献はまだ遠い。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の小場啓司シニアアナリストは13日付の投資家向けリポートで「19年3月期以降、新業態店舗の展開をスムーズに進め利益改善に結びつけることが重要」と指摘していた。ヤマダ電は19年3月期に約100店舗の「家電住まいる館」への転換を予定する。株価が上昇基調に回帰するには、新業態での成功を投資家にきちんと示すことが必要となりそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN) 三好理穂】
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