カジュアル衣料品店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリング(9983)が12日、2017年9月~18年2月期の連結決算(国際会計基準)を発表する。利益水準に加えて、焦点となるのが在庫管理の徹底など取り組みの成果。採算改善につながっているのか注目が集まる。小売り担当アナリストなど市場関係者に決算のポイントを聞いた。
「利益率改善が焦点、『有明』進捗にも関心」青木英彦・野村証券マネージング・ディレクター
月次販売が順調に推移したため、良好な決算になると期待している。ファストリは上半期(17年9月~18年2月期)の予想を明らかにしていないが、幹部の決算説明会などでの発言で社内計画と比べた進捗は確認できるだろう。同社は18年8月期通期の営業利益を前期比13%増の2000億円と予想するが、野村では2200億円と見込んでいる。シナリオの実現性を見極める上で進捗状況を確かめたい。
在庫管理の精度向上に取り組んでいる国内ユニクロ事業の焦点は利益率の改善だ。月次動向では17年12月~18年2月の3か月間では(需要期の)12月が特に好調で、(冬物の在庫を処分する)1~2月がそれなりの水準だった。値下げ販売が抑制され、粗利益率が改善されたとみている。17年9~11月期の粗利利益率は前年同期比で若干悪化していただけに、直近3カ月の改善を確認したい。
中国を中心とした海外事業は成長の初期段階だ。そのため利益率よりも絶対額が増加傾向にあるかが重要になる。前期の成長が著しかった東南アジアの伸びにも注目している。
生産から物流、開発などの仕組みを作りかえるべく取り組んでいる「有明プロジェクト」の成果にも注目している。収益性や顧客サービスの改善、生産期間の短縮に関する好材料を期待している。
「海外の伸び注目、通期の上方修正に期待」藤原直樹・しんきんアセットマネジメント投信運用部長
決算では利益成長の原動力となっている海外事業の伸びに注目している。17年8月期に営業利益が前の期比で倍増した東南アジアの好調が続いているかが焦点となる。
3月に入っても国内ユニクロの販売は好調で、現時点では天候にも恵まれている。懸念される材料も乏しく、市場では決算発表と合わせて18年8月期通期予想を上方修正することも期待されている。予想の見直しを見送った場合でも、海外の好調ぶりが確認できれば上振れ期待を織り込んで株価は上昇基調をたどるだろう。
顧客の取りこぼしを防ぐべく取り組んでいる電子商取引(EC)事業の進展も焦点となる。着実な伸びが確認できれば前向きな評価につながる。ただ、PER(株価収益率)などファストリ株の投資尺度は(同業他社と比較して)高いため、決算が株価の水準を一気に切り上げるほどの驚きを与える材料にはならないだろう。
【日経QUICKニュース(NQN) 三好理穂】
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