香港の金融当局がついに為替介入に乗り出した。12日の外国為替市場で、香港ドルが対米ドルとのペッグ制の変動許容範囲の下限である1米ドル=7.85香港ドルまで下落。米ドル売り・香港ドル買いに動いた。下値維持のための為替介入は2005年に変動許容範囲を設定して以来初めてで、米国との金利差拡大による資金流出で香港ドル防衛に動かざるを得ない事態になった。
香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)は12日、ロンドン市場の取引時間帯に1億400万米ドルを売り、8億1600万香港ドルを買い入れた。香港時間では13日未明となるニューヨーク市場でも24億4200万香港ドルを買い入れた。13日午前は1ドル=7.8493~7.8499香港ドル程度で推移している。
香港ドル安の背景にあるのは、金利差を手掛かりとした「香港ドル売り、外貨買い」のキャリートレードだ。金融機関が資金調達する際のコストの目安となる米ドルのロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の1カ月物は12日時点で1.89%。一方、香港の銀行間取引金利(HIBOR)は0.79%だ。その差は昨年末の0.37%から1.10%にまで拡大し、香港ドルは米ドルと比べて投資妙味が低下した。
米国は2015年12月以降、6回利上げした。ペッグ制を採用している香港は過去に追随する形で政策金利を引き上げてきたが、現状は香港の金融機関などの資金は潤沢。そのため香港で最大手の銀行HSBCは15年12月以降も貸し出しの目安となるプライムレート(最優遇貸出金利)を5%に据え置く。市中金利が上がらず米金利との金利差が拡大し、17年11月以降は米ドル買い・香港ドル売りが顕著になってきた。
今回の一連の介入では32億5800万香港ドル相当のドルを売却した。介入の原資のメドとなる「決済性預金残高」は週明け16日に1765億香港ドルに低下するが、香港メディアによると1997~2008年の水準は数十億~100億香港ドル。当時と比べると残高は積み上がり、HKMAの陳総裁は「香港ドル相場を安定させる十分な資金がある」と余裕を見せる。
市場では「香港の大手銀行は米国の追加利上げの可能性がある6月にもプライムレートを引き上げる」(香港の資金運用会社ハリスフレーザーのスティーブン・ウォン・アナリスト)との見方が多い。とはいえ、6月まではまだ2カ月ある。香港当局は難しいかじ取りを迫られそうだ。
【日経QUICKニュース(NQN)香港=林千夏】
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